15.お魚の気持ち
リリアさんを助けると決意した次の日になった。
あたしは朝食を済ませてグリモアさんの部屋へ来ていた。
ミリィとアクアは偵察任務。チルちゃんは服作りをしているらしい。
砦移動の予測ルートはわかったのかな?
「ユウナ様、砦なのですが川沿いに移動をしているようです。おそらく水を確保するためと思われます」
「なるほど、それは都合がいいかも。川の水で先制攻撃できれば有利になると思うから」
「川の水ですか。詳しくお聞かせ願えますか?」
あたしは昨日みんなで話したことをグリモアさんにも伝えた。
作戦が有効かどうか確認してもらうのにちょうどいいね。
「なるほど……彼女の力でしたら問題はないでしょう。それについては彼女と親衛隊に任せるとします」
「アクアのことを知っているの?」
「彼女は私と同じく古参の魔物ですので」
「そっかぁ」
うーん、年齢聞きたいけど失礼だよね?
何十年とか下手したら何百年も生きてそうだもん。
「それを考えますと……襲撃に都合のいいタイミングは3日後が良いと思われます。時間はまた前後するかもしれませんので、その都度お伝えいたします」
「3日後かあ、じゃあそれにあわせて準備するね」
「よろしくお願いいたします」
3日で準備をして、あたしの力を見せつけて勇者を倒しつつ砦を壊す。
人間と戦わせると精神への負担が大きいからなるべく少人数でだ。
アクアの親衛隊は戦いじゃなく魚を避難をさせる要因だから大丈夫だろう。
森の動物達も巻き込まれないように偵察部隊が避難させるのかもしれないな。
みんなの精神ケアの方法も相談しなくっちゃ。
「あとね……また部下を増やそうと思うんだけど……」
あたしは皆のケアのために羊っ娘を部下にしたいと伝えた。
直にスカウトしようと思ったけど、他の皆にもチャンスをあげてほしいとのことで前回のような面接形式で募集することになった。
羊っ娘と……あと犬っ娘に来てほしいので確認してからにしようかと思ったのだが、グリモアさんは2人の予定も把握していて2人とも大丈夫みたいだった。
今回は募集文に人間と戦う可能性もあると書き足してもらった。
来る人数は減りそうだけど、重要なことだから仕方ない。
2人とも来てくれるといいなあ。
羊っ娘は以前来ると言ってくれたけど犬っ娘はどうなんだろう?
今回来なかったらお話だけしに呼べばいっか。
話がまとまったので部屋に戻ることにした。
さて、昼までどうしようかな。
アクアが大丈夫だったら合体を試しておきたいんだけど……。
呼んでみようかな。おーい、アクアー。
――お呼びですか?ユウナ様――
うん、今なにしてるのかな?
時間が出来たら特訓に付きあってほしいんだけど。
――今は川を泳いでいますわ。砦を見てみようかと思いまして。時間なら大丈夫です。プールで召喚していただけますか――
わかった、じゃあ移動したらまたメールするね。
――メールとは何でしょう?――
ごめん間違えた……。テレパシーで連絡するね。
あ、移動の前に水着に着替えるから時間かかるかも。
――はい、その間にわたくしも準備しておきますわ――
うーむ……なんだか癖でメールと言ってしまったぞ。
なんだか元の世界のことを思い出すと切なくなってきちゃうなあ……。
あとで羊っ娘に癒してもらえるといいな……。
では水着に着替えて……プールへ移動しようか。
勝手に入っていいのかなと思ったけど大丈夫みたいだ。
時々魚人に敬礼されてなんだかびっくり……。
あれがアクアの親衛隊なのかな?みんな美形だよ。
さあ、プールの前に着たぞ。
準備はいいかな?
――はい、大丈夫ですわ――
というわけで、召喚しよう。
周りにたくさん魚人さんがいて声を出すのは恥ずかしいので心の中で……。
召喚!アクア!
あたしの体から魔力が出て行き、アクアを形作る。
ちゃんと水の中へ召喚出来たようだ。
「これが召喚ですか。この距離を一瞬で移動できるなんてすごいですわね」
「うん、遠出した時とか呼んで戻してあげられるよ」
「では、今度余裕が出来た時に遠泳に挑戦してみたいですわね」
「ふふっ、楽しそうだね。じゃあさっそく合体してみるよ」
「はい。どきどきしますわ……」
それではやってみようかな。
神獣合体!アクア!
「はい……」
アクアがあたしの中に入ってくる……やはり気持ちいいなあ。
あたしの体に少し青い鱗がつき、ひれや水かきのようなものが出来ている?
でも足はちゃんとあるなあ。
アクア、気分はどうかな?
――これはたしかに気持ちいいですわ……。それに、足で立っている感触が新鮮ですわ――
そうだよね、普段は尾ひれだから歩いてことないんだもんね。
この体はアクアも動かせるんだよ。
ちょっと貸してあげるから歩いてみて。
――は、はい……緊張しますわ……――
あたしの足がおそるおそる動いていく。
アクアにとっては人生初の歩行なわけか。
なんだか生まれたての小鹿みたいな動きだ。
倒れないようにあたしも少し手伝おうかな。
――みなさんは普段こうして移動しているのですね。水の中以外を動けるってすごいですわ。ユウナ様、ありがとうございます――
ふふっ、楽しそうで何よりだよ。
合体していれば水の中にいなくても大丈夫なわけだね。
これなら浸かれるほどの水のない場所でも、召喚しつつ合体すれば安全だね。
それでは水に入ってみようか。
アクア、水まで歩いてね。
――はい……この状態で水にはいるとどうなるかも楽しみですわ――
あたしの足がゆっくりとプールに向かって歩いていく。
プールの前で……そうだ、ジャンプして飛び込もう。
行くよー!
ザッバーン!
水しぶきをあげて水に入っていく。
おお!?息が出来るぞ。えら呼吸をしているのかな?
首のあたりがひくひく動いている感覚があるぞ。
これは新鮮すぎる。
――ユウナ様?足がなくなりましたわ――
おや?たしかに足ではなくアクアと同じ人魚の尾ひれになっている。
水中と陸上で切り替わるのかな?
便利な体だねえ。
じゃあアクア、泳ぎ方教えてよ。
――はい、このように尾ひれを動かします――
ふむふむ……尾ひれをこうして腕をこう動かすと……。
わあ、速いなあ。
腕にひれもあるし、手には水かきもあるからすごく泳ぎやすい。
じゃああたしにもやらせてね。
――はい……水の中をお楽しみください――
えっと……尾ひれをこう動かしてと……おお、ちゃんと動くぞ。
お尻と足を同時に動かしているような変な感じだなあ。
アクアほどじゃないけど、人間よりはるかに速く泳げるっぽいぞ。
水の中での呼吸も当たり前のようにできてるしこれは楽しいかも……。
じゃあさ、一緒に意識を合わせて泳ごう。
アクアと協力したらもっと速く泳げるはずなんだ。
――わかりましたわ。共同作業ですね――
そうそう、初めての共同作業だよ。
おお!体がさっきよりだいぶ早く動かせるぞ……。
それに伴って泳ぐ速度も上がる。
うーん……気持ちいい!
勢いよく泳ぎ、プールを抜けて海までやってきた。
――わたくしも気持ちいいですわ。どんな海の生き物よりも早く泳げています。ユウナ様はやはりすごいのですね――
えへへー、それほどでも……あるんだよね。
でも、アクアがもともと速く泳げるからできてるんだよ。
アクアの泳ぎもすごいってことなんだ。
――照れますわ。わたくし泳ぎには自信がありますの――
やっぱりそうなんだね。
綺麗に泳げて速いって芸術的だよ。
さて、それでは水上に出て……水を操ってみようか。
どうしたらいいの?
――頭の中で水を動かすイメージを持ってください。そのイメージ通りに動いてくれるはずです――
なるほど……魔法のように呪文がいるわけでもないんだね。
たしかにアクアは思うがままに操ってたもんね。
では……水を浮かせてみよう……。
水に念じてボールのような形で持ち上げるイメージを……。
パシャーン!
一瞬丸い形の水が水上に出て浮かぶが、すぐにはじけ飛んでしまう。
水を手でつかもうとしたらつかめなかったようなそんな感覚。
むう……アクアの言うように難しすぎるかも……。
何十年も修行がいるわけだよ。
――ユウナ様、水を空気中に浮かせるのはとても難しいのです。まずは水中でされることをおすすめいたしますわ――
なるほど……そのほうが簡単そうだね。
水中に潜って、もう一度やってみる。
透明で見えにくいけど……丸い形が水中でふわふわと動く。
これならなんとかできそうだ。
――そのようにして水の流れを動かしながら泳ぐともっと速く泳げますよ――
なるほど……泳ぎながら進行方向に水を動かすようイメージしてみる。
たしかに速くなったね。楽しいぞ。
しばらくそうやって泳いでみた。
ふう、なんか満足。
でも、水を操るのはアクアに任せる方がよさそうだね。
難しすぎていざという時には使えないや。
――そうですわね、お任せください。それにこの状態ならば……ユウナ様の中にある膨大な魔力を借りることで大量の水を操るのも容易かもしれませんわ。やってみてよろしいですか?――
ほうほう、なんだかすごそうだね。
ぜひやってみて。
――それでは……水上に出ていただけますか――
どんなことが起きるのか、あたしはわくわくしながら水上に出る。
アクアが集中している感じが伝わってくるぞ。
あたりの水を眺めるが、特に変化は感じられない……。
アクアが力を出している感じはあるんだけど、なんなんだろう?
なにかしてるの?
――うふふ……お気づきになられませんか?ゆっくりと動いているのですよ――
そうは言われても……付近の水は波一つなく穏やかで……。
あれ?さっきまで波が立ってたよね……。
波をなくした?いや違うか……そんな地味なことじゃないはず。
アクアー、わかんないよー!
―それでしたら、少しだけ潜ってみてくださいな。ゆっくりとですよ――
アクアの言うように、水の底に向けてゆっくりと潜ってみると……。
「ひゃあああ!?なにこれ??」
少し潜ると水から顔が出た。さらに下に水面が見えている。
つまり……あたしは水ごと空に浮いている?
しかも結構な広範囲の水が浮いている……。
アクアってばすごい……。
――すごいのはユウナ様の魔力ですよ。わたくしだけだとこの量の水をを一気に持ち上げて投げることはできますが、こんなにもゆっくりと……しかも長時間の維持などできません――
いやいや、あたしの魔力を使っているとはいえ……それでもすごいことだと思うよ。
ほんと頼もしいなあ……。
頼りにしてるね、アクア。
――はい!おまかせください――
アクアとの合体でもいろいろできるとわかったし、そろそろ帰ろうかな。
また今度時間が出来たら泳ぎにこようね。
――はい……楽しみですわ――
そんなわけでまた2人で協力して泳ぎ、一気に城の地下プールまで帰ってきた。
そろそろお昼かなあ……。
アクアはどうしようか、送還してさっきいたところに戻る?
――いえ……ちょうどお昼の時間ですので、ご一緒させていただいてよろしいでしょうか?――
うん、いいよ。一緒に食べようか。
とりあえずプールから出て合体解除っと……。
あたしは陸のままで、あたしから出たアクアはプールへ落ちる。
「それでは昼食を用意しますのでお部屋でお待ち下さいね」
「うん、よろしくね」
あたしはプールの出口へと向かった。
あ、そういえばアクアの水槽が近くに無いけどどうするのかな?
後ろを振り返ると水槽を運んでくる魚人の姿があった。
なるほど……親衛隊がいるから何も問題はないんだね。
安心して部屋へ戻った。
アクアを待つ間、部屋に飾ったキキョウの花を眺める。
こっちの世界で初めて見て……死んじゃった犬型の魔物が死に際に持っていた花。
このお城にいる犬っ娘はその時死んだ子にそっくり。
だから早く犬っ娘とお話したいんだけどなあ……チャンスがなかなか来ない。
今日の面接に来てくれるのかなあ……。
ベッドでゴロゴロしているとアクアが昼食を持ってやってきた。
今日も新鮮そうなお魚が焼かれているようで香ばしい香りが漂ってくる。
「ユウナ様、お待たせしました。このお魚なんですが……ユウナ様の泳いでいる姿に魅せられたらしく、ぜひ食べてほしいとついて来ていました。ぜひ食べてやってくださいな」
「あはは……そんなこと言うお魚さんがいるんだね」
「はい。この世界の魚たちは強き魂を持つ相手に食べられることで、より大きな魚に生まれ変わることが出来ると言われていまして。身を鍛えておいしくなり、食べていただける相手を常に探しているのです」
「なるほど……じゃあぜひこの子は大きな魚に生まれ変わってほしいね」
「はい」
笑顔で返事をするアクア。
この世界の生き物ってみんなお互いを支え合う形で生きているよね。
そうじゃないのは人間だけなのかな?
なんだか同じ人間として恥ずかしいかも……。
アクアやみんなに慕われるような立派な人間になりたいな。
とりあえず昼食だ。
「ユウナ様、また部下を募集されているそうですね」
「うん、仲間はたくさんいた方がいいからね。アクアのアドバイス通りに精神ケアが出来る子を仲間にするね」
「それがよろしいですわ。そのお方がユウナ様と合体することで効果も倍増するでしょうし……わたくしも楽しみですわ」
少し頬を赤らめて言うアクア。
たしかに合体してケアすれば魔法の効果も上がるし、あたしがするってだけでこの子たちは喜ぶんだろうな。
「あとは戦い向きの子がほしいかな。ほんとは戦いなんてさせたくないけど……みんなを守らなきゃいけないからね」
「そうですね……戦いを避けるためには戦いが必要です。ユウナ様を信頼しておりますので、すべてをお任せしますね」
「うん……でもさ、なんで会って間もないあたしのことをそんな信頼できるのかな?あたしってそんな立派じゃないよね……」
「そんなことはありませんわ。以前ヴェリア様の予言については話しましたよね?」
「うん……この世界を変える勇者が現れるって話だよね」
「ユウナ様とお話して、まだ2日しかたっていませんが……その勇者はユウナ様のことだと確信しております」
「うーん……」
アクアって思い込みの激しいところありそうだからなあ……。
以前これを言われた時もプレッシャー感じちゃったし、少し重いかな……。
「ユウナ様……少し期待しすぎて困らせてしまいましたね。では……少し恥ずかしいのですが言い代えさせてください。わたくしはこの2日間であなた様にすっかり惚れてしまいました。ですので……勇者かどうかは実は関係ないのです。ユウナ様……好きでいてもよろしいでしょうか……」
「そ、そっか……それなら嬉しいから問題ないよ……ただ……」
「あ、ご安心ください。わたくしはユウナ様を独り占めしようなどとは微塵も思っていません。ユウナ様は皆のご主人様なのですから」
「うん……好きになってくれてうれしいよ。あたしが好きな子はたくさんいるし、これからも増えると思うけど……アクアのことも大好きだからね」
「はい……それだけで満足ですわ」
心底うれしそうな表情を見せるアクア。
もてるのがつらいって誰かが言ってたけどこういうことなのかな。
でも嬉しいや。
がんばるぞー。
こうしてアクアと2人で楽しく昼食を食べ終えた。
「それではユウナ様、元気もいただきましたので行ってまいりますね。送っていただけますか」
「うん。でもその前にさ……目を閉じてくれるかな?」
「はい……」
なんかさっきのアクアの想いを聞いていたら無性にキスしたくなってしまった。
だからしていいよね?
がんばってくれるアクアへのご褒美も込めてさ……。
「いってらっしゃいのキスだよ。がんばってきてね」
「はい……」
あたしはアクアにキスをする。
少し冷たく……お魚の味がした。
こう言うとムード台無しと思うけど……あたしに食べてほしくて身を差し出してきたお魚の味なんだ。
キスをしながらアクアを送還する。
また夜にね……いってらっしゃい……。
キスをしながら相手が消えるのって映画とかのラストシーンであったりするよね。
なんだか自分に酔っちゃうあたし。
――いってまいります。世界で一番素敵な送り出し方ですわ――
アクアも同じように思ってくれているようだ。
送り出した余韻に浸るあたし……。
数分後……アクアの水槽が部屋に置きっぱなしと気が付いた……。
とりあえず部屋の隅に運んでおこう……。
でも、これ置いておけば召喚する時に便利かも。
さて……そろそろ時間だし面接会場に行こうかな。
今日はだれが来てるかなあ……。
前回よりは少ないと思うんだけどね。
今日はグリモアさんが忙しいらしく、気に入った相手を見つけたらその場で声をかけて面接時間を決めていいとのことだ。
なんていうか……選ばれなかった子に申し訳なくなっちゃう方法だけど仕方がない。
広間に入ると、予想通り少なめで十数人ほどであった。
部屋にいた全員が緊張した顔であたしを見つめている。
皆を見やすいようにか、間隔をあけて並んで立ってくれているようだ。
みんなとっても可愛いのに選ばなければならない悲しさ。
さて……羊っ娘と犬っ娘はいるのかな?
すぐに羊っ娘を見つけて近寄る。
「よかった、来てくれたんだね。あなたとまたお話したかったんだ」
「今日は空いている時間でしたので来ることが出来ました」
「じゃああなたが面接1番ね。これが終わったら来てくれるかな?」
「はい!ありがとうございます」
羊っ娘は顔を紅潮させて笑顔を返してくれる。
この光景をうらやましそうに見ている周りのみんなの視線が少し痛い。
ねたむような顔をしている子がいないのは、みんないい子だからなんだろうな。
よし、人数も少ないし全員と一言は会話をしておこう。
あたしは順番に見て行くことにした。
犬っ娘は来てないんだな……少し悲しいけど仕方がないか。
今日来ていたのは羊っ娘を覗いて13人。
鳥っ娘……空を飛んでみたいな……。
狐っ娘、狸っ娘……なんだか変身したりできるそうな……。
タコっ娘……触手プレイ可能?
雪女……?ヴェリア様に似ているような気がする。
木っ娘……?なんだか学芸会の仮装のような木だ……。
ドラゴンっ娘……?なんだか最強感を醸し出している。
妖精……?なんだかメルヘンチック。
虎っ娘……チルちゃんが革製の妖しい衣装を作った子だろうか……。 なんだか調教されそうな感じが……。
リスっ娘3姉妹。可愛すぎるけど……多いよ……。
あとなにかわからない子……麒麟を小さくしたような……。聞いたら自分でもなにかわからないそうな……。
あたしは悩んだ末に鳥っ娘を選んでみた。
理由はもちろん空を飛びたいからだ。
物理的に飛べそうにないとは思っていたけど、魔力で飛ぶそうな。
ドラゴンも飛べそうだけど……姿に威圧感があってちょっと怖い……。
とりあえず今日はこの2人だ。
面接終了。選ばれなかった子はごめんなさい……。
全員にまだチャンスはあるからまた来てねと伝えて部屋を去った。
さて、部屋に戻って面接開始だな。
戻ろうとしてるところで偶然犬っ娘に出会った。
「あ、ユウナ様。こんなところで会えるなんて嬉しいです」
「こんにちは。ちょうどよかったよ、あなたとお話したかったんだ。面接に来てくれるかなと思ったんだけど……」
「申し訳ありません……。行きたかったのですが……病み上がりのため戦いには向いてなくて遠慮したんです」
「そっか……謝らなくていいんだよ、ごめんね。それであの……今から2人面接するんだけど、その後で部屋に来てくれないかな。お話したいんだ」
「わたしとですか……?」
「うん、嫌ならいいんだけど……」
「嫌なわけないです!むしろ嬉しくてその……それでは行かせていただきます」
あたしはだいたいの時間を伝えておいた。
よかった。これでやっと犬っ娘とお話できるよ。
ずっと気になりっぱなしだったからね。
では部屋に戻って羊っ娘を待とう。
何気にこのお城に来てから一番お世話になってる子なんだ。
あたしの部下になってくれたらいいな……。