14.3人集合
あたしは今部屋で1人待っている。
ミリィやアクアにはテレパシーでお話しして、一緒に夕食をしようと伝えてある。
チルちゃんは4人分の食事をお願いしてある。
あたしの部下たち3人の初顔合わせだ。
と言っても……ミリィとアクアはもともとお友達だから、チルちゃんの紹介かな。
仲良くしてくれるといいなあ。
もっとも、みんないい子だから全く心配はしていない。
さて……ミリィとの約束があったんだ。
パトロール先から召喚して返さずにいることが出来るかどうか。
「ミリィ、召喚!」
あたしから魔力が出て行き、10秒ほどでミリィが現れる。
「帰ってきましたにゃー、ただいまにゃあ」
「おかえり、ミリィ。偵察はどうだった?」
「うちの担当地域は平和だったにゃ。でも……砦が動いてるって話を聞いて怖くなったのにゃ……」
「そっか……お疲れ様。ところでその服は偵察用かな?」
ミリィが来ているのは動物の毛皮?
漫画とかで原始人が着てそうなあれだ。
なんとも野性味あふれるスタイルである。
「にゃう。仲良しだった動物を看取った後にもらった毛皮なのにゃあ」
「そっかあ。じゃあ、このまま送還せずにここにいられるかテストするんだよね?」
「そうですにゃあ。なんだかユウナ様の魔力が体を覆ってる感じなのにゃ。これをユウナ様のところに戻せばいいと思うのですにゃあ」
「ふむふむ」
なるほど……。
てことは送還しなきゃいけないというより、送還できる状態なのかも?
なんかそれっぽく唱えてみるかな……。
「ミリィ、解放!」
「にゃう!」
お、成功したっぽい。
ミリィの周りにある魔力があたしの中に戻ってくるようだ。
よかった……あれで失敗してたらすごい恥ずかしかったぞ。
「成功だよ、ミリィ。ありがとね、またあたしの能力が把握できたよ」
「にゃう。うちも早く帰れてよかったのですにゃ。これがあれば危険な任務にも行けますのにゃ」
「うん、でも無理しちゃだめだよ。気絶してたらたぶん召喚できないからね」
「そうですにゃ。それも今度うちが寝ている時に試してほしいのにゃ」
「わかった。やってみるよ」
「それでは、まだ時間ありそうだから着替えて体拭いてくるにゃあ」
「ふふっ、いってらっしゃい。ゆっくりでいいからね」
「にゃいっ」
ミリィを見送り、また部屋で1人になる。
次にアクアがやってきた。
いつも通り台車に乗った水槽に浸かっている。
「ユウナ様、ご機嫌麗しゅう」
「アクア、お疲れ様。海のパトロールはどうだった?」
「平和なものです。このあたりの海に人間達が来ることはまだないですからね」
「来たら平和じゃなくなるのかな?」
「どうでしょうね……美味しいお魚をたくさん食べてもらいたくはありますわね」
「そっか……いつかそうなるといいね」
「はい……」
そうなるためにもがんばるとして……。
そういえば合体をまだ試してないのはアクアだけなんだな。
今度やってみなくちゃね。
「ところでアクアは人間の砦が動いて来てる件を知ってる?」
「少し聞きました。恐ろしいですわね……」
「うん、それであたしがなんとかしようと思ってるんだ。手伝ってくれるかな?」
「もちろんですわ。なんでもお申し付けくださいね」
「よかった。ありがとうね」
「あら、あの花は……」
アクアの視線の先には、花瓶に生けたキキョウの花があった。
そういえば犬っ娘に見せようと思ってそのままだったな。
「ちょっと摘んできたんだけど、弱っちゃってるかな」
「お任せください」
そう言ってアクアがなにかを念じると、アクアの水槽から水が出て花瓶に入っていく。
あの水って海水じゃないのかな?どうなるんだろう。
「なにをしたの?」
「植物に必要な栄養がたっぷり入った水に交換しておきました。これでしばらくはもちますわ」
「わあ、そんなことできるんだね。ありがとう!」
「どういたしまして」
おかげで助かった。
犬っ娘とお話しできるのがいつになるかわからないからね。
でも水にいろいろできるってことは……。
「アクア、おいしくて栄養たっぷりのお水って作れるのかな?」
「はい、できますわ。少し飲んでみられますか?
「うん、ちょうだい」
テーブルにあったコップになにか液体が注がれる。
少し白く濁った感じ?見た目はスポーツドリンクなわけだが……。
飲んでみよう。
「わあ、これおいしい」
「外出時の栄養補給に必要なものを作るべく試行錯誤したんです。ユウナ様も遠出なさる時はたくさんご用意いたしますわ」
「うん!よろしくね」
味はまんまスポーツドリンクだ。
なんだか飲んだ瞬間から力が湧いてくる気がするよ。
アクアは水のない場所へ行く時でもこうやって役立ってくれるんだね。
コンコン。
お、チルちゃんがやってきたかな?
ドアを開けると、3人のちびっこが料理を運んできた。
チルちゃんと……お友達かな?
「おねえちゃん、おまたせ。お友達に手伝ってもらってるんだ」
「そっかそっか、みんなありがとうね」
「いえ……おじゃまします」
「し、しつれいします……」
うーむ、可愛いぞ。
この子たちはテントウ虫とちょうちょだろうか?
チルちゃんのお友達は虫系なんだね。
ちっこい体で一生懸命料理を並べている3人。
アクアも優しい微笑みでそれを見守っている。
ああ……なごむなあ。
「よし、準備できた。2人ともほんとにありがとうね」
「あ、終わったんだ。あたしからもお礼を言わせて。どうもありがとうね」
「い、いえ……」
「と、当然のことなのです」
作業を終えたちびっ子たちに話しかける。
こっちを見て少しおびえているような照れているような感じ?
かわいい小動物達だ。虫だけど。
「また今度チルちゃんと一緒に遊びに来てね。お茶でもしよう」
「は、はい……」
「ぜ、ぜひお願いします」
照れながら出ていくちびっ子たち。
いろいろ終えて平和になったら遊びたいな。
と、入れ替わりにメイド服を着たミリィがやってきた。
「お待たせですにゃ。みんなそろってるのですにゃ」
「うん、これで全員勢ぞろい。さっそく食べようか」
あたしの部下3人が初めて同じところに揃った。
あたしとミリィとチルちゃんが椅子に座り、アクアは水槽の中でお水のテーブル?に料理を乗せている。
「じゃあ、ミリィとアクアは知り合いだからいいとして……チルちゃんを紹介します」
「はじめまして、チルです。えっと……服とかをよく作ってますです」
「うちもチルちゃんが作った服を着ることあるにゃよ。にゃかよくしようにゃあ」
「さっきの子たちといい、かわいいわ。仲良くしましょうね」
「は、はい……。よろしくなのです」
うん、予想通り仲良くやってくれそうだ。
とりあえず食事をしつつ、のんびりと会話をした。
ミリィは普通に仲良くしてる感じだけど、アクアがチルちゃんを見る目が怪しいかな?
魚って虫を餌に釣るけど……まさかね?
ただ可愛い女の子が好きなだけと思っておこう……。
夕食の時間はなごやかに過ぎ……これから本題を話し合おう。
まずはみんなに今の状況を説明しないといけない。
あたしはまずリリアさんのことから話を始めた。
そして助けるために砦を何とかしようということ。
その作戦と、あたしの能力についても話しておいた。
「というわけなんだ。協力してくれるかな?」
「もちろんだにゃ」
「もちろんですわ」
「なんでもするの」
予想はしていたけど、みんなあっさりと答えてくれた。
「ふふっ、みんなありがとうね。それで、砦にいる勇者を何とかするために明日から特訓していこうと思うんだ」
「その勇者の力……重力を操るでしたか?なんだかわたくしの能力と似ている気もしますわ」
「おお、というと?」
「わたくしの水を操る能力ですが、これも重力を無視して自在に操ることが出来ます。わたくしは水だけを自在に操れますが、その勇者はなんでも操れるのかもしれません」
「てことはアクアよりずっと強力なのかな?」
「そうですね。ユウナ様を見る限り、その勇者も膨大な魔力を持っているのでしょうね。わたくしがあの砦ほどの水を操った場合……すぐに魔力が切れてしまうと思います」
ふむふむ。てゆうかアクアも何気にすごそうだけど……。
勇者はすごいたくさん魔力があるからいろいろできるわけだね。
でもそんなの相手にできるのかな?
「話を聞くとなんか勝てない気がしてきたよ……」
「いえ……これはわたくしの予想なのですが、重力を操る力ともなると……おそらくかなりコントロールの難しい能力だと思われます」
「強力だけど、難しくて扱いづらい?」
「はい。例えば……止まっている岩の重力を操って持ち上げるのは簡単でも、動いてる生き物の重力を操るのは困難なのではないかと」
ふむ……それが本当ならいくらでも対処はできそうだけど……。
予想が違ってたら怖いよね。
「その予想って当たってると思う?」
「はい。その理由として……わたくしが水をこのように上手く操れるようになるまで何十年の修行をしたのです。勇者の能力が凄まじいとは言っても、まだまだ練習が必要なレベルと予想されます」
「なるほど……それなら可能性高そうだね。でもなんとか確かめる方法がほしいな」
動きの素早いだれかが攻撃を仕掛けて試すしかないのかな。
でも囮ってなんか嫌だよね?
「ユウナ様。いいこと思いつきましたにゃ。うちが囮になって試せばいいのにゃ」
「え?でももし捕まっちゃたら……」
「そこはユウナ様が送還してくだされば解決ですにゃ」
ああそうか……あたしには召喚と送還があったよね。
これってかなり便利な能力かもしれないね。
これらを使いこなす修行もしなくっちゃ。
「よし、じゃあそれも踏まえて修行していこうか」
「はいにゃあ」
うーん、1人で考えるよりみんなで考えた方がいろいろ思いつくんだね。
なんだかうまくいくような気がしてきたよ。
「うう……チルはどうしよう……」
あ、チルちゃんが自分だけ意見を出せていないから落ち込んでる?
子供だから仕方ないんだけどね。
なにかやってもらうことはないだろうか?
「チルさん、勇者の力を試すのにあるものを作ってほしいのですが」
「え?何でも作るの!」
「ん?なに作るのかな?」
「それは出来上がってからお伝えしますわ。チルさん、あとで詳細を伝えますわね」
うーん、よくわからないけどチルちゃんに仕事を考えてくれたアクアに感謝だ。
アクアって長年生きているみたいだから……かなり頭いいのかもね。
頼りがいあるお姉さんだよ。
そうだ、アクアに川から攻撃が可能か確認しておかないと。
「ねえアクア、川のそばをお城が通った場合に水をかけて戦意を削ぐとかできるのかな?
「はい、大きめの川なら大丈夫と思います。作戦前に魚や他の生き物を避難させる必要があるので時間がかかりますが」
「うん、お城の予測ルートを調べてもらってるから、川が近くにあったらお願いしたいな。でも準備はアクア1人じゃ無理だよね?」
「その際はわたくしの親衛隊も連れて行きますので大丈夫ですわ」
「そ、そっか……」
親衛隊とかいるんだね……。アクア美人だものなあ。
姫とか呼ばれてたりするのだろうか?
そんな人気者を部下にしちゃっていいのか?あたし……。
まあ気にするまいか、だってアクアから来たんだもんね。
「さて……第一回会議はこんなところかな?また明日も夕飯一緒にしたいけど予定は大丈夫かな?」
「はいにゃ!うちらはユウナ様の予定に合わせて元々の仕事も調整していいことになってるのにゃあ。だからいつでも大丈夫だにゃ」
「あ、そうなんだ。大丈夫なのかな?」
「はいにゃ!」
うーん、あたしってやっぱり好待遇?
部下になった子たちは自由にできるわけか。
このお城はたくさん魔物がいるみたいだし、この人数なら問題ないのかな。
「じゃあ、アクアとチルちゃんはこれから作る服の打ちあわせだよね?あたしはミリィと修行するよ」
「わかりましたわ。ではチルさん行きましょうか」
「はいなの!」
「あ、うちが食事の片づけしてくるにゃ。メイドさんのお仕事らしいのにゃあ」
「ふふっ、よろしくね」
3人が部屋を出て行き、一時的に1人になる。
少し休んでミリィを待つかな。
――ユウナ様?ひとつよろしいでしょうか――
おや?アクアがテレパシーで話しかけてきたようだ。
どうしたのかな?
――先ほどは言えなかったのですが……人間との争いはわたくし達魔物の心に負担がかかります。わたくしは長年の経験によりそこまでではないのですが、ミリィと特にチルさんはまだ若いので負担が大きいのです――
そっか……グリモアさんもそんなこと言ってたなあ。
そのせいで人間相手に攻勢に出れないって。
ほんとに優しい子たちだよねえ。
でもどうしようか……。
――あの子たちの精神的ケアをする必要があります。そういった力を持った魔物が医療班におりますので、ユウナ様の部下になっていただければ心強いかと思いますわ――
なるほど、それは重要だね。
よし、心当たりがあるからあたってみるよ。
アクア、ありがとうね。
――いえ、よろしく願いたします。それでは……――
うん、またねー。
ふう、やっぱりアクアは頼りになるんだな。
明日あたり、例の羊っ娘に声をかけてみようか。
他にも役立ちそうな子がいたらスカウトする必要もありそうだぞ。
いやあ、いろいろとやることがあるもんだ。
「お待たせですにゃあ」
「お、来たね。じゃあ外で特訓しようか」
「にゃい!」
あたしはミリィを連れて外へ出た。
まずは送還が有効な距離を調べるんのだ。
召喚についてはこの世界のどこからでも呼べると麒麟に聞いた。
まずは横にいるミリィを召喚だ。
「ミリィ、召喚!」
「にゃうっ!」
あたしの横にいたミリィが一瞬であたしの前に瞬間移動したように見えた。
さっきは呼んでから来るまでに時間かかったのにね。
「なんだか早かったね」
「前もって呼ばれることがわかったらすぐに応答できるみたいにゃ。さっき呼ばれた時は移動中だったのと……身だしなみ整えてたから時間かかったにゃあ」
なるほど、じゃあ呼びだす前にテレパシーで合図をしておけば素早くできそうだ。
「じゃあ次は送還できる距離を試すから遠くに行ってくれるかな?見えないくらいがいいかな」
「にゃい!いってきますにゃあ」
「いってらっしゃい」
ミリィはやっぱり足が早いなあ。
あっという間に見えなくなって森の中に入っちゃったよ。
数分待ってみた……。
――ユウナ様、1キロくらい離れたのにゃあ。体にユウナ様の魔力は残ったままだにゃ――
よし、そのくらい離れたら十分だね。
さあ、やってみよう。
「ミリィ、送還!」
――にゃーい――
「うにゃ?」
おお!あたしの前にミリィが現れた。
てことは送還も距離がかなり長い?もしくはどこでも?
なんとなくだけど、テレパシーで会話が出来れば大丈夫な気がする。
さて次は……召喚から合体までをいかに素早くするかだ。
いっそ同時にできれば楽なのだけど……。
やってみようかな。
「ミリィ、次は召喚と同時に合体してみるから待ち構えててね」
「らじゃーですにゃ」
びしっとおでこに手をあてて敬礼するミリィ。
そこで覚えたんだろう?兵士の訓練でも偵察してたのかな?
よし、やってみようかな……。
あ、でも一応離れてやったほうがいいかな。
近くにいると召喚出来てるのかがわかりにくいかも。
「ミリィ、悪いんだけどまた離れてくれるかな?今度はそんな遠くなくていいから」
「はいにゃー」
勢いよく走っていくミリィ。
元気でいいなあ。
少し遠くから手を振るミリィに手を振り返して……集中だ。
「ミリィ召喚!神獣合体!」
遠くにいるミリィがうっすらと消えていき……そのままあたしの中に入ってくる感覚。
これは……成功かにゃ?
――呼ばれたと思ったらユウナ様の中にいたにゃ!――
ふふ、これがやりたかったんだよ。大成功だね。
ではこのまま……この状態から送還したらどうなるかをやっておくね。
「ミリィ送還!」
あたしの中からミリィが出て行く感覚とともに……遠くにミリィが現れた。
ちゃんと呼びだした場所に戻れるみたいだね。
ふむふむ……これはなかなか便利かもしれない。
チルちゃんのような戦闘が苦手な子はお城にいてもらって呼ぶようにすれば安全だ。
――実験は成功なのですかにゃ?――
うん、大成功だよ。戻ってきてね。
あと……合体解除してから他の子とすぐ合体できるか試したいけど今は無理だね。
これはあとでチルちゃんのところへ行って試そうかな。
外でしかできないことを今はやろう。
戦闘中に合体や解除を繰り返すと想定して……動きながらやってみよう。
「ただいまですにゃー」
「おかえりミリィ。次は動きながら合体や解除するから、あたしの横を走ってみてくれるかな」
「了解ですにゃー」
あたしはダッシュをする。
その横を楽しそうに併走するミリィ。
あたしも運動苦手な方じゃないけどミリィにはかなわない。
ではこのまま合体してみよう。
「神獣合体!ミリィ!」
「にゃおっ!」
走りながらあたしの中に入ってくるミリィ。
急に体が軽くなりバランスを崩しそうになる。
でもミリィのおかげでバランス感覚もよくなっているので持ち直す。
ミリィとの合体は動きながらでも問題なさそうだ。
解除してからが問題かもしれない。
このまま解除してみよう。
「合体解除!」
ミリィが横に現れて走り出す。
あたしは急に体が重くなって……あ、やばい……。
「きゃああー!」
「ユウニャ様―!!」
盛大にすっ転んでしまった……。
いてててて……。
ミリィは転ぶことなくバランスをとれたようだ。
「ユウナ様、今治しますのにゃ!痛いところはどこですかにゃあ?」
「うう……いろんなところ……あとはまませたよ……がくっ……」
「ユウナ様ー!死んじゃだめですにゃあ!」
痛くてたまらないので寝た振りをしてミリィに任せよう……。
慌ててる感じも可愛いなあ……。
「えと……緊急事態なので失礼しますのにゃあ」
ミリィがあたしの体をまさぐってくる。
楽しい状況ではあるが、痛みでそれどころではない……。
「にゃう……服は無事ですにゃあ。チルちゃん製は丈夫にゃのです。では……これは診察にゃのですよ?」
さすが戦闘にも耐えられると言っていたチルちゃんの服だ。
そのスカートを思いっきりめくられた……。
もっとゆっくりがいいなあ……緊急事態になにを言ってるのかという感じだが……。
「見た目に傷はないけど……とりあえず舐めますのにゃあ……ぺろぺろ」
「あんっ!」
ミリィの舌気持ちいいなあ……。
なんだか体全体が楽になっていく気がする。
患部を直接舐めなくても効果があるのかな。
時間もたったし、体の感覚もしっかりしてきたぞ。
たぶんたいした怪我はしてないのかな?
一番痛いのは腕かもしれない。
「ミリィ、腕をお願いしたいな」
「ユウナ様生き返りましたかにゃ?おまかせにゃ!」
「ふふ、おおげさだよ。そんな簡単に死んだりしないからさ」
「にゃう……人間はうちらと違って体が丈夫でないと聞いたのでとても心配したんだにゃあ……ぺろぺろ」
そっか……わりと本気で心配してくれてたんだね。
がくっ、と口で言えば冗談だとわかると思ったけど、そんなあたしの世界の常識は通用しないか。ちょっと反省。
「ユウナ様?どうですかにゃあ……?」
「うん、だいぶよくなったよ。さすがミリィ、ありがとね」
「照れるのにゃあ。他に痛いところはあるかにゃ?」
「んー、唇」
「にゃにゃなんと!?」
痛いわけじゃないけど、舐めてほしいというかキスしたくなっちゃった。
目を閉じて待ってみる。
「で、ではお邪魔しますのにゃ……」
「んっ!」
唇を舐められる……気持ちいいぞ……。
というか、少し残っていた体の痛みがひいていく?
粘膜接触は治療の効果が高いとかあるのかな?
「にゃうにゃう……」
「もっと……」
「にゅう……」
ミリィの頭を抱きかかえてキスをするあたし。
ミリィの舌があたしの中に入ってくる。
さっきより気持ちいいし、体がすごく楽になっていく……。
あまりの気持ちよさにそのまま数分間そのままでいた。
「ミリィ、すっかりよくなっちゃったよ。今度から怪我の場所が分からない時はこうやって治してね」
「そ、そうにゃのですか?これにそんな効果があるとは知らなかったにゃ。さすがはユウナ様なのにゃー」
あたしの不純な動機でしてもらった行為だが、おかげで新発見できた。
怪我だけでなく疲労も取れそうだ。
あ、合体してあたしがキスしたらあたしも治療する側になれるのかな。
今度やってみようっと。
「じゃあミリィ、修行の続きしようか。次は慎重にするね」
「はいにゃあ!」
この後1時間ほどいろんな修業をした。
合体や解除をいろんなパターンで繰り返して練習だ。
そして木の上から落下しながら合体して華麗に着地とかできるようになった。
これで高い所から落ちても安心だ。
修行を終えて、ミリィと手をつないでお城に帰った。
さて……チルちゃん達はどうだろうか?
アクアに行ってもいいか聞いてみよう。
おーい、なにしてるかな?お邪魔してもいい?
――はい、一段落してチルさんとお喋りしていましたの。来てください――
よし、行こう。
チルちゃんの部屋はこっちだったかなあ。
あ、そうだ。合体して行って驚かせよう。
「ミリィ、チルちゃんのところへ行くよ。合体していこうね」
「はいにゃあー」
よし、合体するぞ……。
声に出そうと思ったけど、心で念じるだけでできないかやってみよう。
これができれば水中でアクアと合体とかできるかもしれない。
というわけで……神獣合体!ミリィ!
「にゃいっ!」
ミリィが元気よく返事をしてあたしに吸い込まれていく。
成功だ。念じればいいだけなんて便利だね。
このままチルちゃんの部屋へ移動だ。
部屋に着き、コンコンっとノックすると待ち構えていたようにドアが開いた。
「おねえちゃん、いらっしゃ……え?あの……おねえちゃんだよね?」
「うん。ミリィと合体した状態なんだよ。どうかな?」
「なんだか綺麗になってる気がするの……あ、いつも綺麗だけどそれ以上に……」
「そうですわね……なんだか神々しいですわ」
「そ、そうかな。なんか照れちゃうよ」
チルちゃんとアクアの2人に褒められた。
うっとりした顔で見ているのでお世辞ではないだろうな。
さて、目的を果たそう。
「チルちゃん、今合体と解除の練習してるんだけどね。この状態からチルちゃんと合体できるか試したいんだ。いいかな?」
「うん、いいよ。おねえちゃんと合体気持ちいいもん」
「ふふ、じゃあやってみるから待ち構えててね。そのほうがスムーズに合体できるみたいなんだ」
「わかったの」
ではやってみようかな。
合体解除は考えずにそのまま合体してみるぞ。
「神獣合体!チルちゃん!」
「うん!」
チルちゃんがあたしの中に入ってきて……押し出されるようにミリィが出て行く。
これは成功というか……とっても簡単?
「にゃうう……チルちゃんに追い出されちゃったにゃあ」
「ごめんねミリィ、でも実験は成功だよ」
「よかったにゃー」
「では……合体解除!」
あたしからチルちゃんが出てきて、元通り。
「気持ちよかったの……」
「チルちゃんもユウナ様の中好きなんだにゃあ」
「うん、一緒だね!」
「なんだか楽しそうですわね。わたくしもしてみたいですが……」
「アクアはまた今度やってみようね。今度プールに行くからさ」
「はい。よろしくお願いしますわ」
このあとは4人でのんびりと談笑して過ごした。
今日はいろいろあったけど……なんとかなりそうな気がしてきたぞ。
だってあたしにはこんなに可愛いモン娘たちがいるんだもんね。
まだまだ増えるだろうけど……みんなを大切にしていこう。
やがて寝る時間となり、それぞれの部屋へ戻って寝た。
だれかと一緒に寝たかったけど……そういう楽しみは後に取っておこう。
しっかり寝て明日も頑張るんだ。
じゃあみんな、おやすみ……。
そうだ……かわいいモン娘たちと……麒麟も忘れてないからね。