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11.神獣合体!

 夕飯の前に、あたしはリリアさんの様子を見に行くことにした。

 ここに来て以来ずっと寝たままで、食事もしてないなあと思ったのだ。


 リリアさんの部屋に入ると、昨日もいた羊っ娘が看病をしていた。

 ほんとありがたいなあ。

 なにをしているんだろう?部屋に入ったあたしに気が付いていない。

 近づくと目を閉じてなにかを念じているよう。

 邪魔してはいけないから少し待っていよう。


 リリアさんを見ると、朝と同じく血色がよく安らかな顔で眠っている。

 この羊っ娘がなにか魔法でもかけているのかな?

 そうして見ていると羊っ娘が目を開けた。


「ユウナ様、来られていたのですね」

「うん、また看病してくれてたんだね。今は何をしていたの?」

「魔力による栄養の補給です。これで食事をしなくても大丈夫なんです」

「そっか、便利なことが出来るんだ。ほんとにありがとうね」


 魔法って便利。

 リリアさんは問題なさそうだ。


「ところでユウナ様、今日は部下を募集されていたんですね。わたし、恥ずかしながら寝ていたもので参加できませんでした」

「ごめんね、リリアさんの看病してくれてたから寝てたんだよね。また時間を変えて募集すると思うから、嫌じゃなかったら来てほしいな」

「はい、ぜひ参加させていただきたいです」


 嬉しそうに微笑んでくれる羊っ娘。

 リリアさんの看病をずっとしてくれている時点でもうあたしのお気に入りだ。

 次はこの子が起きてる時間に募集かけたいな。


「今夜も徹夜で看病するのかな?」

「いえ、今日は容体が安定しているようなので、夜にもう1度見に来てから普通に休みます。明日の朝にはリリア様も目覚めると思いますので、ユウナ様も来ていただけますか」

「うん!じゃあ明日の朝また会おうね」

「はい、お待ちしています」

「それじゃあリリアさんのことよろしくね」

「お任せください」


 明日はリリアさんとお話しできるぞ。

 怖いけど、避けては通れないことだ。

 あたしは部屋へ戻ることにした。




 少し待つとミリィが夕食を持ってやってきた。

 約束通り2人分持ってきてくれたようだ。

 しかもなんだろうか、メイド服を着ているぞ。

 猫耳メイドだ。かわいすぎる。


「ユウナ様、お待たせですにゃ。今日は何とお魚がついているのですにゃ」

「いらっしゃいミリィ。人魚のアクアにお魚お願いしておいたんだ」

「はいにゃ。もともとあの子はよく魚を分けてくれて仲が良かったのですにゃ。さっきユウナ様に名前をつけてもらったことを聞いて、さらに仲良くなったのですにゃ」

「ふふ、ミリィはお魚大好きなんだね。あたし、部下たちが仲良くしてくれてうれしいよ。もう一人いるんだけど、蚕の子は知ってる?」

「お魚大好きですにゃ。蚕の子は服を作ってくれる子ですかにゃ?小さい子たちとはあまり繋がりがないのですが、今度お話ししてみますにゃ」

「うん、仲良くしてあげてね」


 あたしの部下になった子たちがライバル意識を持つってことはないようだ。

 ま、いい子たちだからそんな心配してなかったけどね。

 みんなでお食事とかしたいなあ。


「ところでミリィ、その格好可愛いね」

「ありがとですにゃ。ユウナ様のお世話係になりましたので、このメイド服を着てきましたにゃ」

「そっかそっか、たくさんお世話してね」

「はいですにゃ!」

「じゃあ食べようか。いただきます」

「いただきますにゃ」


 ミリィは野菜に目もくれず、魚をむしゃむしゃと食べている。

 うふふ、やっぱり猫だ。可愛いなぁ。


「ほんとにお魚が好きなんだね」

「はいですにゃ!お魚を食べるだけで幸せになれますにゃ」

「じゃああたしのも少しわけてあげる」

「にゃ!?い、いいのですかにゃ?」

「いいよ。はい、あーんして」

「あーんですにゃ」


 あたしはフォークに大きめの魚をさしてミリィに差し出す。

 ミリィは嬉しそうに口を開けている。

 猫耳がぴょこぴょこ動いてわかりやすい反応だ。


「次はあたしにも食べさせてくれる?」

「もちろんですにゃ。えーと……何が食べたいですかにゃ?」

「んー、その煮物かなぁ」

「じゃあユウナ様、あーんしてくださいにゃ」

「あーん」


 ミリィに食べさせてもらい幸せを感じるあたし。

 これが憧れてた食事の形だよね。

 あ、ミリィのほっぺたにお魚のかけらがついてる。

 

「ミリィ、ちょっと顔をこっちに寄せて」

「はいですにゃ?」

「ついてるよ。ほら、あーん」

「はむ……。おいしいですにゃー」

「ふふ、あたしの指は食べちゃだめだよ」

「はいですにゃ、でもユウナ様の指もおいしいのですにゃ」

「じゃあ指で食べさせてあげるね。ほら……」

「あーんですにゃ。もぐもぐ……さっきよりおいしいですにゃ。ユウナ様にも……」

「あーん。もぐもぐ……ほんとだ、ミリィの指もおいしいな」

「にゃうー」


 こんな感じでいちゃこらしながら夕飯を終えた。

 今はミリィが食事の片づけに行ったので待っている。

 あのメイド服、北の都で見たものにそっくりだったなあ。

 シックなロングスカートタイプのメイド服。

 短いスカートに作り直してほしいなあ。

 今度チルちゃんにお願いしてみようかな。

 お、戻ってきたぞ。


「ユウナ様!急いで片づけてきましたにゃ」

「よしよし、お疲れ様。いい子いい子」

「にゃごにゃご」


 猛ダッシュしてきたのかな?

 少し息が荒いミリィの頭をなでなでしてあげる。

 さて、少し食休みだ。ミリィとベッドに座る。


「ミリィ、そのメイド服、あたしがお世話になった人間のところで見たのとそっくりなんだけど……」

「はいにゃ、これはわたしたち偵察部隊が人間のところへ潜入して持ち帰った情報のひとつなのですにゃ」

「そっか、ミリィは偵察部隊だったね。他にはどんなことを偵察してたの?

「えーとですにゃ……。人間がどんなものが好きかとか、どんなものを食べてるかとかですのにゃ。危険だけど楽しい任務なんですにゃ」

「そ、そうなんだ……」


 この偵察部隊は戦闘用じゃないみたいだね……。

 憧れの人間の調査をしているだけみたいだ。

 うーん、ますます愛おしいぞ。

 でも、こんな感じだと攻めてこられたらあっさりやられるのではなかろうか。


「ねえ、人間が攻めてきたことってないの?」

「時々ありますにゃ、でもそのための部隊がいましてですにゃ……。倒すわけにはいかないので幻を見せて追い返すらしいのですにゃ」

「へー、すごい部隊がいるんだね」

「はいですにゃ、その部隊のおかげで平和なのですにゃ。ただ……最近近くに砦が出来ているのでみんな不安がっているのですにゃ」


 ここへ来るときに見えた砦のことか。

 重力を操れる先輩勇者がいるらしいんだよなあ。

 早めに何とかしたいかも……。

 麒麟の力で無血開城とかできないものかなあ。


――余裕である。勇者の力が未知数ではあるがな――


 わ、麒麟ってば聞いてたんだね。

 勇者さえいなければ楽勝なのか……。


――勇者には勇者。ユウナの力で抑えてもらえればよいのだがな――


 んー、でもあたしかよわい女の子でしかないよ?


――そのための神獣合体だ。身体能力の高き者とひとつになればかなりの戦力となれるぞ。例えば、そこにいる猫のようにな――


 なるほど。ミリィと合体か……。


――いざという時のために特訓しておくのだな――


 ふむふむ、今からお試ししてみようかな。

 ふと気がつくと、ミリィが首をかしげてあたしの顔を覗き込んでいる。

 頭の上に『にゃう?』という擬音が浮かんでいるように見えて可愛い。

 あたしがぼーっとしてるように見えているんだろうな。


「ごめんねミリィ、麒麟と会話してた。急にぼーっとしてたら麒麟と会話してると思っててね」

「はいですにゃ。麒麟様というとユウナ様を乗せてこられた、あのかっこいいお方のことですにゃ?」

「そうそう、ミリィは麒麟みたいなのが好みなのかな?」

「はいにゃ!もちろんユウナ様の次にですけどにゃ」

「ふふ、ありがとね」

「にゃごー」


 うーん、嬉しいことを言ってくれる。

 頭をなでつつ猫耳をつんつん……。

 神獣合体ってどうなるんだろうか。

 あたしにも猫耳がつく?うーん、やってみるかな。


「ミリィ、あたしの能力にね、神獣合体っていうのがあるんだ。それを試してみたいんだけどいいかな?」

「な、なんだかドキドキする名前の能力ですにゃ……。わたしでよければなんだってしますのにゃ」

「じゃあこっち見てね」


 えーと、やり方は確か教わっているはず。

 目を見て呪文を唱えればいいのかな……。

 あたしとミリィは見つめ合い……。


「神獣合体、ミリィ!」

「にゃん!」


 元気な返事とともに、ミリィの体が光に包まれる。

 召喚する時に出る魔力に似てる光だ。

 その光があたしの中に飛び込んできて……。

 なんだかすっごく気持ちいいぞ……。

 ひゃああああん!


 少しして光がおさまったようだ。

 なんとなく体が軽い?

 あたしは鏡の前に全身を写してみる。

 顔と服装はあたしのまま。あ、でも少しだけ猫目?

 猫耳としっぽがついている。

 しかもしっぽのところ、服に穴があいている?

 うまいことできてるけど、ちゃんと元に戻るんだろうか?

 あ、ミリィの意識はあるのかな?


――ユ、ユウナ様の中にいますのにゃ!なんだかすごく気持ちがいいのですにゃ――


 お、ちゃんと会話できるんだね。

 うんうん、あたしも気持ちいいよ。

 この状態でどのくらい動けるか特訓させてね。


――どうぞ自由にしてくださいですにゃ。わたしはユウナ様のものですからにゃ――


 よしよし、あとでなでなでしてあげよう。

 さて、手足は自由に動くのはいつも通り。

 耳は……人間の耳と猫耳が両方ある……。

 これではコスプレだなあ……。

 試し人間の耳を塞いでみると、音は聞こえる。

 猫耳を押さえても聞こえる。

 うん、便利……なの?

 そして耳としっぽは動かせるのかな?

 ミリィに手伝ってもらうことはできるのだろうか?


――やってみますにゃ。まず耳はこうですにゃ――


 お、猫耳が動いた。なんとなく感覚がわかったぞ。

 とりあえず自分でもやってみる……おお、動かせた。

 次はしっぽね。


――こっちは楽しいことを考えると簡単ですにゃ。ユウナ様のことにゃ……――


 お、しっぽが揺れているぞ。

 なるほどねえ、じゃあミリィのことを考えるか。

 お、さっきより激しく動いたぞ。


――ユウナ様……とても嬉しいのですにゃ――


 なるほどなるほど。

 2人で協力したら激しく動けるのかもしれない。

 これは特訓が必要だね。

 ミリィお外へ行こうね。


――はいですにゃ、お散歩ですにゃ――


 部屋を出て軽く小走りしてみると、体が軽い。

 足音も立てずに走れてほんとに猫になったみたいだにゃー。


「にゃははははー!」

――ユウナ様ご機嫌ですにゃー――


 うん、なんだかすっごい解放感。

 城内を上機嫌で走っていくあたし。

 通りすがる魔物達が不思議そうに見ている。

 あ、あたし不審者って思われたりしてるかな?


――このお城にはヴェリア様の許可がないと入れないので、問題ないとは思いますにゃ――


 それなら安心だ。

 お城の入口まで無事に到着して外に出る。

 暗い時間のはずだけど、ミリィの目のおかげなのかよく見える。

 よし、猛ダッシュしてジャンプだ。


「にゃおーーーん!」


 おお、3メートルくらいジャンプできたぞ。

 あ……今気がついたけどおっぱい大きくなってる?

 ジャンプして揺れた感じで気がついた。

 これも合体のおかげかな。

 じゃあ、次はミリィも協力してね、一緒にジャンプだよ。


――了解ですにゃ――

「いっくよー!」


 ひええ!すっごく高く跳んでるよ?

 さっきの倍は跳べたかな?

 うーん……これならあたしも大活躍できる予感。

 よし、このまま夜の探検と行こう。

 ミリィは行きたいところあるのかな?


――綺麗な景色の場所があるんですにゃ。そこにユウナ様を案内したいのですにゃ――


 おお、それはぜひ連れて行ってほしいな。

 場所教えて。


――はいにゃ!――


 ミリィの道案内で移動していく。

 普通に会話するよりわかりやすいよ。便利な能力だ。

 森に入り、木登りしながら進んでいく。

 猫ってこんなアクロバティックな動きで移動するんだねー。

 なんとなくしっぽの使い方もわかってきた。

 ジャンプ中うまく動かすと姿勢を保てるのだ。

 この動きで人間を翻弄できるかな?

 チルちゃんを抱っこして走り、糸を吐かせる案も思いつく。

 今度試してみよう。

 というか3人で合体できたらいいのにな。


――能力を極めればそれも可能となる……らしいぞ――


 お、麒麟先生のアドバイスだ。

 らしいって言われちゃったよ。

 極めるってことはかなり練習しなきゃいけないよね。


――精進せよ――


 はーい。よし、毎日合体していくぞ!


――ユウナ様ー、わたしにも麒麟様の声が聞こえましたにゃ。りりしいですにゃ――


 なるほど、合体してたら聞こえるんだ。

 ミリィは麒麟がお気に入りだねえ。


――もちろんユウナ様の次にですにゃよ――


 わかってるよー。

 ま、麒麟ならいいか。今度抱きついちゃっていいよ。


――わーいですにゃー――


 ほのぼのーと会話している間に到着したようだ。

 ここは、森で一番高い木の上なのかな?

 とっても綺麗な景色が見える。お城とその後ろに広がる海も見えるなあ。


――ここの景色が綺麗で、弟とよく来ていますにゃ――


 そっかそっか、次は弟君も連れて一緒に来たいね。


――はいにゃ!あの子も喜びますにゃ――


 うん、楽しみだ。

 あ、合体といてみようかな。

 木にしっかりつかまってと……。


「合体解除!」


 あたしの体から魔力の光が出ていき、ミリィの形となっていく。

 お、ちゃんと木の枝に座った状態で出てきたぞ。

 そしてあたしは体が少し重くなる。

 うん、ミリィが中にいるとやっぱり気持ちよかったんだなあ。


「ふにゃー。ユウナ様の中素敵でしたにゃ。でも、隣にいてくださるほうが嬉しいものですにゃ」

「ふふ、あたしもこのほうがいいよ」


 急に夜目が利かなくなって、あたりが暗くなる。

 お城の明かりが綺麗だなあ。

 近くにいるミリィの顔は月明かりのおかげでしっかりと見える。

 ふふ、こんないいムードの場所ではやっぱり……。


「ミリィ、あたし木につかまってるから動けないんだ。ミリィにしたいことあるけど……できないからミリィからしてほしいな」

「にゃ……それはあの……その……ですかにゃ?」


 もじもじしているミリィの顔が見える。

 よく見えないけど赤くなっているのかな?

 だとしたらなにかはわかってるよね?


「ミリィが思ってることであってるよ、さあおいで」

「にゃう、わかりましたのにゃ。ドキドキしますにゃあ……」


 ミリィの顔が近づいてくる。

 緊張しているのが伝わってきて愛おしい……。

 あたしは目を閉じて待つ。

 なかなか来ないなあ……。

 でも、のんびり待つとしようか。

 風が心地いいし、いいムードだもんね。


 1分ほど待ち、その時が来た。

 唇にやわらかい感触。

 少し遅れて、ミリィの手があたしの背中と顔に添えられる。

 あたしが落ちないように支えてくれてるんだね。

 うふふ、キスするのもいいけど……されるのもいいものだ。

 

 ミリィったら今度は離れなくなっちゃった。

 キスをやめるタイミングが分からないで困ってるみたい。

 それとも……ずっとしていたいのかな?

 そうだ、ちょっと驚かせちゃおうっと。

 あたしは舌を少し出して、ミリィの唇を舐める。


「にゃっ!?」


 驚いて顔を離すミリィ。

 嫌がってはないよね?

 暗くてもわかるくらいに顔が赤いもん。


「ふふ、キスの次はああやって舐めあうんだよ」

「そ、そうにゃのですかにゃ?ま、まだまだ勉強不足にゃようでしたにゃ」

「じゃあまた今度しようね」

「にゃ、にゃはいにゃあ……」


 うふふ、慌てたのかおかしな喋り方になってるよ。

 でもそうだな……この猫言葉は敬語じゃないほうが可愛いかも。


「ミリィ、あたしともっと仲良くなれる方法があるんだけどやってみない?」

「にゃ?にゃんでもしますにゃよ」

「もう敬語はいいから、普通のお友達みたいにお話して」

「え?でも……。えっと……仲良くなれる……にゃあ?」

「そうだよ、あたしのことが好きだったらさ……。おねがい」

「わ、わかりま……じゃなくて……わかったにゃー!」

「そうそう、いい子だよ」

「うにゃにゃー」


 ミリィの頭をなでなで。

 よし、このほうが楽しいな。


「あたしさ、部下よりお友達がたくさんほしいんだ。だからあたしをお友達と思ってね」

「わかったにゃー、ユウナ様はうちのお友達にゃよ」

「よしよし」

「にゃごにゃご」


 ふふ、この子普段は自分のこと『うち』って言うんだね。

 あたしの前でがんばって敬語にしてたんだね。

 かわいいよ。

 さて、そろそろ夜も遅いかな。


「ミリィ、かえろっか」

「にゃう。ユウナ様、また連れてきてほしいにゃ」

「うん、また来ようね」

「にゃー」

「では、神獣合体!ミリィ!」

「にゃお!」


 またミリィが光に包まれてあたしの中へ入ってくる。

 なんだかさっきより気持ちいいかも?

 仲良くなると合体も上手くいくのかもしれない。


――きっとそうですにゃー。もっと仲良くなるのにゃあ――


 ふふ、そうだね。仲良くなろう。

 あたしは来た時より素早く移動して、お城に着いた。

 ふう、いいデートだったね。


――デ、デート……にゃううー――


 そうだよ、これからもたくさんデートしようね。

 他の子とも遊びたいから、いつも2人きりにはなれないけど……。


――問題ないにゃ、みんな仲良くがいいのにゃ――


 ふふ、じゃあ戻ろうね。


「合体解除!」


 ふう、合体は気持ちいいけど、解除した後さみしくなるな。

 でも、一緒に並んで歩くほうがいいよね。


「ミリィ、部屋まで手をつないで帰ろうね。後は寝るだけだよ」

「はいにゃ。でもユウナ様、ちょっと弟の様子を見たいのにゃ」

「そっか、じゃああたしも一緒に行くね」

「うにゃ!きっと弟も喜ぶのにゃあ」

「ふふっ、部屋まで案内してね」

「にゃうにゃう」


 あたしはミリィに手を引かれて走り出す。

 あ、なんか肉球のようなぷにぷにした感触があるぞ。

 手をつなぐっていいなあ。

 通りすがりに出会う魔物たちがあたしたちを見てくる。

 ミリィをうらやましそうに見ている子もいるな。

 あの子たちにもいつか素敵なご主人様が出来るといいな。


「ユウナ様、着いたにゃー」

「あ、じゃあさ……いきなりあたしが入って驚かせてみようか」

「にゃ!それは面白そうにゃ。弟びっくりだにゃ」


 コンコン。

 ミリィがドアの陰に隠れるようにして、ノックした。

 少ししてドアが開き……。


「はーい、どちら様でしょうか……にゃ」

「こんばんは」

「にゃにゃにゃ!?ユ、ユウナ様!ど、どうして?」

「うふふ、驚かせてごめんね。体調のほうはどうかな?」

「は、はい!もうこんなに元気になりました。これもすべてユウナ様のおかげです。あ、にゃあ」

「ふふっ、あなたもその話し方を練習してるんだね。可愛いよ」

「あ、ありがとうございますにゃ!」


 弟くんは嬉しそうな照れ顔を向けてくれた。

 ほとんどミリィと同じ顔だな。

 髪が男の子らしく短いのと、目元が少しきりっとしているくらいだ。

 この子ならミリィと一緒にそばにいてもらうのもありかもだね。

 2人同時にぺろぺろしてもらっちゃうとか……いいかも……。


「とりあえず元気そうで安心したよ。でもまだちゃんと休むんだよ。また今度遊ぼうね」

「は、はいにゃあ!よ、よろしくおねがいしますですのにゃ!」

「うふふ、いい子いい子」

「ふにゃあ……」


 弟くんの頭を撫でてみると、顔を真っ赤にして床に崩れ落ちていった。

 男の子でも同じ反応なんだね。

 あたしは力ずくで女の子をものにしようとする男が大っ嫌いだ。

 だから、こんな風に女の子のような反応をしてくれる男の子なら全然平気かも。

 元気になったら面接においで。


「それはじゃあまたね」

「またですのにゃ……」


 あたしは手を振って部屋を出ていき、入れ替わりにミリィが入っていく。

 少し待っていよう。


「ほらほら、しっかりするのにゃ」

「にゃう……お姉ちゃん、ひっぱってー」

「しょうがない子だにゃあ。はい」

「んー……ありがとにゃ」

「はい、ちゃんと寝てるんだよ」

「わかったにゃー」


 うーん、なんともほほえましいにゃあ。

 あたしにもあんな可愛い弟か妹がいたらよかったのにな。

 ミリィはお姉ちゃんらしく弟を寝かしつけたらしく、部屋から出てきた。


「ユウナ様、お待たせにゃ。弟が世話をかけたのにゃ」

「いいんだよ、可愛い弟だね」

「にゃう。手がかかるけど、とってもかわいいのにゃ。時々名前を付けてあげたくなることもあったのにゃ」

「ふふっ、仲良しでいいね」


 うーむ……兄弟で名前を付けると、禁断の兄弟愛になるのかな?

 なかなか自由だね、魔物の世界ってさ。

 さあ、部屋へ帰ろう。

 またミリィと仲良く手をつないで部屋まで戻った。

 軽くお茶を飲んで、すぐに寝る時間だ。


「さ、寝ようかミリィ」

「にゃ!にゃい……」


 なんとなくミリィが緊張している。

 憧れの人間と一緒に寝るなんて、一大イベントなのだろう。

 ああもう可愛い!


「ユウナ様?寝るときの決まりとかはなにかあるのかにゃ?」

「そうだね、裸で寝よっか」

「にゃんと!?」


 実はあたし、裸で寝る派なんだ。

 別にミリィとエッチなことするために裸になるんじゃないからね。

 こっちに来てからは慣れてないんで服着て寝てたけど、今日はミリィもいるしそうしよう。


「ミリィ、脱がしてくれるかな?」

「にゃう……お世話係の務めをはたすのにゃ」


 ミリィは手を震わせながら、あたしを脱がそうとする。

 こっちに来てからメイドさんに脱がされることは何度もあったことを思い出す。

 あの人たちは手際が良かったが、ミリィは慣れてないのだろうな。


「ミリィ、だれかの服を脱がしたことはあるのかな?」

「弟くらいなのにゃ……。でも最近は恥ずかしがってさせてくれないのにゃ」

「そっかそっか、じゃああたしで練習してね」

「にゃい……」


 ゆっくりと服を脱がされて下着姿になるあたし。


「あの……下着もですかにゃ?」

「もちろんだよ」

「ユ、ユウナ様は恥ずかしくないのかにゃ?

「少し恥ずかしいけど、ミリィにはあたしの全部を見てほしいんだ」

「にゃう……照れますにゃ」


 あたしの背後で肌に触れないようにおそるおそるブラのホックを外しているミリィ。

 時間がかかったけどはずれたようだ。

 前に回ってきたミリィの手を持ち、あたしの胸に押し付けてみた。


「にゃにゃにゃー!?ユ、ユウナ様?」

「遠慮なく触っていいんだよ。どうかな?あたしのおっぱい」

「や、やわらかいのですにゃ……」

「ほら、早くブラはずしてね。直接触ってみて」

「にゃう……失礼しますにゃ」


 ブラがとられ、あたしのおっぱいが露わになる。

 ミリィは震える両手でそっと触ってきた。

 

「あん……」

「にゃ!ご、ごめんにゃさい。触り慣れてにゃくて……」

「ふふ、気持ちいいよ、ミリィ」

「にゃうう……」


 震える手がゆっくり近づいてくると、やけにくすぐったくて気持ちいいな。

 この子には慣れずにずっと緊張しててほしいな。


「さ、もっと触りたかったらあとでまたしていいからね。まずは脱がせて」

「はいにゃ……失礼するにゃ」


 あたしのショーツをゆっくりとおろしていくミリィ。

 どこを見ていいかわからずにうつむいている。

 しっかり見てごらんと言いたいところだけど、さすがにちょっと恥ずかしい。


「ユウナ様。とてもお綺麗ですにゃ……」

「ありがと、じゃあミリィも脱がせてあげるね」

「にゃにゃ!?そ、それはお手数なので自分で脱ぎますにゃ」

「あたし脱がせるの好きなんだよ?嫌かなあ?」

「にゅう……ユウナ様のお望みにゃら……」

「よしよし」


 さて、ミリィのメイド服を脱がせよう。

 でもこれどうやって脱がせるんだろう?

 とりあえずエプロンをはずしてと……上着にはボタンが、スカートにファスナーがある。

 どっちから脱がすのが可愛いかなあ……

 よし、スカートから脱がせよう。

 スカートを降ろすが、まだ上着に隠されてパンティは見えないなあ。

 でも、すべすべの足が見えるぞ。よし、靴下から脱がそう。


「はい、足上げてねー」

「にゃい……なんだかこの格好恥ずかしいのですにゃ」

「その格好可愛いよ」

「にゅうー……」


 うーむ、脚をもじもじさせて可愛いぞ。

 よし、先にパンティを脱がせてしまおうか。

 見えないけど、手をそれらしき場所に入れて、ゆっくりと降ろす。

 お、ピンク色のかわいいパンティが降りてきたぞ。


「にゃうう……不思議な脱がせ方するのにゃあ?」

「んー、だってこうするとミリィが恥ずかしがってかわいいもん」

「ユウナ様いじわるにゃー」

「うふふっ。ミリィ、ちょっとそのまま走ってみて」

「にゃ!にゃんで?」

「可愛いミリィを見たいから」

「うう……」


 見えないように前とお尻を手で隠して部屋の中を走るミリィ。

 うーん、可愛いな……。

 ってあたし変態すぎるかな?

こんな暴走して嫌われてもいけないね。


「ミリィ、もういいよ。ごめんね、変なことさせて」

「うんみゅ……ユウナ様が喜んでるから大丈夫にゃー」

「よしよし、いい子だね」


 さて、いたずら無しでちゃんと脱がそう。

 バンザイさせて上着を脱がし……ノーブラだったのね。

 あっという間に全裸だ。

 恥ずかしがって体を隠すミリィをベッドまで誘導して布団をかけてあげる。

 あたしって紳士的。

 さ、あたしも布団に潜り込もうっと。


「さ、寝ようか」

「にゃう……昔偵察した時に人間同士裸になってベッドに入るのを見た時はびっくりしにゃしたが、まさかうちも同じことが出来る日が来るとは思わなかったにゃ」


 偵察というか、完全にのぞきだよね?


「そんなのまで見てたんだ。その人間たちはベッドで何かしてた?」

「うみゅ……なんだか見ちゃいけない気がしてすぐ離れたのにゃ」

「そっか、なにしてたか今度教えてあげるね」

「お願いしますにゃー」


 きっとその人間たちは男女だったんだろうけど、たいした違いはないかな。

 おおありかもだけど、愛し合うことには違いないぞ。

 今日はおとなしく寝ようかな。

 お楽しみは、いろいろと片が付いてからにしよう。


「ミリィ、おやすみ」

「おやすみにゃ、ユウナ様。あの……くっついていいのかにゃ?」

「好きにしていいよ」

「にゃう!」


 ミリィは丸くなってあたしに抱きついてくる。

 ふふっ、猫っぽいなあ。

 すべすべした肌と、ところどころに生えている毛がふわふわして気持ちいい。

 今日は幸せな気分で眠れそうだよ。

 そうだ、寝る前にあれしなきゃ。


「ミリィ……ちゅっ」

「んっ……」

「おやすみのキスだよ」

「ふにゃー」


 次はおはようのキスだね。

 おやすみ、ミリィ。また明日。

 あたしはすぐに眠りに落ちて行った。

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