優太くん
今日は異常に成瀬くんを意識してしまう。
授業内容なんて全く頭に入ってこない。
気づいたらお昼になっていた。
「凪絆?」
理花ちゃんに呼ばれたのにも気づかないほどに。
「凪絆!」
「え、あ、はい!?」
「何回呼んだと思ってんのさ。どーしたの?」
「いや……うん。」
「成瀬ならジュース買いに行ってたよ」
「え!?」
「いってくれば?私待ってるし。」
「う、うん……行ってくる!」
「頑張れ。」
あたしは教室を飛び出し階段を降りていった。
自販機の前に行くと成瀬くんがいた。
「成瀬くん……っ。」
「一ノ瀬さん……どうしたの?」
「あ、えと……」
やばい何も考えてなかった!!
「これ良かったらどうぞ」
と持っていたココアを渡してきた。
「え、でもこれ……」
「一ノ瀬さん用に買ったんです。いつもお世話になっているから……。」
「あ、ありがとう……。」
やばい、成瀬くんからココアもらえた……
これは飲めないな……。
「……。」
「成瀬くん?」
「一ノ瀬さん……ごめ……代わ……る」
成瀬くんの足元がふらついたから自販機の隣の多目的室に入った。
成瀬くんを椅子に座らせた。
あたしは支えるために隣に立った。
「成瀬くん……大丈夫??」
さっき代わる、って言ってたけど……
「……。」
成瀬くんが顔を上げた。
「あ、成瀬くん……!」
「んん〜……((ぎゅ」
成瀬くんは突然あたしを抱きしめた。
「ちょ、成瀬くん!?」
「あと10秒……」
甘えた声……優維さんじゃない……。
「……………成瀬くん。今は誰君?」
「えっ、あわ、ごめんなしゃい!」
「あたしは大丈夫だよ?」
「今君、誰君?って聞いた?」
「?聞いたよ?」
「優哉の秘密知ってるの!?」
「多重人格ってこと?」
「そ、そう。」
「成瀬くん本人から聞いたよ。みんなが生まれた理由も。」
「それなら話は早いね、ボクは優太でし!
優ちゃんの甘えられない気持ちから生まれたの!」
あ……だからさっき抱きしめたのかな……?
「あたしは一ノ瀬凪絆です。」
「なぁちゃんか!優維からよく聞いてるよ〜。」
「優維さんから!?」
「”一ノ瀬さんはいじりがいがありそうですね”(メガネをかけ直す真似)」
「優維さんっぽい笑。ってかいじりがいがあるって何!?」
「え、知らないの?優維はドSだよ?」
「ド、ドS……!?」
「まぁボクはこーやって、ぎゅーするのが好きっ。」
優太くんと名乗る男の子はあたしに抱きついてきた。
「なぁちゃんはさ気持ち悪くないの?」
「なにが?」
「1つの体で別々の性格が居るなんてさ。その時によって違うんだよ?」
……それは考えたことなかったな。
「そんなこと考えてなかったな。あたしは成瀬くんが今まで耐えてたことを少しでも軽くしてあげたいだけ。」
「多重人格なんて疑わないの?」
「疑わないよ。成瀬くんが嘘つくわけないし。」
「いつなぁちゃんに手を出すやつが出てくるか分かんないんだよ?」
「いいよ?あたしは。」
「なぁちゃん……。すきっ!」
優太くんは強く抱きついてきた。
「優太くん……。今まで何かあったの?」
「中学までは信じてくれなかった。”お前そん時によって性格丸っきり違うよな、キモイわ”ってよく言われてた。」
……そんな酷いこと……どれだけ辛かったのかな……。
「え、なぁちゃん!?」
あたしは辛くなって優太くんを抱きしめた。
「辛かったよね……頑張ったね……」
「うっ……なぁちゃん〜……えーん……(´;ω;`)」
優太くんは泣き出してしまった。
───優太くんによると今成瀬くんの親は仕事に忙しく家に全く帰ってこないそう。
いつも1人で甘えたことなんかなくて、甘え方なんて知らなくて、誰かに抱きしめて欲しかったんだって。
「優太くん……」
優太くんは泣き疲れで寝てしまった。
時計を見るとあと5分でお昼休みが終わる。
《プルルルル……》
『もしもし?』
「あ、理花ちゃん?5限目サボるね。成瀬くんも。」
『お、くっついたか』
「違うよ!成瀬くん具合悪くなっちゃってさ。」
『何だつまんない。まぁ、とりあえず分かった。6限にまでは戻ってきてよ?』
「はーい。ありがと。」
『はーい』
理花ちゃんに伝えたから授業は大丈夫だね!
「……成瀬くんは……あたしのことどう思ってるの……?」
寝てる成瀬くんに問いかける。
返事なんて返ってくるわけない事ぐらい分かってる。
そんなの、分かってるのに……。
次の瞬間成瀬くんが話し出した。
「僕……は……」




