成瀬くんの気持ち
あれからしばらく話した結果、成瀬くんのお母さんの彼氏さんは捕まったそう。
でも、お母さんの男の人を取っかえ引っ変えするのは変わらなかったらしい。
「母さんは僕なんか好きじゃないから。
他の男の人といる時の方が楽しそう。」
そういった成瀬くんは寂しそうだった。
成瀬くんは小さい時から1人で、誰かに愛されたことがないらしい。
「昔から1人だから……今更何とも思わないや。」
「……成瀬くん」
「あ、一ノ瀬さんごめんね。話聞いてくれてありがとう。」
「辛い過去話して大丈夫……?」
「大丈夫だよ。一ノ瀬さんだから。」
「うん……」
「……………」
「成瀬くん……?」
成瀬くんはその場に座り込んでしまった。
「成瀬くん!?大丈夫!?」
「うっ……」
成瀬くんは苦しそうだった。
やばいやばいどうしよう……………
「な、成瀬くん?」
恐る恐る声をかけると、成瀬くんは胸ポケットからメガネを取り出した。
「ん?」
このシチュエーションどっかで見たような……。
「……あ、一ノ瀬さん。」
「……………やっぱり?」
「”やっぱり?”とは何ですか失礼な。」
「いや、ねぇ。うん。」
「何ですか。」
「貴方優維さんでしょ?」
「な、んで私の名前を………!?」
「成瀬くんに全部聞いたよ。多重人格なんだってね。てか何で急に?」
「……聞かなかったんですか?気持ちが高ぶったりすると代わることがあるって。」
「あ、言ってた!……て、え!?」
「何ですかいちいち騒がしいですね」
「何で高ぶるの!?」
「優哉は人見知り&コミュ障なんですよ」
「あっ、なるほど」
「あとは……」
「あとは?」
成瀬くん……と言うより今は優維さん?があたしの腕を引っ張って顔を近づけてきた。
「優哉が一ノ瀬さんを女の子として意識してる、とか」
成瀬くん……じゃなくて優維さんはニヤッと笑った。
「ちょ、優維さん何言って……」
「身体は同じ。優哉の考えることなら大体分かりますよ」
優維さんはあたしの腕を離した。
「突然ごめんなさい、そろそろ帰りますか」
「あ、の……」
なぜか呼び止めてしまった。
「どうしたんですか?」
「成瀬くんの考えてること……分かるんでしょ?」
「大体なら、ね」
「あたしのこと、うざいとか思ってないですか?迷惑とか思ってないですか?」
「ふっ……。思ってませんよ。むしろ……」
「むしろ?」
「貴方と仲良くなりたい、と思ってますよ」
「あたし、と?」
「はい。あんな優哉だけど、よろしく頼みます。」
「は、はい!」
「じゃあ今日は帰りましょうか」
この後あたしは優維さんに送ってってもらい、家に帰った。




