成瀬くん 《2》
あたしは成瀬くんとともに準備室に来た。
「あの、成瀬くん……?」
成瀬くんは胸ポケットからメガネを取り出しかけた。
「怪我はありませんでしたか?」
「え、あ、うん……」
さっきとは違う……ハキハキした言い方。
「ならいいんですけど。腕見してもらえますか?」
「え、あ、どうぞ……」
Yシャツをまくって腕を見せた。
「あの人そこまで力入れなかったんですね、痕が残らなくて良かったです。」
「あの……助けてくれてありがとう……」
「いえ……私にではなく……。」
「え?」
「怪我がなくて何よりです。じゃ私はここで。」
成瀬くんが準備室から出そうだったから思わず呼び止めてしまった。
「あのっ!」
慌てていたため声が裏返ってしまった。
「ふっ……なんでしょう?」
成瀬くんが……笑った……。
「成瀬くんって下の名前……なんていうの?」
名字しか今まで知らなかったから……これを気に仲良くなれたり……。
「優……。成瀬優哉です。」
「成瀬……優哉……くん。あたし一ノ瀬凪絆でしゅ!」
「声が裏返ったり噛んだり忙しい人ですね、一ノ瀬さんって。じゃあ私はここで。」
成瀬くんはそのまま出ていってしまった。
成瀬くん……自分のこと”私”って呼んでたっけ?
教室にいる時は”僕”って言ってたような……。
「後で確認してみるか」
時計を見るとあと15分でお昼が終わろうとしていた。
「やば、早く戻ってお昼食べなきゃ!」
あたしは慌てて教室に戻った。




