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初仕事



 転移から四日目。だだっ広い教室に四つだけ机を 置いた、寂しいともとれるとある教室。


「わお、凄い量だね、初日から十はお悩み相談来てるよ」


「まぁ、僕達には解決できそうにないものばかりだけど……慣れないし慣れたくない」


 二階のとある教室こと、お悩み解決隊(仮名称)の部室に、部員全員が集まっている。最近というか、結成してまだ三日目だが、最近は昼はここに集まって色々話している。


「私としては……男子制服も結構着心地いいんだけどねぇ。キュロットスカートとか、スカーチョ……だっけ、とかだったらよかったかもね」


「そりゃ、ズボンだからだよ……普段着ない服よりマシだろ……? と、キュロット? スカーチョ?」


 聞きなれない単語が出てきた。

 それはそうと……元ら誰かの制服だし。他人の制服着てるのも精神的なダメージが……


「簡単に言えばスカートに見えるズボンだよ」


「へぇー、って、それじゃ意味ないよ」


 このすーすーする慣れない感覚も嫌だけど、一番羞恥心が来るのは、女物の服着てるってことだし。


「一応言っておくけれど、梨央や鋼次郎は例外中の例外なのよ、私だってこんな汗臭い制服、ごめんだわ」


「そもそも、体操着は無かったの? それ着れば良いんじゃないか……」


「体操着はどっかに消えたって聞いたね」


 鋼次郎がにやにや笑いながら箱に入っていたお悩み相談の紙を一枚一枚読んでいく。こう言うの、適当にやらず確りやってる辺り、流石。


「全部制服変わった話に関しての苦情。男子だけじゃなく女子からも来てるよ」


「僕達に解決できる問題じゃないって、こんなの」


 下半身がすーすーする、と言うか、ズボンの感覚がないせいか、下着しか履かずに出歩いてる気分で寧ろ誰かに解決してほしいくらいなんだ。


「あっ、もう一枚箱に入ってたよ、紙」


 箱の中を覗いていた鋼次郎が、箱から一枚の紙を取り出す。ノートから切り取ったらしく、普通の白い紙だ。


「わりと真剣な悩み……みたいだ、見てみて」


 紙に書かれた事をじっくり読んでから、鋼次郎は机に小さな紙を置いた。小さい紙にびっしり書かれているみたいだ。


「蒼刀ゆうです。探索組のメンバーで戦闘一班に所属しています、ですが他の皆は炎だったりで倒しているなか、僕は弓矢で……それに、銃を使っている人が居るので、素人の矢じゃ完全に下位互換なんです、どうにか強くなれないでしょうか……か」


 成る程。回りが凄いから劣等感が出てきた、ってところか。確かにこの精神状態で戦っていたら危険かもしれない。この状態が加速したら……


「と言うわけで、我々お悩み解決隊の初めての仕事は、彼の悩みを解決することになりそうだね」


「あー、でもその人戦闘組だよな……今は洞窟攻略の真っ最中だし、夜か朝に話すことになりそうだね」


「自信をつけるなら、私達も戦闘に参加することになるかもねー。あと、朝は私、用事があるから相談には乗れないかもしれない」


 そういえば高木さんの能力は能力強化。

 かなり強力な能力だけれど、一日一度しか使えない。だから、朝は能力を使うから時間無いんだ。


「なら、必然的に夜に話を聞くことになるわね。帰ってきた辺りの夕方や、朝食の時って選択もあるけど……」


「夕方は疲れはてて話せるわけもないし、朝食だと他人に聞かれる可能性もあるからね、悩み相談してるの、聞かれたくないだろうし」


 じゃ、夜までなにするか、って話になる。

 ……あ、そういえば東郷さんにあの謎の部屋の塗装頼まれてたんだったか。


「ところで春君、その座り方だとパンツ丸見えだよ」


「え!? ちょ、あぁっ! ホントに!」


 悲鳴が響き渡った。

 ……恥ずかしい。


……………………

………………

…………


 時間は午後五時半。約束の時間の一時間半前。

 東郷さんに騙される形でさせられた約束をはたして……厳密にはまだ終わっていない……今僕は四班の過ごす場所になっている部屋でぜぇぜぇしている。


「やっと終わった……梯子から落ちるし、ケチつけられたしで、散々だった」


 東郷さんと江東さん曰く、冗談で書いただけで、本気でやったわけでは無いらしかったけど、途中から本気になったらしくて、さんざんコキ使われた。


 天井を見つめて、自分の腕を鼻に近づけた。

 昨日急ピッチの作業で出来上がった風呂に入ったけど、やっぱりまだベタつく。臭いは幸いしないけど。


「よくよく考えたら、そもそも風呂ができたから、今日任されたんだっけ、塗装……ん?」


 一瞬、電灯の光が薄れた様に感じた。

 気のせいだと思うけれど……電灯切れかかってる? 切れたら替えはないからなぁ、どうしようか。


「…………!」


 一気に視界が暗くなった。

 あ、これは電灯切れたかもしれない。びっくりして心臓がばくばくいってる。

 でもこれくらいで叫んだりはしない。冷静に懐中電灯をロッカーから取り出して灯りを点ける。


「あ、あれ、あれ……」


 懐中電灯の灯りは一瞬点くものの、直ぐに消える。

 スイッチが何者かによってオフにされているみたいだ。



 ………………誰、何者かって。この部屋僕だけしかいないって。


「別の懐中電灯は……」


 ロッカーにあるすべての懐中電灯を試す……全滅だ。どの懐中電灯も直ぐにオフになる。


「外の灯りは消えてないし、外に行って誰かに頼もうか」


 荷物に躓かないように慎重に、窓から光の差し込むドアの方に歩いていく。

 数秒暗闇の中を歩いて、ドアの元へと辿り着き、ドアに手をかける。後ろには、光によって影が形成されていた。


「……え?」


 後ろから、誰かに肩を叩かれた。

 強く叩かれた訳じゃなく、ひんやりとしたものが優しく触れてきた。


「だ、誰……って、そう言うことか」


 懐中電灯が完全に点かなかったんじゃない時点で気づけた。完全に懐中電灯を点かない様なことが、出来なかったんだ。

 つまり、点いてから、それによって出来た影で電源をオフにしたんだ。今、自分の肩を叩いているのは自分自身の影、そんなことができるのは……


「コウか」


 種も仕掛けもわかれば恐れる必要はない。

 わからないからこそ怖いのであって、解ってしまえばどうってことはない。


「……逆に脅かしてやるかな」


 小声で小さく呟いて、辺りを見回す。

 怯えている風を装って、窓を叩き、地面に手をつける。そうしたら、ロッカー辺りに隠れるだけ。


「…………ふっ」


 手を地面に触れさせたとき、赤い色に床を染めた。

 自由に元の色に戻すこともできるし、後片付けは余裕。それに散々塗装したお陰で精度も上がった。血にしか見えまい。


「普段のお返しだ」


 窓も血色に染めて、影によってこっちの動向を知るのは不可能になっている。


 ……足音が聞こえてくる。

 ロッカーの窓から、ドアが勢いよく開かれるのが見えた。


「……ハル……さん……?」


 …………あれ?


「……おい、コウ」


 …………今井さんと大塚さんの声が。


「お、驚きすぎてじ、自殺とか、しちまったのか……?」


 遅れて、コウの声も聞こえてくる。

 あ、これは怒られそうな気がしてきた。本気で死んだと思われてる……?


「に、兄さん……! こういうとき、どうすれば……! 僕には、どうすれば……兄さん!」


 阿東までいる。

 これは……さっさと出ないと取り返しのつかないことになる。ロッカーを開けて、外に出た。


「あ、あの……」


 本日二度目の悲鳴が、学校に響いた。


……………………

………………

…………


 と、悪ふざけをしたせいで四班全員から物凄い勢いで説教をされて、もう約束の七時。慌てて集合場所に行ったけど、大遅刻であったとさ。はぁ……


「さっきの悲鳴、女の子脅かすのは程々にした方がいいよ、取り返しつかなくなるから」


 バレてた。

 鋼次郎が少し呆れたような顔で……こいつに呆れられるの、わりとダメージが大きい。


「貴方、悪戯好きなのね。私と同じで」


 ニヤニヤと笑いながら言う柏木さん。

 この人、全て解って言ってないか? 考えすぎか。


「実行力は良いと思うけど……兎も角、行こーよ、あんまり依頼人を待たせるものじゃないしさ」


 高木さんが優しい。

 しかし、その差し出した手はなんだと言うんだ、繋げとでも? 厄介な子扱い?


 それは丁重にお断りして、依頼人が待っている会議室まで移動した。


「あ、こんばんは、今日はありがとうございます」


 会議室は今の時間使われておらず、人も来ないので話すにはうってつけで、今の時間はたった一人。

 濃い青色にも見えるような黒い髪の女の子一人。この子もやっぱり元男である。


「あ、そんなに頭下げないで……解決できるとも限らないし」


 彼女はこちらの姿を視認すると椅子から立ち上がり、頭を深く下げた。彼女のポニーテールが揺れ動く。


 その姿を見て、鋼次郎が呻く。


「苦手なタイプ?」


「いや、そうじゃなくて……最近、ああやって頭下げられること無いから」


 四ヶ月の信頼が粉々になったからな。

 鋼次郎の言葉を聞いてか、蒼刀……何て読むんだろう……が頭を上げた。


「改めて、蒼刀ゆうです。えっと、僕の悩みは」


「どうにか強くなれないか……だったわよね」


 そう。とは言え、アドバイスなんて戦闘を見ないと言えないし、当てずっぽうでやるか、はたまた……兎に角、簡単なことではない。


「私の能力使えれば、簡単なんだけどね」


「能力強化……だったわね」


 能力強化。随分強力らしく、効力も一日が終わるまで持つらしい。最近はもっぱら炎使いの奴の強化が基本的らしいが。


「強くなりたい、って言ってるけど、具体的になにか、自分でもダメだ、って思うところとか……ない?」


「あ、それは……矢をつがえる速度も、狙いも……てんでダメで。機転も利きませんし、前も助けられてしまって」


 ネガティブ。印象を言えと言われたらそんな感じ。

 だから彼の言っていることが正しいかはわからないか。速度も狙いも充分かもしれないし。


 いや、それは問題じゃない……のか。

 問題なのは彼がそう思ってること。充分でも、彼が足りないと思えば足りない、悩みは解決しない。


「……でもさ、僕の能力とか塗装だよ? それよりは強いさ」


「ですけども……能力が違うんです、強さも違いますよ」


「それを言うなら、他の人とも能力が違うんだし、君がなにか劣ってるって訳でもない」


 反応は……うーん、変わらない。

 やはり、ネガティブを直そうとしたり誤魔化すより、戦闘力を上げるしかないか。


 だからって、弓道部でもないってのに、アドバイスは難しい。



「じゃ、行くしかないんじゃないかしら? 外に、修行しに、ね。どっかの誰かさんみたいに」


「どっかの誰かさんってまさか……」


 何時かの僕の事言ってるんじゃ……後、文学少女と今井さんの事。


「それはそーと、外に行くなら人の目を盗んで行く必要があるよ。それはそーと、外に行くならね」


 高木さん、何で二度……あ、まさか、そーとと外を……いやまさか。と、外に行くなら武器も要るかもしれない。


「じゃ、行こっか。洞窟にさ」


……………………

………………

…………


 七時四十分。

 校舎裏にある洞窟に再び来ている。武器は東郷さんに借りた木刀。それだけ。


 全員、緊張しながら洞窟に踏みいった。


「そう言えばゆう君。この洞窟の中ってどうなってるの?」


「洞窟の中……ですか? 薄暗くて、化け物が徘徊しています。化け物は殲滅はできないみたいで、何処からともなく涌き出てきます」


 化け物は何処からともなく湧き出てくる……ゲーム的なリスポーンなのか、はたまた虫のように湧き出てくるのか。それは別にいいか。

 兎に角、安全な場所はないらしい。懐中電灯で鋼次郎と高木さんが照らしている範囲にはまだ居ないが。


「……荷が重い、です。一人で入ったのは初めてですし」


「それは僕への戦力外通知?」


「ち、違います!」


 慌てて否定する彼女。

 まぁ木刀じゃ、太刀打ちできないかもしれないけどさ。しかし、みなきさんも居ない今、死ぬ可能性はあるのか。


 木刀を握りしめる。心臓の鼓動が鬱陶しい。


「来たよ」


 高木さんの声に視線を動かすと、居たのはいつぞやの一つ目。前回は逃げるだけだったが、今回は……何て思っていると、矢が突き刺さって倒れた。


「あ、あんなに苦戦した一つ目が一撃……」


「一つ目はこの洞窟で一番弱い怪物です。身体能力は兎も角、攻撃は触手で、あの大きな口を使うときも触手で捕まえてからしか、という習性がありまして」


 触手に注意を払えば問題ない、と言うことか。

 確かにあの触手遅かった様な気もしてきた。


「正直、十分強い気しかしないんだけど」


「いえ。一匹だけでしたし……」


 蒼刀と話していると、鋼次郎と柏木さんも、何かを話しているのが見えた。声は聞こえないけど。


「もしかして、だけど、乱戦とかが苦手なんじゃ無い?」

 

「乱戦……確かに苦手ですけど……」


 鋼次郎が蒼刀に話しかけた。

 あ、そうか。弓という武器の性質上、二匹以上を相手取るのは難しいはず。射った後、矢をつがえて狙いをつける必要があるから。


「なら、もう少し奥に行って、乱戦をしてみましょう」


「いや、先に行く必要は無いみたいだよ」


 柏木さんの一言に、高木さんの懐中電灯の光によって、前方の道と、無数の獣のシルエットが写し出された。


「牙なしです! 臭覚が鋭くて機転も利く強敵です。噛み付きは厚い布で回避できますけど……」


 飛びかかってきた犬みたいな生物。

 牙なしが蒼刀の矢によって落ちる。


「体当たりや引っ掻きは危険です、気を付けて」


「悪いけどハル、頼んだよ!」


 鋼次郎の声が洞窟内に響き渡った。

 あの怪物以上に強いとか、倒せる気がしないけと……その点は蒼刀に任せるか。


 木刀を構えて……カウンター狙いが良いか、それとも突撃か……考えろ。牙なしの動きは早かった、けど直線的な動き、カウンターは不可能じゃない……


「っ……!」


 牙なしが飛びかかってくる。

 木刀をがむしゃらに振り回し、確かな手応えと同時に、吹き飛ぶ牙なしが見えた。


「駄目だ、冷静に切り返せる程……」


 戦い慣れしていれば、攻撃を受けたときにも冷静に対処できるだろうけど、一瞬だけ恐怖で身がすくむ。これでは長く持たない。


 蒼刀も、本人の申告通りと言うべきか、乱戦は苦手らしくあまり攻撃できていない。


「と……!」


 今度は二体、牙なしが地面を蹴り、飛び、近づいてくる。二体の同時攻撃をしゃがんで回避して距離を取る。


「いきます!」


 二体の内の片方が飛来した矢によって絶命した。

 木刀の一撃では吹き飛ばすだけだが……矢なら止めをさせるか。


「ゆう君! ダウンしてるのに止めを!」


「解りました!」


 鋼次郎の指示で蒼刀がさっきカウンターで吹き飛ばしてダウンしている牙なしに弓を射る。


「ハル君は、突撃して兎に角吹き飛ばして、その後、ダウンしてるのに近づかないように、ゆう君もさっきと同様にダウンしているのを!」


 鋼次郎の声。

 信じるべきか、信じないべきか……あぁ、もう、やるっきゃない。今でこそ様子見しているらしい牙なしだが、何時一斉にこられるか。


 足を動かして、さっき飛びかかってきた片割れを木刀でダウンさせる、と同時に後ろに飛ぶ。


「行きます!」


 再び矢。

 牙なしが死ぬのが見える。と、少し怖いが牙なしの群れに突っ込む。


「残り五匹、気を付けなさいよ!」


 柏木さんの声を背に、一匹切りつけて――別に刃が鋭くなく、毛皮を通らないから殴ってるだけとも言う――後ろに下がる。


 矢が飛び、撃破。他四体もとうとう動き出す。

 二体は地上から、二体は飛び、こちらに危害を加えようと。


「下がっても危険、突っ込んで! 地上、右を!」


 声に従って四体の方へ。

 懐中電灯が飛んできて、空中の二体を落とした……ダウンはしていないが。


 走りながら、右からこちらに向かう牙なしを木刀で殴り付ける。向かってこられると思っていなかったためか、牙なしは反応が遅かった。


「っ……し!」


 右の牙なしは吹き飛び、反応が遅かった左の牙なしの引っ掻きをなんなく回避した。懐中電灯で落とされた二体がこちらに飛びかかり、牙の無い口で食らおうとするが、木刀を横に構えてガード。


「木刀はもう使い物にならない、ごめん」


 ガードに使った木刀には牙なしが二体噛みついて……牙はないが……いるし、離そうとしないせいで重くて持てやしない。


「ダウンをやった後、無傷のを! 木刀は後回し」


 鋼次郎の叫び声と、矢が空気を切り裂き飛ぶ音が耳に伝わる。牙なしはこっちに狙いを定めたか、木刀を無くした僕に集中攻撃してくる。


「ちょ、早く射って!」


 矢が飛んでこない。矢が切れた!? そんな馬鹿な……! 能力の弓矢が切れるはず……いやもしかして…………兎に角、木刀は相も変わらず牙なしが二体居るから使えないし……


「懐中電灯!」


 さっき投げられたそれを使えば……照らせば眩しいし、あの触手怪物よりは耐久力は低そうに見える。


 木刀の方の懐中電灯は……駄目だ。今僕がそれを取りに行こうとすれば木刀を取りに行ったと見なされる。そうすれば木刀を封印している二体も襲いかかってくる。


「なら、左の懐中電灯を……」


 木刀の方ではなくて、木刀から遠い方の懐中電灯を取りに走る。背中の足音が恐怖心を煽るけど、それで足を止めるわけにもいかない。


「よし……!」


 懐中電灯を拾うとそのまま少し逃げる。

 懐中電灯ではリーチも短く、威力も低い、ダウンは狙えない……一旦光を消して……


「ふ、ふははは!」


 懐中電灯をうすーく塗装して、電源を付ける。

 懐中電灯の光は、本来の白色から、青色へと変化している、塗装で色を塗ったから、それが色塗ったセロハンテープみたいな役割を果たしている。


 そして、見慣れぬもののから発される光がいきなり変わり、高笑いし始めたら誰だって警戒するものである。


「え? あっ、そっか」


 蒼刀の呟き声が聞こえた。本気で狂ったと思われた気がするが、多分意図を理解してくれるはず。

 声から一秒くらいたった後、牙なしの頭部に矢が突き刺さった。


 作戦勝ち。木刀に無い牙で噛みついてる牙なしは止まっているからただの的。数秒もしない間に戦闘は終わった。


「終わりましたね……何時もより疲れましたけど、何時もより上手く戦えた気がします!」


 弓が粒子に変わり消えて行き、蒼刀が一息つく。

 彼はこちらに向き直り、目を煌めかせて話始めた。


「何でなんでしょうか……?」


「単純に、貴方は数体の敵を相手にする時、少し何を狙うか考える節があるの。だからその間に味方が敵を倒すからよ」


 柏木さんが腕を組んで話始める。

 確かに、最初、遭遇したとき、先手を打とうとすればできたのにそれをしなかった。それのこと?


「それにさ、君は誤射を恐れてしまう傾向にあるみたいだ。今回はハル君が敵から距離を取ったから、最後の敵以外、問題はなかったけど」


 続いて、鋼次郎。

 確かに最後、僕が追い回されてるときは矢が飛んでこなかった。確かに……ふむふむ。


「それで、今回は射つものを指示されたから普通に戦えたし、誤射の心配もせず、ポテンシャルを発揮できた、ってところ?」


 最後は高木さん。

 僕が塗装した方じゃない、木刀の脇にあった懐中電灯を拾って、蒼刀にパチリ、とウィンクを。


「様は、別に弱いって訳じゃなくて、戦い方の問題だった、ってわけか。それなら、問題点を直していけば、なんとかなるよ」


「はい! 今日はありがとうございました! ハルさんも、お疲れ様でした。助かりました」

 

 …………そうして、本日のお悩み解決隊の仕事は終了した。報酬は皆無だし、東郷さんから借りた木刀は血塗れになるしだけど、まぁ仲の良い人物が増えたのは良かった、なんて。


 そして、帰った後、居なくなったことに気付いた四版の面子にこってり絞られたのでした、と。








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