ゆうきもそこをつきました。
そろそろ名前決めてあげたいのですが
まだもう少しお付き合いくださいませ(土下座
詳しいことが知りたいのに鳴き声でしか答えられないのってとっても不便。
今までこうして会話?が成立することなんてあるとは思わなかったから、不便だなんて感じたのも初めてだよ。
でもリーフさんが言ってた言葉だけで予想すると、この土地は『聖域』という普通の人が立ち入ることは出来ない場所っていうこと。
それから、イフさんは『炎の守護精様』っていうとってもすごい人で、その『守護精様』っていうのはイフさんだけじゃなくて他にもいるっていうこと。
そして、『王様』っていうえらい人もこの土地にはいるっていうこと。
リーフさんは『王立研究院』というところの1番えらい人で、イフさんたちの守護とどこかの管理をしているらしい。
うーん。
これだけじゃまだこの世界のこと、この場所のこと、なぁんにも分かんないよ。
人間の姿になっても2、3歳ほどの子供にしかなれないし、その姿で話したことはないから、ちゃんと会話出来るのかも分からない。
それに、猫っていうのは認識されてないとしても、動物が人間の姿になれるなんてこと自体ありえないことだもん。
この世界でもそうなんじゃないかなって思うとできない。
『化け物』
あの言葉だけはもう誰の口からも聞きたくないよ。
リーフさんは私の鳴き声だけで、どこまで情報を引き出せるのか悩んでるみたい。
『はい』『いいえ』だけじゃ聞き出せる情報なんてほんの一握りだろうから私もなんとか言葉を交わしたいと思う・・・けど、やっぱり怖いものは怖い。
うんうん悩んでいると後ろから私の後ろ頭をイフさんが優しく撫でてくれた。
背中を押されたような気がして、うんと勇気が出た。
「みぁー・・・。」
か細く鳴いた私に注目した3人は首を傾げていたけれど、1度頑張ろうと決めた勇気はすぐに消えてしまいそうになるから待っていられない。
そう思って人の姿になろうとしたのに・・・。
あれ・・・?
目の前にある小さな前足はあいも変わらずテーブルの上に揃ってあるまま。
どうしてかな・・・?
せっかくの勇気もしおしおと萎れていってしまって、もう呼びかけてしまって注目されてしまってるこの空気も小さな体にのしかかる。
しゅんとしてしまった私に何か伝えたかったのかと思ったリーフさんは、じっと私の顔を覗き込んできたけど何も伝えることは出来なかった。
私がイフさんたちに害を与えるつもりがないということだけは分かってもらえたみたいだから、今はこれで満足したほうがいいんだろうな・・・。
そう思おうとした時、リーフさんはフウと一息ついた後。
「あなたがどうやってここに来たかは分かりませんが、私たちにとって危険がないのであれば何も問題はありません。イフ様。それでこの後どうなされるおつもりですか?」
最初は私に、後半はイフさんへの言葉だろうけれど、私もこの後どうなってしまうのかすごく気になってたんだよ。
リーフさんはイフさんに、これから私をどうするのかと問いかけたけど、私もそれが一番気になっていたんだよ。
ねえ。イフさん。
私のことどうするの?
一緒にいてくれるの?
それとも捨てちゃうの?
イフさんたちのように特別な人たちしかいちゃいけない場所なんだとしたら私はこの土地からも追い出されてしまうの?
不安な気持ちはぐるぐる私の小さな頭をいっぱいにしていく。
どうしてもここにいられないんだったら、せめて自分から出て行きたいよ。
今まで私を捨ててきた人間たちのような灰暗い瞳を私はこの人たちに向けられたくないって思ってる。
どうしてかな?
不思議だな。
自慢の耳もピンとしたおひげもへにゃりと下がって、今はただイフさんの言葉を待つように見上げるしか出来ない。
後ろに向きなおって見上げたイフさんの表情は、さっきと変わらず眉間に皺を寄せていた。
あ。ダメかも。
そう感じたのはただの私の勘。
捨てられちゃう前兆。
裏切られる前兆。
そういう私の感覚はとても鋭いはずだったのに・・・。
ふわり。
降ってきたのは大きな手。
撫でられたのは小さな私の頭。
「・・・ここにいろ。」
降ってきたイフさんの静かな声はとても優しかった。
「私たち以外の者がここに留まるなら王や他の守護精様たちにもお伝えしなければなりませんね。」
「そうですね。イフ様。私は城へ謁見の手続きに行ってきます。」
リーフさんの言葉を聞くと、エイルさんは立ち上がってイフさんが頷くのを確認すると出て行ってしまう。
リーフさんもエイルさんが出て行ったのを確認すると立ち上がる。
「では私も研究院に戻ります。また何かありましたらお呼びください。君も、いい子にしているのですよ?」
「みぁー。」
頭をひと撫でされた私は『うんっ。いい子にしてるよ。』と鳴いた。
お部屋に残ったのはイフさんと私。
1人と1匹はじっと見つめ合った状態だったけど、テーブルの上にお座りしたままだった私をイフさんはふわりと両手で包み込んで膝の上に乗せてくれた。
「お前はなんていう名の生き物なんだろうな。蒼の宇宙にいるティガという生き物に似てはいるが・・・模様も大きさも違うようだ。ティガではないな?」
「みぃ。」
違うよね?という確認に『うん。ちがうみたい。』と否定を込めて鳴いてみたけど、『蒼の宇宙』って、ここにはいくつ宇宙があるの?
私のいたところはみんな『地球』って言ってたけど、神様の住む世界もあるって聞いたことがある。
神様がいるところは、うんと高い雲の上って聞いたことがあるけど、この世界の聖域っていうのは1つの星っぽい。
この星全部が『聖域』で、この星にいる人みんなが神様みたいなものなのかな?
今は予想しかできないから、決め付けることはしちゃだめかな。
うんうん悩んでいるとイフさんは・・・。
「名前・・・。決めないとな?」
それっ。
その言葉待ってたのーっ。
しおしお・・・。