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たからもの、ふえたにょ。






いーやーにゃーにょーーーーっっっ!!




「ユキっ!どうしたのですか一体・・・。落ちたらどうするんですっ。」


「ユ、ユキちゃん。危ないよ。降りておいで。ね?」


「ユキ。また別のも用意してやる。降りて来い。」


「みぁっ。みぃーっっ。」




ただいま私、絶賛反抗期中です・・・じゃなくて。





王様に会った後、イフさんとエイルさんと何故かリーフさんと一緒にイフさんのお部屋に帰ってきたんだけど・・・遡ること数十分前。





***





イフさんのお部屋に戻ってきた後、イフさんはドカリと大きなソファーに体を預けると私をテーブルの上へおろした。


リーフさんもイフさんの向かいのソファーに腰をかけると、エイルさんが3人分のお茶と私用に用意してくれた深めの小さなお皿にミルクを入れて差し出してくれてリーフさんの隣りに腰掛ける。




私は喜んでふにゅふにゅ言いながらぺろりと飲み干して、やっとひと心地ついたんだ。





「謁見中、ユキちゃんとってもいい子でしたね。人懐こいですし、誰とでも仲良くできる子はなかなかいないですよ。」


「ああ、そうだな。若干懐きすぎるから知らない奴について行かなければいいんだが。」


「リュウキ殿にとても興味を持っておられた。それが面白くなかったのでしょう?イフ様。」


「・・・煩い。」





私を挟んでそんな会話をしていた時、毛づくろいをしていた私の首元にイフさんが手をかけた。





「謁見用につけていたリボンだから苦しかっただろう。すぐに取ってやる。」





そう言ったイフさんが、私の首に結んであったピンクのリボンをしゅるりと解いたんだ。






この世界に来て初めてもらったリボンっ。


そう思った瞬間、イフさんの手に渡ってしまったリボンに飛びついて、ぱくりと咥えた私はそのままパタパタと逃げてイフさんの執務机の椅子から執務机に飛び乗ると、開いていたバルコニーに続く窓から飛び出してバルコニーの手すりに飛び乗ったの。




驚いて飛び出してきたイフさんとエイルさんとリーフさんに、私はリボンを咥えたまましっぽの毛を膨らませた。




そして現在進行形でバルコニーの手すりに乗って風にヒラヒラと踊るリボンを咥えたまま、イフさん・エイルさん・リーフさんと対面している私。




べつにね、ひらひらしてるリボンにじゃれついたわけじゃないの。


初めてつけてもらったリボンを取り上げられたから、この世界に来て初めてもらった宝物だもん。




オロオロしているリーフさんとエイルさんは必死に危ないからと言うけど、イフさんは眉間の皺をひとつ増やすと溜息をついた。





「・・・そのリボン。気に入っていたのか?」


「みぅ。」





だってエイルさんが言ってたでしょう?


イフさんが私のために真っ赤な顔して選んでくれたって。


嬉しかったんだもん。


だから取り上げたりしないで・・・。





リボンを咥えたままではうまく鳴けなくて、泣きたい気持ちになるのに猫の私は涙も出ない。


それが悲しくて、取ったりしないでって伝えたいのに伝わらなくて、どうして私は話せないんだろうって苦しくなった。


さっきまでとっても嬉しい気持ちだったのに、こんなにも伝えたい言葉はたくさんあるはずなのに・・・。


耳をへにゃりと垂らしていると、ふっとイフさんが笑った気配が伝わった。





「・・・取り上げたりしない。」





優しい声が降ってきて、ぴこんと耳を立てて顔を上げると、イフさんはまた『仕方のないやつだ』という顔で笑っていた。





「そのリボン。そんなにお前が気に入ってくれるとは思わなかった。解いたが、捨てるつもりなどなかったんだが、勘違いさせてしまったか?」





イフさんはそう言うと、私の前まで歩いてきて私をひょいと両手で包み込んだ。


小さな私はイフさんの両手に包み込まれてしまったけど、イフさんはゆっくりと片手を離して、私の咥えていたリボンを手に取る。





エイルさんはほっとした顔をした後、リーフさんと顔を合わせて肩をすくめて笑ってた。


本当にどこかに持っていってしまわないか気が気じゃなくてリボンから目を離さなかった私はじーっとイフさんの腕の中でリボンの行方を見守っていたんだ。





テーブルの上にリボンを置いたイフさんはその隣りに私をおろすとベッドのあるお部屋に行ってしまった。


リーフさんとエイルさんはソファーに座り直すとテーブルの上でしっかり前足でリボンを押さえている私に苦笑いして聞かれたの。





「取られると思ったのですか?そのリボン、余程気に入ったのですね。」


「にゃぁ。」




失礼な態度を取ってしまったのから怒られちゃうかな?




イフさん呆れてどこか行っちゃった。


耳をへにゃりと垂らして前足で押さえてるリボンを見ながら俯いていたら、イフさんが戻ってきて、その手には私が丸々1匹入れるくらいの木箱を持っている。





「みぃ?」





それなぁに?と鳴いてみるとイフさんはフッと笑ってテーブルの上にいる私の前にその箱を置いてパカリと開いた。





♪~♪~♪・・・。





綺麗で優しい音がお部屋に広がって私はその箱をじーっと食い入るように見てしまった。




確かこれって、中にくるくる回る仕掛けがあって、それが音を出してる箱・・・オルゴールっていうんだっけ?


占い好きの元ご主人様が持っていたのはもっと小さくて透明で中身の透けてる物だったけど・・・。





「これはオルゴールといってな。この裏側のネジを巻くと音が鳴る箱だ。お前にやる。物を入れられるようになっているから、大切なものはこれに入れておけば安心だろう?」





チェリーピンクの瞳を見開いた私に、エイルさんとリーフさんは優しく見守っていてくれて、イフさんは『そこにリボンも入れておけ』と頭を撫でてくれた。




宝物、ふえたにょっ。







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