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理由(わけ)

作者: hive

・この物語はフィクションです。

実際の人物、公共施設、病名、薬品名、地名には何の関係もありません。


・この物語はまだ社会を知らない、ただのフィクション好きの高校生が書いたものです。

表現や、言い回しに多々間違いがあると思われますがご了承ください。


・最後にこの小説を読もうと思っていただきありがとうございます。

読んだ後に感想や意見などを寄せていただければ幸いです。

今日、3月15日。

まだ桜は一向に咲く気配を見せず、これから訪れる本格的な春の日差しが待ち遠しい気温の朝。

僕はカレンダーの日付につけた印を横目で確認しながら家を出た。

車で30分、目的の場所に着く。


「あれから20年、やっとだな・・・」


思わず独り言をつぶやきながら、車を降りる。

もうここに来ることはないだろう。

それが君との約束だから。

前に進むと決めたから・・・






4月、世間では新学期、新生活が始まる月。

僕の高校も例外ではなく、毎年この月には学年が変わり(変わらない奴も中にはいるが・・・)

新しい仲間との1年間がスタートする。


僕も今年は受験生と呼ばれる学年に上がるのだが、受験といわれても実感はわかずに

「勉強しなきゃな~」と思う程度である。

しかし成績は悪い方ではなく、頑張ればそこそこ有名な大学に入れる位の学力は有していた。


校長先生の数少ない見せ場であり、生徒に取ってみればただただ気だるいだけの始業式が終わり、新しいクラスの割り当て表が配られた。

それによると、僕は3年3組らしい。

3の3というぞろ目に、微妙な幸福感を覚えつつ教室へ向かった。


「よう!また一緒のクラスだな!」


教室に入るなりそんな第一声を発した男子生徒のほうを見る。

というか真横を見る。


「おう、お前とは縁があるな翔」


「これで3年連続で一緒のクラスだな」


能村翔とは中学以来からの親友で、1年生からずっと同じクラスだ。

「今日暇だろ?一緒に帰らねえ?」


「お前部活は?試合が近いんじゃなかったっけ?」


翔はバスケ部のエースだ、中学からバスケ一筋で、1年時にすでにレギュラーに入っていた。


「今日は顧問が休みなんだ」


「そうなんだ、別にいいよ」


帰宅途中、翔と受験の事やら新しいクラスメートの話をしながら歩いていると。

後ろからベルをけたたましく鳴らした自転車が猛スピードで突っ込んできた。


「おっす~お二人さん!新しいクラスはどう?」


キキ------ッ


「あっぶね~な北川!今ちょっとかすったぞ!」


友人を轢きかけたとは思えない明るい声で声をかけてきたのは

一昨年からよくつるむようになった僕にとっては唯一の女友達である北川雫だ。

北川は女子陸上部の部長で女子に異常な人気がある。

ただし、今までの高校生活をほぼ陸上のみに費やしていたようで、成績は非常に悪い。(本人は余り気にしていないようだが・・・)


「ところで知ってる?うちの学年に転校生がくるって話!」


「転校生?この時期に?珍しいな」


「おいお前ら、俺が轢かれかけたのは無視か!?」


「そうなんだよね、私も先生たちが話してるのを偶然聞いただけだからね~

詳しくはわかんない」


「それすら無視か!?」


「あら、翔じゃん、居たんだ」


「・・・お前っていつも思うけど酷いな」


このやり取りでわかるように俺たち3人は仲がいい。(わからない?そんな馬鹿な)


北川とは高校で知り合ったが今では古くからの友達って感じだ。


2年の時は結構3人で遊んでいた、翔はいつも北川にいじられてはいたが・・・

今年は受験もあるし、北川は別のクラスになってしまったので遊ぶ機会は少ないかもしれない。

少し寂しいけれど、仕方のないことだ。


途中の道で2人と別れて僕は家に帰った。

その次の日だった。

僕が彼女に会ったのは・・・



次の日、昨日の北川の話どおり、朝のHRで先生に連れられて転校生が僕のクラスに入ってきた。

(まさかうちのクラスだったとは)

転校生は女子だった。


彼女は担任に言われて黒板に名前を書いた。


雨宮悠生


それが彼女の名前だった。

雨宮は簡単な自己紹介を済ますと足早に指定された自分の席に向かった。

自己紹介から挨拶まで終止無表情で雨宮は席に着いた。


休み時間になると雨宮の周りは人だかりが出来ていた。


「どこの高校からきたの?」


「どうして転校することになったの?」


「どこに住んでたの?」


などなど、色々な質問が矢継ぎ早に雨宮に投げかけられていた。

しかし、そのすべてに対して雨宮は曖昧な答えだけで、結局彼らが知ったのは

前の学校の名前程度のことだった。


その日の放課後、翔達は部活なので1人で帰宅していた時、同じく帰宅途中の雨宮が前の方を歩いていた。

(せっかく同じクラスなんだし声かけとくか?)


僕は小走りで雨宮の横まで駆けて行った。


「お~い、ちょっと待って」


声をかけると、雨宮はゆっくりこちらを振り返った。


「良かったら一緒に帰らない?」


「何で?」


いきなり疑問系で返された。


「何でって・・・ほら、同じクラスだし」


「この学校は同じクラスだと一緒に帰らないといけないの?」


「いや、そうじゃないけど・・・駄目?」


「断る理由はないけど、どうして私なの?」


「それは・・・ほら、転校してきたばっかりじゃ友達もまだ少ないと思うし、それにおれ自身が雨宮と仲良くなりたいから・・・なんだけど・・・」


僕は照れくさくて最後の方を少しぼかしながら言った。


「私と?うれしいけどそれはやめておいた方がいいと思うわ・・・

この学校では友達を作るつもりもないし・・・」


雨宮は上げていた顔を下げ、静かにそう言った。


「え!?どうして?」


「それをあなたに教える必要もないわ、私はひとりで帰るから。」


かなりショックな言葉だったが、これ以上は無駄だと思った僕は


「そう・・・じゃあまた明日」


そういって雨宮と別れた。

クラスの皆と話していた時も、昼食の時も常に無表情だった彼女が初めて、ほんの少しだけど

別れ際に表情を変えた。


別れ際の雨宮の表情にぼくはどこか既視感を覚えた。


1人の帰り道で、僕は考えていた。


(もしかしたら雨宮も僕と同じかも知れない)


過去にあった出来事が頭の中を巡っていた。

その回想は家に帰っても続いていた。


(明日、雨宮に聞いてみよう)


最終的に僕はその結論に至った。

もし雨宮が僕と同じなのだとしたら、少しは力に慣れるかもしれない。


この時から僕はすでに雨宮悠生のことが気になっていたのかもしれない。


翌日、雨宮は学校を休んだ。

担任によると家の事情らしい。

引っ越してきたばかりで家の事情とは何であろうかなどと考えてしまっている自分がいたが、

とりあえず言えることとしては昨日の質問は明日に持ち越されたらしい。


しかし、翌日もその次の日も、雨宮は学校を休んだ。

久しぶりに彼女を見たのは、授業も本格的にスタートしている、1週間後のことだった。


1週間で雨宮に関する様々な噂が学校中に広がっていた。

親の仕事が危ない仕事だの、前の学校でいじめられていただの、

根も葉もない噂のおかげで、雨宮に近づこうとする人は転校当初に比べると極端に減ってしまっていた。

それでも雨宮に話しかける奴もいた。

しかし彼(彼女)らは例外なく雨宮の言葉で近寄らなくなった。

たった一言


「私に関わらない方がいいよ」


前に言っていたこの学校では友達は作らないというのはどうやら本当らしい。

その日の昼休みまでに、雨宮に近づこうとする人はいなくなっていた。


昼休み、雨宮は授業が終わるなり教室を出て行ってしまった。

1週間前に聞こうと思っていたことを聞くために、僕は雨宮の後を追い教室を出た。

もしかしたら全然的外れな考えかもしれない。


けれど、僕にはそうではない確信があった。

自分がかつて体験したような事に雨宮も直面しているんだろうという確信が。


5年前、僕は交通事故にあった。

僕だけじゃない、父親、母親、妹の家族全員で事故にあった。

中学に上がる前の春休み、家族で外食をしにいった帰りに車同士が正面衝突したのだ。

原因は向こうの車の居眠り運転・・・


その事故で生き残ったのは僕だけである。

今は親戚の家で暮らしている。

行くはずだった中学は入学前に転校することになった。

一時期は悲しみや怒りなどの負の感情に支配されていた時期もあった・・・


そんなあのときの自分に帰り道で見た雨宮の表情がどこか似ているような気がしていたのだ。

今までそこにいた自分が消えてしまった様な、自分自身を見失った様な、そんな表情が・・・




雨宮は屋上にいた。

普通、屋上といえば人気の昼食スポットのイメージがあるが、うちの学校の屋上は日当たりが悪く、あまり人気がない。

灰色で正方形のタイルが敷き詰められた薄暗い空間で雨宮は泣いていた・・・




「どうして泣いてるんだよ」


僕が声をかけると、雨宮は動揺を一瞬表情に浮かべてすぐにいつもの無表情に戻った。

しかし雨宮の目は涙で赤く腫れていた・・・


「何?」


赤く腫らした目で力強くこちらを睨みつけながら雨宮は言った。


「何じゃないだろ、何でお前は泣いてるんだ?」


「別にいいじゃない、あなたには関係ないわ」


冷たい言葉で突き放そうとする・・・か俺もやったな。


「確かに俺には関係ないけど・・でも本当は友達が欲しいんじゃねえか?

自分を理解してくれる人にそばに居て欲しいんじゃねえのか?」


俺は確信に触れてみた。


「何でそんな事わかるのよ?」


「わかるんだよ、同じような状況にあったかもしれないからな。」


「どうゆうことよ?」


「嫌なんだろ、自分が憐みの目で見られるのが。

可哀想っていうレッテルが貼られるのが嫌なんだろ」


僕は雨宮を言及するように一歩ずつ雨宮との距離を詰める。


「可哀想だからって理由で友達になったり、無理に理解してくれようとするのが辛いんだろ?」


「だから友達は作らないっていってたんだろ?」


僕と雨宮の距離はもうはたから見れば見詰め合っていると勘違いされるくらいに近づいていた。


「それが何よ!」


雨宮は叫んでいた、堪え切れなくなった涙が目の端から一筋の糸となって流れる。

それでも、雨宮の視線は僕を鋭く睨んでいた。


「私はこれでいいの、誰とも仲良くなる気はない!」


「じゃあ何でお前はここで泣いてたんだよ?」


「・・・・」


「本当は友達が欲しかったからじゃねえのか?

皆と同じように遊んだりしたかったんじゃないのかよ!」


気づけば、俺も声を荒げていた。

何がそうさせたかはわからないが、雨宮がこのまま高校生活を送るのはだめだと思った。

ここで雨宮を止めないと自分が一生後悔するような気がしたのだ。


「でも、しょうがないじゃない・・・」


しばらくして雨宮は今にも泣きそうな声で言った。


「私は・・・後1年も生きられないんだから・・・」





私は生まれた時から血管に異常があった。

血管の所々で原因不明のコブが出来てしまうという異常体質だった。

医者あまり気にする必要はない、薬で治ると私の両親に言っていたらしい

でも、私の体質は薬では治らなかった・・・


中学の時、体育の持久走の途中で私は倒れた。

原因は異常体質で出来たコブが血圧に耐え切れなくなり破裂した事で起きた貧血だった。


私は国立病院で精密検査をする事になった。

学校に休学届けを出し、1ヵ月間入院をして私の体質を詳しく調べるらしい。


入院して3週間目のある日、季節は春、友達は新しい学年に上がっている頃だろう

病室の窓から入ってくる春の木漏れ日が眩しかった

でも、病室はとても寒かった・・・


私に告げられたのは[突発性動脈瘤発生症]という病名だった・・・


遺伝子の一部が壊れ、誤った情報が体を作る組織に伝わって起こる新種の病気らしい。

世界で私しか事例がないそうだ。


しかも精密検査の結果、私は脳の血管に動脈瘤が出来てしまっていた。


医者が私に下した余命は5年・・・


その後退院して、中学に戻った。

私の現状を知らないうちはクラスの皆もいつもどうりに接してくれて病気のことも忘れることが出来た。


でも、私の病気のことを知ったクラスメートは皆、どこか一線を引いた態度に変わってしまった。


あの子は病気だから優しくしないといけない


いつしかそんな雰囲気が学校中に流れていた・・・









雨宮は僕と距離をとるように校庭を見下ろせるフェンスまで歩いていった。


「だから私は、友達を作ることが出来ないのよ。

どんなに仲良くなっても、どんなに好きでも、あと1年しか一緒に居れない!

私と仲良くなったばっかりに友達が悲しませたくない!

それに仲良くなった友達が病気のことを知った事で他人になるのはもう嫌なの!」


それが雨宮の抱えてきた葛藤だった。

それが雨宮が自分を押し殺していた理由だった。


自分のために悲しんで欲しくない。

悲しませたくない。


友達想いで、何より友達を大切に思っているからこそ、その選択肢しか思い浮かばなかったのだろう。


たとえ校舎の屋上で独りで泣くことになっても。

あと1年しかない生涯を独りぼっちで過ごすことになっても。




でも僕は言う


「お前は馬鹿か?」


その余りにも友達というものを低く評価した考えにある種の怒りを覚えながら。


「自分の事で悲しませるのが嫌だ?自分の病気を知って他人みたいに接せられるのが嫌だ?

お前はそんな理由でクラスの皆の好意を無駄にしたのか?」


雨宮の話は間違っているわけではない

でも、雨宮の行動は間違っている。


「お前はそのことを友達に言ったのか?」


「え?」


「お前は自分の事で悲しまないで、他人行儀にしないでってその友達に言ったのか?

言ってないんだろ?

じゃあ何で決め付けるんだよ、ちゃんと話せば解ってくれたかもしれないのに

何でその友達を信用してやらなかったんだよ!」


そう叫んだ時、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った・・・













こんにちはhiveです


この小説を間違えて短編で投稿してしまいました

新しく連載小説で投稿しなおしたのでそちらで続きを書いていきたいと思います。

ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

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