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ヒメゴト  作者: 渡辺律
常識はなにより大切です。
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07

多少短いですが、とりあえず今回はきゃぴきゃぴしたお話。

ちょこっとGL風味が入りますので苦手な方は回避されることをお勧めします。

とはいえ、主人公が主人公なので、そこまできゃぴきゃぴしてないけど。

 これはさすがのわたしも想像の範囲外です。









「まぁ、なんて素敵な御髪。触らせていただいても…?」

 頬を赤らめ、小首をかしげるキャロライン嬢はとてもかわいらしい。年齢が上(少なくとも外見は)な女性に言うことではないかもしれないが、ここに座っているのがわたしじゃなくて、男なら十人中十人が彼女に惚れていただろう。そのくらい魅力的な表情だった。


 きらきらとした目でこちらを見てくる相手に、Noと言える人間はどのくらいいるのだろう。

 少なくとも私には無理だ。


 だって、Noとは言えない日本人だもの!(前世では)




 了承の意を伝えるために、こくりと頷けば、途端に輝きを増す表情。これで今年、23歳になられる方とは到底見えない。












 そもそも、全く知らない他人とお茶会なんて気乗りはしなかった。たまたま公爵家なんてとこに転生しちゃったから、お嬢様と呼ばれているわたしだけど、小市民体質は前世からしっかりわたしに根付いている。


 お嬢様、なんて呼ばれるのも本当はむずかゆくて嫌なのだけど、そこは諦めて受け入れている。貴族女性に必要とされる礼儀作法なんかは身に着けておいて損はないから学んだけど、実際のところ、そんなものが必要とされる場に出るのなんて嫌だ。

 そんなわたしを知ってか、それともわたしの身体が丈夫じゃないことを慮ってか、わたしが社交場に出ることはほとんどなかった。いくつかどうしても出なければならないものには、出席はしても最低限の礼儀だけを尽くしてさっさと退席するのが当たり前。それが許されるのはうちがグランディーヤ公爵家だからだ。国でいちばんの影響力を持つ貴族。グランディーヤ一族に背くことはこの国でタブーに等しい。


 当然、そんなわたしの下にお茶会の招待状なんて来るわけがなかった。きてない、ってことはないだろうから、きっとお父様や兄様方たちのところで止められてたのだと思う。


 わたしはとことん甘やかされているのだ。

 そんなこと、わかっている。

 だから、わたしのところにまでお茶会の招待状がきたっていうことは、招待に応ずるべきだと判断したのだ。周りが何を考えているのかはわからないけれど。招待主がわたしに悪意を持っていても、わたしには精霊さんがいるし、ジョアンナをはじめとする優秀な侍女がいるから。




 相手が悪意を持っていても、毅然とやり過ごすことがわたしの使命。


 そんな風に考えていたのに、ふたを開けてみたらどうだろう。

 会ってすぐ、まずはわたしをガヴァネス侯爵家に招いたことについて謝られた。まあ、家格としてはうちの方が上だから、下手すると下位の者が上位の者を無理やり呼びつけた、と非難されてもおかしな行為ではない。わたしは別に気にしないけど。


 わたしが気にする、しない、は別として貴族としては下位の者が上位の者に頭を下げる、というのは礼儀としては正しい。そして、下位の者が自らの非を認めて腰を折ったのであれば、それを受け入れるのが上位の者のつとめだ。


「顔をお上げください。ガヴァネス侯爵家の庭は大変すばらしいと聞いております。それを堪能させていただくのに何の問題がありましょうか」

「まぁっ」


 思えば、そこからおかしかったような気がする。





 わたしの言葉に目を輝かせたキャロライン嬢は、さっそくですから、と東屋に案内してくれた。有名な庭師が手入れしているというだけあって、ガヴァネス家の庭は見事だ。

 わたしたちが席に着くのを見計らって、お茶とお菓子が運ばれてきた。楽しいお茶会のはじまりだ。



 わたしとキャロライン嬢はどこかですれ違ったことはあったかもしれないが、言葉を交わすのは初めてだ。だから最初は軽い自己紹介から始まった。

 キャロライン嬢がまずは自分について軽く述べた。一応、ジョアンナからいろいろ聞いてはいたけれど、本人から聞くのとはまた違う。ふんふん、と頷いていたら、最後に、


「わたくし、リリーナ様をお慕いいたしておりますの」


 ととても可愛らしく仰られたのだ。これを青天の霹靂といわずとしてなんという!







 くすくす、と白飛が笑う気配がする。

 精霊さんたちはみんなついてきてるはずだけど、いま、わたしのそばにいるのは白飛だけらしい。


(ちょっと、白飛、笑いごとじゃないわよ!)

(いやいや、でも面白くてね。はは。風華が楽しそうにしていた理由がやっとわかったよ。まさかこうくるとはねぇ。さすが僕のリリーナといえばいいのかな)

(いやいやいや、ちっとも面白くないからね?そんでもってわたしは白飛のものじゃないわよ)

(いずれそうなるんだから問題はないだろう?だってリリーナは結婚しないわけだし)


 堂々と言い切る白飛にうんざりする。


(結婚するか否かと、わたしが白飛のものかどうかは別問題でしょ!!)

(一緒だろ)


 わたしは白飛の相手をあきらめた。きっと精霊さんは人間じゃないから、人間社会のルールとか人間の考えなんか、理解できないんだ。そんな相手に何をいっても無駄。



「王太子殿下がリリーナ様に求愛している、というのはわたくしたちの間では有名な話ですけれども、本当ですか?それとリリーナ様はそれを拒んでいる、というのは?」

「ええ、本当です」

「ふふふ、嬉しいですわ!あんな男にリリーナ様はもったいないですもの。でもご安心くださいましね。わたくし、王太子殿下とリリーナ様の結婚をなんとしても阻止いたしますわ」

「はい?」


 ぼけっとしていると、手をがしっと握られた。目はきらきらしている、というより燃えている。


「このたび、わたくし後宮に入って王太子殿下の妃となることが決まりましたの。わたくしが妃になる以上、絶対にあの男にリリーナ様は渡したりいたしませんわ!ですからわたくしとまたお会いしてくださいますか?」


 男らしく言い切ったか、と思いきや一転、頬を染めてそんなことを言う。


「え、ええ」


 勢いにつられて頷くことしかできない。っていうか、いろいろと意味わかんないよ?

 わたしが頷いたのを見て、キャロライン嬢は嬉しそうに微笑んだあと、なぜかもじもじし始めた。ん?と思っていたら、頬を真っ赤にしたまま、「お義姉ちゃんと呼んでいただけたらもっと嬉しいですわ」とのたまってくださった。


 なんでそうなる?!


 っていうか、わたしを王太子妃にしないために自分が王太子妃になるっていうのはアリなの?
















「リリーナの自分に無頓着なところは全く変わらないな」

「あいつは自己評価が低いからな。美しいと褒められても、公爵家への追従だと思ってるくらいだし」

「だけど、その方がわたしたちには好都合というものでは?」

「そうよねぇ。リリーナをいまさら、人間にやるなんて冗談じゃないもの」

「なぁ、いつになったらあのことをリリーナに打ち明けるんだ?」

「炎樹、それはもう少し先よ。もうちょっと待たないと」

「ちぇっ」

「でもそう遠い未来のことではない」

「そうだ」

「ずっと待っていたのですから、あと少し待つくらい何の問題もないでしょう」

「そうだな」

「リリーナが王太子に嫁ぐ可能性だってほとんどなくなったわけだし、僕らの計画を実行に移すのもそう遅くはないよ」


 精霊たちは顔を合わせて、満足げにこくりと頷きあった。


年上の美人さん登場。

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