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ヒメゴト  作者: 渡辺律
常識はなにより大切です。
17/30

03

「リリーナ、何があっても離れないと約束しろ」

 黒翼の言葉に、わたしはこくりと頷いてみせた。





 就職する、というわたしの宣言はとりあえず保留されてしまった。お父様にリリーナの意思はわかったけれど、だからといってそれをほいほい許すことはできない、と言われてしまったのだ。完全に働いてはだめ、ということではなくてクリアしなくちゃならない問題があるとかで、わたしの就職問題は一時保留扱いにされてしまった。

影のボスであるお母様もお父様も考えに賛成のようで、お父様の決定に異を唱えたりはしてくれず、ふてくされたわたしは数日、屋敷にこもっていたのだった。



 わたしの不満を精霊さんたちは敏感に感じ取ってどうにかして気分転換をしてやろう、ということになったらしく、黒翼をお共に、城下町散策をすることになった。黒翼だけが顕現しているだけで、ほかの精霊さんたちも一般人には見えないようについてきてくれるらしいから、安心は安心なんだけど。というか、そうでなきゃ、城下町の散策なんてお父様たちが許してくれるわけがなかった。以前のこともあるし。


 ラルフ兄様やヒューイ兄様は渋い顔をしていたけれど、お母様にそろそろ妹離れしなさい、と怒られていた。シンシア姉さまは一緒に城下町を散策したい、と主張していたけれど、お仕事の都合でそれはできなかったみたい。お母様にお小言を頂戴しているところを目撃してしまったし。姉さまの名誉のために見なかったことにしたわたしはさすが空気の読める小市民、と自画自賛したのだった。







 実際に町に出ると、久しぶりなこともあって記憶のなかの町とはちょっと違って面白かった。

 今回は前回の反省を生かして、町娘風の服を着ているから、からまれたりすることもないはずだ。隣にいる黒翼も町人の服装ではあるけど、やっぱり美形なのは隠せてなくて、それで注目を集めちゃうのは仕方がないのだろう。黒翼はまったく視線なんて気にしていないみたいだけど。精霊と人間じゃ、感じ方だとかにも違いがあるんだろう。もっとも、黒翼の場合、気に入った人間以外、存在しないのと同じ、というのもあるのかもしれないけれど。





 わたしが、その「視線」に気が付いたのは、屋台でおいしそうな食べ物に目をつられていたときのことだった。

 おこげにあつあつの餡をかけて食べるその料理はエビやらいかやらとりあえず海の幸がどっさりのっていて、さらに緑や赤、黄色といった野菜が花を添えている、というなんともおいしそうな代物で、見ているだけでよだれが出てきそうな一品だった。


 さっそく黒翼に強請って、一皿注文してもらう。毒が入っている、という可能性は低いような気がするけれど、一応念のため、黒翼に見てもらう。こういうのをさらりとできるあたり、人間と違うなー、と思わずにはいられない。


 そうして、黒翼から無事オッケイをもらい、あつい料理をはふはふしながら食べていると、こちらをじっと見つめる視線に気づいた、というわけだ。

 わたしが気づいているくらいだから、黒翼たちが気づいていないわけでもない。今のところ、悪意や害意は感じられないから先に料理を食べてしまってからでも対処すればいいだろう。黒翼にそっと視線をやれば、黒翼も問題ないというように首を縦に振った。







「で、お兄さんはいったいわたしたちになんの御用ですか?」

 おこげ料理をしっかり堪能した後、わたしは姿を隠してついてきている風華とかに協力してもらいながら、人気ひとけのない路地裏に視線の主を誘い出すことに成功した。どうでもいいけど、なんかわたしのほうが悪役っぽい気がしないでもない。

 お兄さんは警戒しているようだ。外見はちゃらっとした美形なんだけど、どことなくぴりぴりしている感じが伝わってくる。

 ふとわたしの斜め前に姿を消してふよふよ浮いている風華に目線をやると、ぱちん、とウィンクされてしまった。


(あれ、誰だかわかる?)

(ええ、もちろんよぅ。あれは最近、メイドの間でも人気急上昇中のレオン・ノーゼウッドね。伯爵家の嫡子だし、次期騎士団長とも名高いことから、優良物件として方々のお嬢様方に狙われているわ)


 そんな情報まではいらないし、ってかどこでそんな情報を、と思っていたら、さらりと風華は爆弾を落としてくれた。

 曰く、あれ、王太子の親友らしいわよ、と。


(えー、なんて面倒な。これって、今日の忍びも王太子にばれちゃうかんじ?)

(ばれちゃう感じね)


 ふふ、なんて風華は笑っているけれど、わたしにしてみれば笑い話じゃない。王太子に今日の御忍びがばれたらまたうるさくお小言を言われるに決まっているのだ。あの人、小姑属性まで持ってるなんてどんだけなの?ロリコンでエム疑惑まであって、しかも小姑なんていくら外見がよくて肩書が素晴らしくったって、すべて台無しじゃない?

 なにやら王太子は忙しいみたいで、直に会う機会はそうないんだけど、その分、手紙がすごい。時間ないんじゃないの、とつっこみたくなる頻度で届けられる。しかもその手紙にはわたしの行動についてのコメントがあったりして、ストーカーかよ、と脱力してしまうほどだ。おまけになぜか王太子の側近だとかいうカーターが手紙を届けにきて、王太子の素晴らしいところをつらつらと述べるもんだから、わたしのライフはもうゼロよ、と言いたい。





 とりあえず、口止めしておかなきゃね、とわたしは口を開いた。


なんだか話があんまり進んでない・・・

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