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ヒメゴト  作者: 渡辺律
ありがたくもない出会いと騒動の結果。
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「うーん、困った、ねぇ?」

 と、わたしがそう言ったら、周りにいたメンバーに、「絶対困ってないだろ!!」とつっこまれました。みんなひどい。










 


 さてさて、事の始まりは、わたしが異世界転生?というやつをやらかしたことに始まる。なんでそんなものに巻き込まれてるのかなぁ、ふつうの輪廻転生で全然いいのに、と思ったりなんたりしてたんだけど、まあ前世の記憶を持って転生できるなんてことあんまりないだろうし、面白いかな、と思ってそれなりに転生ライフをエンジョイしていた。


 転生ライフは魔法あり、王子様あり、のふぁんたじーな世界でした。

 つーか、お父様がそもそも公爵ってどうよ。お母様もそうだけどお二人とも美人すぎる!目がまぶしいから直視しないで!なレベルです。まじで。

 ついでにお兄様とお姉さまもさすが美男美女の息子、娘なだけあってまぶしい。きらきらしすぎですよ。サングラスが欲しいところです。

 んで末っ子のわたしもそれなりに両親のいいところを継いだみたいで、可愛いと大評判。親のひいき目だと思ってます。鏡みたらそれなりに可愛いのレベルで、お母様やお父様たちのレベルには到底至らない。でも、そのくらいの方が、生きていくうえではたぶん、いいと思うんだよね、ってわけでわたしは自分に満足していた。




 前世はなんというか分子図鑑買っちゃった、やったね、みたいな生活を送ってたらトラックに突っ込まれ即死エンドみたいな終わり方だったと思う。あんまり気分のいいものじゃないから、そこらへんは思い出さないようにしてることもあって、あやふやだ。とりあえず、どっちかっていうと何かにのめりこむタイプの大学院生として日々を過ごしていた。

 勉強、って聞くとなんか嫌なんだけど、興味があることについて知るのは好きなので、興味があることはとことんやっちゃうぜ!という道を走ってたらいつのまにか大学院生になっていたのだ。そのうち、ヨーロッパかどこかに留学したいな、と考えていたところだったので、転生先が中世ヨーロッパにファンタジー成分をてんこもりな世界だったのはうれしい限りだ。留学みたいなものだよね。


 というわけで、わたしは転生ライフを心底エンジョイしていたのだった。











 転生先でわたしがのめりこんだのは魔法と精霊術。魔法はじぶんのなかの力を利用するのに対して、精霊術は世界にあふれている精霊にいろいろお願いする力らしい。よく違いはわからないんだけど、こんなの前世にはなかったから面白くてたまらない。だって、ほんまもののタネも仕掛けもないマジックですよ?何もないところからお花がぷわぁって咲くんですよ?分子図鑑レベルに面白いよ!

 転生したからなのかなんなのかはよくわかんないけれど、わたしはお約束のごとくチートだった。魔法はまだわたしの体が小さいこともあって、リミットはそれほど大きくないのだけれど、精霊術に関していえば、わたしの力なんて使わなくていいので、精霊さんが力を貸してくれる限りは無限に術を使える。

 わたしは公爵の末娘ということもあって、なかなか同年代の友達を作るのは難しい。だから、わたしのおともだちは精霊さんばっかりだった。魔法よりも精霊術の方が難しいなんて知ったのは、わたしが15歳の誕生日を迎える頃だった。そのころまで、わたしは精霊は誰にでも見えるし、遊べるんだと信じていたのだ。





「お前、名前は?」

「ええと、リリーナです」

「ふぅん、リリーナか。いい名前だな。またな」


 ある日、いつものように公爵邸で精霊たちと遊んでいると、これまたきらきらな人がどこからともなく現れて、名前を聞くとどこかに去って行った。

 わたしがいたのは公爵邸でも奥まった場所にある庭園で、ここに不審者が入り込むとは考えにくい。しかも、精霊さんたちはいつでも神出鬼没な上、人間の姿かたちを真似て現れることもしょっちゅうだったから、その男のひとも精霊さんのうちの誰かだと思ったのだ。精霊が人の姿になると美形だし。


 それが間違いだったと気づいたのは、精霊さんたちと一通り遊んで、疲れたし、おやつ食べたいな、と公爵邸内に戻ったときだった。


「リリーナっ」

 わたしの名前を呼んで抱き着いてきたのは、いちばん上の兄様でラルフ兄様だ。金髪碧眼というまさに王子様そのもの。まぶしすぎて相変わらず直視できない。こんだけきれいならさぞ女装も似合いそうだ。


「にいさま、なんでうちにいるの?」

 わたしとしては至極まともな質問をしたつもりだったのだけれど、ラルフ兄様にしてみたらそうではなかったらしい。

 がーん、という効果音が相応しい形相になっている。

「リリーナは僕がいてもうれしくないの?」

 今にも、世界に絶望したといわんばかりの顔になっているけど、やっぱり美形だから写真集なんかにしたらファンには売れそうだった。


「いや、嬉しいけど。でも、兄様の仕事の邪魔をしてはダメでしょ」


 兄様の百面相を見るのも面白いけれど、楽しんでいたら話が進まないのも事実。兄様はわたしの八つ上だけど、転生前の年齢も足せばわたしの方が年上。だからわたしが譲歩してあげるのが内緒のお約束、というやつだ。


「リリーナ、よく聞いてくれ」


 美形な真剣な顔をすると、一気に昼ドラな匂いがするなぁ、とわたしはそんなことを内心では思いながらも、小首をかしげてみせた。


「うっ、可愛い、可愛いよ、リリーナ。ってそうじゃなくて、いや、可愛いんだけど、リリーナ、あのね、今日誰かに会わなかった?」

「お母様とお父様と、兄様姉さまたちに、あとメイドのジョアンナとか、精霊さんたちとかに会ったよ?」

 とりあえず、今日会ったメンバーを思い出しながら口に出すと、ラルフ兄様はいや、そうじゃなくてね、と肩を落とした。


「ラルフ、あなたの聞き方が悪いのよ、今のは」

 そう言って、わたしとラルフ兄様がいる室内に入ってきたのはお母様。銀色の髪にアメジストの瞳というなんとも神秘的な美貌を持つ母がわたしは大好きだ。わたしは母のもとにぱたぱたと駆け寄った。





 チート、なのはよかったのだけれど、落とし穴というかなんというか、わたしはたいそう体の成長が遅かった。なんでも体のなかにある魔法力が大きすぎるせいで、なかなか成長できないらしい。だからわたしは15歳の誕生日を迎えてもまだ10歳くらいの体しか持っていない。残念だけど、まあ仕方がない。わたしが公爵邸からほぼ外に出たことがないのも、これが理由だった。


 お母様になでなでしてもらっていると、お父様も室内に入ってきた。お父様は金髪に緑と青の中間のような瞳をしている。そのうち、髪の毛が真っ白になったら素敵ダンディーになること間違いなし、だ。


「どうやら、ラルフ、間違いはないようだよ。先ほど、王からも内申があった」


 お父様に抱き上げられて、喜んでいると、お父様と兄様はなんだか浮かない顔をしている。

「お父様どうか、なさいました?」

「リリーナ、今日、誰かにその名前を名乗ったかい?」

「ええと、はい。精霊さんたちと遊んでいたら名前は、と聞かれたのでリリーナと答えたのですが、いけなかったのですか?」

「あちゃー」


 わたしの解答にお兄様がへたりこんだ。あれ、なにかいけなかったのだろうか。公爵邸内に入れるくらいだし、精霊さんかもしれないし、いいかなぁと思ったんだけど。


「それね、王太子だから」

「はい?」

「そっかぁ、リリーナは社交界出てないからそりゃ知らないよなぁ。リリーナが今日ね、名前を教えた相手はこの国の王太子。次の王様だよ」


 兄様の言葉を聞いても、ふぅんとしか言いようがない。さすがファンタジーな世界だけあっても王太子も美形なんだな、と感心するくらいだ。


 あたしの関心のなさがわかったのか、兄様が再びへこたれていた。どうでもいいけど、兄様へこたれすぎだと思う。こんなにすぐへこむ人が要職に就いていてもいいのだろうかと若干不安になる。でもメイドのジョアンナとかの話によれば、仕事している兄様は別人らしいから、心配はいらないのかもしれない。


「リリーナ、王族に名前を聞かれる意味がわかるかい?」


 兄様に代わってお父様に質問された。名前を聞かれるってそれは一般的には仲良くなりたいとかそういうのだよね。


「おともだちになりましょう、とかそういうのではないんですか?」


 あたしの言葉にみんなそろって肩を落としていた。いつの間にか室内にいた家令のスチュアートまでもがやれやれ、という顔をしている。あれ、あたし、そんなに変なこと言ってないよね?


「リリーナ、王族から名前を聞かれるというのは、求婚のしるしなのよ」

「求婚、ですか。はぁ。それは、お母様、もちろん、あれですよねぇ?お庭に埋めたりするやつじゃありませんよね?」

「そうね」

「うーん、困った、ねぇ?」

 と、わたしがそう言ったら、周りにいたメンバーに、「絶対困ってないだろ!!」とつっこまれました。みんなひどい。


 というわけで、冒頭のセリフに戻るわけだ。

 ここで、公爵邸内にまでついてきていた精霊たちががやがやし始めた。先ほどまでは大人しく傍観していたみたいだけど、王太子に求婚された、というのがひっかかったらしい。


「絶対ゆるさーん!リリーナは俺らのものだ!人間なんぞにやるかっ」

「お前らのものというとこは間違っているが、人間なんぞにやれないというのは賛成だな」

「そうよねぇ。リリーナが人間の世界でうまく生きていけるわけないものねぇ」


 最後のひとことは余計だ!と言いたいが、精霊たちはどーだこーだと勝手に話し合っている。こうなっては止めるのも一苦労なので、放っておくのがいちばんだ。


「で、リリーナ。ことの重大さは理解したかしら?」

「ええと、一応。それってお断りすることはできないんですか?ほら、デビュタントもまだだし」


 そう、本来であれば12、3歳くらいでデビュタントに臨むのが一般的なのだが、あたしは成長が遅くいまだ10歳程度の体しか持たない。とてもデビュタントについていけるほどの体力はないので、15歳になってもあたしは社交界というものに出たことがなかった。


「王太子から名前を聞かれたってことが公にならなければまだお断りすることもできたんだろうけど。あいにくすでに王に知られているようでね。家柄や年齢、教養などからお前は王太子の嫁にはぴったりなんだよ」


急に書きたくなった異世界転生もの。王道てんこもりで頑張ろうと思います。

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