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折りたたみ式フラグっ!?  作者:
第一章、双子の魔法少女
8/21

翼の翼博士による実験(魔法少女の生態……)

はい、お待たせしました♪

 重たいスーパーの袋を右手に二つ持ち、帰り道を歩く。

 カレーってこんなに材料必要だったかなぁ。なんだか妙にスーパーの袋が重たい。よく見ると大根やらレタスやらカレーに必要のないものまで買ってあるし。きっと勢いで買ってしまったのだろう。まあ、必要のない物じゃないからいいけど。

 手が痛いなぁ。スーパーの袋を右手から左手に持ち変える。待てよ。もしかしたら僕なんかより魔法少女の方が、力があるんじゃないのか? 魔法とか使うぐらいだから筋肉があってもおかしくない。むしろ、魔法少女が本気を出せば、服が破けて筋骨隆々になるかもしれない。そうだとしたら、こんな重たい荷物持たなくて済むじゃないか。

 僕の左を歩いていたアイシャで実験してみることにした。


「アイシャ、これ持ってみて」


「いいよー」


 アイシャにカレーの材料が入ったスーパーの袋を一つ渡して、身軽になった僕は、さっきよりも早いペースで帰宅路をたどる。しかし、なぜだかアイシャは袋を受け取ると両手で持ったままその場から動かなくなってしまった。


「なにやってんだよ? 先に帰っちゃうぞ?」


「見てわからない? 重たくて動けないの!」


 またまた、アイシャみたいな魔法少女に限ってそんな非力で非弱なわけがないじゃないか。

 翼博士は自分が楽をしたいがために、すぐ近くにあった自動販売機で缶ジュースを一本買ってアイシャのもとに戻る。


「ほら、アイシャこれあげるよ」


 一旦、アイシャからスーパーの袋を受け取って、変わりにさっき自動販売機で買った缶ジュースを渡し

た。


「ジュースくれるの? ありがとー」


 アイシャはなんの疑いもなく、僕から缶ジュースを受け取って開けようとする。

 よし、ここだ。もし、これで開けられなかったらもう諦めて僕が二つ持って帰ろう。しかし、もし開けられたら、アイシャに一つ渡して。もし、缶ジュースを握り潰したら両方とも渡して帰ろう。

 僕の期待の中、アイシャは力を込めてプルタブに指をかけた。


「うーん、駄目だ」


「まさかね」


「あけてー」


 アイシャは指にプルタブの跡をつくって、笑顔で僕に渡してきた。

 ちっ、だめだったか、研究失敗だな。それにしても、こんな性格していて缶のひとつも開けられないなんて。


「お前かわいい所あるんだな」


「えっ、なに急にっ」


 しかたなく、そのままスーパーの袋を二つ持って再び家に向かって歩き出す。


「え、なに! あけてくれないの!」


 後ろの方からアイシャの叫び声が聞こえてきたが、いち早くこの重たい荷物を家に届けたかったので無視をしてそのまま帰った。



「「ただいまー」」


「……おかえり」


 家に着くと玄関でテディコがお出向かいしてくれた。

 僕はいち早く玄関に荷物を置いて、溜息を吐く。アイシャはというと開けてくれなかったのが不満だったのか、缶ジュースを片手にいじけていた。


「……それじゃあリビングで休んでいて」


 テディコはそう言うと、僕が置いたスーパーの袋を軽々と持ち上げてキッチンに向かって行った。


「…………」


 人は見た目によらないということか。今度からはテディコを買い物に連れていこうと、心に決意してリビングへと向かった。


「はぁ、疲れたぁ」


 深くソファに座ってテレビを点ける。

 アイシャは少し遅れてからリビングにやってきて、いまだに缶ジュースを持って落ち込んでいた。


「ほら、アイシャこっちにおいで、開けてやるから」


 べつに意地悪をして開けたあげないわけじゃなくて、たださっきは荷物が多くていち早く帰りたかったから開けてあげなかったのだ。

 アイシャはにっこりと笑って僕の膝上に乗ってきた。


「なんでそこなんだよ……」


「いいじゃない」


 ずいぶんと機嫌の直ることが早いこと。アイシャから缶ジュースを受けとって開けて上げる。


「ほら」


「ありがと」


 アイシャは膝の上に乗ったままジュースを一気に飲み干す。勘違いというか忘れてはいけないが、アイシャもテディコも結構身長とかあるからな。


「さあ。もう下りろよ」


「えー、もうちょっとだけー」


「下りた、下りた」


 アイシャは不満げに文句を言いつつ、僕の膝から下りて、しばらくすると、テディコ特製カレーが食卓に並べられた。


「おおー、おいしそうだなー」


「カレーだ、カレー」


「……おかわりあるから、いっぱい食べて」


「それじゃあ、いただきまーす」


 目の前に置かれたカレーをスプーンで一杯すくい口の中へと運んでいく。

 うん、おしいし、このスパイシーさとコクの深さ、カップラーメンやインスタントカレーじゃ味わえない味だ。

 アイシャもおいしいのか、かなりの勢いでがっついている。


「テディコ、料理うまいなー」


「……ありがと」


 こんもりと盛られたご飯もすぐに食べ終わってしまい、へこんでいたお腹もあっというまに膨らんだ。


「あぁ、食べた、食べた」


「うん、おいしかったねぇー」


「お前は食い過ぎだよ」


 アイシャはなんだかんだで、カレーを三杯もおかわりをしていた。よくそんな細い体に入るもんだ。

 食べ終わった食器を持って、キッチンに後片付けにいく。途中テディコが「手伝う」と言ってきたが、作ってもらって後片付けをさせるのは悪いので、今は黙って仲良くソファに座らせてくつろいでいる。


「テディコ、食器洗う洗剤ってどこにあるの?」


「……そこ」


 おお、あったあった。もう随分と食器など洗っていなかったからどこにあるのかも忘れていた。いや、勘違いするなよ? 洗わなかったんじゃなくて、洗う物がなかったんだ。ほとんど毎日、買ってきた物か進一の家で御馳走になっていたからだからな。

 馴れない手つきでスポンジに洗剤をつけて、食器を洗う。


「あぅ……っ」


 パリーン。

 あーあ、やっちゃった。さっきまで綺麗だったお皿も床に落ちてバラバラにくだけている。


「……やっぱり手伝う」


「悪りぃな」


 いつのまにかキッチンへとやってきたテディコは、エプロンを着けて流し台の前に立つ。

 やっぱりこういうのは、馴れている人に任せたほうがいいな。

 玄関からチリトリとほうきを持ってきて、落としたお皿の破片を集める。たしか、前に進一がやってたけど、こういうのは一回新聞紙にくるんで捨てなきゃいけないんだよな。

 その辺にあった新聞紙を取って、破片をくるんでゴミ箱の中にいれる。


「……あとはテディコに任せて」


 うん、まあそんなことを言われたらしょうがない。それに、もう食器を割るわけにはいかないしね。

 洗剤で泡だらけになった手を洗い流してリビングに戻る。


「なんか、割れた音がしたけど大丈夫―?」


「ああ、大丈夫だよ」


 ところで、なんでコイツは食べるだけ食べて何もしてないんだよ。もうすでにごろごろしていつもの状態じゃねえか。

 僕は濡れた手を握りしめ――濡れたて?

 翼博士の実験その二。

 一応、アイシャは炎を使う魔法少女だ。だから少なくとも水には弱いはず。そこで、目の前でくつろいでいるアイシャに濡れた手で触れると弱るのか?

 僕は手を後ろに隠してアイシャの目の前まで近づく。そして目の前まで行くとバレないようにごく普通のトーンで話しかけた。


「なあ、アイシャ? ちょっと手を貸してくれないか?」


「なんでよ?」


「なんでも」


「やだ」


 ちっ、なんでこういう時だけ警戒心が高いんだよ。こいつ普段は床でごろごろしているからパンツ丸見えのくせによ。

 アイシャは、不可解そうな顔をして僕の顔を見つめてくる。


「おねがい、一度だけ貸して、五秒でいいから」


「なんでよー、何が狙いか言ったらいいよ」


 理由を言ったら絶対に断るに決まっているじゃねえか。


「あれだよ、あれ」


「あれ、じゃわからないわよ」


「だからあれだって、アイシャの手が無性に握りたいからだよ」


「え……ちょっと急になによ……」


 ちょっと苦しい理由だったかな。てか、僕はなにこんなどうしようもない実験に必死なんだ。まあ、いいここまできたら後には引けない。


「で、いい?」


「うん……まあ……」


 アイシャはなぜだかしっかりと姿勢を直して立っている僕の前に左手を差し伸べてきた。

 よし、これで実験ができるぞ。でも、まさかこんな抵抗をされると思わなくって多少、手の水が乾いちゃった。けど、まだ濡れているから大丈夫か。

 後ろに隠していた手でアイシャの小さな手を握る。

 どうだ?

 アイシャに変化がないかしばらくそのまま様子を窺う。


「……っ」


 変化あり! みるみるアイシャの顔が赤くなっている。これは水に弱いということなのかっ!


「実験成功じゃ」


 握っていた手を捨てて、心の中でガッツポーズをとる。よし、これで何かアイシャで困った時は水をかければいいんだな。いや、でもどれほどの効果があるか見て見なきゃ。

 俯いているアイシャの顔を覗き込もうとする。が、アイシャがなにか小さな声でぶつぶつと喋っていることに気づき耳を傾けてみる。


「……実験が……なんだって?」


 実験がなんですって? と言っているみたいだ。

 もう、実験は終わっているから、内容を話してもいいか。

 一向に俯いているアイシャを目の前に、実験の内容をばらす。


「つまり、私の弱点が知りたくてとった行動なの?」


「うん」


 素直に頷く。


「この、ば――――――――かっ!」


「んぐっ……」


 アイシャから僕の腹に正義の鉄拳がくだった。


「そんなちっぽけな水、弱いわけがないでしょう! そもそも水関係ないし、水が関係してくるのは魔法だけだし!」


「ぐはっ……」


 再びアイシャの怒りの鉄拳がくだる。

 やばい、食べてすぐだからお腹がえらいことに……。これ以上はキツイ。

 もう一発殴ろうと構えていた、アイシャの手を握って止めさせる。


「でも、ひとついいことがわかった」


「なによ?」


 むすっと膨れているアイシャを見つめていう。


「お前は、手が温かい。だから今みたいに水を使ったあとは握りたい手だ」


「…………」


 そう言って殴られないためにアイシャの手を握りしめる。

 あれ? やっぱり水効いてるんじゃねぇの? なんか、また顔が赤くなってるし。うん?待てよ、アイシャの手が温かいということはテディコの手は?

 慌ててテディコの姿さがす。

テディコはすでに後片付けを終わらせたらしく、エプロンを脱いで床に座りくつろいでいた。

 僕はすかさず、アイシャの手などほっといてテディコのところに駆け寄る。


「なあテディコ、手貸してくれないか?」


「……なにか困ってるの?」


「あ、いや、そうじゃなくて、テディコの手を握りたいから」


「……いいよ」


 そう言って座ったままテディコは僕の前に手を出してくれる。ほんと、どっかの魔法少女とは違って疑いも持たないいい子だよ。

 テディコが出してくれた手を恐る恐る握る。


「……なんだ、テディコは普通か」


 思ったほかに、テディコの手は冷たいわけでもなく特別温かいわけでもなかった。


「ありがと」


「……うん」


協力してくれたテディコにお礼を言って、翼博士の実験に区切りがついたところでソファに座りにいく。

はい、今回は翼による魔法少女を使った実験の話でした。

あれ? なんだか悪魔の方向がなくなってね?

なに、日常生活書いているんだ? 作者しっかり。と思いますけれども、この次話はしっかりとストーリーが進むのでお待ちください。

そして、なによりも今日、お気に入りに入れてくれた方がまた一人できました。

ありがとうございます! なによりの支えです。

えー、ちょっと欲張りな話になってしまいますが、読んでくださった方々。どうか少しでも時間があれば感想などください。

一言でも構いません。感想があればもっと成長ができると思うので。

てな、わけでここまでお付き合いありがとうございました。

次話は明日か明後日に更新するので、気長にお待ちください。

神山 まやみかからでした。

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