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折りたたみ式フラグっ!?  作者:
第一章、双子の魔法少女
7/21

テディコとアイシャと日常

お待たせしました♪

それではお楽しみください。


「……ふわぁ……」


 寝ぼけ眼をこすり、ベッドから体を起こして携帯電話で時間を確認する。小さな液晶画面には午前七時と表示されていた。

 うん、いつも通りか……。よし、じゃあ起きるとしよう。

 まだ重たい足をしっかりとあげてベッドから一歩踏み出す。

 あれ? なんか妙に体が重たい気がする。それにすごくこめかみもズキズキ痛む。どうしてだ?

 なんとか重たい体を動かしてもう一歩前へ進もうとする、ところをどこからか現れたテディコに止められた。


「……無理しちゃだめ、汗すごい」


 あれ、ほんとだ。なんでこんなに汗かいているんだろう。

 テディコに言われたとおり額には汗が滲んでいた。それどころか背中や足、体中全体がしめっぽい。


「あれ、テディコ目の下にクマができてるよ?」


「……うん、翼のこと見てたから」


 ああ、そうか。それで僕のそばに一日中いて見ていてくれたからクマが、


「ってテディコ、なんでそんなことを!」


「……心配だったから」


 テディコは目の下を少し黒くクマをつくって答える。


「なにしてんだよ、まったく。あっ」


 急いでテディコをベッドへ寝かせようと肩を掴んもうとしたが、足がぶれて後ろへ倒れて自分が寝てしまった。


「あれ? おかしいな」


 どうもやっぱり朝起きてから力がはいらない。こんなこと今まで特になかったのに、急にどうして。

 そんなことを考えている内にテディコの顔が僕に近づいており、唇と唇が触れる五センチ手前あたりまできていた。


「ちょっ、まっ!」


 テディコにがっちりと顔を押さえられて逃げることは不可能。あぁ、もう駄目だ。弱っているところを突かれて僕のサードキスも奪われてしまうんだ、と諦め目を瞑り覚悟を決める。

 あれ? いつまで経っても唇にはなんの感触も襲ってくる気配はない。変だなと思いゆっくりと目をあけるとすぐ目の前で僕の額と、自分の額を合わせたテディコがいた。


「……すごい熱」


 そう言ってテディコは僕から離れていく。

 な、なんとか助かったみたいだ。ベッドに乗ったまま安堵のため息を吐く。ってこんなことしている場合じゃなかった。早く学校の準備をしなきゃ。

 体を起こして窓に掛けてある制服に背を伸ばそうとする。


「あっ――」


 立とうと思ったがうまく立てなく、足をひねってベッドの前で倒れてしまった。


「……だから無理しちゃだめ。熱がある」


「お、おう」


 駆け寄ってきたテディコの肩を借りて立ち直す。


「ちょっと待ってて、お姉ちゃん呼んでくる」


 テディコは僕を再度ベッドに座らせると駆け足で一階へと降りたしまった。

 アイツっていつもどこで寝ているのだろうと思っていたけど一階で寝ていたんだ。あ、ヤバい。なんか本格的に頭が痛くなってきた。でも、学校の準備をしなきゃ。

 ベッドの後頭部に置いてある携帯電話を開いて時間を確認する。

 七時二十分。

 やばいな。こんなにも僕はテディコと話していたのか。これじゃあ遅刻だ。

 無理しちゃ駄目っと言われていたが、手すりや本棚に捕まりなんとか制服に手を掛ける。


「つばさー、なんか具合悪いんだって――ってなにやってんのよ!」


「いたっ!」


 パジャマから制服のズボンに着替えているところをアイシャに殴られてしまった。

 あっ、やばい。今のかなり効いた。頭の中で結婚式の教会の音が響いているもん。

 制服のズボンを中途半端に穿いたまま地面に倒れる。


「……お姉ちゃん、病人」


「ああ、そうだった! ごめん、ごめん」


 すまなそうな顔をして僕の方に近寄ってくるアイシャ。その顔を徐々に近くなり、唇と唇が触れる五センチ手前――


「って! なにやってんだよ!」


「動かないの!」


「いたっ!」


 アイシャに頭を叩かれ言われたとおりにピクとも動かなくなってしまう。いつもなら、反抗するとこなんだが、今は従わないと頭を叩かれ殺されてしまう。

目を閉じて決意を決める。くそ……せっかくさっきサードキスは守りきったと思ったのに。


「…………」


 だが、いくら待っても唇と唇が触れる様な感触は一切感じない。不思議に思いゆっくり目を開けて見ると、アイシャもテディコと同じように僕の額に自分の額を当てていた。


「よし! 熱は三十九度ってところ。変わった熱は感じない。普通の風邪ね」


 わかったかのようにそう告げると僕から離れて行く。

 なんで額をくっつけただけで僕の体温がわかるんだよ。てか、僕は今そんなに熱があるのか?

 床にぶっ倒れたまま、残り少ない体力を使ってアイシャの訊いてみる。


「お前、そんなことができるのか?」


 アイシャは僕に近づき見下す様に座りこむと冷め息を吐いた。


「いったい私を誰だと思ってんの? 炎を操る魔法少女よ? 熱っていう熱は温度から種類から成分までわかっちゃうんだから」


「……すごいな」


「でしょー? だからちゃんと寝て体を冷やすことっ」


 彼女は、無い胸を張って堂々と告げる。そして、僕を抱えてベッドへと運んでくれた。


「……悪いな。けど学校へ行かないと」


 せっかくアイシャがベッドまで運んでくれたが、僕には皆勤賞がかかっているので休むわけはいかない。

 ベッドの手すりを使って体を持ち上げる。


「いいかげんにしなさい、ぶつわよ?」


「いたっ!」


 ベッドから立ちあがった瞬間アイシャに殴られてしまった。今日僕はなんどこのベッドから立とうとして、なんどアイシャに殴られたことだろうか? あ、やばい。今の一撃で体力が残りわずかしかなくなってしまったようだ。


「……おまえ……それ殴る前にいうセリフじゃ……」


「なに? まだ文句でも?」


「……いえ」


 アイシャの奴、目が楽しんでいる。もしかしたらコイツが悪魔なんじゃないか。

 それにしても、どうしたものか。学校へ行こうとすると殴られるし、よく考えれば僕の家に冷えピタや、薬などいった物が置いてない。それは需要がなかったからだ。そのおかげで今の今まで学校休まずにこれたんだけどな。

 布団に潜りながらなにか役にたつ物はないかと周りを見渡す。元気なアイシャにクマをつくったテディコ、そして机やらパソコンやらいろいろ。

 あれ? クマをつくったテディコって使えないか?


「テディコ、ちょっとこっちにきてくれないか?」


「……うん」


 言われたとおりにテディコは僕のそばまでやってくる。そして僕はベッドの奥の方に行き布団を一旦どかす。


「テディコ、隣で寝てくれないか?」


「……わかった」


 テディコは僕のつくったスペースになにも疑いなく入ってきた。その様子をアイシャは不思議そうに見守る。そして、どかした毛布を元に戻し、二人ぴったりとベッドの中に収まる。


「じゃあ、ちょっとここで全身を氷にでもする技を使ってくれないか?」


「……おけ」


 そう言うとテディコ自体にはなんの変化も見受けられないが布団の中がひやっとした空気に包まれた。まるで扇風機が布団の中で回っているみたいだ。

 でも、まだ熱いな。テディコにクマ……テディコにクマ……。


「テディコだけにクマができた」


「うわっ、さむっ」


 瞬間、布団の中が扇風機から冷蔵庫へと温度を変えた。

 うおー、気持いい。少し体軽くなった気がするぞ。


「……私に触れて」


「……?」


 テディコが背を向けながら変なことを言い出した。けれど、相手はアイシャじゃないので少し迷ったものの背中に手を当ててみる。


「うわっ、気持いい。なにこれ!」


 まるでプニプニの氷にタオルを巻いた見たいな感触と温度が伝わってきた。あまりに気持ちよくてテディコの前に手をまわして抱きしめてしまう。


「ふうぁ~、気持ちいい」


「……よかった」


 なんだか体の体温が落ち着いてきて眠くなってきちゃった。そういえば昨日、なんだかんだで、悪魔に気がいっちゃってよく眠れなかったからな。


「おやすみ」


「……おやすみなさい」


 ああ、気持ちいい。駄目だ。これきっと毎日やっても気持いいパターンのやつだ。


「てっ……アンタ達なにやってんのよ! 私を忘れてよくもまあ、妹とイチャイチャらぶらぶとっ!」


「あぶなっ! てか熱っ!」


 完全に存在を忘れられていたアイシャが頭から湯気を出して(本当に出している)器用に僕とテディコの間に割り込んで布団の中に入ってきた。


「どう? 気持ちいい? ねえ気持ちいい?」


「気持いいわけあるか! それどころか……気分が……」


 一瞬にして布団の中がサウナに変わった。やばい、熱い熱すぎる。まるで熱湯風呂に入れられているみたいだ。あれ? そういえば、テディコの姿が見当たらないぞ?

 ベッドの下からテディコの手が見えてくる。どうやらアイシャが入った反動で追い出されてしまったようだ。そりゃ、こんな小さなベッドに三人はきついからな。


「あ……ああー……熱いって!」


「きゃっ!」


 我慢しきれなくなりアイシャを蹴飛ばしテディコを拾い上げて、がっちりと抱きしめ次は離されないようにする。

 ああー生き返るー。やっぱこれだよな。うん。これに名前を付けよう。えーと、氷みたいに冷たいテディコだから氷テディだな。氷テディに決定。


「なんで、なんで私じゃいけないのよ!」


 ベッドから落とされたアイシャが立ちあがりガミガミと文句を言ってきた。


「熱いからに決まってるだろ。熱がある人に熱のある物を近づけてどうする」


「気のせいよ! 熱いと思うから熱いのよ! ほら、私を入れなさい!」


 毛布をあげてテディコを引っ張り出そうとするが、がっちり僕が捕まえているのでまったく動かない。


「やめろって、それにテディコはお前のせいで寝不足なんだぞ、僕の熱を下げ、なおかつ自分も寝れるこの一石二鳥のシステムいいだろ」


「うぐっ……」


 どうやら自分のせいでテディコが寝不足とういう言葉が効いたらしい。掴んでいた手を離して斜めに配置してある勉強机の椅子に座ってしまった。


「……こんなことになるなら……わたしが見張ればよかった……」


「うん? なんか言ったか?」


 アイシャは椅子に座ったままぶつぶつと独り言をつぶやいていた。


「でも、いいわ。なら翼が妹に変なことしでかさないかここでずっと監視してるからね!」


「勝手にしろ」


 これ以上言い合っていてもしょうがないので、氷テディに抱きつき毛布にくるまる。

どうやらテディコはもう寝てしまったみたいだ。小さな寝息が聞こえてくる。そりゃ、一日中起きていて、しかも神経をとがらせていたら疲れるだろう。

 僕もそんなことを考えているうちに深い眠りに入ってしまった。


 なんか寒いなぁ。


「……う……うーん」


 あまりの寒さに目が覚めた。テディコの魔法も指輪があるから体に悪影響のないところまでしか影響はないはず、とそこで僕の部屋の窓が開け放たれていることに気付いた。

 きっとアイシャだな。てか、こんなに僕は寝ていたのか。

 開け放たれた窓の先を見てみると、夕焼け空が夜に向かって暗くなりかけていた。

 寝たままの状態で頭の方に置いてある携帯に手を伸ばす。

 午後七時。

ほんと、結構寝たな。


「おい、テディコ起きろ、夕方? だぞ」


 この起こし方はどうかと思ったが、実際夕方なので仕方がない。

 隣で寝ているテディコはまだ眠たいのかまったく起きる気がしない。


「もう夕方だぞ。お前がどいてくれなきゃ僕が動けないんだよ」


 テディコの方がベッドの入り口で僕の後ろは壁なので、テディコが起きてくれないとまったく身動きがとれない状態なのだ。


「う……うーん」


 こっちに背を向けていたテディコがこっちを振り返り半目の状態で僕にしがみついくる。

 そのまま、またテディコは眠ってしまった。


「ちょっ」


 アイシャに助けを求めようと思い勉強机に目をやる。が、アイシャの姿が見当たらない。そのかわり、一階からアイシャの笑い声が聞こえてきた。

 なんでアイツこんな時にいないんだよ。てか、見張りはどうしたんだよ。


「な、なぁ、テディコ。起きてくれないか? ちょっと寒いんだよ」


 氷テディが僕にくっつき気持ちのいいところまで体温は下がるんだが、夜風は魔法じゃないので僕の体を冷やしていく。


「……うーん」


「テディコさーん」


「……はーい」


「どいてくれまーす?」


「……うーん」


「……なんでだよっ!」



「おはよー」


「お腹空いたあぁ――!」


 あれから数分同じ様なことを繰り返してやっとテディコは目を覚ましてくれた。だが、時すでにおそし、熱も頭痛も解けたが、冷たい夜風にあたり過ぎて体がすっかり冷え切ってしまった。

 ほら見ろ、息が白いじゃないか。


「アイシャ、さっきベッドでやったように体を熱くしてくれないか?」


 一階のリビングでテレビを見ていたアイシャに近づきお願いする。


「なんでよ、そんなことより私お腹空いたの、朝から何も作ってくれないからもうペコペコー!」


「やってくれたら、すぐに作るからさ。おねがい」


「んもー! じゃあ一分だけね」


 アイシャは床に座ったまま不満そうな顔をして魔法を使ってくれる。これもまた見た目はなんの変化もないが、アイシャから湯気が出ているのが見受けられた。

 僕は体から湯気を出しているアイシャに後ろからそっと近づいて抱きしめる。


「ちょっ! なっ! なに急に?」


「なにって、あったかいから」


 目を丸くして驚いているアイシャに対して冷静に答える。おもった通りアイシャの体はホッカイロみたいに暖かくて、冬に絶対欲しいアイテムになっていた。

 よし、これにも名前を付けよう。えーと、抱き枕みたいなホッカイロだから、抱きカイロ。うん、なかなかのネーミングセンスだ。抱きカイロに決定。


「よし、そろそろ一分経つか」


 アイシャから離れて晩御飯の準備をするためキッチンへと向かう。


「え? もう、いいの? もうちょっと……いてもかまわないけど……」


「え? なに言ってんだよ。 お腹空いたんだろ? まず冷蔵庫に物があるかだけでもみないと」


「そうだけどぉ……ちょっと待ってよぉ」


「ちょっ、あぶっ!」


 アイシャがキッチンへ向かおうとした足を掴み、僕を止めさせた。そのため床に転びそうになってしまう。

 なんだよ、コイツ。なにか狙いなんだ。

 しかたなくそのまま、いつのまにかキッチンの方に行っていたテディコに冷蔵庫の中身がどうかなのか訊いてみる。

 彼女は冷蔵庫に手をかけ中を確認すると、しばらくしてからこっちを向いて手でバツをつくった。


「そうか、それじゃあちょっと悪いけど買い物に行ってくる」


「……わかった」


 今日はどこにも出かけていなかったので、足にくっついているアイシャを振りほどき私服へと着替える。


「じゃあ行ってきまーす」


「ちょっと待ってー!」


 それじゃあ出かけようと玄関に手を伸ばした時、リビングからアイシャの声が聞こえて、リビングからアイシャが現れた。


「……なんだよ」


「わたしもついて行く」


 なにがそんなに嬉しいのかわからないが、アイシャは嬉しそうに笑って靴を履こうとしている。


「なにも買ってやらないぞ?」


「うん、別にいいよ」


 じゃあ何がしたいんだ?

 そんな疑問を持ちつつ、アイシャが靴を履いたのを確認して玄関に手をかける。

 えーと、ここから一番近いスーパーはあの本屋の隣か。まあ、歩いて五分ぐらいかな。

 玄関を出て右へ曲がり最寄りのスーパーへと向かう。


「ねえねえ、今日の夜ご飯は何にするの?」


 だから、なにがそんなに嬉しいんだ。

 そう思わせるくらいアイシャはにこにことして訊いてきた。


「うーん、考えてないなー。何が食べたい? どうせ作るのはテディコだからな」


「それじゃあ、カレー! カレーが食べたいっ」


「カレーか、いいな。それじゃあカレーにするか」


 ついこの間、てか、よく考えたら二日前まで一人暮らしだったので家でカレーなどだいぶ作っていなかった。作ろうと思えばカレーぐらい作れるんだが、一人暮らしでカレーを作ってもあまっちゃうしなんか地味なので、カレーと言えばカップラーメンで済ませることが多かった。

 あれ、なんだか妙にカレーが食べたくなってきたぞ。


「おい、アイシャ急ぐぞっ、カレーだ、カレー」


「うん、カレーだ、カレー!」


 僕もなぜだか妙に楽しくなって薄暗い街並みを二人揃ってスーパーを目指して駆け出す。



「ありがとうございました。またのお越しを」


「はあはあ、疲れたな……」


「うん、思った以上にね……」


 あれから一度も止まらずにスーパーまで走り、五分掛るところをたったの二分で着いてしまった。それからもスーパーに入って勢いは衰えず、野菜売り場、カレー粉選びを終え、スーパーの前で燃え尽きていた。途中、豚肉か牛肉かで争ったがじゃんけんで僕が勝ち、牛肉に決定した。


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