魔法の使い方
「あらー残念ねー、どう? やる気みたいのは沸いてきた?」
妹が席をはずすと机から顔だけを出した姉ルルがイジワルそうな笑みを浮かべてやってきた。
「馬鹿か! やる気なんて出るかよ! てか、そもそもこんな指輪が付いたところでなんの意味も持たないじゃないか!」
そうだ。なんで僕がこんなことに巻き込まれなきゃならないんだ! こんなのおかしいせめてエクスカ○リバーでも持たせてくれれば僕はもう少し安心できただろう。
なのに指輪一つ、いや二つしか貰えていない。僕はロードオブ・ザ・リ○グかっ!
「バカねー、この指輪はあなたのいる位置がわかるようになってるし、あなたの熱い気持次第で私の力が
何百倍にも膨れ上がるようになっているのよー」
そう言うと、彼女はちなみにと言って「妹は冷たいこと言うと強くなるの」と付け足した。
だからか、今日の昼、僕のいる学校がわかったのも。
でも待てよ? 姉と妹の力の発動源が逆ということは同時に強くするのは無理ということか。
「じゃあ、例えば『へへ……俺もヤキがまわったもんだぜ! ここは俺に構わず先へ進め!』って気持ち
になればお前の魔力も上がるわけ?」
馬鹿にするように訊いたが、姉ルルは真顔で答えた。
「まぁ、極端に言ったらそうね。試しにやってみる?」
そう言って妹ルルは座ったまま手を胸の前に持ってきて指先からメラメラとした炎を出現させる。
おぉー、いつ見てもすごい。まるで手品をみているようだ。
「あ、その指輪があるから魔法には触れても大丈夫よ」
その話は初日に妹から聞いた。しかし、いくら大丈夫とはいえ、目の前の炎に触れるなんてことできやしない。だが、僕はあえて姉ルルから出ている炎に触れてみる。
「おおっ!」
本当に触れても大丈夫だ。一見僕の手が燃えているみたいだけど、炎の中はすごく温かくて気持ちがいい。
「それじゃあ、わかったでしょ? なにか熱い気持ちになって言ってみて」
炎の中から手を抜き熱いことを考える。と言われてもそう簡単には熱いことなんて思いつかない。
しばらくして、やっと思いついた熱い言葉は叫んでみる。
「カ○ロットおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
そう言うと姉ルルの手のひらの炎が若干強くなった。本当に若干。言うなればキッチンの弱火が中火になったくらい。
「しょぼ! えっ! こんなもん? ちょっと勢いのあるライターじゃん」
まるでZI○POだ。
「違うわよ! これはあなたのセンスが悪いから! そもそもなんで熱いセリフがカカロ○トなのよ。どうかしてんじゃないの!」
まぁ、たしかに今のは若干ふざけてしまった感じはあったな。仕方なく再度仕切り直して熱い気持ちになるため熱い言葉を叫んだ。
「シャイニングフレア!」
姉ルルの指先の炎が弱まった。
「からの――サザンクロス!」
ボッ……と虚しい音と共に指先の炎が消えた。
「…………」
「…………」
「って黙ってないでなんとかいいなさいよ! 消えちゃったじゃない! 消えるって相当な事よ! わかってるの!」
彼女はバンと机を叩いて顔を僕に近づけてくる。
「そんなこと言ったってしょうがないだろ! 熱い気持ちってなんなんだよ! そんな急に熱くなれるもんか!」
「なれるわよ! 仲間が窮地に立たされたとか想像すればそんなのすぐよ! そもそも、あんたね、なんで熱いセリフが全て一言なのよ! 最後のなんて技名じゃない!」
「うっ……」
それを言われてしまったら元も子もない。だいたい主人公の最終奥義とか叫ぶ場面で僕は熱くなれるし、僕のボギャブラリーの少なさも関係してくる。
そんなこんなでがみがみと姉ルルに説教されていると、夕食の後片付けが終わったのかキッチンからお盆にコップを三つの載せた妹がやってきた。
彼女は黙ってお茶の入ったお茶を配り席へ着いた。
「ありがと」
冷たいお茶を飲んで一旦心を落ち着かせ話を冷静になる。
「まぁ、ってことは僕は悪魔を倒さなきゃいけないんだな?」
「そうね」
姉が返事し妹がコクンと頷く。
「それで? 悪魔は実際どんな姿をしているの?」
魔女を狩る悪魔って言うんだ。きっと超超超強い武器とかを持って、ガチムチした体形に大きな黒い翼、そして鋭い黒光とした尻尾が生えているに違いない。なんだか考えただけで気持ち悪くなってきた。
「そんなおぞましいもんじゃないわよ。悪魔って言ったって私達と同じ人間の姿をしているわ」
「え? 人間?」
「うん、普通の人間。特にこれといって特徴はないわ。故に見つけにくいし隠れにくいんだけどねー」
妹も同意の様で「うん、うん」と頷く。
そう聞くとなんだか気持が楽になってきたぞ? いや、人間の姿形と言ったところでもしかしたらガノン○ルフみたいな人かもしれないし。やっぱりそうなってくると倒すのは困難。それどころかこっちの命の保証すらできない。
「だとしたらよく僕は今日一日のほほんと生きていられたもんだな、狙われているかもしれないっていうのに」
「ほんとだよ、今日だってきっとどっかで悪魔は見ていたはずだよ? もしかしたらお昼私が見に行かなきゃあんたが悪魔のお昼ご飯に……」
なっ、なんてことを言いやがる! けど、もしかしたら姉ルルはそんな僕の身を案じて学校に来てくれたのかも。もし、そうだとしたらこの憎たらしい顔も――とここまで考えた所で妹ルルが一言付け足してきた。
「……基本的に悪魔はお昼に外をあるけないけどね」
くそ、所詮この女はこういうふざけたやつなのか。少しでもちょっと心揺らいだ僕が馬鹿みたいじゃないか。とにかく、そうなると僕は学校にいる間は大丈夫ってわけか……。ほんとにアニメや漫画みたいな設定だな。なんでもありって感じ?
もう一度自分の薬指にはめられた指輪を見つめる。すると、横から妹ルルが僕の袖を引っ張ってきた。
「うん?」
「……私も一応練習しとく」
すると、彼女も姉と同じように胸の前に手を持ってきて指先から冷気を出し始めた。
さっきのやり取りを見ていたのか。えーと、たしか妹の方は冷めたい言葉だね。
僕は「オケ」と返事をして、冷たいセリフを浮かべ――
「え、ちょっと待って、冷たいセリフって……何?」
冷たい気持ちと言われても、それはそれで困ってしまう。熱いセリフこそ心に残るものがあるが冷たいセリフなど覚えているもんだろうか? 少なくとも僕は覚えていない。
だが、彼女は無表情に「……わからない?」とでも言いたげそうに首を傾げるとお茶を一口すすってゆっくりと口を開いた。
「……アナタの家……カラスよく止まってるよね?……」
「…………」
「…………」
冷たい! たしかに冷たい! 別にセリフ自体は冷たくないんだけど、こう、心に響くなにかはすごく冷たい! きっとあの口調からすると親友だ。きっと親友にぼそりと帰り道かなにかに言われたんだ。しかも疑問形のところがくる。
よくこの短時間でこんな可哀想な冷たいセリフを……この女、侮れない。
「……おやじギャグとかでもいい」
お、おやじギャグか……さっきのセリフに比べれば幾分もましだな。
僕はできる限りの力でおやじギャグを考える。
「えーと、それじゃあ『風呂場にあるクローバー』」
「……五点」
五点? きっと彼女なりの評価なのだろうか。しかし、点数とは裏腹に彼女の指から氷柱が逆さまに生えて鋭い氷の爪みたいになっていた。
そのまま次から次へ思いつくギャグを言っていく。
「渋谷のセンスはしぶいやぁ~」
「……三点」
「キョンシーが教師」
「……六点」
「オイルは老いる? オイル要る? おぉ、いるいる」
「八点」
「ニューヨークで入浴!」
「五点!」
「自然の――」
「もういい! やめて! これ以上やられたら死んじゃうわ!」
せっかく今から盛り上がってきたと言うのに……。肩を震わせた姉ルルに止められてしまった。しかし、気づけば部屋一面、冷気に寄って凍りつき、コップの中に入ったお茶は完璧に氷とかしていた。
「うわぁ、すげー、まるで冷凍庫の中にいるみたいだ」
今も彼女の手のひらからは冷気がすごい勢いで出ている。だが僕は指輪のおかげで魔法による効果を受けないのでまったくなんともない。むしろ心地よいくらいなのだが、目の前にいる姉ルルは属性もあるせいなのか自分のことをギュッと抱きしめて体を小さくして震えていた。
「は……はやく、ま……魔法解きなさいよ……」
「……わかった」
妹ルルはそういうと、大きな青い目を一回瞬きする。すると、みるみる壁の凍りが溶けて剥がれ落ち、一分もしない内にいつもの風景へと戻っていった。
「やっぱりすごいなー、これなら悪魔もなんだか余裕に思えてきたよ」
「なに言ってんの、こんなんじゃ悪魔は倒せないわよ」
手から炎を出し体を温めながら言う姉ルル。
「そうかなぁ? てかさ、それと今さらなんだけどどっちもルルってわかりにくくないか?」
「うーん、まぁあ、今さらって感じはあるけど、『ルル』って呼ばれるとどっち? って感じにはなっちゃうわね」
「そうなんだよ、こちら側としても、もし悪魔が来たらと想像してお前達を呼ぶようなことがあったらいちいちどっちか言わなきゃいけないし。どうだ、この際名前変えてみないか?」
なんだが、偉い悪魔とやる気じゃないか? と思っているだろうけどこれは奏さんのためであって決してコイツらのためでない。それに自分の命が掛っているとなると話は別だしな。
「私はいいけどぉ……」
そう言って姉ルルは横目でチラッと隣にいる妹を見る。
妹はお茶をチビチビと飲んでいる。
「……いいよ」
「そうか、それならなんか呼ばれた名前はないか? 呼びやすいような名前」
「そんなこと急に言われたって……」
まぁ、そりゃそうだろう。急に名前変えるなんて言われてすぐに思いつくような奴はいないだろう。しばらく皆が皆黙り突然妹ルルが手を上げた。
「はい、妹」
「……デェイニー・サンベルデューデスク」
え? なんだって? デェイニー……デスク? 誰それ?
「うーん、まぁその名前だとどっちかわかるけど、きっとその名前呼んでる間に僕グサっと悪魔にやられ
ちゃうから、もっと短いの」
妹ルルは残念そうに手を下して、またしても沈黙の空気が流れてしまう。
困ったな~、それにしてもさっきの外人みたいな名前の人は一体誰だったのだろう? 頭を悩ませていると今度は姉ルルが大きく手を上げた。
「はい、姉」
「えーと、私は漆黒の翼、デス・ダ・イビル――いてっ!」
発表途中の姉の頭を小突く。
「なんでそんな中二みたいな名前なんだよ! さっき長いのは無しっていっただろ」
殴られた部分をさすりながら手を下していく姉。
「はい次、妹」
指された妹は頬を少し赤らめながら発表する。
「……テディ」
テディ……ねぇ、うん、呼びやすいしなんの問題もないのだけれど、しっくりこない! この妹の性格でテディはちょっと違うと思う。
「……ナマコでもいい」
妹ルルは頬を赤らめて言った。
ナマコ? ならまだテディの方がマシだ。それにこんな可愛い子をナマコと呼んでいる僕は近所の方々からどう思われるだろうか? 少なくとも僕は警察に連絡をしかねない。
「うん、まぁそれならテディでいいんじゃないか?」
特に断る理由もないのでテディで了承すると妹ルルはもう一個提案してきた。
「……二つ合わせてテディコは?」
「あー、もう、ならテディコでいいよ」
「……テディコ……うん、一番いい。ありがと」
「え! いいの? なら、私も可愛いの、いっぱい思いついたのにぃ」
姉ルルの中でテディコは可愛い名前に分類されるのか。
一応、妹の名前は決まったので姉へと移ることにする。
「で、お前はなにか思いついたか?」
「うん、けれどその前に、なんで妹はちゃんと名前で呼んで、私はお前なの?」
「いやぁ、だってお前は強い子だろ?」
「魔界でもこういう扱いされたわ」
ちょっとへこむ姉。
「とにかく、なにかいい名前はあったのか?」
「うん、個人的にはアイシャなんて、いいと思う」
アイシャ……アイシャ……アイシャ、うん。いいじゃん。すごくいい! なんかイメージ通りだし、呼びやすい、結構センスがある。
「可愛くていい名前。はい、決定!」
「ホント? やったぁー!」
「よし、それじゃあアイシャにテディコ、すばらしい名前だ」
ほんと、変わった奴らの集まりになったよ。これで、本当に悪魔に勝てるものか。
やっと決まった、そう思った矢先からアイシャが不思議そうな顔で文句を言ってきた。
「まだ、あなたの名前が決まってないじゃない」
アイシャは、さも当たり前のように言う。
「え? 俺にはちゃんと翼って名前が……」
「ほほぉ~翼って名前なんだぁ~初めて知ったぁ」
「え? 初めて? 嘘だぁ~」
コイツらに会ってから今までを振り返ってみる。
あれ? そういえば初めてコイツらから翼って名前を聞いた気がする。もちろん、僕からは名前を教えてないし、教える場面が無かったからな~。ってことは、僕はもう一日が経つというのに名前をも知らない相手と暮らしていたのか? そんな馬鹿な……。
まさかと思い妹の方を見てみる。
彼女は、指で机になにか書いていた。え~と『はつ……みみ』?
「え、まじで!」
「そう言ってるじゃない。まぁ、ということは翼の名前はクロニクルね」
「え? なんでクロニクル――ってそれは危ないっ! 結構危険な所だぞ!」
「大丈夫よ、翼の部分を出さなきゃ、バレない、バレない」
「いや、バレるバレないじゃなくてなぁ」
それにしても、今さらながらなぜコイツはそういうタイトルやネタを知っているのだろうか? まだこっちに来てから一日目のはずだし。しかし、そんなこと訊いていたらキリがないだろうから今度時間がある時にでも一気に訊いてみよう。
それじゃあ、大体の話も決まった所でお開きをしようとしたらアイシャが「ちょっと待って」と席を立った僕を止めた。
「言うまでもないだろうけど、今の時間帯わかってる?」
そう言われて初めて時計を確認する。壁に掛けてある時計は八時を示していた。きっと悪魔が外を歩くには十分な時間帯だ。それに外もそれなりに暗い。
「そういうこと。だから心構えと警戒心だけは忘れないでね。それとあなたの近くには必ず私か妹がいること、いつ襲われてもいいようにね」
そう言うと彼女はパンパンと手を叩いてその場を離れていく。
「はぁー」
そんなこと言われたって、まだ悪魔の姿だってわからないのだぞ? どうすればいいんだよ。
「まぁ、まずはお風呂に入るか」
考えていてもしょうがないので、お風呂へと向かった。
「ふぅー、さっぱりしたぁ」
お風呂からあがりタオルを肩からぶら下げながらリビングへと向かう。
お風呂に入っている間も、テディコは僕から離れずお風呂場の前で待っていたのには驚いたが、それだけ警戒しなきゃいけないということなのだろう。
「おい」
テレビの前でくつろいでいる姉に声を掛ける。
「今テディコが入っているから、次風呂入れよ」
「うーん」
そのままの格好でソファに腰を掛けてテレビを眺める。
うーん、お笑い芸能人達が歌を歌って審査員が判定するやつか、よく見る番組なんだけど芸能人達が選ぶ曲は、どうも古い曲ばかりで若者はついていけないんだよなー。それに上手くないし。
リモコンを取って他に面白い番組はやってないのか番組表を見る。
「って、うおぃっ! なんでお前、俺の隣に来るんだよ!」
「しょうがないでしょ、妹がお風呂入ってるから私が傍にいなくちゃ!」
あ、そうか。いや、だとしても同じ部屋にいるだけで十分じゃないか?
彼女は、肩と肩が触れ合う距離、一つのソファに二人入るぐらいの距離にいた。逆に襲われたら動きにくいと思うんだけど。
まぁ、それも彼女なりの気づかいだと考えあまり気にしないようにする。
どれもつまらなそうな、番組ばっかりだな。なんか最近海外に行く番組多いし。
仕方なく昨日録画しておいた『深夜系魔法少女キャリポン』にチャンネルを切り替えた。
『ロリッ子魔法少女キャリポン♪ 前回までのあらすじは私が触手人間ぬ~べぇに襲われて――』
「ちょっとぉ、なにチャンネル変えてるのよ。私が今、見てたでしょー」
「うるせぇ、あんな番組よりこっちの方が面白いから」
「いーやーだっ!」
ピッ――
アイシャが僕の手からリモコンを奪い取りチャンネルを元に戻す。
『いやぁー、どちらも上手かったですね、これはどうなるでしょうか?』
「なんで変えるんだよ、今からいいとこなのに!」
「逆に、なんで現役魔法少女が架空魔法少女アニメなんて見なきゃいけないのよ!」
たしかにそうだけど……。
「いいじゃねぇか、これからの戦いに役立つかもしれないぞ?」
「あんなベトベトの触手に襲われる戦いなんてありません! それにぬ~べぇってどんな名前してんのよ!」
「おまえ、ぬ~べぇなめんなよ。ぬ~べぇだけで二十四話放送しているんだからな!」
ピッ――
隙をついてリモコンを奪う。
『いやあぁぁぁぁ、ぬるぬる……ぬるぬるがあぁぁぁ!』
「ただのぬるぬるしたお化けじゃない! 絶対こっちの方が面白いっ」
ピッ――
またもアイシャにリモコンを奪われる。
『わははは、途中噛んじゃいましてね、上手く歌えませんでしたよー』
「わははははっ」
…………。
「どこが面白いんだよ! そもそもお前、絶対芸能人達が歌ってる曲知らないだろ!」
さらにリモコンを奪おうとしたが、アイシャが僕の考えを読んで回避する。が、僕もアイシャの考えを読んでいたので回避した先に手を伸ばす。が、若干狙いを外して、指先がリモコンのボタンに当たってしまった。
ピッ――
『あんっ……けんじ君っ……そ、そこはぁあん』
「「…………」」
『なにを言っているんだい? あけみさん。ここはこんなにも――』
「あああーっ! な、な、な」
バチンッ――
アイシャが大声をあげて、テレビの電源を切った。
僕も絵や画像では何度も見たが実際に目にしたのは初めてだ。なんかサラリーマン姿の男の人が、こう、なんけグロいようなことを高速でしていてなんだかえげつなかったな。
隣では、いまだにアイシャが顔を赤くして「な、な、」とずっと連呼している。
「なんか、ごめん」
一応謝ってリモコンを奪い電源を入れる。今度は素直に取ることができた。
バチンッ――
『もっと、もっと、もっと、けんじ君! まだ! まだ――』
バチン――
「ごめん」
そうだ、そりゃそうなるわな。
もうなんだか今日は学校でも家でもいろいろあって疲れたので、寝ることにした。