モモと僕らの新しい日常
お待たせしました♪
あとあとがきには重要なことが書いてあるので読んどいてください♪
モモが人間になったのは五月の半ば。五月雨や、五月晴れ、そして五月蝿い時期だ。五月蝿くわないか。なにが、きっかけとなって人間になったのかはわからないが、前回の魔法少女や赤羽奏ちゃんのことを考えたらきっかけなんてないのかもしれない。ただ単純に、二人を一応攻略したから新しいフラグが立ったのかもしれない。そう考えると、僕はこの先永遠とフラグを立てて生きて行くのか、全てのキャラ(何人いるかわからないけれど)を攻略しなくてはいけなのじゃないかと思う。
だとしたら、今僕が見ているこの美男子が描かれているBLフラグも……。
「嫌だわっ!」
そう言って手に持っていたフラグ本『Vol2』を投げ捨てる。さすがに、ついこの間やっとの思いで悪魔を倒したというのにこんなことにあったらたまらない。
相変わらず、自室のベッドで転がりながらこの先のことを考える。
モモが人間になってから結構な日にちが経った。『フラグの折り方』と書かれた本に、人獣フラグの折り方は載っていないのかと探したが残念ながら載っていなかった。たぶんそれはフラグの立て方がVol2だから、折り方の方もVol2じゃなきゃ載っていないのだろうと僕は思う。
奏ちゃんはもちろん、魔法少女の二人も、今も僕の家に住んでいる。これは運良く、親が不在で尚、一軒家だからできる技だ。
モモと言えば、最近は梅雨でジトジトして嫌なのか居間でごろごろするようになった。特にこれといった災害はないので別に何も言わないけど。ちょっと最近食費がかかって大変なぐらいだ。
携帯を開いて現在の時間を確認する。
午後、七時十分。
「そろそろ下に行くか」
そう言って投げた本をしっかりと拾って安全な場所に置いてから、一階へと向かった。
「あ、旦那様ニャ」
「あ、翼くん。もうすぐ晩御飯の準備できますからね」
リビングに入るとすぐに、頭に白黒の耳を生やし、白黒ストライプの柄が入った尻尾をつけた人間が僕の頬に向かって自分の頬をすりすりしてきた。
「……おい」
はじめのころは驚いてしまったが、さすがに毎日くらっていれば馴れて気にすることなく会話を進めてしまう。
「あの二人はまだ上の方に行っているのか?」
「はい。でも今日帰ってくると言っていましたよ」
奏ちゃんはキッチンで晩御飯の準備をしながら嬉しそうにそう答えた。
あの二人と言うのは、アイシャとテディコのことで。あいつらはなんだか悪魔を倒したとかをお偉いさんに報告するとか言って三日前から家にいないのだ。
もちろん僕等はあの双子がどこに行っているかわからないけど、だいたい魔法少女の存在する場所のイメージは空の上や、宇宙とかなんで僕は王道に上と呼ばせてもらっている。
僕はすりすりしてくるモモを一旦落ち着かせて、キッチンから猫の缶詰めとお皿を取ってリビングへと戻る。
「やっと五月蝿い生活に戻るのかぁ」
「そうですねー」
ついこの間までは一人暮らしで静かな生活もあたりまえだったのだが、みんなが来てから賑やかな生活になれてしまったようだ。そして、静かな生活が苦手に。
持ってきたお皿に猫の餌を出して食卓テーブルに並べる。そうしていると、奏ちゃんの方も晩御飯ができたらしくお皿が並べられた。今夜は、筍を使った料理だ。ちょっと季節遅れな感じはするけど。
奏ちゃんは全て並べ終えると自分の席に着いた。
「それじゃあ、いただきます」
「「いただきます(ニャ)」」
そう言ってテーブルに並べられたご飯に手をつけようとする。が、途中で箸が止まってしまった。
「なあ、モモ。何度も言うがそれやめてくれないか?」
なぜか魔法少女の二人がいなくなって、僕の隣でご飯を食べるようになったモモが、お皿に乗った猫用の餌をベースに器用にお箸を使って食べていた。
「もぐもぐ……うん? どうしたニャ?」
モモは耳をピクピクと動かして、なにも気にしていないような顔でこっちを振り向いた。
「いや、だからな。その食べ方見ていると食欲がなくなっちまうんだよ」
ただでさえ猫のご飯を食べている人間なんて気持ちが悪いのに、その中に筍とかを一緒にして食べているので、もう気持ちが悪いったらありゃしない。
「いやぁ、いつも同じ味で同じ食べ物だったから、こうやると味が変わっておいしんだニャ」
「……そうですか」
まあ、その気持ちわからなくもないけどさ。
モモは嬉しそうに笑顔を浮かべ食事を再開する。
僕もあまりモモの方を見ないようにしてご飯に手をつけた。
「そういや、さっきモモに首輪買ってきたんです!」
「首輪?」
「そうです! これなんですけどー」
そう言って晩御飯を食べている手を止めて、どこからかビニール袋を取り出してきた。
「ん? どれ?」
奏ちゃんから袋を受け取るとり、袋を止めているセロハンテープを剥がす。
そして、袋の中に入っている物をゆっくりと取り出していく。
「…………奏ちゃん」
「どうですか? 可愛いですよね!」
空になった袋を僕から奪い取ると、パンと手を叩いて笑顔で同意を求めてきた。
いや、可愛いっちゃ可愛いデザインだけど……。
僕の手にはピンク色の大きな首輪が握られている。サクラ色の首輪には、小さな骨が無数にデザインされており、名前の所には親切に片仮名でモモと書かれていた。モモと書かれた上にはドッグネームと書かれているが気にしては駄目だ。
奏ちゃんと暮らして気付いたんだが、奏ちゃんって少し天然が入っていると思うんだな。一応言っとくが、モモは猫だし、そこを百歩譲ってもモモは人間だ。そんな人間に大型犬の首輪なんてできるわけがない。もし首輪なんてつけたらちょっとしたSМにも見えてしまう。
「うん、可愛いと思うけどちょっとどうかな~」
「そうですか~? 可愛いとおもったんですけどな~」
首輪を奏ちゃんに返し、再度袋の中にしまう。
まあ、今の時期はモモが外に出ることないからしていても構わないけど。きっとあの二人が返ってきたら僕のことを変な眼で見てくるだろう。
「ごちそうさまでしたニャー」
気づけばモモはご飯を食べ終わっており、縞々の尻尾をぶんぶんと振りながら食器をキッチンへ食器を運んでいた。あ、今言う必要はないのだろうけど、モモは現在僕の服を着せている。
それじゃあ僕も食べるとしよう。そう思い、箸に手を伸ばした時、ピンポーン、とチャイムが鳴った。
「うん? 誰だ?」
「誰ですかね?」
二人して顔を見合わせる。
僕は、あの時以来若干ながらこのチャイムに怯えを覚えてしまっていた。もう、次はどんなことが起きるのか、この扉の向こうには何があるのか、軽く僕にはナル○アに続くドアにさえ思える。
「僕見てくるよ」
でも、一応僕も男なのでここは率先してナ○ニアに続くドアに向かった。
「どちら様ですかー。訪問販売とか受け付けていませんよー」
「…………」
返事が返ってこない。もしかして昔流行ったピンポンダッシュなんじゃないかと思ったけれど、こんな時間帯にピンポンダッシュをする人はいないだろう。
そして、なによりも玄関の先でチラチラと黒い影が動いていた。
「僕の家には、大型犬の首輪をつける方がいますけど、恐ろしいですよー?」
決して間違ったことは言ってない。誰とは言っていないし、まだつけてもいないし。
そんな脅迫をしてみたが、ドアの向こうから返事は返ってこない。
もういいや、そう思い玄関に背をリビングに帰ろうとした時、背後で爆発音のような音がして僕の目の前から玄関吹き飛んだ。しかもそのドアは僕の頬を掠め壁にぶつかり落ちる。
「ど、ど、ど、どうしたんですか?」
「なんだニャ!」
ドアが壁にぶつかる音を聞いて、リビングから奏ちゃんとモモも慌てた表情で出てきた。
土埃りで先の見えない、ドアなし玄関から徐々にドア先の人物が窺えるようになっていき、一分もすればほぼ完ぺきに確認できるようになった。
目を凝らしてよーく見ると、その先には、赤い髪をした短髪の少女と青い髪をした長髪の少女が立っている。お互い顔はすごく似ていて、身長も同じだ。まるで双子みたいに。
「つばさぁ~会いたかったよぉ~」
「……ただいま」
そう言って赤い少女と青い少女が家に入ってきた。そして青い少女が家の中に入った後、まるでホログラムだったかのように、壁に激突したドアは消え、元通りに玄関のドアがあった場所に戻る。
「あー! アイとテディだぁ。おかえりニャー!」
「わっ、アイシャさんとテディコさん! お帰りなさい」
奏ちゃんとモモは、玄関から現れた二人の姿を見るやいなや、僕を追い抜き、後ろか飛び出して行く。
「わー、モモー、久しぶりー。元気してたー?」
「……赤羽さん……これお土産……」
「ありがとう、テディコさん」
テディコは駅弁の包みみたいな物を奏ちゃんに渡し僕に近寄ってくる。アイシャもモモと頬を擦りあってから僕の方にやってきた。
「翼、ただいま!」
「……いま帰宅」
そう言って僕の目の前で笑顔を浮かべる二人。正直テディコの方は表情が変わらず、いつも通り無表情だが、それはもう心の持ちようだ。
そんな無邪気な二人を前に静かに低い声で口を開く。
「……おい……」
「なぁにぃ?」
なんだ、どうしたんだ。このむかつく顔は。どうしてコイツはこんなに嬉しそうな顔をしているんだ。そりゃ、久しぶりに帰って来れて嬉しいのはわかるが……。
「お前達のせいで今、死にかけたぞ! あとちょっとドアの位置がずれていたら僕は頭が吹っ飛んで死んでいたんだからな!」
今も少しだが、頬からは血が流れてスースとしている。
いくら魔法で壊した物は直せたとしても、人間までは直せまい。ましてや、僕はこいつ達のマスターで主なんだぞ。
二人は僕の意外な反応に驚いたのか、目を丸くして驚いている。もちろん、テディコは無表情だが。
「でも、許してやる。今回だけな」
「んもぉ~、なになに~?」
「…………ツンデレ」
そう言うと彼女たちは、ホッと胸を撫で下ろしていつもみたいに絡んできた。だって、しょうがないじゃないか。久しぶりに会って怒るのもあれだし、なによりもコイツ等はそんな悪いやつじゃいって前回の事件で十分に知っているからな。
後ろから「旦那様かっこいいニャ」という声が聞こえてきたが、無視をして何事もなかったかのようないつも通りの玄関を後にリビングへと向かった。
「それでどうだったんだ?」
さっきまで食べていた晩御飯を口にしながらモモが座っていた席に座っている、アイシャに話をかける。
アイシャとテディコはどうやら悪魔を倒した祝いやらなんやらで、もう食べてきたみたいだ。モモはもうご飯を食べたのでソフ端でお寝むの時間に入っていた。さっきまであんなに二人の帰宅を喜んでいたのに、睡魔には勝てないのか。猫だ。
僕の質問を聞いてなにをするわけでもなく、ただ僕の食事風景を見ながらアイシャが答える。
「うーん、それがね、明日にもまた向こうにいかなきゃいけないみたいなんだ。なんだか、まだやることがあるみたいで」
アイシャは眉を八の字にして悲しそうに笑う。
「……そうか、残念だな」
「まぁね。でもすぐに会えるよ。また三日ぐらいで帰ってくるからさ」
「……それに向こうでブームの商品買っといたから遊んで」
そう言ってさっきテディコが渡していたお土産を思い出す。たぶん、ブームの商品てのはあの駅弁サイズの箱のことだろう。けど、今はあけないでおく。向こうの商品だ。どんな危険な物か知れた物じゃない。もうハプニングはお腹いっぱいだ。
「そうだな。落ち込んでもしょうがない。それと僕的には今後のことが気になるんだけど」
「今後のこと?」
「そう、今後のこと。はい、それじゃあ悪魔倒しました。次のボスは出るのですか? ってこと」
そこが重要なのだ。僕は前回なんとか悪魔を倒した。けど、それは魔法少女フラグを立てたことによる必然。いうなればイベントによる結果。だから、もしそんなゲームみたいな世界だとするなら、ボスの後に裏ボスやもっと強いボスがいてもおかしくはない。そして、本当にそんな存在がいるなら次こそ……。
そんなことを考えていると、僕の心中を察してくれたのか、テディコが真っ先に答えてくれた。
「……大丈夫、いないから」
「そ、そうか。ありがとな」
そう言って、久しぶりに青い髪の頭を撫でてあげる。相変わらず、さらさらでしっとりとした手入れのとどいている綺麗な髪だ。
「ん、どうした?」
「……べつにぃ~」
なんだか知らないがアイシャはそっぽを向き機嫌を損ねてしまったみたいだ。僕はちょうど晩御飯も食べ終わったので食器を片付けて寝ることにした。まだ高校生が寝ていい時間じゃないが、僕の体は一定量の睡眠をとらなきゃ起きられないのである。明日も学校だしな。
そして、なによりも悪魔を話をすると奏ちゃんが黙ってしまうのである。彼女は以前たしかに悪魔だったがもうその時の記憶もない。それでも、悪魔の話になると黙ってしまうということは、頭じゃなく体や心が微かにだが覚えているかもしれない。
そんなこと考えちゃだめだ! 僕は今の奏ちゃんの方が好きだしな。
「それじゃあ、僕はもう寝るね」
「相変わらず早いですね。おやすみなさい」
そう言って僕はリビングから出て行き、自室へと向かう。
奏ちゃんは悪魔だった頃の影響のせいか、夜になるといつもより生き生きとして寝るのが遅いのだ。そのかわりに起きるのも遅いのだけれども。ってまた考えちゃってる。
そこで、奏ちゃんに言い忘れたことを思い出し、せっかく上まで上った階段を下りてリビングのドアを開く。
「奏ちゃん、今日も晩御飯おいしかったよ。ごちそうさま」
「あ、はい! ありがとうございます!」
そう言って再び階段を上り始める。僕は魔法少女のフラグを立てる前や奏ちゃんのフラグを立てるまえは一人暮らしをしていた。となると結構インスタントやコンビニ飯が多かったので、毎日手作りのご飯が食べれる、作ってくれる奏ちゃんには感謝をしなきゃ。
「はぁ~」
自室のベッドに転がりこむと溜息をついてしまう。それも梅雨のじとっとした空気のせいか、いつもより深い溜息だ。
結局、モモのフラグ(人獣フラグ)の折り方がわからないまま日にちだけは過ぎて行った。正直、モモのフラグを折らなくてもいいのではないか? と考えたこともある。けれど、それはなにか違う。なんというのだろうか? 言葉では表現できない。というかなんというか。それに、前回の魔法少女みたいに知らない内に命が狙われていたりするかもしれない。
攻略方法を探すという手もあったが、モモの目的がわからないからだめだった。前にモモに訊いた時は
「さぁ、気づいたら人間になっていたニャ。それよりご飯、ご飯!」という回答しか返ってこなかった。
もしかしたら、『飼い主を見つける』と王道のパターンが攻略の鍵だと思ったが、モモと最初に会った時のことを考えると、首輪とかしてなかったから違うということになった。
「はぁ~、わかんねぇ~」
もう、なんだか頭が痛くなってきちゃいそうだよ。ポケットから携帯を取り出して、目覚ましタイマーを確認してからベッドの頭のところに置く。
明日も学校だ。早く寝ないと。そう思って眠りにつこうとしていたら部屋のドアをノックする音がした。
「入ってどうぞぉー」
もう寝る気満々だったので出迎えるのもめんどくさいから、ベッドに入ったまま返事をする。すると、いつの間にかパジャマ姿に着替えたアイシャとテディコがそれぞれ愛用の枕を持って部屋に入ってきた。
「……なにしに来たんだよ」
もう、その格好を見るだけで何しに来たかはわかっていたが、一応質問してみる。
「もちろん、寝に来たのよ!」
「……レム睡眠」
そう言うと、無理に僕のベッドに入り込んでくる。
無理だって、このベッドは一人用のシングルベッドなんだから、寝れても二人が限界だ。それでも二人は入ってきて、ぎゅうぎゅうになってしまう。
「なぁ……苦しい……」
「うん? なぁに? 早く寝ないと明日起きれないよ?」
コイツ……隣にいて聞こえないわけがなかろう。でも、たしかに明日は週の終わりだから寝坊するわけにはいかない。
「……くそぉ……」
仕方ない。明日また向こうにいっちゃうんだ。今日ぐらいこれでいいか。
息をするのすら難しい三人入りのシングルベッドで今夜は眠りについた。
まず、読んでいただきありがとうございます!
お気に入り登録数も5件と開始して2週間――すごいかどうかわかりませんが大変嬉しいです。
本当にありがとうございます。
それでなんですが、作者のプロフィールを見てくださった方はわかると思うんですが、私、現在高校一年生、次二年生になります。
そして、明日から学校が始まってしまうわけなんですよ。なんということだ。
それで、基本毎日更新はしていきたいと思うのですが、当初みたいに一気には更新できないということだけ申し上げたかったのです。
それでも更新はするので任せてください。
大変、私事なんですがご了承おねがいします♪