――深夜の訪問者――
はい、お待たせしました♪
まず、最初に言っておきたいことがあります。
それは――初めて感想をもらっちゃいました!
もう、嬉しくて嬉しくてやる気がわきました!
感想をくださった方ありがとうございます。
それでは続きをお楽しみください♪
「はあ、疲れたなあ」
携帯をベッドの頭のところに置いて、外着のままベッドへと転がる。
別に今日は買い物に行った時にしか出てないし、なんだか着替える気力も残ってないからこのまま寝ていいや。
テディコはというと、いつものテディコポジション(勉強机の椅子)に座って僕の様子を見ていた。
「……どうしたの?」
テディコが二度も訊いてくるほど、僕は悩んでいる顔をしているのか。
ベッドから体を起こして、テディコに笑顔を見せる。
「なんでもないって、気にすんな」
「……だめ、なにか困っている」
「なんでもないって」
「……だめ」
ん~ん、これは何度言っても僕が話すまで引きそうにないな。仕方がない。
テディコを自分の横に座らせて悩んでいることを話した。
「……大変ね」
「これだけの話しを聞いといてえらい、客観的だな」
「……なんで、その奏さんって子のこと好きなんでしょ?」
「うん、まあな」
「……それじゃあ、大変ね」
よくわからないけど、つまり僕が奏さんを好きじゃなかったら悩まなかったってことなのか? まあ、あながち間違ってはいないだろうけど。
「それとな、もしかしたら、本当にありえないことかもしれないけど、奏さんが少し怪しい……」
なにを言ってんだ僕は。なにを馬鹿なことを、ただ一回辻褄が合わなかったからって奏さんを疑うのは良くないじゃないか。
隣を見てみるとほんの少しだがテディコが悲しそうな顔をしている気がした。
「ごめん、今のなし。奏さんが悪魔のはずないよ。うん、絶対にね」
「……そうね」
テディコはそう言うと、マイポジションへと戻って行く。そしてテディコが椅子に着いたのを確認すると僕は頭まで被って寝ることに集中した。
くそ、何をホント馬鹿なことを言っているんだ。そんなはず――
ピンポーン。
……うん? ……チャイム? 今日はよくお客さんがくるな。
ベッドに寝たまま後頭部に置いといた携帯電話の画面を開いて時間を確認をする。
まぶしい、えーと午前二時?
時間を確認すると携帯を閉じて再度、毛布にくるまる。
だってこんな時間にチャイムが鳴るわけがないし。きっとまだ風邪が少し残っていて昨そこから幻聴でも聴こえてしまったんだろう。
ピンポーン。
「……え?」
まさか。そんなこと、あるわけ……ないよな?
二度目のチャイムで完璧に目が覚める。
「お、テディコ。ごめんな。眠いだろ?」
僕が勢いよく布団をだかしたせいで、テディコポジションで寝ていたテディコが起きてしまったらしい。
テディコは眠たい目を擦ってこちらを見つめてくる。」
「今の聞こえた?」
「……うん」
「やっぱりか」
一応、幻聴じゃないことを確認する。
「……それじゃあ」
テディコはそう言うと眠たい目を擦って僕の部屋から出て行こうとした。
「待てよ、僕も行く」
ゴクリと唾を飲んでテディコを後ろに階段を下りていく。下りる途中、電気をつけなかったのを後悔したが、もう一度上に上ってつけるのも癪だったので、そのまま一階へと降りる。
リビングからは物音ひとつ聞こえてこない。きっとアイシャは気付いていないのだろう。使えない奴だ。
「それじゃあ……」
靴を履いて静かに玄関の扉をあける。もちろん防犯用のチェーンをしたままだ。
テディコは僕の後ろで手をかざしスタンバイオーケー。
「……いくぞっ」
――ガチャ。
「こんばんは神和住くん。あれ? もう一日まわったからおはようございます?」
玄関の先には、先ほどまで一緒に家で遊んでいて一番想像のしていなかった人物がいた。
「もしもーし、神和住くん? 訊いている?」
僕の目の前で手をぶんぶんと振って意識の確認をしてくる奏さん。
な、なんだ、奏さんか。
もしかしたら悪魔じゃないのかと思っていて、いや、もう絶対悪魔だと決めつけていたので、扉の向こうに悪魔どころか天使の奏さんがいて、つい安堵のため息が出てしまう。
後ろで、手をかざして準備していたテディコも奏さんだと知ると、すぐに手を下してスリッパの準備をし始めたようだ。
「あ、奏さん。えっと、それで何しに来たの?」
完全に目が覚めてしまっている僕は妙に頭の回転が速く、すぐに疑問点へと到達した。
奏さんはなんだか言うのを躊躇っているみたいに体をウジウジしている。
あれ、待てよ? この時間帯、そしてこの雰囲気、もしかしてこれは。これは告白というやつじゃない――
「忘れ物取りに来たんです。大事な物だからどうしてもすぐに取りに行きたくて」
よな。まあ、そりゃそうだわ。こうなるとわかっていても妙にがっくりと体を落としてしまう。そんな僕を奏さんは不思議に見つめる。
「うん、じゃあ上がってよ」
奏さんは小さい声で「おじゃまします」と挨拶をして忘れ物をしたと思われるリビングへ向かった。
「テディコ、ちょっと僕はトイレに行ってくる」
「……うん」
テディコは頷いて電気をつけながら奏さんについていく。
こんな時にあれだけど、人間ってたいていは寝起きはトイレに行きたくなるもんだよな。
急ぎ足でトイレに入って用を済ます。
「いやぁ、まさかこんな時間に奏さんが来てくれるとはなぁ」
トイレの中で一人つぶやいてニヤける。
ほんと、思ったり願ったりだ。
いや、正直思ったことはあるが願ったりまではしてないぞ?
「……つばさ!」
「え? なに? なにごと?」
トイレでニヤけているとリビングの方からテディコの声が聞こえてきた。それは普段のテディコからは想像もつかないぐらいの叫び声だ。
急いでズボンを上まであげて水で流し、リビングへ向かう。
「なんだ! 火事かっ!」
リビングの扉を開けるやすぐにキッチンのガスコンロを確認する。ガスコンロは至って異常なし。
よかった、火事じゃないみたいだ。じゃあなんだ。
とリビングに目を向けたその瞬間、恐ろしい光景が僕の眼に入ってきた。
「あら、神和住くん、大事な忘れ物、片方だけ見つけたわ。もう片方には反発されちゃったんだけど」
なんと奏さんは部屋の中心で立ちつくして、足元には無数の氷が散らばっていた。そして一番驚いたのは、奏さんの手の先には首を握られて持ち上げられているアイシャがいた。
「アイシャ! そこで何やってんだ! 迷惑だろう降りなさい!」
「どうみたらこの状況が遊んでるように見えるのよ! 私は寝ていたところをねぇ、この女にガってやら
れたの!」
つまり、奏さんがアイシャの寝込みを襲ったらしい。そんなはずが……もし寝込みを襲うとしても僕だろう。
とにかく、まずは奏さんに失礼なのでアイシャの回収へと向かう。
「神和住くんでも、それ以上近づいたら駄目。もし近づいたら」
どこからともなく奏さんは小型のナイフを手の平から出し、アイシャの首に刃を押し当てる。
え? なんだよ、この急展開、ストーリーの進行スピード早すぎだろう。
ひとまず、刃物だけはシャレにならないので奏さんから回収に向かう。
「奏さん、危ないよそんなの持っていたら、怪我しちゃうか――」
「いたっ」
「近づいちゃ駄目ですよ。神和住くんが近づくからいけないのです」
奏さんは悪びれた様子もなくアイシャに当てていた刃物を右に少しずらした。
アイシャの首からは真っ赤な色をした血が溢れ出す。
「おい! いくらなんでも奏さんでもそれはやり過ぎだ! 今すぐアイシャをこっちに渡せ!」
いくら好きな人でも、仲間を傷つけられちゃ黙ってはいられない。
アイシャの首からは今も鮮血色をした血が溢れ出し、床をも赤く染めていた。
「おっと、それ以上近づくともっと傷ついちゃいますよ?」
くそっ、どうすればいいだ。とにかくまずはテディコの元へいこう。それから、奏さんが何者なのか確認をしなくちゃ。
「……どうする?」
奏さんには近づかないようして、テディコの元へとやってきた。そして、恐る恐る最悪の結果につながることを訊いてみる。
「……奏さんは悪魔なのか?」
奏さんはアイシャの首を持ち上げたまま「うーん」と考える素振りを見せてはっきりと答えた。
「まぁ悪魔ね。やってることは」
好きな人が悪魔、これほどショックのでかい出来事はそうあるまい。せめて悪魔という言葉の前に小という字をつけて、後ろには系とつけていてくれたら大嬉こびなのに。
「それで、悪魔。望みは何なんだ」
「あっ、酷―い悪魔だと知った瞬間、名前で呼んでくれないんですかー」
「あたりまえだ。それに友達、仲間を傷つけるようなやつ名前で呼ぶかっ!」
「あ、そう。別にいいけど」
え? いいの? 強がってみせたものついさっきまで好きだった人にそんな身離されると正直心にダメージが。
なぜ好きだったって過去形かって? 別に悪魔だと知って嫌いになったわけじゃない。ただ単純に人を、仲間を傷つけるような奴は好きになれない、ならないだけだ。
「で、望みなんだけどぉ、それ」
彼女は僕の右手の薬指にはめられている指輪を指す。
「……これ?」
「そう、それ」
薬指にはめられている翡翠色と緋色をした二つの指輪。これが魔法の原動力であり、強化したり弱化したりすることができる魔法の指輪。
「……渡しちゃ駄目、絶対」
「あぁ、わかってる。渡すもんか」
だからこの指輪は彼女たちのそのものでもある。魔法の使えない魔法少女。そんなな方少女はただの少女、いや、少女ですらなくなるかもしれん。
それにこの指輪抜けないからな。
テディコが一歩僕の前に立ち手を構える。
「あーあ、残念。けどまさか、本当に神和住くんが持っていたとはねー」
奏さんはまったく残念そうな顔などもせず話を続ける。
「最初見た時、まさか、とは思ったんだけど、お昼に変わった服の子が学校にきてやっぱりと思ったわ」
アイシャは「てへっ」と照れる。
「けれど、それだけじゃまだ確信できなかったわ。あぁいう痛い子は世の中たくさんいるから。そこで、
神和住くんの家にいってみたの。そしたら喜んで上がらせてくれたわ。もちろん家にもおっとりとした女の子がいてビックリ! それでやっと確信を持てた」
てことは、僕はまんまと彼女の作戦にハマり魔法少女の存在を知られ、あげくの上に命の危機にまで陥らせたのか? なんて馬鹿なんだ僕は……なら命だけでも助けてこの指輪を渡した方が。
「駄目ーっ! 何やってんのよ! 私から魔法をとったら何が残ると思ってるの! 残るのは美よ! 美! そんなんなら私死んだ方が――」
「うるさいわね」
奏はぎゃあぎゃあとうるさいアイシャを睨みつけ首に思いっきり手刀をくらわす。
「おい! なにやってんだよ! おい!」
「うるさいから黙らせただけよ? それがなにか?」
「なにかじゃねぇよ!」
アイシャに問いかけてみても返事はない。それどころかぴたりとすら動かない。
くそ! 嘘だろ、おい!
「まあ、いいわ。もう一度だけチャンスをあげる。三時、三時に前浜公園に来たらこの子を返してあげるわ。もし来なかったら……じゃあ待ってるわ」
「おい! 待て! 何勝手なことを言ってんだ! おい!」
奏は首をダラッとさせたアイシャを担ぎベランダのガラスドアを蹴破ると闇へと姿を消えていった。
「ふざけんなよ!」
おもいっきりその場にあったテーブルを蹴っ飛ばす。
僕は動けなかった、助けることができなかった。怖くて、悪魔が怖くて。まさか、まさか奏さんが悪魔だなんて思っていなかった。
なさけない。少し考えればわかることじゃないか。奏さんは僕の指輪について一切触れてこなかった。席は隣だから気づかないはずもない。
「……そんなに自分を責めないで、それよりどうするか考えないと」
隣にいるテディコが気を使って慰めてくれる。
たしかに落ち込んでいてもしょうがない。結局は悪魔と決着をつけなきゃいけないんだ。
悪魔はボス、そして今回の主人公は僕。ならしょうがない。
「ありがとな、テディコ」
「……うん」
壁の掛け時計を確認する。ただいまの時刻は二時十分。そして奏は前浜公園で待つと言っていた。
前浜公園はここから大体二十分かかる。時間的には余裕だ。だが問題は戦いだ。真正面
から闘っても勝てる相手じゃない。それどころか触れることさえできないだろう。
テディコをソファに座らせて少しでもいいから作戦タイムに入る。
「よし、これから作戦を決める。第一任務はアイシャの救出だ。そこでテディコ、お前の技で奴の動きを少しでもいいから止めることはできるか?」
「……がんばる」
そして第二。
「そして第一任務が終わったあと、タイミングを見計らってこれを使う!」
勢いよく本棚の下の収納スペースに入っていたものを取り出す。
「……これ?」
「そう、これ。これは必殺技と言ってもいい。だからこれは第一任務が成功したら渡す」
我ながらよくこんな状況で思いついたものだな。
「……それ、どうやって使うの?」
テディコは不思議そうな顔をして本棚から取り出した物を指さした。
「これはな――」
「……わかった」
テディコが理解したところで物をポケットの中へとしまう。そして時間を確認する。
時間は二時二十分。そろそろ頃合いか。
ソファから立ち上がりテディコを立たせ、頬を叩き気合いを入れる。
「よし、それじゃあいくぞっ!」
「……うん」
☆☆☆
と、いうわけで「折りたたみ式フラグ(双子の魔法少女編)」も最終回が近くなってきました。
次、翼が立ててしまうフラグはなんなんでしょうか!?
そこが見所です!
えー、この後も今日更新するので楽しみにしていてください。
気にいっていただけた方は、お気に入り登録していただくと嬉しいです。
それから感想などもお待ちしております!
特に感想を待っています。
もっと気にいっていただけるように努めさせていただきたいです。