転
・・・ガチャン。
「・・・ん?」
玄関の方から戸を閉める音が鳴った。
その音を聞いて、ソファで横になっていた私は身体を起こした。
「ようやくか・・・」
時計を見る。
十二時半をちょっと過ぎた位。
お腹の虫も鳴り始める時間だ。
一人で待つ事に退屈を覚え、少々小腹も空いていたので、せろりの帰還はとても待ち遠しい物になっていた。
「・・・ただいま」
がちゃり。
居間のドアが開く。
「お帰り・・・って、あれ?」
ソファに座っていた私は、ようやく帰ってきた私の可愛い使用人を迎えるつもりだったのだが、そのあてが少々ずれた。
「すずめちゃん?」
というか帰ってきたのは別の人だった。
勿論、彼女もせろり同様私の愛すべき同居人ではあるのだが、何故こんな時間に学校から自宅に戻っているのか、さっぱり解らなかった。
真新しい制服に身を包んだ彼女は、何か申し訳なさそうな表情を浮かべ居間の入口で突っ立っている。
「学校は・・・」
と言いかけた私を、彼女の言葉が遮った。
「・・・ちょっと、居づらくて」
にこり。
彼女は笑顔を作った。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
勿論、それが作り笑いだという事をお互いが認識している上で。
見れば、彼女の目の周りが少し赤い。
その時既に、私の頭の中では嫌な想像が生まれていた。
何があったのか、など聞くまでも無いだろう。
「いじめられちゃいました」
彼女がそう小さく呟いたかと思うと、
バタン・・・
居間のドアが静かに閉まっていた。
「・・・・・・・・・」
ああ。
まぁ、そうだろうな。
という感想しか頭に浮かんでこない自分が、本当に嫌になった。
・・・・・・・・・
あの明峰園というすずめちゃんが編入する筈だった学校は、先日、知り合い・・・というか顔見知りの機械に半壊された。
そりゃあもう滅茶苦茶に。
建物は半壊半焼。
当時学校に残っていた生徒のほとんどが死亡した。
その為、経営者側が現段階での学校の運営を困難と見なしたのか、全生徒を地区の近隣学校に編入させる運びとなった。
勿論、その当日に編入手続きを済ませていたすずめちゃんも生徒の一人として、元々編入する筈だった学校からは少し離れた場所になるけど、また別の学校に通う事になった。それが彼女にとって幸運か不運かは別としてね。
・・・まぁ、結局の所、彼女が殺人を犯した、という事実はそんな大きな事故や地区の学生の大規模な編入程度で有耶無耶に出来るほど小さくは無かったって事だ。彼女がいじめられる可能性など、考えなくても、嫌という程分かりきっていた事かも知れない。
それから程無くして、お遣いに行っていた私の使用人も帰ってきた。
彼女は帰って来るなり、すずめの帰宅にも気付いたようだ。
そして直ぐに、私の微妙な雰囲気を察した。
「・・・どうかされましたか?」
怪訝な顔で、何があったのかを問いただしてくる。
私の・・・多分、嫌な表情と、中途半端な時間帯にすずめが帰宅している事について。
私はそこで咄嗟に嘘を吐こうかと逡巡したが、直ぐにその必要性の無さと、そんなモノに意味は無い、という事に気付いた。
だから私は正直に言った。
下手な婉曲やオブラートなど使わず、そのまま。
彼女が呟いた一言を。
「・・・いじめられたんだって」
「・・・」
そうですか・・・
せろりは小さく頷き、その瞳を静かに伏せた。
せろりの長いまつげが微かに震えていた。
彼女は少し黙った後、パッと顔を上げ、
「お昼の準備、直ぐに致しますね」
と笑顔で台所に向かっていた。
「・・・・・・・・・」
その後ろ姿を、私は黙って見ている事しか出来ない。
本当に無力なんだなぁ、とつくづく思ってしまう。
そして私は無力だから、学校で虐められ悲しんでいる彼女にしてやれる事が何も思いつかないから、だからせろりにすがってしまう。
「悪い・・・後で様子を見に行ってくれ」
彼女を励まして欲しい、と。
同世代だから、とか、同性だから、とか、中年のおじさんに年頃の女子高生の悩みを理解できる訳無い、とかそんな理由じゃない。
ただ単純に。
「・・・ごめんなせろり」
悲しんでいる少女を、この目で見たくなかっただけだ。
「いえ、私で良ければ」
彼女は何の疑いも無く、すずめを励まそうとしている。
そんな彼女が、本当に大人びて見えた。
本当に・・・何も・・・励ましの言葉が思い浮かばなかった。
無言の食卓。
嗚呼、楽しく無い。
「・・・・・・・・・」
すずめちゃんは一言も喋らず、というか喋ろうともせず、ずっと下を向いたまま昼食のオムライスを口に運んでいる。
ちむちむ・・・
ちびちび・・・
ほんと、そんな感じでご飯を少しずつ食べていたよ。
それほどまで、学校で嫌な事を言われたりされたんだろうか?
いじめる奴の気持ちなんか分からないし、分かりたくも無いけど、それでもこんな風に傷付いている彼女を見ると、何で人間はこうなんだろうと、つくづく思ってしまう。
何でわざわざ人を傷付けるのだろう。
みんな仲良くやれば良いのに。
と、率直に思ってしまう自分は、まだまだ子供なのだろうか。
本当は私が考えている程、学校は単純なモノじゃ無いのだろうか。
彼ら思春期の人間にとって、集団における自己の保身というモノは最重要事項なのだろうか。
その為に、他者を傷付ける事になっても。
・・・・・・・・・
私には解らない。
だって私も、そうやっていじめられてきた人間だから。
・・・・・・・・・
まぁそんな事をグダグダ考えた所で、彼女に掛ける言葉が見つかる訳でも無いのだけど。
はぁ。
「・・・・・・」
どうしよう?
食卓を囲むもう一人の少女に目配せをした。
「・・・」
ふるふる。
せろりは黙って首を横に振るだけだった。
どうやらここは静観が最良らしい。
下手な励ましなんかは逆効果なんだろうね。
・・・・・・・・・
そこからまたしばらく沈黙が続く。
カチャ・・・カチ・・・
食器とスプーンがぶつかる音だけが寂しく響いていた。
「・・・あ、そういえば」
と、突然何かを思い出したように顔を上げたのは、私の可愛い使用人だった。
「先程、旦那様の入院していた病院で警察の方を見かけたんですけど」
ピク。
スプーンを握る手が一瞬止まる。
警察という言葉が私の思考に引っ掛かった。
「・・・警察?あの病院に?」
「ええ、はい。何か聞き込みをされていた様子でして・・・」
せろりは言って、少しだけ視線を隣の少女に向けていた。
彼女なりに少しは気にしているらしい。
「・・・・・・・・・」
すずめちゃんはそんな視線を知ってか知らず、ただ黙って皿の上のオムライスに目を向けていた。
あんなに美味しそうなオムライス(せろりが作る飯は何でも美味いよ)を、あんなに美味しくなさそうに見つめる少女も大概痛々しいけど。
しかしこの場合、せろりの気遣いは無用だろう。
すずめちゃんが私達の会話に参加する気は無さそうだ。
今はそっとしておこう。
「ふぅん・・・で、それがどうかしたの?」
もぐもぐ。
行儀の悪い大人である私は、物を口に入れたまま尋ねた。
「あ、いえ。特に気になる事は無かったんですが。・・・ただ」
彼女は一呼吸置いて、
「病院から出て、帰り際に見たパトカーの中に不知火様が居ました」
そう、言った。
「・・・・・・・・・」
もぐもぐ。
ああ、今日のオムライスは何て美味しいんだろう。
「・・・あの人逮捕されたのでしょうか?」
せろりは何とも軽い調子で、そう私に訊いてくる。
「・・・もぐもぐ」
そんな彼女の問いに、私は直ぐには答えなかった。
「もぐもぐ」
オムライスを咀嚼するのを止めない。
先程せろりは、特に気になる事は無かったんですが・・・と可愛らしくのたまっていたが・・・
ごくん。口の中の物を飲み込む。
ああ、美味しかった。
「・・・あのね、せろり」
ふぅ。
落ち着こう。
ちょうどオムライスも食べ終えた事だし。
「不知火がパトカーに?」
もう一度確認する。
「ええ、確かにあれは不知火様でした」
自信満々。
・・・何故だ?
身内が逮捕されたかも知れないというのにその態度はどうなのだろう。
というか恋人が今そういう状況にあるかも知れないのに、当のすずめちゃんはどう思っているんだろうか。
「・・・・・・」
ああ、うん。
特に興味無いみたい。
ちびちびとまだ飯を食っている。
その表情に、特に変化は無い。
「うん」
どうやら聞き間違いではないらしい。
・・・だとすると。
「・・・・・・・・・」
ああ、そう。
あれだ。アレ。
いつもこうやって、誰かが何て事無いタイミングで、ありふれた日常の中でフワッと軽い気持ちで運んでくる、アレ。
そう。
「・・・超気になるんだけど」
嫌な予感ってやつだ。
‐午後三時‐
食後のゆったりとした時間も過ぎ、さて昼寝でもしようかと、怠惰な思考が蔓延し始める魔の時間帯。
その時、私はソファの上でだらりとしていた。
「・・・ふぁ」
うとうととした心地よい睡魔に誘われながら、部屋の隅でせっせと掃除に励んでいるせろりをボーっと眺めていた。
「ん・・・しょ」
床の染みが気になるのか、彼女は熱心にその一点のみを磨き続けている。
そんな少女が愛らしくて、自然とニヤニヤしてしまう自分が居た。
「・・・・・・」
いや、やめておこう。
そのまま彼女を見続けていると妄想ハイウェイに乗り上げてしまう。
そう思い、私は本当に昼寝をすべく目を閉じる事にした。
目を閉じただけで一気に眠気が全身を包み込む。
そんな意識の混濁の中、ふと、湧き上がってきたのは僅かな懸念だった。
さっきのせろりの話。
警察と不知火。
すずめの学校での一件。
いじめ。
将来の事・・・は、どうでも良いか。
そんな、考えるのも嫌になる問題は、ひとまず起きてからで良いだろう。
と、私は自分で勝手に納得をして、とりあえず昼寝を断行する事にした。
「・・・はぁ」
・・・けど。やっぱり無理か。
昼食の後、一人、部屋に戻ってしまった彼女の事が頭から離れない。
いくら満腹で眠かろうと、彼女の寂しそうなあの後ろ姿は、そうそう消えるものじゃなかった。
すずめちゃんは今、どうしているのかな・・・
そんな憂いだけが、微かに頭の隅に残っていた。
・・・・・・・・・
それから程無くして、私の意識は快眠という名のヘブンに、
ジリリリリィィンッ!
・・・連れて行ってはもらえなかった。
「んー・・・せろりー・・・出てくれぇ」
私はそのけたたましい電話のベルから逃れるように、ソファの上で寝返りを打った。
あと五秒くらいで眠れたというのに・・・忌々しい。
つーか最高のタイミングだ。
誰かが狙って私の安眠を妨害したとしか思えない。
誰が?
何の為に?
「あ、はい。今出ます」
せろりが急いで電話の傍へと駆け寄る。
孤軍奮闘していた床掃除を中断してきた為か、その手にはまだ濡れた雑巾が握られていた。
・・・ガチャ。
・・・ィィン。
僅かな余韻を残して、あのうるさいベルがようやく止んだ。
「・・・もしもし」
彼女が通話を始めた。
相手が誰なのかは、その時点で既に予想が付いている。
「あ、おに・・・不知火様」
彼女は相手の名前を確認して、目だけを私に向けていた。
ちょっと口が滑ったように聞こえた気もしたが、まぁどうでも良いだろう。
彼女の視線が、
・・・どうしましょう?代わりますか?
と私に訊いてきたが、私はそれを無言で返した。
「・・・(めんどい、用件だけ聞いて)」
ごろり。
やっぱりソファからは起き上がれそうも無いな。
そんな私の様子を、せろりが無表情で見詰めていた。
「・・・(・・・)」
一瞬、彼女が溜息を吐いた様に見えたが、見間違いだろう。
こく。
せろりが小さく頷いた。
どうやら了承したらしい。
視線と視線だけの会話。
言葉の要らないアイコンタクト。
それで良く意思疎通が出来るものだと感心しないでも無いが、そこは私とせろりの仲だ。
深い所で繋がっているのさ。
「・・・はい、ええ・・・そうです」
受話器越しに相手の話を確認するせろり。
何度も頷いては、その都度私の顔色を窺っている。
そして数分後。
「分かりました。・・・では、そうお伝えします」
ガチャン。
ようやく終わったようだ。
「・・・何の電話だった?」
とりあえず、軽い気持ちでそう尋ねた。
用件の内容云々はどうでも良いとして、とにかく軽い用事程度であって欲しいと心の底から思っていた。
「ええ・・・それが」
そう言った彼女の表情が、既に電話の内容を物語っていた。
「ちょっと良く分らない電話だったんですけど・・・」
少し申し訳なさそうに彼女は口を開いた。
「例の学校襲撃事件に関して少し気になる事があったらしく、警察関係を調べていた所・・・何やら不穏な動きがあったようで」
「・・・不穏な動き?」
「ええ」
神妙な面持ちでせろりが頷く。
「・・・詳しくはまだ不知火様自身にもはっきりとはしていないみたいでしたけど・・・それを調べている過程で、何故か逮捕されたようです」
そこだけ分からない、といった風に首を傾げている。
「何故かって・・・まぁ」
何となくは分かるけど。
多分、警察の極秘資料や、それに関連する〟何か〝を見たんだろう。
いや、直接何かしらの資料を見た訳では無く、ただ単純にその情報を耳にしただけかも知れない。
何の情報かは分からないけどね。
それを、不知火は気になって調べていた訳だ。
なんか怪しい。そんな不穏な匂いを嗅ぎつけたのだろう。
その結果、警察に拘束されてしまった訳だけど。
「それで・・・何でうちに電話を?」
この前の事件つながりで私に連絡を入れたという事は、つまり、私かすずめちゃんに関係のある話だという事になる。
どっちにしたって迷惑な話だけど、目的の人間がはっきりしていた方が今後の理解も早い。
せろりもそれが分かっているのか、出来るだけ解り易く、不知火の伝言を噛み砕いた言葉で説明してくれた。
「ええ、それが・・・どうもすずめさんのお父様の研究所に警察署からの協力要請があったみたいで」
「要請?何の?」
「それが・・・」
そこでせろりが言葉を濁した。
見れば、その顔には困惑の色が浮かんでいる。
何やら自分では解らない言葉を必死に私に伝えようとしている様だ。
そんな微妙な顔をしているせろりだったが、直ぐに、自分で考える事を諦め、不知火の言葉をそのまま私に伝える事にしたようだ。
意を決して、彼女がこう言った。
「・・・鴎が狙われている。そう仰っていました」
「・・・・・・」
せろりの言葉が私の頭の中で反芻されていく。
「とりあえず、旦那様にそう伝えれば分かると仰っていましたので・・・」
自分では理解出来ないのが申し訳ないのか、彼女が悲しそうに顔を伏せた。
しかし、私にとっては、その一言で十分だった。
その一言で、だいたいの状況は把握できた。
警察の不穏な動き。
例の研究所への何らかの要請。
その情報をどこかで入手した不知火。
そして逮捕。
・・・そう言えば、今日の昼頃にその研究所の現所長の記者会見か何かがあるってどっかで見たような・・・
それも、何かしらこの不知火の電話に繋がっていそうで嫌な気分だった。
まぁ、何の会見かはうちでは確認出来ないんだけれども。
だってテレビ無いし。
・・・・・・・・・
不知火は、その警察の研究所への協力要請が、何らかの形で自分や私達に不利益をもたらすと危惧して、独自に調査していたのだろう。
その結果、例の機械兵器の名前に辿り着いた、という訳だ。
・・・鴎が狙われている。
何がどうなって、とかそんな諸事情などすっ飛ばして、不知火はそれだけ私に伝えたのだ。
そこに警察がどう絡んでいるのかも判らないまま。
しかし、その言葉からは、恐らく不知火も感じたであろう不穏な匂いが、確かに漂っていた。
それが、どうにも嫌な匂いだった。
ふと、その瞬間、私は一か月前の警察署での出来事を思い出していた。
『・・・私は要人警護の為に作られた、機械・・・鴎・・・』
常人では考えられない程の怪力を見せつけ、私の事をすんなり殺すと言っていた、あの機械。
すずめの為ならば、虫を殺す様に人を殺せる、冷徹な機械。
その鴎が、今、何かしらの理由で狙われているという。
兵器としての彼女を狙っているのだという事なのだろうか?
だとすると相当にきな臭い感じがする。
そこに、警察や例の研究所も関わっていて・・・
あー・・・考えるのが面倒臭くなってきた。
訳が分からない。
情報が少な過ぎる。
ただ漠然と、あの機械が狙われているという情報を受け取っただけであって、現状何がどうなるかも判らないのだ。
不知火が私に何を望んでいるのかも、私に何が出来るのかも、ね。
何も分からないさ。
「・・・で、他には何か言ってなかったか?」
とりあえず、あるだけの情報で現状を勘ぐるのは止めて、事態の進行に任せよう。
下手に動くよりはマシな筈だ。
「あ、えっと・・・そうですね」
あごに指を当てて考えるせろり。
「警察はあてにならなそうだ・・・と、そう仰っていました」
「ふぅん」
まぁ、最初からあてになんかしていないけれど。
頼りになんかこれっぽっちも思った事は無い。
それどころか、私の立場であれば、彼らは敵対していると言っても過言では無い集団だ。
だから、この場合のあいつの言葉はそういう意味じゃ無い。
保護してくれるとか、手助けしてくれるとか、そういう意味の〟あて〝では無いのだろう。
・・・多分、信用するな、という事だろう。
どんな情報も、恐らく私達にとってマイナスの情報でしかないという事だ。
「だいたい分かった。・・・で、奴は今どこに居るんだ」
ある程度状況を把握した上で、まぁ何となく、少しは奴の心配でもしてみようかと、そう思わないでも無かった。
まだ警察に拘留されているのかな?
だとしたら、さっきの電話は警察署からという事になる。
それはそれで少しマズイ。
それに、奴にはもう少し動いてもらう必要がありそうだから、拘束されているという状況からは早々に脱して欲しい所だった。
出来れば釈放されていて欲しい、とね。
「不知火様ですか?」
キョトンとするせろり。
「あの人なら多分、自宅に居ると思います」
軽い口調でそう言った。
何でも無い事のように。さも当たり前のように。
「自宅ってお前ん家にか?」
だとしたら釈放されたのかな?
ちょっと首を傾げてしまう。
せろりが不知火を目撃したのが正午あたりだろうから、今現在午後三時なので、実質三時間程度の拘留という事になる。
警察署から、そんなに早く解放されるものだろうか。
それともただの事情聴取だけだったのだろうか。
何とも呆気ないが、まぁ、それならそれで良いだろう。
適当に納得しかけた所に、せろりが真実をくれた。
「ええ。拘置所から抜け出したそうです」
何でも無い事のように、とんでもない事を言う癖は、どうやら生まれつきらしい。
というか、またあいつは法を無視した行動に出たようだ。