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異世界でのなれそめ  作者: 霧里 野蒜


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1/1

なれそめー夜の語らい

 カクヨムに連載していた”異世界の王子、古の国を復興す”から転生した主人公のラインハルトが新しく起こした村に作った建物で、一緒について来てくれたソフィアさんと屋上庭園で過ごした夜を本文から取り出し、脚色しました。よろしかったら、こちらも一読お願いします

 僕とソフィアさんは、屋上の庭園で食事を終えて、お酒を飲んでいる。夜の星灯りで濡れた彼女の体が綺麗だ。華奢に見える彼女は出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでおり、モデルのような体型である。こんな美しい彼女が僕に好意を寄せているのは今でも不思議な気分である。

 僕はソフィアさんに見惚れて言う。

「綺麗です」

「そうですね、星が綺麗な夜です」

「いや、上手く言えませんが、ソフィアさんのことを綺麗だと思っています。それに、なんでこんなに綺麗な人が僕と一緒にいてくれるのが不思議な気分です。ソフィアさんのお父上からの申し入れだとしたら済まなく思います」

「王子、なんてことを言うのですか。私は私の意志で貴方についてきています。私は私の選択を後悔していません」

 彼女は艶やかに笑いながら、僕に抱き着いてくる。

「私は王子が好きなのです。それ以外はありません」

 そう言いながら、ソフィアさんは、僕の肩越しに遠くの星を眺めている。


 ソフィアは、王子の肩に頭をのせながら、目を閉じた。

 瞼の裏に、初めて彼と言葉を交わした日のことが浮かんでくる。 

 王子が話始めたときのその声に私の体の中の何かが反応し始めたことを覚えている。その言葉の一言、一言が体に響く気がして、なんだろう、この感じはなんだと今までの過去の経験の中からこの違和感を探し始めた。探し始めて、思い当たらず、最終的には探し疲れて、迷子になった気がした。

 しかし、彼の声が頭に響き、お腹に、手に、足に、子宮にしだいに振動が伝わってくる。それは、動悸を激しくし、私を息苦しくさせるが、不快を伴わないもので、逆にその声を、それから至る状態を渇望している。不思議な気分であった。


 「ソフィアさん、どうかしましたか?」

 ボーっと僕の肩にしだれかかっているソフィアさんに声をかけた。

 「えー、大丈夫です。もう少し、こうしていたいのです。しばらく、このままでいさせて下さい」


 ソフィアは、アルコールに火照った頬にあたる風をやわらかく感じていた。気持ち良い。傍らの王子の甘い匂いが、昔の記憶を呼び起こす。

 最初に会った時は、王子はおどおどしていて、自信なさげに見えた。しかし、やることはすべて、私や家族の常識を越えた素晴らしい成果をもたらした。それを過小評価する彼は、真っすぐに私を見つめてくる。私は、その瞳に心を焼き尽くされるように思い、恐怖さえ感じた。でも、それは私だけの感情であり、彼の中の私は、ただの人であったのかもしれない。何も特別な扱いをされなかった。それに焦った。それを片想いというのかもしれない。

 そして、フローラさんが王子の前に現れた。彼女は王子を運命の人だと皆の前で堂々と告白した。その迷いのない態度がうらやましく、彼女の存在は私を不安にさせ、彼を取られる気がした。

 彼女は年下だけど、私とは違った。積極的だった。彼は優柔不断に見え、その積極性に押し切られる感じがした。それがますます私を不安にさせ、その事を彼の前では見せないようにしていたが、隠しきれない思いは、急に怒り出したり、泣いたり、周りの人を困らせることになった。


 「ソフィアさん、寒くないですか?」

 僕の肩に長い間、頭をのせているソフィアさんに声をかけた。

 「ちっとも、気持ちいいです。この時間の流れが心地よくて。もう少し、どうぞこのままでいさせてください」


 ソフィアは、夢の中にいる。夢が覚めるのを恐れて、彼女ははだけた自分の胸元をきゅっと両手で絞めた。

 転機が訪れた。

 王子は別の街の開拓のために新しい家を作り、私は彼と同じ家に住むことになった。それも二人っきりである。

 嬉しかった。

 嬉しかったが、思いとは裏腹に彼と近づく出来事が何もない。その距離が縮まることがないことが寂しく泣いた。優しい彼は私を慰める。私は彼の腕に抱かれた。その安心感は私に新しい夢を見せ、深い眠りを連れてきた。

 翌日から彼の態度は変わった。なんでも私に聞いてくれるようになった。また、私を大事にするとも言ってくれるようになった。彼の声は前にも増して私の体を震わす。私は彼と同調するように思えた。


 「ソフィアさん、夜景を見るのはこのくらいにしましょう。風邪をひいてしまうかもしれません」

 僕はソフィアさんに声をかける。ソフィアさんは肩に預けていた頭を戻し、目をあけて僕を見つめる。

 「王子は私のことを好きですか?」

 「好きですよ」

 「そうですか?ホントに好きですか?」

 「本当です。嘘をいう訳ないじゃないですか?なんでそんなことを聞くのですか?」

 「そうですね。私は鑑定が使えません。王子の気持ちを確かめることができません。だから、毎回聞くのです」

 その言葉が胸に刺さった。彼女がどれほどの不安を抱えながら、それでも僕のそばにいてくれているのかを、初めてはっきりと理解した気がした。僕はソフィアさんの手をそっと握った。

 「いつ聞いても変わらないと思います、僕はソフィアさんが好きです。いつも、いつまでも一緒にいてください」

 「それはプロポーズでしょうか?」

 彼女の濡れた瞳が誘うように僕を見上げる。僕が何か言おうとすると、ふいに、彼女は唇で僕の言葉を飲み込む。僕は彼女の柔らかい唇から唾液を受け取る。お互いの胸にそれぞれの想いが落ちていく。


 彼女との甘い夜が過ぎていく。

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