表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不折の刃 〜Unbroken〜  作者: 野良猫〜すぐbroken〜
9/14

一本

鍛冶場の床に、また木の棒が落ちた。

乾いた音。

ラピスは息を吐く。

腕が重い。

一心は何も言わない。

ただ棒を構える。

「拾え」

ラピスは棒を拾う。

構える。

踏み込む。

カン。

弾かれる。

床。

「……」

ラピスは黙る。

もう一度。

拾う。

構える。

振る。

カン。

また弾かれる。

一心の声。

「力を抜け」

ラピス

「抜いてる」

一心

「嘘だ」

ラピス

「抜いてるって!」

また弾かれる。

床。

鍛冶場の炉が揺れている。

ラピスは棒を拾う。

呼吸が荒い。

腕が震える。

それでも構える。

一心は動かない。

ただ待っている。

ラピスは踏み込む。

振る。

カン。

弾かれる。

床。

ラピスは少しだけ苛立つ。

息を吐く。

ふと。

昨日の広場を思い出す。

剣士。

重い剣。

叩きつける斬撃。

父の背中。

巨漢の賊。

折れた剣。

一心の声。

自分より力が強い相手には勝てない。

ラピスは目を閉じる。

一度だけ。

深く息を吐く。

棒を構える。

力を抜く。

腕。

肩。

指。

全部。

一心が動く。

ラピスは見る。

肩。

足。

呼吸。

今まで見ていなかったもの。

全部。

その瞬間。

体が動いた。

カン。

音が一つ。

一心の棒が逸れる。

ラピスの棒が

一心の喉元で止まっていた。

静寂。

ラピスは動かない。

自分の棒を見る。

「……」

一心は棒を見る。

少しだけ目を細める。

そして言う。

「一本だ」

ラピスは顔を上げる。

「……今の」

一心

「一本」

それだけ。

ラピスは何も言わない。

少しだけ。

ほんの少しだけ。

口元が緩む。

一心は言う。

「だが」

ラピスを見る。

「まだ弱い」

ラピスは頷く。

「知ってる」

でも。

その声は少し軽かった。

鍛冶場の炉が静かに燃えている。

一心は棒を構える。

「続けるぞ」

ラピスも構える。

「うん」

その日。

ラピスは初めて

一心から一本取った。

ラピス

「今の見た?」

一心

「見た」

ラピス

「もっと褒めて」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ