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代金
鍋の湯気が立っていた。
鍛冶場の奥、小さな机。
黒鉄一心が椀を置く。
「食え」
ラピスは少し驚いた。
椀を見る。
温かいスープ。
パン。
しばらく黙ってから言う。
「……」
椀を持つ。
そして小さく笑った。
「ここは鍛冶屋だ」
一心は鍋を見ている。
ラピスは続ける。
「飯屋じゃない⋯って言わないんだね」
一心は短く答える。
「腹が減ると人は死ぬ」
ラピスは少し止まる。
「ありがとう」
それから食べ始めた。
昨日から何も食べていない。
体が熱くなる。
一心は黙っている。
やがてラピスの手が止まった。
「昨日の話」
一心は鍋に水を足す。
「刀のことか」
ラピスは頷く。
「作って」
一心は言う。
「時間がかかる」
ラピスはうなずく。
そして言う。
「代金は必ず払う」
一心は何も言わない。
ラピスは続ける。
「今はまだ、ないけれど」
正直に言う。
「でも」
目を逸らさない。
「必ず払うから」
鍛冶場が静まる。
炉の火が揺れる。
一心はしばらくラピスを見ていた。
だが何も言わない。
ただ立ち上がる。
炉の前に戻る。
鉄を火に入れる。
ラピスはその背中を見ていた。
一心は槌を持つ。
カン。
火花が散る。
ラピスは小さく息を吐く。
「……わかった」
一心は答えない。
ただ鉄を打つ。
カン。
その音が、鍛冶場に響いた。
ラピス
「代金は必ず払う」
一心
「そうか」
ラピス
「ちなみに、ごはん代はサービス?」




