侍
復讐の日から二年。
街は今日も騒がしかった。
市場の声。
いつものパンの匂い。
行き交う人。
一心とラピスはその中を歩いていた。
前より背は少し伸びた。
腰には刀。
黒い鞘。
歩き方は軽い。
そのとき。
子どもが虫かなにかを追いかけ、
道に飛び出した。
「まてー!」
その先。
馬車。
御者が叫ぶ。
「おい!どけー!!」
ラピスの足が止まる。
一瞬。
次の瞬間。
走った。
子どもを抱き寄せる。
ラピスの目は
馬車を見ている。
距離。
速さ。
車輪。
風。
半歩。
体をずらす。
馬車が横を通り過ぎた。
風が髪を揺らす。
子どもがぽかんとする。
ラピスは笑う。
「大丈夫?危ないよ〜」
子どもが頷く。
「うん」
ラピスは子どもの頭を撫でる。
「気をつけてね!」
子どもは走っていった。
その様子を
少し離れた場所で一心が見ていた。
ラピスが戻る。
「ねぇねぇ、見てた?」
一心
「ああ」
ラピスは笑う。
「修行の成果!」
一心は言う。
「そうか」
少し間。
ラピスが木の棒を拾う。
鍛冶場の裏。
カン。
棒がぶつかる音。
一心の棒が弾かれる。
ラピスの棒が止まる。
一心の喉元。
ラピス
「また一本〜!」
一心
「そうだな」
ラピスは笑う。
「弱くなった?」
一心は肩をすくめる。
「俺は刀匠だ」
少し間。
「侍じゃない」
ラピスが首を傾げる。
「サムライ?」
一心は炉の火を見る。
「刀を使う者だ」
ラピスは腰の刀に触れる。
少し考える。
それから言う。
「じゃあ私だね」
一心は少しだけ笑った。
ラピス
「弟子が強すぎるね〜」
一心
「普通だ」
ラピス
「じゃあ師匠が弱いね!」




