復讐
ラピス
「明日、賊を殺す」
一心
「そうか」
一心
「見届ける」
山道は静かだった。
木々の影。
風の音。
ラピスと一心は歩いていた。
そのとき。
前の道に男たちが立った。
五人。
山賊。
全員が剣を持っている。
衛兵の剣だ。
柄も鞘もばらばら。
奪ったものだとすぐ分かる。
一人が笑う。
「おい」
「女じゃねえか」
ラピスは止まる。
その奥。
一人だけ、動かない男がいた。
大きい。
肩が岩のようだ。
手には剣。
両手剣。
それを
片手で持っている。
巨漢が笑う。
「……ああ」
「思い出した」
ラピスを見る。
「いつか殺した剣士の娘か」
ラピスは静かに言う。
「……そうだよ」
巨漢が剣を持ち上げる。
片手で。
重い剣。
空気が鳴る。
「復讐か?」
ラピスの手が刀に触れる。
でも。
抜かない。
一心の声が頭に浮かぶ。
抜く必要がある時だけ抜け。
ラピスは巨漢を見る。
腕。
足。
重心。
呼吸。
巨漢が踏み込む。
剣が振り下ろされる。
速い。
重い。
ラピスはほんの少しだけ動く。
横に一歩。
力を入れない。
体を流す。
巨大な剣が空を切る。
その瞬間。
ラピスの刀が動く。
抜かない。
鞘のまま。
大きな山賊の首を薙ぐ。
巨漢の目が止まる。
体が揺れる。
そして。
崩れ落ちた。
地面。
重い音。
静寂。
ラピスは息を吐く。
刀はまだ鞘の中。
「次」
ラピスが振り向く。
山賊が倒れていた。
四人。
一心が立っている。
何事もなかったように。
一心が言う。
「終わったか」
ラピスは巨漢を見る。
それから答える。
「うん」
一心
「抜かなかったんだな」
ラピスは頷く。
「必要なかった」
巨漢が地面に倒れている。
息はある。
ラピスは見下ろす。
刀はまだ鞘の中。
巨漢が潰れた喉から声を出す。
「殺さないのか?」
ラピス
「⋯⋯もう」
山道。
風。
巨漢の呼吸。
「終わった」
静寂。
一心は何も言わない。
ただ歩き出す。
ラピスも歩く。
復讐は終わった。




