表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不折の刃 〜Unbroken〜  作者: 野良猫〜すぐbroken〜
1/14

絶対に折れない刃

初投稿です。

小説を書くのは初めての素人ですがよろしくお願いします。

鍛冶場の火は、夜でも消えない。

山の奥。

刀匠、黒鉄一心の鍛冶場。

炉の火が赤く揺れ、壁を染めていた。

カン。

槌が振り下ろされる。

カン。

赤く焼けた鉄が、ゆっくり形を変える。

カン。

夜の山に響くのは、その音だけだった。

火。

鉄。

槌。

それだけあればいい。

刀匠とは、そういう仕事だ。

その夜、戸が開いた。

風が吹き込む。

炉の火が揺れる。

一心は槌を止めない。

カン。

足音が近づく。

軽い。

子供だ。

カン。

そして――

血の匂いがした。

一心は槌を止めた。

鉄を炉に戻す。

振り返る。

そこに立っていたのは少女だった。

服は泥と血で汚れ、腕から赤い滴が落ちている。

髪は乱れ、呼吸は荒い。

それでも泣いてはいない。

目だけが、小さく燃えていた。

一心は言う。

「ここは鍛冶場だ」

静かな声。

「病院じゃない」

少女は一歩だけ前に出た。

足がふらつく。

それでも倒れない。

そして言った。

「……剣を」

声はかすれている。

一心は黙っている。

少女は続ける。

「剣を作って」

拳が震える。

血が床に落ちる。

「絶対に……」

言葉が途切れる。

呼吸が乱れる。

それでも言った。

「絶対に……折れない刃を……」

鍛冶場が静まり返る。

外では風が鳴っている。

一心は少女を見ていた。

怒り。

悲しみ。

そして、消えそうな決意。

一心は炉の火を見る。

火はまだ強い。

鉄もまだ赤い。

槌を持つ。

カン。

鉄を打つ音が、また響いた。

少女が顔を上げる。

一心は鉄を見たまま言う。

「俺の刀は」

槌が振り下ろされる。

カン。

火花が散る。

「折れない」

少女の目が揺れる。

一心はそれ以上説明しない。

ただ鉄を打つ。

カン。

カン。

少女の体が揺れる。

血を流しすぎている。

一心は槌を置いた。

「立て」

少女は動かない。

一心は近づく。

腕を掴む。

軽い。

驚くほど軽い。

「……死ぬぞ」

少女は何も言わない。

一心は溜め息をつく。

「奥だ」

鍛冶場の奥を指す。

「寝ろ」

少女はまだ動かない。

一心は言った。

「剣が欲しいんだろ」

少女の目が動く。

一心は続ける。

「なら死ぬな」

それだけ言う。

少女はふらつきながら歩く。

鍛冶場の奥。

小さな部屋。

藁の寝床。

そこに倒れる。

一心は水桶を持ってきた。

布を濡らす。

黙って血を拭く。

少女は薄く目を開けた。

「……名前」

一心は言った。

「黒鉄一心」

少女はしばらく黙っていた。

それから小さく口を開く。

「……ラピス」

一心は頷く。

「そうか」

少女の意識が遠のく。

炉の音が聞こえる。

カン。

カン。

鍛冶場で槌が振り下ろされる。

その夜。

山奥の鍛冶場で。

一振りの刃が。

静かに形を作り始めていた。

ラピス

「くろがね⋯いっしん⋯?変な名前」

一心

「なんか言ったか?」

ラピス

「ぐぅ〜」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ