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ビール券を着服しようとしてはいけません

作者: 神保康弘
掲載日:2026/07/13

 私はどこにでもいる普通に真面目な社会人で人並みに嘘ついたり適当な話をしたりもしますが基本的に事実は事実として書いています。

 あまり面白くはありません。

 あくまで想像の所は想像、推測で割り引いて考えていただいて違うと思いましたらその方が正しいかと思います。

 オレはガラスの十代。 ではなく20歳〜22歳の頃、新聞奨学生として東京都23区のある新聞販売店で働いていた。


 新聞奨学生にはAコースとBコースがあって私はAコースの集金ありで月給133000円プラス集金を給料日前日までに消化するとプラス10000円つく。Bコースは配達のみで98000円だ。ただしどちらも細かい雑用とか電話番もやらされる。


 このプラス10000円はよくできたシステムで、ごくまれに新聞代払わずに転居する客とか色々な理由つけて支払わない客対策としてとても有効だった。10000円つかないよりつく方がいいに決まっているので、そういう客の新聞代を自腹切って払ったり、何回通い詰めてもどうしても会えない客の新聞代を肩代わりして払っておき、後で会えた時にもらうなどしていた。




 新聞奨学生を卒業してからだいぶ後になって気付いたんだけど私が田舎から上京したのは2002年の2月13日で、2月は半月分、3月は未熟で社員さん達に迷惑かけていたけれど一カ月分の給料を貰えるはずだった。だけど3月の給料は新聞奨学生の給料と同じ133000円だった。これに気付いた時は、(あれ? あれあれ? マジ? そんなんあり?? たしかに気付くの遅過ぎたけど、天下の大新聞社よ! ただし業務委託みたいな立場の販売店だけど。)と思ったな。


 新聞奨学生生活がスタートするのは4月からなので給料はそこから24カ月なはずなのだ。バイトと同じ給料なら配達15万集金3万寮費引かれても15万よりは上だろう。いやはやセコい事するなぁ。


 この店には2年どころか2002年2月13日から2004年6月過ぎまでだいぶお世話になった。しかし理不尽な罰則が色々あって給料をいくらか引かされてとても不満だった。その罰則というのは……すいません実名で投稿してますのでちょっと書けない。新聞奨学生の安い月給から容赦なくいくらか引いて父親にお金の仕送りしたりすると、もう休みの日とかどっかに行く気も無くなる。


 何か文句を言ったら新聞奨学生という弱い立場なので自分だけでなく私の保証人になってくれた母にも迷惑がかかる。すぐに新聞奨学生をクビになって違約金払え! なんてことはないけれど、学生を辞め新聞販売店で働きながら違約金を給料天引きで払い働き続ける羽目になる人がいるのだ。




 私は酒も飲まずギャンブルもせずとりあえずクビにだけは絶対ならないよう真面目に仕事をしていたので店の人からは続けて仕事をして欲しいと思われていたようだ。実際何回どころか何十回も「この店に残ってよ〜! 続けてよ〜! 悪いようにはしないからさ!」と言われてはいた。

 残るかボケ!


 ただし続けた時にお給料はいくらいくらとか、ボーナスも新聞奨学生よりは少し下がるとか、仕事内容、時間、雑用について具体的な話は一切無し! (何考えてるんだこの人は? 純朴な田舎青年でもそんな話には騙されないぞ? 悪いようにはしないだけで説得できると思ってるのか?)と疑惑だけが増していく。



 店に残って仕事を続けるのは十分可能なのだ。新しい職場探して履歴書書いて電話して面接して受からなかったらまたやり直しで履歴書書いて……受かったとしても新たな職場、新たな人間関係、転居して住民票と転出届、転入届、それにその会社だけのルールとか……面倒に決まっている。残った方が楽なはず。



 しかしせっかく2年かけて仕事教えたのに他の店に行って働くか他の仕事やらせるのはもったいない、若い労働力を確保して店を維持したいって考えもあるとは思う。実は1番上の上司に回らない寿司屋に連れて行って貰ってご馳走されたこともある。でも連れて行ってあげると言われた瞬間の他の社員さん達、内心で(あ〜あ、あの子すっかり感激してるよ。騙されてるんじゃない?)と思っていそうなおかしな空気だったな。



 でも自分はこの店だけはダメだ! 絶対絶対ダメだ! ともう本能やら第六感やら全てが反対していたような気がする。後で考えてみてもそれで正解だった。



 ようやくタイトルのビール券の話である。新聞を契約する時のサービス品としてその店では洗剤とビール券のみをお客に渡していた。商品券とかあつかっている店もある。新聞の契約は基本的に3カ月6カ月1年とかでビール券も当然その長さの分だけ多くなる。ビール券は洗剤と違いチケット屋などで換金して現金に出来る。ビール券は専用の封筒みたいな袋に入れて10枚くらいいつも集金カバンの中に入れて持ち歩いていた。洗剤より持ち運びが楽だったのだが数年後にはそのビール券商品券は値引きにつながるとのことで禁止されてビール現物などをサービス品として渡すルールになった。




 私が店で働いて1年前後くらい経ってもう生活にも仕事にもだいぶ余裕が生まれ、お客とのトラブルとかにも柔軟な対処が出来るようになった頃、上司からこれ余ったからあげるよと言われてビール券を5枚貰った。私はお酒を全然飲めないからいらない、と一旦断ると、チケット屋にでも売ればいいよ! と言われて一応受け取った。後日チケット屋に持って行くとほんとに売れて、定価1枚500円の所400円で売れ、計2000円。結構高額買取だなと思ったものだ。450円で販売しているらしい。



 そしてこう考えた。(お客さんに契約の更新のサービス品として洗剤をあげて、店にはビール券を約束しましたと言ってビール券を貰ってそれをチケット屋に売れば儲かるんじゃね? オレって頭いい〜!)


 …………な〜んてバカなことをやるはずがない。立派な着服である。これ自分みたいな頭悪い人間が考えついたということは、過去には何人もの人間がやってるかも、いややってるはずで、数カ月くらいはバレはしないけど半年1年と経てば証拠揃えられてクビにされるんじゃね? クビにはならないけど処罰され同じ店で奴隷労働とか? 


 などと最悪の事態を色々想像し震えあがった。都会モンは恐ろしいこと思いつくなぁ……。だいたいビール券なんて余ったら他の客用にまわせばいいだけであって、余るはずないのだ。

 しかし儲かった金額が2000円だったから金銭感覚が大きく狂うようなことは無かったものの、もし儲けた金額が10000円20000円50000円……と高額だったならどこかで着服していたかもしれない。


 まあ長々と書いてしまいましたがあくまで推測で、頭の中まで調べたわけではないですけどね。あくまで若い学生にビール券を数枚あげただけで、処罰されるようなことした学生が悪いんでしょ? とこう言い訳できますね! 


 いやいやいや…………

 いやいやいやいや…………。





 上京したのが20歳過ぎで親から反対されまくりだったからクビになるようなことは絶対しないように気を付けてはいたけど、もしも上京が18歳くらいで、「新聞奨学生? いいよいいよ賛成!」とか「保証人? ええよなったるなったる!」みたいに全肯定お母さんみたいな反応だったらどうだろうかな。仕事を甘く考え過ぎて着服したかもしれない。いやはや……。

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