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嫌よ嫌よも嫌なんです…不味いんです…  作者: 双鶴


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19話

智幸と美寿紀の店は、少しずつ客が増え始めていた。美寿紀が通りに立ち、笑顔で声をかけることで、近所の人々が足を運んでくれるようになった。智幸は蕎麦の香りを強める工夫を重ね、麺の太さも安定してきた。


ある日、常連客になりつつある老人が蕎麦をすすり、満足げに言った。

「昔の味とは違うが、これはこれでいい。若い二人が頑張ってるのが伝わる」


その言葉に、智幸と美寿紀は顔を見合わせ、胸が熱くなった。小さな店に、少しずつ温かい空気が満ちていく。


だが、その噂はやがて美寿紀の両親の耳にも届いた。蕎麦屋の常連客が店に来て、こう言ったのだ。

「最近、若い二人の店が評判になってるらしいな。新しい味だが悪くないって」


父は眉をひそめ、湯呑を置いた。

「伝統を捨てた蕎麦が評判になるなど、許せん」

母は不安げに言った。

「でも……もし本当に客が集まっているなら、無視できないわ」


その夜、美寿紀は両親と向き合った。父は厳しい声で言った。

「お前は智幸と一緒にいるが、この店を裏切っていることを忘れるな」

母は焦ったように言葉を重ねた。

「でも、二人が頑張っているのは事実よ。伝統を守るだけでは、時代に取り残されるかもしれない」


美寿紀は涙を浮かべ、言葉を詰まらせた。

「私は……両方を失いたくない。店も、智幸も。どうすればいいの……」


父の頑なさと母の揺れる心。その狭間で、美寿紀の葛藤はさらに深まった。だが、智幸の店に集まり始めた客の声は、確かに未来の可能性を示していた。


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