表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌よ嫌よも嫌なんです…不味いんです…  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/24

18話

智幸の店は開店から数日が経っても、客足は伸びなかった。昼時でも空席が目立ち、通りを歩く人々は暖簾をちらりと見ても足を止めない。智幸は黙々と蕎麦を打ち続けたが、疲労と焦りが積み重なっていた。


ある夕方、美寿紀が暖簾をくぐった。エプロンを抱え、真剣な眼差しをしていた。

「今日から手伝う。放っておけない」


智幸は驚いたように顔を上げた。

「でも……君の両親が反対してる」

「わかってる。でも、私はあなたから離れたくない。店を盛り立てたい」


その言葉に、智幸の胸に温かさが広がった。二人は並んで厨房に立ち、試行錯誤を始めた。


美寿紀は接客を担当した。笑顔で客を迎え、蕎麦の説明を丁寧に添えた。智幸は蕎麦の香りを強めるために粉の配合を工夫し、麺の太さを揃える練習を重ねた。


最初の客は近所の主婦だった。美寿紀が「新しい蕎麦屋なんです。ぜひ味を見てください」と声をかけると、彼女は席についた。智幸の蕎麦をすすり、少し驚いたように言った。

「香りがいいわね。まだ荒いけど、頑張ってるのが伝わる」


その言葉に二人は顔を見合わせ、微笑んだ。


翌日も、美寿紀は通りに立ち、声をかけた。少しずつ客が増え、店内に笑い声が響くようになった。智幸は厨房で汗を流し、美寿紀は客と会話を重ねた。二人の努力が、店に温かい空気を生み出していった。


夜、片付けを終えた後、美寿紀は椅子に座り、疲れた笑みを浮かべた。

「まだまだだけど、少しずつ前に進んでるね」

智幸は頷き、彼女の手を握った。

「君がいてくれるからだ。俺一人じゃ続けられなかった」


その言葉に、美寿紀の胸が熱くなった。両親の反対はまだ続いている。だが、二人で並んでいる限り、未来は少しずつ形を見せ始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ