37 フォールゴールド2 現精霊王
翌朝、フォールゴールドの薬草卸店で薬草を買い取ってもらい、市場へ野宿の為の買い出しに行くテラとファルとリモ。
どこまで買い物に行くか分からないから、ということで、別行動のリーフとヘリックスの依り代は宿に置いたままにしてある。
リーフはひとり別行動でと思っていたのだけれど、ひとりだけで別行動をとる理由が思い浮かばず、結局、『ヘリックスと一緒に守り人探しをする』という理由にしてしまい、ヘリックスも残ることになってしまった。
「ごめんね……ヘリックス。巻き込んでしまって」
「いいのよ。ひとりだけ別行動する理由、私も浮かばないもの」
ヘリックスは苦笑する。
「ぼくだけで別行動なんてしたこと無くて……」
「まあそうよね。でも、私は部屋で留守番しててもいいんだし、リーフだけで行ってきていいのよ? 私も一緒に行っていいのかしら」
「いいよ。むしろ居てくれたほうが嬉しいかな……」
「そう。だけど、ジオとはリーフが話してね。私は付き添うだけよ?」
「うん、わかってる……」
宿からほど近い広場にやってきたリーフとヘリックスは、広場の中心にあるイチョウの大木に近づいていく。地面は落ち葉が積もり、黄色い絨毯が敷き詰められているようだった。
すると、ふたりが訪れるのを持っていたかのように、静かに葉が舞い上がる。
そして、金色の光がゆるやかに揺らぎ、イチョウの大木からイチョウの精霊ジオが顕現した。
彼の姿は威厳に満ち、大地を統べる精霊王にふさわしい大きな両翼と風格がありつつも、金の瞳がとても美しい青年の精霊王だった。
「久しぶりだね、ヘリックス。そして、初めまして。リーフ」
「お久しぶりね、ジオ」
「初めまして、ジオ。ぼくはリーフ。……知っていると思うけど」
「もちろん、知っているよ。君は約900年前、私がお願いして精霊界の意志として生まれたのだから。君に会いたかったのに、君はちっとも精霊界に顔を出さなかったね。だから今日はとても嬉しく思ってる。会いに来てくれてありがとう、リーフ」
そう言って微笑むジオの言葉を聞いて、リーフはジオに訊かずにはいられなかった。
「どうして、お願いしたの?」
「どんぐりの可能性、成長、私よりもっともっと強くなれる存在。大いなる可能性を秘めた君、どんぐりの精霊に、この大地を任せたいと思ったからだよ」
ジオは真剣な眼差しでリーフをまっすぐ見て答えた。
「ぼくの可能性なんて、そんな大したものじゃないのに……」
「そんなことはないと私は思うけどね。数日前の力の解放、凄まじかったね。あれほどの力を持っているのに、大したものじゃないって言うのかい? あの力の解放が無くても、すでに君は精霊王を除けば、大陸一の力を持っていた。そしてさらに力が解放されて、飛び抜けた力になってる」
ジオは穏やかな口調でリーフの力を高く評価していることを率直に伝えた。
「そうかもしれないけど……ぼくはまだ……」
「まだ、成長していないって言うのかい? そうだね……君にちょっと昔の話をしようか。ただその前に、場所を変えよう。いいかい?」
「いいけど、どこへ?……精霊界?」
「ああ、精霊界へ行こうか。私の住処がいいかな。私の後に着いてきて。ヘリックスも。それじゃ、――ヴェルデシア、ジオ・グローヴ・ガーデンへ」
「「ヴェルデシア、ジオ・グローヴ・ガーデンへ」」
いつも『刻まれた花言葉と精霊のチカラ』を読んでいただき、ありがとうございます!
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