001 リーフ
テラが眠りについてから
ぼくたちは必死になって村をつくり上げた。
野菜を植えて、果物の木もよく育って、麦も毎年収穫するようになった。
ヤギと羊、鶏を飼い、村が村として機能するようになったんだ。
それから何人かの精霊と守り人がやってきて
この村に住むことになって
ここはずいぶんと賑やかになったよ。
でも、ひとりだけいないんだ。
この輪の中に。
テラ。
君だけが、あの時からずっと
眠ったままなんだ。
◇ ◇ ◇
テラが永い眠りについて
どれくらいの時間が経っただろう。
村では、新たに移り住んだ精霊と守り人たちが
静かな日常を送っている。
ヘリックスはユリアンとの契約が満了となって
守り人探しのために宿る場所へ帰っていった。
それから、ユリアンとカリスが遊びに来てくれた。
二人は数年おきに遊びに来ていたけれど
数十年が経った頃、カリスが来なくなった。
ユリアンは何度かひとりで来たけれど
彼も、来なくなった。
その後、ファルがリモと共に旅に出ると言い、ここを離れた。
ファルは守り人と精霊を連れて来てくれた。
しかし、時々帰って来ていたファルも
数百年が経った頃、帰って来なくなった。
村は整い、住人もいる。
村は機能しているのに――
いつの間にか
ぼくは独りになっていた。
眠り続ける君のそばにいることだけが
ぼくの生きる意味になった。
『与えてばかりのあなたが辛い時は、私が抱きしめるよ』
『抱きしめてほしい時はいつでも昨日の姿になってね。これからはリーフをたくさん抱きしめるよ』
いつになったらぼくを抱きしめてくれる?
眠る君を抱きしめながら
君の夢を見ることを夢見ているよ。
どうか夢の中に現れて
ぼくを抱きしめて――。
◇ ◇ ◇
ぼくが精霊王になってから
1,000年のときが過ぎていた。
人間界は飢饉も無く
天災も無く
緑豊かな自然に恵まれ
四季を愉しみ
人々は何も無い日常を
退屈そうに謳歌していた。
ぼくは相変わらず、君の横に座り
君の変わらない綺麗な寝顔をじっと見ている。
微笑んでくれたらと
目を開けてくれたらと
ほんの少しでも動いてくれたらと
君が眠っていることが日常ならば
ぼくは何かが起こることを
期待していいだろうか。
何も無い日常が
どれだけ幸せなのか。
幸せだったのか。
ぼくはただ、君の声が聞きたい。




