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第5話 放たれた虚数ウィルス

『虚数時空間防衛隊』とは、日本の虚数時空間を守るために組織された部隊である。


■部隊の構成

・隊長   : 山崎良平

・副隊長  : 坂井陽太、石川美佳

・第一部隊 : 坂井陽太の率いる部隊。5人の隊員からなる。

・第二部隊 : 石川美佳の率いる部隊。5人の隊員からなる。



■タキオンを使用した武器と装備品

(1)虚数センサー : 虚数時空間に居る者やタキオンを使用した製品に反応する。

(2)虚数グラス : 虚数時空間に居る者やタキオンを使用した製品を特定できる。戦闘能力も計測できる。

(3)虚数銃 : 虚数時空間に居る敵のみを攻撃できる。銃弾が敵に命中すると大規模な虚数電流が流れ敵を感電させる。

(4)虚数ボディスーツ : 虚数時空間での運動機能を著しく向上させる。現在までにレベル1からレベル4のものが開発済みである。

(5)虚数レーダー : 上空の特異点やタキオンを使用した製品に反応する。

 虚数戦闘機による襲撃の後、しばらくは敵国から日本の虚数時空間への侵入はなかった。しかし、ある深夜、虚数レーダーの反応があり、研究センターの山崎さんから自宅で休んでいた陽太へ、虚数グラスを通して連絡があった。

「札幌の上空に虚数トンネルが作られた。陽太、すぐに出動してくれ!」

「はい!」

陽太はすぐに研究センターへ行き、出動の準備をした。そして、レベル4の虚数ボディスーツを着てすぐに出動した。垂直に飛び上がり一気に上空1000メートルまで上昇すると、今度は体を横に倒し徐々に加速していき、マッハ2の超音速飛行で札幌上空を目指した。



 札幌の上空へは20分ほどで着いた。虚数レーダーで反応があった辺りを見ると、地上1000メートルほどのところに、穴の中が黄色く光った直径30センチほどの虚数トンネルが開いていた。

「山崎さん、虚数トンネルを発見しました。しかし、直径は30センチほどです。敵や兵器が出てくるには小さ過ぎるように思います」

「そうだな。しかし、まだこれから大きくなるのかもしれん。あるいは、そのトンネルから武器を使って攻撃するつもりなのかもしれん。警戒してくれ!」

「はい!」

その後、30分ほど虚数トンネルは直径30センチほどの大きさを保った後、特に何の変化も見られないまま虚数トンネルは縮小していき特異点となり、肉眼では見えなくなった。陽太は一応、辺りを飛行して何も異常が無いことを確認すると、研究センターへ戻った。



 その数日後の深夜、仙台の上空に虚数トンネルが作られ、陽太が出動した。しかし、これも札幌の時と同様に、直径は30センチほどの大きさのもので、30分ほど大きさを保った後、消えていった。その後も、東京、名古屋、大阪、福岡と大都市で同様に小さな虚数トンネルが作られたが、特に敵からの攻撃は無く、虚数トンネルは消えた。その他に敵国からの虚数時空間への侵入は無かった。

「山崎さん、最近の敵国の動きは何が狙いなのでしょうか?」

「分からん。藤本博士にも相談したが、博士も分からないそうだ。しかし、何か狙いがあるはずだ。今後も訓練を継続しつつ、いつでも出動できるように準備していてくれ」

「はい!」



 それから一か月ほど経った頃、日本では謎の感染症が蔓延していた。40度近い高熱と咳、そして肺炎の患者が急増していた。そして、藤本博士から全隊員へ向けて博士の研究室へ至急来るように連絡が入った。

「大変じゃ!これは敵国がばら撒いたウィルスの仕業じゃ!」

「そうなのですか?なんてことだ!」

「先月、大都市の上空に小さな虚数トンネルが作られたじゃろ。どうやら、その時にウィルスをばら撒いたようなんじゃ!」

「しかし博士、虚数グラスは何も反応しませんでした」

「小さ過ぎて反応しなかったんじゃ…」

「博士、虚数トンネルはタキオンを使った装備品を身に付けた者か、あるいはタキオンを使った装備品しか通れないのではないですか?なぜウィルスが虚数トンネルを通れるのですか?」

「タキオンに接触させたウィルスを虚数トンネルを通してばら撒いたのじゃろ。『虚数ウィルス』じゃ。敵のタキオンを使った技術は格段に進歩しておる…」

「それだと虚数時空間に居る者しか、そのウィルスには感染しないのではないですか?」

「虚数グラスを改良して、もっと小さなものまで見えるようにして調べてみたんじゃ。すると、そのウィルスは4つ集まると実時空間のウィルスになることが分かったんじゃ。敵はこの性質を使って日本にウィルスをばら撒いたんじゃ!」

「そうなのですか!大変だ!」

「ああ…。じゃが、実時空間のウィルスとなっては我々にできることはない…。我々に出来ることはこれ以上、虚数ウィルスを日本の虚数時空間に侵入させないことじゃ。次から、虚数トンネルが作られたら、すぐに虚数銃から虚数電流を撃って虚数トンネルを縮小させるようにしてくれ!虚数電流で虚数ウィルスも死ぬはずじゃ」

「はい!」



 その後は虚数トンネルが作られることはなかった。しかし、日本では虚数ウィルスによる感染症が拡大し続けていた。ウィルスのワクチン開発は始まったが、完成までにはまだ当分時間が掛かりそうだった。そして、研究センターでの全体会議で対策が話し合われていた時、陽太は意を決して発言した。

「敵国が虚数ウィルスをばら撒いたということは、敵国にはワクチンがあるはずです。そのワクチンを奪うために、敵国の虚数時空間へ侵入しましょう!」

「陽太、正気か!?」

山崎さんは驚いた。

「はい。多くの人の命を救うには、それしか手はありません」

「確かになぁ…。日本ではまだワクチンは完成しそうにないし…。しかし、敵国で捉えられたら、もう助けることはできないぞ」

「はい。覚悟の上です。敵国には俺一人で乗り込みます」

「待って。私も行くわ!」

石川さんが手を挙げた。

「私は訓練でレベル3の虚数ボディスーツを着て戦えるようになったの。戦力になるはずよ。隊員達はまだレベル1だから無理だけど」

「石川さん、本気ですか?捉えられたら命は無いですよ」

「ええ。私は日本を守るために虚数時空間防衛隊に入隊したのだから、日本を守るためなら全力で任務に当たるわ!」

石川さんの決意は硬かった。山崎さんも承知した。

「分かった。では『坂井と石川で敵国に乗り込み、ワクチンを奪取してくる』これを次の任務とする!二人とも頼んだぞ!」

「はい!」

敵のワクチンを必ず奪ってみせる!陽太は固く決意した。


(第5話 終わり)

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