第4話 虚数戦闘機を撃墜せよ!
『虚数時空間防衛隊』とは、日本の虚数時空間を守るために組織された部隊である。
■部隊の構成
・隊長 : 山崎良平
・副隊長 : 坂井陽太、石川美佳
・第一部隊 : 坂井陽太の率いる部隊。5人の隊員からなる。
・第二部隊 : 石川美佳の率いる部隊。5人の隊員からなる。
■タキオンを使用した武器と装備品
(1)虚数センサー : 虚数時空間に居る者やタキオンを使用した製品に反応する。
(2)虚数グラス : 虚数時空間に居る者やタキオンを使用した製品を特定できる。
(3)虚数銃 : 虚数時空間に居る敵のみを攻撃できる。銃弾が敵に命中すると大規模な虚数電流が流れ敵を感電させる。虚数電流を放出し続けるようにも使用可能。
(4)虚数ボディスーツ : 虚数時空間での運動機能を著しく向上させる。第3話までにレベル1からレベル3のものが開発済みである。
グルサーとの戦いで力の差を感じた陽太は、それまで以上に訓練と体力強化に取り組み、自分を追い込んだ。陽太が努力している姿を見て、藤本博士も虚数ボディスーツの研究に没頭した。そして最新の虚数ボディスーツが完成した。
「陽太、レベル4の虚数ボディスーツが完成したぞ。試してくれ」
「はい!」
陽太はレベル4の虚数ボディスーツを着てみた。すると、それまでよりも格段に力が出せるようになっていた。
「これ、凄いですね!」
「そうじゃろ。虚数ボディスーツはレベルが1上がるごとに、力の最大値は10倍になる。よって、レベル1を基準にするとレベル2は10倍、レベル3は100倍、レベル4は1000倍の力が出せる。更に、レベル4からは空中浮遊や飛行も可能となるんじゃ」
陽太は飛んでみた。
「本当だ!自由に飛べる」
「ああ、訓練次第でかなりの速度で飛べるようになるはずじゃ」
「はい、ありがとうございます!」
「それと、もう1つ。虚数グラスに相手の戦闘能力を表示させる機能を付けた。レベル1の虚数ボディスーツを着た者の戦闘能力が1となるように設定してある。お前の能力を測定すると、、、300じゃ。もっと訓練して、力を溜めれば最大で1000まで上がるはずじゃ。訓練頑張ってくれ」
「はい!頑張ります!」
それからしばらく経った頃、世間では奇妙なニュースが流れていた。日本各地で夜間に大爆発が生じていたのである。その現場を調べると小型誘導ミサイルの残骸が残されていたことからミサイルが着弾したものと考えられた。しかし、自衛隊も在日米軍もレーダーでミサイルを捉えてはいなかったのだ。
このニュースを知った山崎さんは、藤本博士、石川さん、陽太を集合させて相談した。
「これは、俺は敵国の仕業だと思っています。藤本博士、どう思いますか?」
「ああ、その可能性はある。しかし、虚数センサーは全く反応していない」
「空からなら虚数センサーを反応させずに攻撃できるのではないですか?」
「そうじゃな、その可能性はある。巨大な虚数トンネルを虚数レーダーで捉えられない上空に作り、その虚数トンネルからタキオンを使用して作った『虚数戦闘機』を日本に侵入させて攻撃してきておるのじゃろう。虚数レーダーを作らねばなるまいなぁ…」
「お願いできますか?」
「ああ、1ヶ月ばかり待ってくれ」
1ヶ月後、虚数レーダーが完成した。その間にも被害は日本各地に広がっていた。そして、虚数レーダーを設置すると、その日の夜、早速反応が現れた。藤本博士は慌てて叫んだ。
「伊勢湾の上空に巨大な虚数トンネルの反応が現れたぞ!」
「俺が行きます!」
陽太はすぐにレベル4の虚数ボディスーツを着て、虚数グラスを掛けて、出動の準備をした。そして、外へ出ると、山崎さん、藤本博士、石川さん、全隊員が陽太の出動の見送りに来ていた。
「敵を倒して来てくれ!」
「はい!」
陽太は答えると、垂直に飛び上がり、一気に上空1000メートルまで上昇した。その後、飛行しながら徐々に体を傾けていき、体を水平にすると更に飛行速度を加速した。すると、陽太の体の周囲から大きな音が生じた。バンッ!
「ほう、もう超音速に達したのじゃな。凄い加速じゃ」
陽太から超音速飛行時に生じる衝撃波が伝わってきたのだった。陽太は全速力で現場へ向かった。
陽太は15分ほどで伊勢湾上空に到着した。すると、虚数グラスは海上に作られた大きな虚数トンネルに反応した。そして、その虚数トンネルから戦闘機が出て来た。その戦闘機は名古屋市の方へ向かって飛んで行った。そして、ミサイルを撃った。
「そうはさせないぞ!」
陽太は全速力でそのミサイルを追いかけ、捕まえた。そして、ミサイルの推進装置を破壊すると、海の方へ投げ捨てた。ミサイルは海面に叩き付けられると爆発した。
今度は戦闘機は陽太の方に向かってきた。そして機関砲を撃った。陽太は飛行して逃げながら、その銃弾を避けた。そして陽太は上に急旋回して戦闘機の真上に来ると、主翼に蹴りの一撃を入れた。主翼は折れ、戦闘機はコントロールができなくなったようだった。戦闘機は速度を落とし、大きく旋回しながら虚数トンネルの方へ帰っていった。
敵を追い払った、陽太がそう考えていると、どこからかグルサーの声が聞こえてきた。
「エルミートアターック!」
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※エルミートアタック
:高速の飛行速度で威力を増した突きや蹴り、頭突き、体当たりなどで相手に強い衝撃を与える技である。直進方向に力を集中させることで、通常の攻撃よりも威力が増す。
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「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
グルサーの技を真面にくらった陽太は吹き飛ばされ、遠くの海面に叩き付けられ、海の中に沈んだ。しかし、大きな海面の盛り上がりと共に陽太は姿を現すと、グルサーのもとへ戻ってきた。ダメージはかなり受けていた。
「はあ、はあ、はあ、はあ…」
「俺のエルミートアタックをくらって、よく耐えたな。以前よりも更に強くなっている。だが相当ダメージを受けているようだな。今日、お前を倒してやる」
陽太は虚数グラスでグルサーの戦闘能力を調べてみた。1000だった。全力を出せば勝てる、陽太はそう思った。
2人はお互いに間合いを図っていると、グルサーの方から仕掛けた。
「ヒルベルトウェーブ!」
陽太は全速力で上に飛んでグルサーの技を避けた。
「お前の動きは見えているぞ!エルミートアターック!」
グルサーは上に避けた陽太を追いかけるようにして技を出した。すると陽太は反転しグルサーの方へ向かって行った。グルサーはエルミートアタックの突きを放った。陽太はそれを頭を屈めて避けてると、渾身の力を込めた拳でグルサーの腹にボディアッパーを突き刺した。
「虚数衝撃拳!」
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※虚数衝撃拳
:全身の力を拳に集中させて相手に直接打撃を加えることで相手に強い衝撃を与えることができる。接近戦で有効な技である。
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「ぐはぁっ…」
陽太の拳はグルサーの腹にめり込んだ。グルサーは大きなダメージを受けた。しかし、グルサーは陽太が攻撃後に一瞬見せた隙を見逃さず、すぐに技を出した。
「ヒルベルトウェーブ!」
「うぁぁぁっ…」
陽太は技を真面に受けてしまい、吹き飛ばされた。
「はあ、はあ、はあ…。クソ!陽太がここまで強くなっているとは…」
グルサーは虚数トンネルを使って帰っていった。そして、虚数トンネルは再びただの特異点に変わった。
しばらくすると、隊員達がヘリで陽太の捜索に現れた。
「あそこです!坂井さんが居ます!」
陽太は酷い傷を負っていた。ヘリに引き上げられると傷の応急処置がされた。
「坂井!大丈夫か!」
「はい…。大丈夫です…」
「良くやった。お前の戦いは虚数レーダーと虚数グラスを使って見ていたぞ」
「グルサーはどうしたのですか?」
「あいつは逃げて行った。追い返しただけでも大したものだ」
「でも、あいつは必ずまた来ます」
次こそ必ず倒す、陽太は決意した。
(第4話 終わり)