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第3話 虚数トンネルを封鎖せよ!

『虚数時空間防衛隊』とは、日本の虚数時空間を守るために組織された部隊である。


■部隊の構成

・隊長   : 山崎良平

・副隊長  : 坂井陽太、石川美佳

・第一部隊 : 坂井陽太の率いる部隊。5人の隊員からなる。

・第二部隊 : 石川美佳の率いる部隊。5人の隊員からなる。


■タキオンを使用した武器と装備品

(1)虚数センサー : 虚数時空間に侵入した者が近くに居れば反応する。

(2)虚数グラス : 虚数時空間に居る者を特定できる。

(3)虚数銃 : 虚数時空間に居る敵のみを攻撃できる。銃弾が敵に命中すると大規模な虚数電流が流れ敵を感電させる。

(4)虚数ボディスーツ : 虚数時空間での運動機能を著しく向上させる。

 ある日の深夜、石川さんは敵に見付からないようにビルの陰に隠れながら逃げていた。敵は石川さんの姿を見るとすぐに撃ってきた。石川さんは虚数グラスを使って研究センターに連絡をした。

「本部、応援をお願いします。敵は12人。出動した第二部隊は5人重傷、私も傷を負っています」

「分かった。陽太を向かわせる。もう少しの辛抱だ」

敵は徐々に包囲網を狭めて来ていた。その時、石川さんの虚数グラスに陽太の反応が現れた。そして、それと同時に目の前に陽太が瞬時に現れた。

「速い!」

「石川さん、大丈夫ですか?」

「私は大丈夫よ。でも隊員が5人全員重傷を負っているわ。敵は12人よ」

「分かりました。後は俺に任せてください。石川さんはここに隠れていてください」

そう言うと陽太は1人で敵の方へ向かっていった。陽太は腰をかがめて右の拳を引き、力を込めた。そして、勢いよくその拳を前に突き出した。

「虚数摂動波!」


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

※虚数摂動波

:拳から繰り出される虚数時空間を伝わる非常に強い波により、敵に強い衝撃を与えることができる。離れた複数の敵に対して有効な技である。この技は虚数時空間に居る敵のみに作用する。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


「うぁぁぁぁ…」

陽太の繰り出した技は周囲に広がり敵に強いダメージを与えた。そして、全ての敵を一撃で倒した。それを見た石川さんは驚いた。

「何、今の!?」

「新しく覚えた技です。俺が着ているのは藤本博士に作ってもらった最新の虚数ボディスーツなんですよ。石川さんと他の隊員が着てるのがレベル1の虚数ボディスーツ。前回、俺が新宿で23人の敵を倒した時に着てたのがレベル2。そして、これがレベル3です。レベル3から技が使えるようになったんですよ」

「そうなんだぁ…。凄い…」

「そんなことより、敵を拘束して、傷を負った隊員達を病院に連れて行きましょう。もうすぐ第一部隊の隊員達がここへ着くはずです」



 後日、山崎さん、石川さん、陽太は藤本博士からの連絡を受けて、藤本博士の研究室を訪れた。

「藤本博士、どうされたのですか?」

藤本博士は笑顔で答えた。

「2つほど良いニュースがあるんじゃ」

「そうなんですか。教えてください」

「まず1つ目だが、敵が身に付けていた虚数グラスや虚数ボディスーツを調べてみたんじゃ。すると、敵の使っている装備品は全て、太陽の光に当たるとその能力が著しく低下することが分かったんじゃ。おそらく、敵が虚数時空間に潜入するのは夜間のみじゃろう」

「それはとても重要な情報ですね。しかし、なぜ敵の装備品は太陽の光に弱いのですか?」

「元々、タキオンは非常に不安定な素粒子なんじゃ。まだ敵国の技術力ではタキオンの性質を活かして、なおかつ、安定した装備品を作れないのじゃろう」

「なるほど」

「2つ目だが、政府に働きかけることによって、日本への入国の際にタキオンやタキオンを使った装備品の所持も調べることになったんじゃ。出入国審査場に虚数センサーを設置し、職員は虚数グラスを掛ける。虚数センサーと虚数グラスは虚数時空間に居る人間のみでなく、タキオンにも反応するように改良したんじゃ。これによって、虚数時空間への侵入はかなり減るじゃろう」

「それは良いニュースですね!しかし、油断はできません。敵は何をしてくるか分からない。坂井、石川、引き続きしっかり訓練しておいてくれ」

「はい!」



 それから1ヶ月、日本各地に設置された虚数センサーに反応が現れることはなかった。しかし、ある深夜、藤本博士から再び3人に集まるよう緊急の連絡が入った。

「藤本博士、どうされたのですか?」

藤本博士は慌てた様子で答えた。

「大変なことになった。虚数時空間の特異点が拡大しているんじゃ!」

「特異点?何ですかそれは?」

「現実世界でのブラックホールに相当するものじゃ。元々、虚数時空間には特異点は複数存在していて、特異点同士は別の時空間で繋がっておる。そして、その特異点は非常に大きな虚数エネルギーを一点に集中させることによって人工的に作り出せるんじゃ」

「それの何が問題なのですか?」

「その特異点は元々は針の穴よりも小さいのだが、それが拡大しておるんじゃ。おそらく敵国は日本の虚数時空間に侵入するために、まず敵国内に特異点を人工的に作り出し、それを日本の虚数時空間に存在する特異点と繋げて、その穴を拡大させようとしているんじゃ。つまり、日本の虚数時空間に侵入するための『虚数トンネル』を作ろうとしているんじゃ。あと1日あれば人が通れるような大きさになってしまう」

「それはマズい。もしそんなトンネルが作られたら、いくらでも日本の虚数時空間に侵入されてしまう。何かそれを防ぐ方法は無いのですか?」

「ひとまず虚数銃を改良して、虚数電流を放出できるようにした。この虚数電流で特異点の拡大を抑えられるじゃろう。特異点は小さな穴の状態が安定していて、穴を大きくするには非常に大きな虚数エネルギーが必要になる。虚数電流を掛けることで敵が投入している虚数エネルギーを弱めるんじゃ」

「分かりました。坂井、石川、すぐに隊員達と虚数銃を持って現場に行ってくれ!」

「はい!」

特異点が拡大している場所へ、陽太、石川さん、第一部隊、第二部隊の全隊員で向かった。



 現場では、地上3メートルほどの空中に直径20cmほどの時空間の穴が開いていた。穴の中は黄色く光っていた。少しずつ拡大している様子が分かった。陽太は隊員達に指示を出した。

「あれだ。皆であの穴に向かって虚数銃を撃とう!」

全員で穴に向かって虚数銃を撃ち虚数電流を流した。すると、少しずつ縮小している様子が見られた。しかし、しばらく虚数電流を流していると再び穴が拡大し始めた。

「藤本さん、最初は穴が縮小したんですが、また拡大し始めました」

「恐らく敵に邪魔しようとしていることがバレたんじゃ。今のところ他に防ぐ手段は無い。虚数銃を撃ち続けてくれ」

その後も虚数銃を撃ち続けたが穴の拡大を止めることはできなかった。そして、1mほどの大きさになった時、中から敵が10人出てきた。陽太は叫んだ。

「皆、離れるんだ!」

他の隊員達を穴から離れさせると、陽太は敵に向けて技を撃った。

「虚数摂動波!」

「うぁぁぁぁ…」

10人居た敵のうち8人は倒した。1人はダメージを負ったものの立っており、もう1人は全くダメージを受けていない様子だった。すると、その全くダメージを受けていない敵が話し出した。

「なかなかやるな。俺の名前はグルサーだ。日本の虚数時空間侵略の隊長をしている。お前の名前は?」

「坂井陽太だ」

「そうか、陽太。以前、新宿で23人もの仲間を倒したのはお前だな」

「ああ、そうだ」

「以前よりも強くなったようだな。だが、それでは私に勝てないぞ」

グルサーはそう言うと、虚数摂動波と同じ構えをした。そして技を放った。

「ヒルベルトウェーブ!」

虚数摂動波とほぼ同じ技だが、威力はグルサーの技の方が格段に上だった。

「うぉぉぉ…」

陽太はかなりダメージを受けたが、なんとか耐えた。隊員達は吹き飛ばされ意識を失った。石川さんも吹き飛ばされたものの意識はあるようだった。

「ほう、良く耐えたな。まあ本気で撃ってないからな。だが、次で終わりだ」

グルサーがもう一度技を出そうとした時、もう1人の敵が声を掛けた。

「グルサー様、虚数トンネルが縮小し始めました!」

「そうか、夜明けも近いしな。虚数トンネルを安定に保てなくなったのだな。今日のところは引き上げるとしよう。陽太、また戦おう。次会うときは、もっと強くなっていろよ」

そう言うと、グルサーともう1人の敵は倒れた敵はそのままに虚数トンネルの中へ消えていった。すると、虚数トンネルの穴は縮小し、見えなくなった。

 陽太は石川さんのもとへ走った。

「大丈夫ですか?石川さん」

「私はなんとか大丈夫よ。レベル2の虚数ボディスーツを着てるから。でも隊員達が着てるのはレベル1だから相当ダメージを受けたはずよ。急いで病院へ連れて行きましょう」

陽太と石川さんは隊員達を担いで病院へ向かった。隊員達を担ぎながら陽太は誓った。

「俺はもっと強くなる。そして、グルサー、あいつは必ず俺が倒す!」


(第3話 終わり)


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