小春の空
雨上がりのお天気の
日曜日の昼下がり。
ターミナル駅の近くは、
大勢の人の賑わい。
生活費を引き出しに
銀行へ向かいながら、
若者や家族連れを
足早に通り過ぎた。
弾けるような人の気配、
穏やかな初冬の日差し。
どこか遠くへと願った
あの空に似た空。
歩道じゃそういう空が、
悲しい時もあるから、
避けるように地下街への、
階段を降りていた。
地下街を行けば行ったで、
綺羅びやかな店が並ぶ。
一人でいるからよけいに、
落ち着かなくなる。
綺麗なガラス越しの、
カフェで話しこむ人たち。
老いてからの友達は、
大切にしましょうよ。
すがるような目をして、
あの人も何か言いたげで、
だけど、頷くばかりの
損な性格かな。
会えばそういう時間に、
自分を追い込んでしまう。
好きなことを好きなだけ、
それも思いつけずに。
地上に上がればすぐに、
ATMの入り口。
中に入るとがらんとして、
誰もいなかった。
携帯電話は使えない。
そんなことが書いてある。
手口は巧妙なんだろう。
自分も引っかけられそう。
お金のような世界には、
少しも才覚はなくて、
生活費を引出しながら、
新紙幣に戸惑う。
電子マネーでよければ、
お金でなくてもいいだろう。
晴れた空とか老いた友とか、
何かを大切にすれば。
何かを大切にすれば、
買い物ができたりする。
何かを大切にしないと、
どんどん疲弊してゆく。
生活を支える者は、
朝から晩まで働いて、
世界中の空や友や、
土や水を大切にする。
夢のような思いつきは、
笑いたい人に笑わせる。
たとえ自分にできなくても。
苦笑いはもうしない。
帰り道もいいお天気。
生活費にも満たされて、
ターミナル駅を通り抜け、
少しは小春の空を見た。
あの日に似た空を見た。