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3-1「冒険者稼業」


  ◯ ハルト ◯


 人類がギアテクノロジーの発展によって生活圏を広げていっても、世界に息づく大自然の半分もまだ開拓できていない。

 トラックや戦術ロボが走っていく街道を見ても、舗装されたハイウェイから一歩外れれば獣や魔物が暮らしている。

 帝都ベルロンドから車で半日ほどの距離にある、街道そばの名も無き草原にて……。


「違うってイエ、依頼人が欲しがってるのはザンギエム! そいつはザンギエルだよ!」

「ええ……?」

 ーーンギィ? ンギィッザッザッザッザ!


 冒険者ハルトと千癒術士イエは、ニワトリ型の魔物の群れに飛び込んでいた。

 大人の背丈よりも少し大きな鳥。赤いブーメランパンツでも履いているような差し色のある、肌色の毛並みが特徴的だ。

 しかしニワトリと決定的に違うのは、筋肉質なヒト型の手足が備わっていることである。

 みっちみちに寄り集まりながら草をついばんでいるぐらいの温厚な種族で、羽毛まみれになるくらいにハルトとイエが近くにいても襲ってはこなかった。

 イエがネックホールドして(引きずられながら)確保していたのは、群れの中では中くらいの大きさの個体だった。


「小さいのがザンギエス、中くらいのがザンギエム、大きいのがザンギエル。ですよね?」

「そうだけど、おまえが捕まえてるそいつは小さめのザンギエルなの。肉質が硬すぎて玄人好みらしい」

「ハルトさんはどうやって見分けてるんですか?」

「……オレだってわからないけど、フェアリーに【ザンギチェッカー】ってモジュール入れたんだよ。イエも入れたら?」

「私のフェアリーさんは素材図鑑とか調合シミュレーターでもう容量いっぱいです、ごめんなさい」


 ーー 【ザンギチェッカー】 ーー

 ーー ザンギエル  ーー

 フェアリーがアンパイアよろしくイエのザンギエルをビシッと指差した、その時、

 2人の挙動を見てとった1羽が、マッスルポーズとともに真っ赤に変色した。


 ーーザァァオラァァァァ! 「あうっっ」


 ダブルラリアットスピンがイエをぶっ飛ばした。


「イエぇぇぇぇ!? やばいっっ、ザンギエクだザンギエク!」


 ーー 【マモネイター】(魔物検索) ーー

 ーー ザンギエク ーー

 ーー ザンギの希少種です。平時は普通種と見分けることはできませんが同族愛がとても強いため、仲間が唐揚げの材料にされかけるとプロレス技で襲いかかってきます ーー


「解説どうも!」


 イエを助け起こしに行くのを阻むようにザンギエクが突進してきたので、ハルトは応銃パラレラムをクイックショット。


 ーーンギンンヌッ


 ザンギエク、魔力を纏った水平逆チョップで魔弾を打ち落とし。


「うああああ無効化された!?」


 ーー 【バニシングチョップ】 ーー

 ーー 飛び道具を無効化します。かつては張り手と思われていましたが、逆水平チョップとわかり改名され…… ーー


「もういいよ解説は!」


 ハルトはパラレラムをショットガンへ変形させ、中距離からドロップキックを放ってきていたザンギエクへ散弾発射。

 ーー 【ダイエットドロップ】 ーー

 途端、慣性を無視してカクンッと急降下したザンギエクは散弾を避けた。


「よ、読まれたうあっっ!?」


 間近に軟着陸したザンギエクが跳ね起きた、

 まだ1人分ほどの距離があったのに、魔力を帯びた手が突き出されたと思ったら吸い寄せられていた。……掴まれていた。


「すごい吸い込みだうああああ!?」 ーーギウィィィィィィィィ!


 ーー 【トルネードスクリュードライバー】 ーー

 天地逆さまに捕まったハルトは、大回転ジャンプとともに頭から打ち下ろされたのだった。


  ◯ イエ ◯


 ……そんなドタバタがあったが、なんとか帝都ベルロンドへ帰ってこられたのは宵の口のこと。

 街の外壁にほど近く、待ち合わせや取引場所によく使われている広場にて。

 ーー 《インベントリ》 ーー

 ハルトのフェアリーが収納魔法を唱えると次元の狭間が開き、2つの物品がトラックの荷台へ排出された。


 ーーンギルゥ…… ーーンギオラァ……


 頭に布を被せて手足を縛り、イエ謹製の麻酔薬をぶっ刺して眠らせたザンギエムとザンギエクである。

 トラックの運転手は上機嫌そうに親指を突き上げてみせた。


「よくわかんないけどこの希少種ってーの、せっかくだからウチのマスコットにするよ! ごくろうさん!」

「う、うんーまあがんばってください……。よかったら高評価レビューよろしく」


 唐揚げ専門店のトラックは走り去っていって……、


(不思議です。高評価は高評価って思ったから高評価なのに、みんながお願いして高評価を貰うなら高評価は高評価です?)

「……イエ、またボーッとして変なこと考えてないか?」

「いいえ? 私の中では高評価ですけど」

「またボーッとして変なこと考えてる」


 体を伸ばしたハルトを眺めながら、イエは哲学的なことを考えていた。


「なあ、今日はもう疲れたし立ち食いソバでちゃちゃっと済まさないか?」

「ダメですよ。朝昼ならともかく晩ごはんが立ち食いソバなんて」

「おまえ好きじゃんニフソバ」

「大好物ですけどそれはそれです、今朝は献立決めるヒマが無かったのでスーパーでちゃちゃっと決めましょう」

「だからちゃちゃっと決めるなら……てかわるい、手持ちのクエストが切れたから閉まる前にギルド行かなきゃなんだよ」

「うーん? それならしかたないですね、買い物は私が行ってくるので食べたいものをどうぞ。ちなみになんでも……」

「なんでもいいは無し、だろ。ごめんな、オレが作るから焼きそばとデュアリャンスープでいいよ」

「いえいえ、私の当番ですから気にしないでください。じゃあまた後で」


 イエが大袖の中から取り出した栄養ドリンク、2人の間で打ち鳴らされて。乙女と青年は、互いに逆回りで街中へ……。

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