13-4「パートナー」
ハルトは拾った消火器でウェポンマスタリーを発動し、エンジンルームの床をぶち抜いた。
ザインとディアデムと飛び降りたその先は、艦橋めいた司令室だ。
「メインエンジンに異常じゃと!? 止めてはならぬっ、オアシスの愚図どもに鉄槌を食らわせるまでは……ぬあっ!?」
この移動要塞の首領らしき肉玉皇帝や、砂賊たちが見上げてきたなか。戦略地図のホログラムを浮かべた床へ着地……、
する前に、そこは突き上がってきた無数の念動スコップによって破壊された。
「「「お」」」「「「あ」」」
上層より下ってきた男子3人と、下層より上ってきた女子3人。天地を交わして互いに目が合って……、
そして、それぞれの相棒へゴールしたのだ。
「ハルトさん」「イエ。……ハグはしないってハグは」
激突間近でハルトがクルッと抱き上げたイエは、「どうぞ」とばかりに両腕を広げていたし。
「どーん! 浮気せぇへんかったやろなぁディアデムぅ!」「……(俺は抱き止める。そちらこそ、シャルカさん)」
100点の笑顔でシャルカが見舞った肩パンを、ディアデムは真っ向から受け止めながら彼女も抱き止めて。
「や。ザインくん、お久しぶり」「あいやーこれはどうもご丁寧にー。ケガしてないかいーマリー」
どちらからともなくダンスめいたハイタッチを連ねたマリーとザインは、最後にはソフトに抱き合ったし。
それぞれの相棒……パートナー……恋人との合流だった。
「ところでハルトぉ。なんでシャルカさんらはこの玉っころ止めにきたんやっけ」
「なんとかって砂賊がなんとかって独立国を名乗って、なんか大昔に追放されたオアシスをぶっ潰そうとしてるからだよ」
「シャルカちゃんはともかくハルトくんも興味無さすぎじゃない? いちおう帝王陛下直々の依頼なんだから」
「……(俺はフォローする。問題ない、任務遂行に十分な情報は揃っている)」
「ですね。要塞は止まったみたいですし、あとは親分さんを捕まえるだけです」
「ってーとー……あそこでプルプルしてるジイちゃんでオッケー?」
6人は最上段に座する肉玉皇帝を見上げた、
「ワシを無視するでないわーー!」
と。超肥満体のワリには俊敏に、彼はハルトたちの前へ飛び降りてきた。
「小僧どもを鉄砲玉に出すとは、噂以上のヤクザ帝国よ……。何者じゃ貴様たちは!」
「ほーっはっはっはっはぁ! シャルカさんらは人呼んでぇ、ベルアーデの3バカップルや!」
「テキトー言うならもちっとカッコいいの言おうぜーシャルカちゃんー」
「じゃあベルアーデ帝国騎士団なんてどうでしょう」
「……(俺は補足する。それはもうあるぞイエコくん、城の草野球チームだ)」
「じゃあじゃあ、間を取ろっか。たとえばラブリーナイトエンゲージ……」
「いいかげんにしてやれ!」「いいかげんにせんか!」
ハルトは不覚にも肉玉皇帝とカブってしまった。
「もうよい! 誰も手を出すでないぞ……この地を統べる真の主としてワシが裁きを下してやろう!」
肉玉皇帝は雷を象ったような錫杖を抜き出した。
「真化の秘法!」
魔力の閃光が彼を包めば、そのシルエットは瞬く間に変貌していった。
光が収まれば、そこに立っていたのは……神々しいまでにシェイプアップされた美青年だった。
「フッ……! ゆくぞ反逆者ども、我が名は……!」
「イエ、やっていいぞ」「執刀開始、《リーイング》(回帰魔法)!!」
イエは執刀リィンを装備するやいなや、極限まで同調させてユニークスキルを放った。
それは必殺技ならぬ必生技、全方位超広範囲ヒーリングだ。
「アァァァァ……ぶひぁぁぁぁ……!?」
どんな傷病も状態異常も無差別に癒す輝きが、美青年を肉玉皇帝へと戻した。
「ななななにぃぃ~~!? お、おのれおのれおのれなんじゃその回復魔法は~~~~!!」
ツヤツヤの肌になって目のクマも消えていたほどだったが、彼は醜く地団駄を踏んだ。
「あうううう……」「っと。ほら水飴ちゃん」
一方、魔力切れを起こしたイエはハルトの腕の中に倒れ込んでしまった。
本来、回帰魔法は最後の切り札である。魔力を使いきったイエはアイテムを使うくらいしかできなくなるので、弱った彼女を守るハルトもまた十分には戦えなくなってしまう。
ただし今回はいつもとは状況が違ったのだ。
「こ」「う」「て」「い」「へかっっ」
ハルトも誤算だったのだが。回帰魔法を受けた砂賊たちが、しかめっ面のヘルメットだけを残して砂へと溶けた。
「あらら。なんだ、手下の人たちは砂人形だったんだね」
「……(俺は憐れむ。なのに皇帝を僭称していたわけか)」
「んまーおかげでー、ハルトとイエコちゃんのフォローはしやすくなったけどねー」
「ほないくでっ、老害ジジイをフルボッコやぁぁぁぁ!」
「恩に着るっ、オレもパラレラムで援護する……!」「あうえう……防具の傷みに……ヨロナイン軟膏スプレータイプ……」
そして。いつもとは違う最大の点は、友人たちといっしょであることだ。
「ひ、退かぬぞ! 皆の者、共に戦うのじゃぁぁ!」
突撃していったハルトたちに対して、肉玉皇帝はしかめっ面ヘルメットたちを魔力で引き寄せ……鎧として装備した。
同時に錫杖も装飾がパージされ、光刃が立ち上るセーバーと化した。
「あ、ズルいっ。変身が2つもあるなんて」
肉玉皇帝の豪快な連斬が「こぉほぉ!?」、対魔コーティングもバッチリなマリーのガントレットが指先パリィ。
「そのヨロイさー、カッコいいけどスキマはもっと詰めたほうがいいんでなーいー?」
マリーの外骨格スレスレ、相手にとっては死角に他ならない矢の急襲が鎧の関節部を詰まらせた。
「……(俺は追撃する。ご老体、剣術で挑んできたのは失敗だったな)」
ディアデムのシャベル剣術が冴えるたびに冷たい炎や礫の風が爆ぜたのは、属性付与を次々と切り替えていたからだ。
「オーバーキルやけど一応いっとこかっ、サイカビィィィィィィィィム!」
シャルカが円陣を高速回転させた念動シャベルから、束ねられたレーザーがビームとなって肉玉皇帝を蒸し焼きにした。
「おつかれ! 依頼完了!」
そしてハルトは。けっきょく何もできないままぶっ倒れていった肉玉皇帝へ、イエから貰った網を叩き下ろしたのだった。




