3.襲来!夜の魔物
ひたすら真っ直ぐに向かって、私達は森の中の小道を進んで歩いていた。
「あっ!」
その時、ルナの後ろで誰かのお腹がぐーぐーと鳴り、それに気がつき、後ろを振り向いた。
そこには恥ずかしいそうな顔でお腹を押さえる莉葉であった。
後ろを振り返ったルナは私のお腹がなったのに、気づき、薄い笑みを浮かべてこっちを見つめた。
「…莉葉、お腹か空いたのね」
お腹を押さえた私は恥ずかしさ隠しながらうんと頷く。そしたら、ルナは辺りを見渡し、何かを探し始めた。
「見つけた、よし、莉葉、これ持ってて」
「あぁ、分かったわ」
辺り見渡して何かを探したルナは、近くの木になっている赤く丸い木の実を見つけた。
「これ持ってて、莉葉」
「うん、分かったわ」
ルナは持っていた古びた本を私に渡した。
そして、ルナはベルトに刺していた杖を取り出し、木の実がなっている木の方に向けて大きな声で呪文を唱えた。
「打ち抜け銃弾」
そう唱えるとドンと大きな音を立て、杖の先端から、小さな白い玉が一直線に向かって飛んでいき、目の前になっている木の実がついてる枝を貫き、その白い玉は消えた。
そしたら、ストンと木の実が下に落ちていき、ルナは拾って、私に渡した。
「はい、これ莉葉」
拾ったら木の実を渡された私は「ありがとうルナ」とお礼を言ってから、その木の実を一口齧った。
「…すっ、すごい甘い」
それは私が食べた果物の中で物凄く甘い果実だった。例えるなら、りんごに砂糖でコーティングした様な味。けど、不味くはなく、まあまあ、味だった。
「ねぇ、これなんてきのみなのルナ?」
このとても甘い木の実はなんなのかとルナに聞くと笑顔を向けて言った。
「これはね、この森にしかないリカンという木の実だよ」
「リカン……」
りんごとみかんの名前を合わせた様な果物かな?と少し変、けど、美味しければいいかなと特に私は気にしないのでそれを食べ、私が木の実を齧っている間、近くの茂みで何かが動いた。
「あっ」
近くの茂みで何かが動いたのに、気づいたルナは思わず、杖を手に取り、辺りを警戒しながら攻撃耐性を取る。
すると、『ガオーン』と大きな獣の声が鳴り響き、私は驚いた。
「えっ、何?」
今の獣の声は何と、私は驚きながらキョロキョロした。
すると、森の近くの茂みから何かが飛び出してきた。
それは体が赤く毛深い頭と顔が三つ。4本足を持つ耳の長い狼の様な姿をした3匹の小柄な獣達だった。
『ガルルルガルルル』
獣達は獲物を狩る様な鋭い目つきでこちらを睨み続ける。
「なっ、なんで……?なんでこんな所にレッドケルベロスが……」
「れっ、レッドケルベロス……?」
なんかとても強そうなレッドケルベロスと呼ばれる化け物を見たルナは驚きの表情を浮かべ、私は齧っていた木の実を思わず、下に落としてしまった。
すると、レッドケルベロス達は小さな声をあげ、よだれを垂らしながら、ゆっくりと私達に近づいた。
「くっ、どうして夜の魔物がここにいるのよ」
「よっ、夜の魔物?」
どうやらレッドケルベロスは夜にしか活動しない魔物らしい。しかし、ルナの表情から見るとこれはやばいのではと思った。
だが、平気な顔でものともしないルナはレッドケルベロス達に杖を向けた。
「くっ、ここは逃げるしかないね」
「えっ、逃げる?」
『目眩し煙幕』
そう呪文を唱えながら杖を一振りすると、何もない所から黒い煙幕が発生、周りのレッドケルベロス達を包み込む。
「今よ、逃げるよ莉葉。私の手を……」
「えっ、分かったわ」
煙幕が発生した直後、ルナは私の手を引っ張り、この場から、逃走し来た道に引き返す。しかし、レッドケルベロス達は私達を見逃す事はせず、黒い煙幕を振り払い、こちらに向かって走り出してきた。
「はぁ、はぁ」
「大丈夫ルナ?」
「うん、大丈夫。こんなの……」
疲れた顔をしながら走るルナに対して、心配し声をかけると、笑顔で大丈夫と返した。、しかし、彼女の表情はかなり焦った様子だった。
そして、ひたすら森の中の小道を走る私達に対して、ケルベロス達は諦めず、こちら向かって来る。しかし、私は走る体力はそんなになかった。その結果、私は道端の小石によって転けてしまった。
「あっ、莉葉!」
レッドケルベロス達は一斉に私に飛びかかった。
その瞬間、私はもうダメだと思った。すると、私が持っていた古びた本が黒く光り輝いたのだった。