1、魔法学園の地下図書館と召喚の書
プロローグ1から繋がるサブ主人公視点です。
この世界は魔法が全てだ!力が全てだ。そう思っているのは強者だけ……。
そんな力を求めていた訳でもなく、私は生まれた頃から、五属性魔法の適性があったのだ。
しかし、魔法の適性があっても、その全てが弱く、そんな大した力は私にはなかった。
その為、アストロア魔法王国のアミュレ魔法学園に通う平民の私、ルナ・アルナ15歳は、他の学生から最弱魔法使い、そう呼ばれている。
そして、ここはクロノトリガー大陸の最東端。アストロア魔法王国。森と首都に挟まれ、近くに村があり、丘の上にある場所、そこが私が通うアミュレ魔法学園だ。
何故、五属性の魔法の適性があるのに、全ての魔法が弱い私が魔法学園に通っているかというと……。
それはアストロア魔法王国の首都、アストロア魔法都市に存在する。アストロア魔法兵団の団長レイ・アスナルのような凄い魔法使いなる為だった。
レイ・アスナル団長はとても強く仲間から人望が熱く、とても頼りになる存在であり、数年前、私は魔物に襲われる寸前で助けてもらったのだ。
それ以降、私は彼女の様な凄い魔法使いになりたかったと魔法学園で頑張っていた。
しかし、アミュレ魔法学園、通ってから数日たったある日、私は酷い嫌がらせを受ける。
特に私と同じ五属性の魔法使い、ファレスト家の貴族令嬢、シルフィーナ・ファレストという少女に……。
シルフィーナは優秀な魔法使い家系であり、他の誰よりも強く、平民を見下したりせず、平等に振る舞っていたのだった。
しかし、最弱魔法使いと呼ばれた私だけは違った。
虐める理由は定かではないが、恐らく同じ五属性の魔法使いの私が弱いのが気に食わないだろうと彼女を常日頃そう思っているかもしれない。
けど。私は気にしないで毎日頑張るだけだった。
そう思っていたけど。地下図書館で召喚の書を見つけるまでは……。
……とある休みの日、いつものように魔法の特訓をしようと外に飛び出した私は女子寮から、ハーウェトの森へ向かっていた。
「…あっ、地下図書館の入り口か。うーん………」
ハーウェトの森の入り口前に差し掛かった時、左に数キロ歩いた先に耳の長い二つの像が立つ、下に通じる階段を見える。
そこは初代理事長だった大魔法使いサリエスによって、地下に作られ、色々な国々から取り寄せた様々な本が置かれた大図書館である。
そして、地下図書館の入り口前には魔法で作られた二つの弓を持つ耳の長いエルフの銅像が侵入者が入らない様に見守っていた。
その場所を管理、学園の理事長をしていた大魔法使いサリエスとは、数年前に現れた魔王を倒した英雄達の中の一人にして、2000年以上は生きるエルフ族の中で世界最高の魔法使いであった。
しかし、現在、サリエスは理事長をやめて、エルフの森で暮らしている。
その代わりにサリエス理事長の副理事であり、親友でもあるハクア・シルスティーンが今の理事長を務めているのである。
そして、ハクア理事長の魔法はサリエスほど、遠く及ばないが100体の魔物を一人で討伐したという、噂がある。本当かどうかは知らない。
「…たまに本を読もう」
まぁ、そんな事を置いとく事にして、地下図書館の入り口前を見つけた私は、たまには息抜きも大事と今日、やる予定だった魔法の特訓は辞めて、地下図書館で本を読む事にしたのだった。
そして、持っていた杖を左ベルトに刺し、地下図書館の入り口へ足を踏み入れ、真っ直ぐへと続く、長い階段を降りていった。
すると、その先は真っ直ぐな廊下があり、少し歩いて進むと、そこには大きな茶色の扉があった。
「よし」
私は茶色の扉の戸を開け、地下図書館の中へと入っていった。
その中はとてと広々とした空間が広がっていて、左右には沢山の本棚が並び、中央には本を読むためのテーブルと数台の椅子が配置されていた。
「…誰もいないね」
そこは昼間にも関わらず、図書館の中には誰もいなかった。
「まぁいい、面白い本を探そう」
その静まり返った図書館で、私は左端で5つ、横並びになっている3段建ての本棚の手前にある棚へと向かった。
「何か、面白い本はないかな?」
私は手前の棚から探してみる。
するとそこには様々なテーマの本が並んでいた、それは魔法の本、魔法の理論、魔法薬の本などである。
しかし、どれこれも私が面白いと思う本ばかりではなかった。
そして、後ろの棚へと順番ずつ見て行きながら、面白い本がないかと探していると、5番目の3段建ての棚の一番、下の段にある少し古びた薄い茶色の本を目に止まった。
「何この本は……? とても古そうだけど……。」
と、棚の下に盾に置かれた古びた本が気になったのか、私は少しだけ、その本に興味を持ち、ゆっくりと座り込む。
そして、その古びた薄い本を手に取り、立ち上がってから、表紙を見る。
「…えぇっと、召喚の書……」
そして、その古びた薄い本の表紙のタイトルには、左半分が黒く塗り潰され、残った部分に白い文字で『召喚の書』と書かれていた。
召喚の書……。なんでタイトル黒く塗り潰されているのだろう。これじゃあ何を召喚するのか分からない。でも気になる。
「……少しだけ、見てみよう」
何の召喚の書なのかと難しく考えつつも、少し気になり、私はこの古びた本を少しだけ読んで見ることにした。
「…これは魔法陣と呪文みたいかな……」
指先で、最初のページをめくると、そこには見た事もない魔法陣と私でも読める文章で書かれていた。
私はじっくり古びた本を読んでいった。
そして、次のページを開いた瞬間、私はそのページを見て、目を丸くした。何故なら、その先には、全く何も書いていない白紙のページだった。
「えっ……」
何故、最初のページだけしか記されていないのだろう。召喚の書は高度な魔法じゃなかっただろうか。それとも、誰でも簡単に出来る魔法なのか、もし、そうだとしたら……
「……そうだ、この召喚を使えば……」
タイトルが半分黒く塗りつぶされた謎の召喚の書を見ながら、私は何かを思い付き、召喚の書を持って行きながら、地下図書館から飛び出した。
そして、ベルトに刺し込んでいた杖を持ちながら、ハーウェト森の奥へと向かう、それから数分後、森の奥へたどり着き、私は再び古びた本を開いた。
「よし、着いた。ここで召喚の書を試しみよう。成功したら、きっと、学園の生徒達からも最弱と呼ばれないわ」
召喚の書を使う事が出来れば、他の生徒達を見返す事を出来る。そう考えた私は興味本意で召喚の書を試す事にしたのだ。
「よし、完成。後は呪文を唱えるだけ……」
古びた本を見ながら、私はページに書かれていた通りに魔法陣を描き終え、その本を開いたまま、手に持った杖を、取り出し、魔法陣に向けて呪文を唱えるのであった。
「せーの……」
『サモンマジックイレギュラー』
そう召喚されるなんでもいいからと、心の中でそう思いながら、私は呪文を唱えた。
すると、私が描いた魔法陣が光り輝きながら地面から、浮き出てた。
「きゃあ、眩しい」
そして、浮き出た魔法陣は周りをぐるぐると回り始め、異様な輝きを放ち、その眩しい光に対して、目が見えなくなる程の刺激を感じ、私は思わず目を閉じる。
それから、その地面に描かれた魔法陣と異様な輝きが消えたのだった。
そして、私はゆっくりと目を開けると、そこには私と同い年の見た事もない制服を着ている黒髪の少女が目を瞑りながら、立っていた。
少女は肩にかかるくらいの綺麗な黒髪。白と赤のセーラー服を身に纏った異世界人の少女、高波莉葉だった。