五十一デバフ
仕事で予定が変わった為、本日更新します。
次回の更新は11日か12日です。
そして、次の話で二章は最終話になります。
破滅の時を刻む唄声が辺りに響いている。
この唄が終わる時、そこにいる者はアガスト王国首都、ブージンの様に消え去るだろう。
◆更科美香side◇
天野美幸と萩原結衣がやられた。
正直、あの二人を殺す行動を取るとは思ってなかった。
何故? 先程迄は殺そうとする気配はなかった……なら、きっとその切っ掛けを作ったのは私との会話だったのだろう、そうでなければ、アレ程に同胞を救う等と謳う魔王が手のひらを返すとは思えない。
もし私が原因だったと言うなら……、
(二人には申し訳ない事をしたわね……。でも直ぐに私も其方に行く事になりそうだわ)
目の前には荒ぶる魔力が先程同様辺りを包み始めている。
当然、魔法の完成を只見ているだけなんて事はしない。
獣魔を常に嗾けているのだが、
「……とうとう全滅しちゃったわね……そっか〜、私もいよいよ終わりなのね」
更科が使役していた最後の獣魔も倒される。
「お前は良くやったよ……出来る事なら全員救ってやりたかったが、叛逆の可能性が残る以上それは出来ない。それに、お前達に付き合う時間的余裕も無くなったのでな、残念ながら私と大神以外、この周辺全てを消滅させる」
「……そう、ね」
「最期に言い残す事はあるか?」
「翔とファリスは生きてるの?」
「あぁ、生きているよ」
「……そっか、よかった」
心残りであった二人の事を聞け、嬉しそうな笑顔になる更科はまるで天使の様であった。
「では、サヨナラだ」
「えぇ、さようなら」
魔王は掲げた腕を振り下ろし、呪文を唱える。
「奈落に沈む希望!」
希望を摘み取る最後の魔法が放たれる。
(来世でも逢いの絆みたいな仲間に出逢えると良いな……サヨナラ、翔……)
更科はギュッと眼を瞑り、衝撃に備えながら最期の瞬間を待った。
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しかし、衝撃は幾ら待てど一向にやって来なかった。
「ロリよ……お前そんな簡単に諦める女だったっけ?」
その声を聞き、閉じた眼を開けると、其処には逢いたくて待ち焦がれた男、夕凪翔? が立っていた。
「何だ、俺の事忘れたのか? 薄情なロリっ娘だなオィ!」
「えっ……あ、なん、で?」
風貌がかなり変貌しており、白髪混じりの黒髪、いや、比率を考えたら黒髪混じりの白髪になっている。更に更科の顔を覗き込む両眼は黒眼と紅眼のオッドアイとなっている。
「ん? あぁ、この格好か? 似合うだろ? ダンディーレベル100って感じじゃね?」
アホな言葉を吐くこの男に更科は間違い無く夕凪翔だろうと確信した。
「……遅いのよアンタ」
「まぁ、俺も したしな」
翔が言葉を濁した為上手く聞き取れなかった。
◆夕凪翔side◇
魔王が最前線に出発したと聞いてから数日が経った。
「なぁ、ファリスよこれからどうするよ?」
「どうしましょう……? 取り敢えず御飯食べますか?」
「そうだな、腹が減っては何とやらだしな」
「?」
まぁ、日本の言葉だから知らないですよね!
さて、実際問題どうするか? 何とかして向こうに行く方法は無いもんかね〜。
俺がそんな事を考えていると、
ゴゴゴゴゴォォォ!!!!!
突如として大きな地響きが発生した。
「な、なんだ!?」
「分かりません!」
「取り敢えず外に出るぞ!」
「は、はい!」
俺とファリスは外に出ると衝撃的な光景を目の当たりにした。
「……空が罅割れてる?」
「はわわ! 何ですかコレ」
ファリスがこんな反応するって事は異世界の常識では無さそうだな……。
だけど、この空を見ているとヤバい予感しかしなかった。
「……ファリス、早々に此処から離れるぞ」
「何処に行くんですか!?」
「行ける所までだ……」
俺はファリスの手を取り街から直ぐに離れた。
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時間が経つにつれて空の罅はどんどんとその範囲を広げていた。
「一体何なんだよコレ……」
「分かりません……でも、何か恐ろしい事が起きてる気がします」
「其れには同意だ」
「とにかく逃げて逃げて逃げまくるぞ」
罅割れた空から逃げる為に再び移動をしようとした所、
「この世界に逃げ場なんて無いよ……」
その言葉に俺とファリスは振り向くと、其処には、
「魔王! どうして此処に! それにどうして──」
そんなにボロボロ何だ? そう言葉を吐こうとした所、
「フフッ、まさかお前があの男だったとはな……。コレばっかりは私も完全に予想外だったよ、でも答えが分かれば何て事も無かったな」
「お前何を言ってるんだ、其れにはその傷は……」
「気にするな、単なる致命傷だよ」
何言ってんの? 致命傷を単なるで済ますなよ……。
「私は死ぬ……」
致命傷じゃん!
「正確には世界もだが、まぁ大差ない」
「ちょっと何言ってるか分からん」
「そうだな、お前には何の事だか分からないだろうが、まぁ気にするな」
「無茶言うなよ……それより、何の用があって此処にいるんだ?」
多分、俺かファリスに用があるから此処に居るんだろうな? しかもボロボロな身体をおしてまで来る用って事か……。
「あぁ……私にも時間が無いから単刀直入に言うと、お前には過去に行ってもらう」
「……ん? もう一回言ってくれ」
「541年前に行ってくれ」
聞き間違いじゃなかった……。
「訳を聞いてもいいか?」
「簡単だよ……同胞を……私を救ってくれ」
そう言う魔王の顔には一筋の涙が流れていた。
「それって俺じゃなきゃダメなのか?」
「……そうだ」
「そうか……」
女の涙に弱いな俺……こんなの断れないぜ。
「分かった……って言っても何すれば良いんだ?」
「私とファリスでお前を過去に送り込む」
「ちょ、待って下さい!」
今迄黙ってたファリスが、とうとう我慢出来なくなって会話に割り込んで来た。
「何だ? 忙しいから手短に頼む」
「過去に行くのは良いんですけど、カケルさんだけなんですか?」
「当たり前だ、お前の魔力有ってこそ出来る魔法なんだからな? お前と私で協力してカケルを送り込む側なんだよ」
「そもそも何で過去に──」
「……この後、世界は滅びる。そして、其れをどうにか出来るのが夕凪だけで、その為にもコイツを過去に送り込むしか無いんだ」
「でも──」
「やるしか無いんだ。このままじゃお前も、夕凪も私も、お前の仲間達も全員死ぬ」
「……分かりました……やります」
どうやらファリスの説得は済んだみたいだな。
「なら、早速始める。まずはファリスよ、お前は魔力を集めてくれ、私だけの魔力じゃたらないからな」
「分かりました」
「そして、お前の魔力を吸収する為に一つの魔法を唱える」
そう言って、魔王は眼を瞑り意識を集中しだした。
「──魔法の源たる魔力に干渉するは、我の気随也て禁忌を侵そう……。
しかし、禁忌を侵すは相応の代償も伴うだろう。だが、禁忌とはそもそも誰が決めたのだろうか? 生きとし生ける者か? それとも神なのだろうか? もしも神だと言うのならば、我は禁を破る事に躊躇いなど有ろう筈がない」
詠唱……と言うより神に対する愚痴を暫く聞いているとどうやら終わったみたいだ。
「それではファリスよお前の魔力を使わせてもらう」
「は、はい!」
ファリスも少しだけ緊張していた。
「 魔力吸収」
魔法を唱えた魔王に青白い光が集まっていく。
「コレは……凄いな、何だこの魔力の量は……これだけ有れば行けそうだ」
やはりファリスの魔力は魔王でもビビるレベルなんだな。
「さて、このまま次の魔法に移る前に……夕凪、少し痛いが我慢してくれ」
「ん? あぁOK」
そう言うと魔王は自身の手で自分自身の心臓を突いた。
ザシュ!
「何やってんのーーー!?」
マジで何やってんの?
「いや、私はどうせ直ぐに死ぬからな……だから、お前には餞別として私の全てをヤル」
「そ、そうか──」
ザシュ! 二度目の音が聞こえると、今度は俺の左胸から、ヤバい程の痛みが広がる。
「ぐわぁぁぁぁ!!!」
「カケルさん!!」
「狼狽えるな、私の心臓を夕凪に移植しただけだ……特殊な魔法呪でスキルも移した。おめでとう、今日からお前も魔王だ……」
そう言う魔王の顔は蒼白だった。きっと俺も同じ色をしているんだろう。だが、心臓が馴染み始めたのか痛みは直ぐに、緩やかに引いていった。
「さて、それじゃ過去に送る……とは言ってもこの魔法に関しては詠唱なんて無いから、後は発動させるだけだ。ファリス、さよならを言うなら今が最後の刻だぞ?」
「はい……必ずまた逢いましょう……カケルさん!」
「あぁ、必ずまた逢いに行く」
絶対にまた皆んなで……。
俺が決意を固めると魔王にアイコンタクトを送る。
「それじゃサヨナラだ。お前が過去に飛ぶ場所はお前に縁のある者の近くだ。541年前に生きている者はお前と同じ心臓を持つ私だけだ、だから必然的に私が近くにいる筈。だから私を探せ」
成る程、餞別とか言って渡した心臓は、そう言う理由もあるのか。
「では行くぞ」
「あぁ、頼む」
そうして魔王は魔法を唱えた。
「 最期に残った希望」
消えかける意識の中、泣き顔のファリスと、魔法の代償からか砂の様に溶けて行く魔王。しかし、魔王の表情は、全てやり切ったと言わんばかりに、とても満足気だった。
何時も見て頂きありがとうございます。
仮面の件を削除、少しだけ修正しました。2024/09/21




