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八デバフ

更新です。


 十階層もあっさりと抜け、特に問題の無いまま階層を突破して行く俺達だった。


 現在、ダンジョンの十九階層まで俺達は来ている。


 やはり、ここに来るまでもファリスとロリは無双しており正直前衛とか要らんだろ? と俺は思い始めていた。


 それにしても、


「ファリスは本当に底無しで魔法打ってんなぁ〜」

「これだけが取り柄なので!」


 ビシッ! と敬礼してくるのは良いが、まだ後ろに敵いるぞ?


「ちょっと、ファリス! まだ敵がいるわよ」

「す、すいません!」


 やはり怒られたか。


 ロリって何だかんだとファリスの面倒見がいいな、やっぱり俺と同様で妹みたいな感覚なんだろうか?


 まぁ、見た目だけで言ったら、どっちが妹か何て言わずもがなだがな。


「ちょっと、翔もちゃんと仕事しなさいよ!」

「しとるわ! 魔法のエフェクトとか無いから、見た目で解らんだけだ!」

「そ、そう、ごめんなさい」


 ──スマンな本当は何もしてなかったです。

 ……でも、本当の事言ったら蹴るだろお前。


「それはそうと、次の階層の入り口が見つかったな」


 俺が二人に指で場所を示すと、


「わぁ、本当ですね! 二十階層ですね!」

「今日は此処を攻略したら帰りましょうよ。流石に疲れたわ」


 ロリの言葉には俺も同意だ。


 正直、ロリは自分の獣魔の指揮しなきゃ行けない以上、精神的な疲労は俺達より上だろう。

 それに、かなりのハイペースで進んでいるから尚更だ。


「そうだな。俺も疲れたし、ダンジョンで一夜を過ごすのも神経使いそうだし賛成だ」

「分かりました!」


 ファリスのこの表情を見るに、疲れてるのかは激しく謎ではあるが、このパーティー、火力役のファリスにも負担を掛けてるだろうし余裕は常に見て動いておいた方が良い。


「よっし、それじゃ今日は二十階層BOSSを倒したら、帰って美味いもんでも食おうぜ!」

「「おぉ〜〜!」」



 二十階層に降りると、そこには物凄くデカいミノタウロス? で良いのかコレ……。


 多分合ってるがサイズがヤバい。


「ファリス先生、コイツの詳細を頼む」


 困った時は図書館娘ファリスの出番だ!


「はい! この大きさのミノタウロスですと、恐らくミノタウロスヒーローと呼ばれてる奴だと思います!」


 流石ファリスだぜ。


「まぁ、でも今回は完全に俺の出番だな! 動く前にデバフ掛ける!」

「ブルウアアアアァァァ!!!!!」


 ギャァァァァ! デバフを掛ける前に動いた!!!


「ヤバイ、デバフ掛ける少しの間を頼む!」

「任せて!」


 そう言ったロリの足元からは例の如く獣魔が飛び出して来る。


「私も頑張ります! ──炎とは生物の根源に灯される心の火、其れを扱うは生物の道理、ならば我等は道理となろう……ファイヤーボール」


 ファリスの高火力で、爆風が土埃を舞い上げた。


「ちょっ!?」


 爆風でミノちゃんが見えなくなった!


「ファリスゥゥゥ! 見えなくすると認識出来ないからデバフ掛けられなくなるぅぅ!!」

「はい、分かりました!」


 本当に分かってるんだろうか?


「ちっ、しょうがない! 皆、ミノの射程には入るなよ?」

「分かってるわよ!」

「はいっ!」


 ミノちゃんを煙の隙間からチラチラと認識出来る度に感覚崩壊を掛けてるけど、まだまだ元気そうだ。


「埒があかない……ロリ、上手いこと誘導頼むぞ!」


 俺はロリに認識エリアへ敵を誘導する様に頼む。


「任せて!」


 ロリは俺の言葉を理解すると獣魔に俺を乗せ、そのままミノちゃんに向かって走り出した。


 ……って俺が認識エリアに誘導されんのかよ!


「うひぃ〜〜〜〜!」

「叫んでないで、さっさとデバフ掛けて!」


 分かってるよ! 分かっちゃいるけど獣魔の揺れと速さが予想以上なんだよ!


「あぁ、もうやってやらぁぁぁ!!!」


 取り敢えず、ガンガン掛けてやる!


 今日の晩御飯は牛フェスティバルだぜ!


 煙の中に居るミノを認識する度、デバフは掛けているし、そろそろ下限まで行っただろ。


「きっと多分、絶対大丈夫だ!」


 その証拠に煙ってる中、敵からはさっき迄の勢いは無くなっていた。


「よし、全員でボコるぞ! 俺に続けぇ!」

「「了解!」」


 三人で動きの鈍ったミノちゃんをタコ殴りにしていると、段々と動きが鈍っていく。


 この光景って他所から見ると単なるイジメの現場だな。


 それから更に数分後、俺達の足下にはミノちゃんの死体が出来上がった。


「何て言うか、リアクションが無い相手だと決め台詞的な事が言えなくて寂しいんだが?」

「何言ってるのよ、別にそんなの要らないでしょ!」


 ロリは男のロマンが分かってない、分かってなさすぎる!


「ロリには分かんないよな……でもファリスなら分かってくれるよな?」

「はい、分かりません!」


 俺には味方が居なかった。


「ったく、次に仲間になる奴はロマンが分かる娘がいいのぉ……」

「何を訳分かんない事言ってんのよ」

「まぁいいや。ミノちゃんの食える部分だけ回収して帰ろうぜ?」

「食える部分って……何処なのよ?」

「普通に牛と同じ部位で良いんじゃね? ファリスは食える部分が分かったりするか?」

「勿論です!」


 この娘は何で紅の絆を追い出されたんだっけ?


 正直な話し、戦闘依頼中心で動けば借金返済とか余裕だっただろうに……。


「それはそうと、今回みたいになるとやっぱり前衛が必要だな!」

「そうね、ちゃんと敵を抑える前衛は必要ね」


 ロリがジト目で俺を見てくるが、俺からすればさっきの所業を忘れてないからな?

 お前が俺を獣魔に乗せ、特攻させたのを覚えてるからな?


 これは貸しにしておいてやるから覚えてろよ。


「すいません……私もいつも通りに魔法を連打してしまって」


 少し落ち込んでいるが反省してる様だし、軽い注意だけでいいか。


「まぁ、気にするなよ? あの場合は、俺のデバフが掛けやすい魔法を選べば良いだけだし、ファリスの火力は頼りになってるから必要以上に落ち込む必要も無いさ」


 まぁ、こう言っておけば今後は少しだけ考えて魔法を撃つだろ。


「はい、分かりました!」


 いや、だとしても切り替え早すぎやろ。


「まぁ、何にせよ前衛を探さないといけないわね」


 それなんだよなぁ……。


 良い前衛が何処かに居ねぇかな。


 まぁ、帰るか。



 何故なのだ……敬愛するリリーナ様が城から居なくなってしまった。


 この私、ロビンソンに何も言わずに出かけるとは考えにくい。

 ──ならば、これは外部からによる計画的な誘拐事件かもしれない。


 しかし、そう考えた時やはり矛盾が生じる。


 矛盾……リリーナ様は神子であり剣の天才と言われている位に強いお方だ。


 つまり、誘拐の線は有り得ない。


 もしかして、何か別の事件に巻き込まれたのかもしれない。


「だとするなら、私が早くお助けせねばならないな!」


 私は決意と共に気持ちを切り替えて装備を担ぐと、リリーナ様付きのメイドが私に話しかけてきた。


「ロビンソン様、リリーナ様からの言伝が御座います」


 ふむ、リリーナ様のお付きの者の言葉、きっと重要な情報に違いない。


「聞こう」


 私が聞く姿勢を作るとメイドはコクリと頷き喋り出す。


「先の情報を聞き、勇者様の助けとなるべく供に戦いに赴くとの言葉を頂きました。ロビンソン様には心配は無用との言葉を預かりましたので、ご報告させて頂きます」

「うぬぅ〜……」


 メイドの言葉を聞いて事件に巻き込まれたのでは無い事に安堵するが、今度は別の不安が出てきてしまった。


 リリーナ様は大神拓哉殿の所に行ってしまわれた。

 大神拓哉殿は魔王軍との戦闘が激しいパーティー、そんな彼の元に行く事は危険に自分から飛び込む行為だった。


 そんな危険な場所に行くのならば、主君を守る騎士である私が行かないなんて選択肢は無い。

 置いて行かれて、ハイそうですかと引き下がる訳にも行かない。


「早く私もリリーナ様の元に参らねば……」

「ロビンソン様?」

「今行きますぞ、リリーナ様!」

「お待ち下さいロビンソン様ぁぁ!!」


 私はメイドの言葉を無視し、大神拓哉殿のパーティーに合流する為、この街を後にする。



 さて、夕凪さんが拠点にしている街のギルドに到着したのは良いのですが……困りました。


「おい! 良い女だからってお高く止まってるんじゃねーぞ!」

「そーだ! 俺達が冒険者の事について優しく教えてやるって言ってんだよ!」


 私は冒険者ギルドと言う物をどうやら理解していなかった様です。


 勿論、知識としては理解しておりましたが実際に来て登録をしようとしたら、ギルドに居る柄の悪い方々達に囲まれてしまいました。


 話しを聞けば、冒険者の事を教えてやる代わりにお酌をしろと付き纏われてしまいます。


 キリがない為、無視してギルドを出ても、私を追いかけて同じ事を言って来ます。


「──ですから、説明は不要ですと何度も申し上げていると思いますが?」


 もう何度目か分からない断りを言うと、


「面倒臭ぇな! どうやら無理矢理言う事聞かせられる方が好みなのかぁ?」


 六人組の男達が、とうとう武器をチラつかせ始める。


 まぁ、良いですけど。


「一応お伝えしておきますが、武器は抜かない方が身の為ですよ?」


 一応、私は忠告しましたよ。


「ギャハハ! 身の為ってお前の事か?」


 男達は一斉に笑い出す。


 私は何か可笑しな事を言ったのでしょうか? お屋敷育ちが長い為、イマイチ皆様の笑いのツボが分かりかねます。


「それじゃ、お好みに合わせて脅させてもらうか!」

「そーだな! たっぷり遊んでやるからな!」

「「「「「ギャハハハハ!!」」」」」


 そう言って男達は武器を抜いた。


「抜いてしまいましたね」


 忠告が無駄に終わってしまって本当に残念です。



 何で彼等は女の忠告を無視してしまったのか。


 何で彼等は、この女性が剣の聖女だって直ぐに気付かなかったのか。


 それはそうだろう。


 こんな所に聖女が居るなんて、普通は思わない……。


 しかし、聖女は現に此処に現れ、彼等は敵対してしまった。


 彼等は後悔しても遅い事に今更ながら気付く。


 剣の聖女を知る者ならば、剣の聖女に喧嘩売る何て行為は命が幾つ有っても足りる訳が無かった。


 そんな化け物相手に剣を抜いてしまったが為に、既に仲間の三人が気絶させられた。


 ハッキリ言って彼等は冒険者としては、そこそこ強いと言われていた。そんな彼等でも何をされて倒されているのか全く分からない。


 いや、剣で倒されていると言う事だけは理解でき事だろう。

 だが、分かったのはそこまで。


 それ以上の事はあくまで想像でしか分からない事。

 その想像で言うならば剣の聖女の攻撃とは恐らく、単純な速さと正確差によって行われている物だ。


 その単純な攻撃でも、レベル違いの速度で攻撃されるのだから、彼等にはどうしようも出来無い。


「な、なぁ、聖女さんよ俺達が悪かったから許してくれないか?」


 男達はダメ元で許しを乞うてみる。


「私が誰か分かった上であの様な行為を行い、剣を抜いたのですか?」


 その言葉と共に聖女の目はスーっと細くなっていく。


 彼等は聖女に誤解されてると直ぐに気付くと、慌てて誤解を解こうとする。


「ち、違うんだよ! 聖女って気付いたのは本当に今なんだよ!」


 彼等は嘘を言っていない。


 しかし、その言い分は加害側が言うべき事では無い。


 だからこそ、


「──例えそうだとしても、形勢が不利になった途端に態度を改めるのは如何な物かと……?」


 聖女は当たり前の反論をする。


「わ、悪かったって……それでも許してほしい」


 聖女の言う事は正しいが此処まで強さが違うのだから、許しを乞うのも仕方が無い。


「ふぅ〜……何にせよ殺しはしません」

「ほ、本当か!」


 その言葉に自然と安堵の声が洩れるが、


「しかし、お仕置きはさせて頂きます。──今回、私が力ある者だったから良かった物の、もし私が力無き者でしたらどうなりましたか?」

「そ、それは……」


 きっと、力が無ければ彼女は手込めにされ、人生を狂わされた事だろう。


「そうです。貴方達の毒牙に掛かり、私の生活は一変する事になったでしょう。──ですから今後はこの様な事はお辞め下さいね?」


 聖女の姿が一瞬だけブレると、


「ギャァァァァ」


 激しい痛みと共に男の意識は薄れていく。


 薄れていく意識の中、残りの仲間達も倒されていく姿が見えた。


 そして、全てを終えた剣の聖女は最後に何かを呟く。


「貴方達には視えましたか? 幾千にも流れる無数の剣閃を……」


 その言葉を最後に彼の意識は完全に途切れる。



 さて、お仕置きも終わりました。


 本当はこんな事してる場合ではないのですが……。


 情報によれば、夕凪さん達は此処から近いダンジョンに潜ってると聞いている。

 その為、なるべく冒険者ギルドで待機したかったのですが……また絡まれると面倒ですね。


「さて、どうしましょう?」


 どうするべきか考えていると、


「あれ、リリーナさん! 何でこんな所にいるんですか?」


 背後から私を呼ぶ声が聞こえて来たのだった。

何時も見て頂きありがとうございます。

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