四十九デバフ
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獣魔達に集られてる魔王、全身が血に染まっている姿はまるで、鳥の群れに啄まられている餌の様だった。
しかし、餌と違うのは血に染まった姿が全て返り血だと言う事……、それならば本当の餌は獣魔達と其れを指揮する更科と言う女なのかもしれない。
◆更科美香side◇
凄い勢いで私の獣魔達が殺されていた。
突っ込ませた三千近くの獣魔達も既に二千迄その数を減らされている。
そんな状況なのに、私の近くには呆然と見ている事しか出来なくて、使えない勇者が二人居る。
「アンタ達! 邪魔臭いから向こうで倒れてる軟弱勇者を連れてさっさと離れなさい!」
「……えっ!? あ……すいません」
「そ、そうね、あ、イヤ、私も手伝うわ」
「アンタの魔法はアイツに無効化されるんだから、早く何処か行け!」
私に叱咤された二人は悔しさからか下唇を深く噛み締める。
そんな二人に私は耳打ちをすると、少し逡巡した後、納得した顔で大神の元に向かった。
「フンッ、良いのか? もしかしたら勝てる確率が少し位上がるかもしれなかったぞ?」
「……そんな事、これっぽっちも思ってないのに何言ってんのよっ!」
周辺に獣魔達の贓物や返り血を撒き散らし、地獄の様な光景でも、気楽に話しかけてくる魔王は、更科との距離を着実に縮めている。
「何だお前も随分と余裕が有りそうだな、私が怖くないのか?」
「……別に怖くない訳じゃないわ。でもね、アンタがリリーナに何かする方が怖いのよ」
リリーナに何かあれば翔やファリスとの絆も断ち切れる気がしている更科にとっては、そっちの方が恐怖だった。
(それにしてもどうしよう……このままじゃジリ貧ね。石化の魔眼持ちの奴と違って、近づければどうにかなる相手じゃないとか、ヤル気が無くなるわ)
ハァ〜と私は溜息を吐くと、何の気も無しに自分の影で獣魔の影を踏み、果てには魔王の影と間接的に繋げた。
「これはどうかしら?」
そう言うと魔王の真下から、つまり地面の影から直接獣魔を覗かせ魔王の足に噛み付かせる。
「!?」
完全に意識外から足元に噛みつかれた魔王は、自身に何が起こったのか一瞬理解出来なかった、しかし直ぐに噛み付いている獣魔達を根こそぎ薙ぐ。
「成る程、面白い使い方をするな! これは我にも回避不能の攻撃だよ。だが、火力不足だ、この程度じゃ我の超回復の前では無意味だよ」
「通用するかは別物だけど、私も思い付きでやる攻撃方法にしては、案外悪く無いと思うわ」
出来る気がする! 程度で試した試みであり、運良く通用したが、この魔王なら直ぐに対応する。そんな考えが更科に次の一手を打ち込ませる。
「今のが出来るなら、これもどうかしら?」
今度は大型の獣魔が魔王の足先から膝下迄、丸呑みする様に齧り付いた。
「だから、火力が足らないと言っておろ──ッツ!? マズイ!」
齧り付かれた足が、影に引き摺り込まれかける魔王は、直ぐに原因の獣魔を倒し後ろに跳躍して大きく距離を取った。
「体内に入れれば獣魔以外も獣魔判定になるのね」
魔王が後ろに大きく下がった事により、ジワジワ詰められてた距離は再び振り出しに戻った。
「フフッ、今のが通用するなら引き摺り込んでから影を切り離せば、それだけでも攻撃手段にもなりそうね」
「…………」
更科の呟きに魔王は少しだけ顔を引き攣らせていた。
◆魔王サラサside◇
完全に予想外だった。
この女は魔物の使役と、使役した魔物を収納するだけのスキルかと思ったが、恐ろしい使い方をしていた。
さっきの攻撃は一歩遅ければ、我の足は現世と影の境界と言う刃で切り離されただろう……それどころか丸呑みされたまま影に戻られたら一体どうなったんだ? それを考えるだけでも、我の額からは冷や汗が流れる。
(魔法は使うまでも無いと思ったが、この女は危険だ……近付いて殺すのはリスキーだな。ならば!)
「──我が語るは悠久に生きる者の言葉。
──我が救うは、来たる破滅に絶望する、同胞也」
我が詠唱を始めると同時に、先程気絶させた勇者が居る方向からも魔法詠唱が聞こえて来る。
「──透明な世界は始まりにして終わりの世界。
──その世界に生きる生命は大気に生かされているだろう……」
この詠唱、魔力の流れ……氷の封印指定魔法の詠唱か!?
マズイ、直ぐに呪文破壊の詠唱をしないといけない。
呪文破壊の魔法の方が、詠唱が短い為、後出しで詠唱しても何ら問題は無いのだが、タイミングがタイミングだけに疑問が吹き出す。
(まさか……)
我が更科の顔を見ると、あの女はしてやったり顔をしていた。
「あの時、二人に耳打ちしてたのはコレか!」
先程、更科が二人に耳打ちした内容は「魔王に不利な選択肢を強いたいから、此処から離れたら封印指定魔法を詠唱して。そして、チャンスがあるなら遠慮せずに撃って」と言ったのであった。
これにより魔王の使う魔法は、呪文破壊を使うと言う選択肢が追加される事になった。
そして呪文破壊を使うと言う事は、魔法の性質上、詠唱を完了させ、相手が魔法発動まで待機しなければならなくなり、他の魔法が使えなくなると言う事を意味した。
ならば今、相対している更科と戦うには先程と同様に接近戦をしなければいけなくなるのだった。
勿論、萩原を先に狙って倒せば解決する問題だが、更科は同胞を出来る限り傷付けたく無いと言った魔王の言葉が真実だと思っていた為、この方法をする可能性は低いとも踏んでいる。
そして、この読みは正解である。
「ちっ! ──魔法の源たる魔力に干渉するは──」
魔王が取った行動は更科に向ける予定の攻撃魔法を破棄し、呪文破壊の詠唱に切り替えた。
だが、それを待っていたかの様に、
「獣魔よ! 私と敵の影を繋ぎなさい!」
魔王に再び獣魔が殺到する。
乱戦で戦いながら詠唱する等、魔王に取っては造作も無い事ではあったが、更科の射程内で戦う事の危険性に焦燥感が募るのだった。
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