四十八デバフ
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次回更新は5日になります。
リリーナにゆっくりと迫る魔王。彼女の近くに居た天野美幸と萩原結衣は、彼女を魔王から守る様に立ち塞がる。
◆魔王サラサside◇
「退け、その女を渡せば、こんな無意味な戦いは終わる」
「退く訳には行きません! さっき迄、戦いが終わる雰囲気だったのに、どうしてこんな事を……」
「まぁ、事情が変わった。……とは言ってもお前達同胞をどうかしようって気持ちは変わらんぞ? まぁその女には残念な未来が待っているがな」
「他に方法は無いのですか!」
「むしろ、さっき迄話してた内容が他の方法だったんだが……身近に一番簡単な方法があったなら、お前達もその手段に飛びつくだろ? それと同じ事だよ」
天野美幸が魔王と話してる間にも萩原結衣は封印指定魔法を詠唱していた。
当然、魔王もそれに気が付いているが、その表情には圧倒的な余裕があった。
それもその筈である。魔王は天野達と話しをし始める前に、次の魔法詠唱を既に終わらせていたのだったからだ。
「──我の言霊によって地獄すら凍りつかそう。
──地獄に響く嘆きこそ、我への鎮魂歌」
萩原が最後の詠唱を終えると呪文を唱えた。
「地獄が凍る地獄!」
「呪文破壊」
萩原の封印指定魔法に、被せる形で魔王も呪文を唱えた。
すると、
「そ、そんな……魔法が発動しない」
「クククッ……そんな長い詠唱、我が対策しない筈ないだろう」
呪文破壊。これも魔王のオリジナルの魔法ではある。
これは相手の呪文発動の瞬間に、この呪文をぶつけると、詠唱によって練られた魔法を霧散させる効果を持つ魔法だった。
「この魔法、タイミングは結構シビアだが……まぁ、前もって封印指定魔法を使う奴が居るって分かっていたから対策何て訳ないさ」
「…………」
「どうする、もう一度詠唱するか? 言っておくが封印指定魔法以外で我を倒せると思うなよ?」
その言葉は只の拳で上級魔法を破壊した瞬間を目撃させられた彼女達にとっては説得力が凄まじいものだった。
「そして、お前がまた封印指定魔法を詠唱するのならば、今と同じ魔法でまた無効化してやる」
つまり、萩原には打つ手が無くなった事を意味した。そして回復しか出来ない天野にも萩原と同じ絶望感が伝播した。
「さぁ、分かったら大人しくしててくれ……。我だって出来れば同胞を攻撃したくないんだ」
その言葉には一切の嘘は無かった。そして、魔王の前に無力な二人はどうする事も出来なかった。
しかし、此処にはもう一人勇者がいる。
「獣魔よ! リリーナを連れて逃げなさい! 此処は私が時間を稼ぐ」
その言葉が魔王の耳を打つと同時に、獣魔による物量攻撃が加えられる。
「チッ! 魔物使いが邪魔をするな!」
千を超える獣魔が魔王目掛けて殺到する。
しかし、魔王にとっては微々たる程度の足止めにしかならないでいた。だが、更科にとってその微々たる時間こそが大事だったのである。
「そうよ、そのまま此処から離れて」
リリーナを乗せた獣魔は魔王から遠ざかる様に逃げて行く。
「逃がすかぁぁ!!!!」
ガルルと吠える様に魔王が雄叫びを上げる。
「だから行かせないって言ってるでしょ!」
更科は全ての獣魔を魔王にぶつける。その数おおよそ三千。
「クソッ! 何で邪魔するんだ! お前達の為でもあるんだぞ!」
「何が私達の為よ! 誰がアンタにそんな事頼んだ訳? 自分に酔うのは勝手だけど、そこに私達を引き合いに出すんじゃないわよ!」
魔王の気迫に少しも恐れずに言い返す更科。
「今やってる事は、アンタが単純に神の事嫌いだからやってる独りよがりでしょうが」
尚も獣魔は魔王を襲う。
魔王の視界からは、もうリリーナの姿が見えなくなってしまっていた。
そして、先の言葉とリリーナが消えた事に魔王からはさっき迄と違う空気が流れる。
「魔物使い……名前を名乗れ」
魔王は、リリーナ奪取を邪魔した更科美香を敵として認識した。
夕凪翔も敵対を避けた相手、しかし更科美香は完全に虎の尾を踏んだのである。
「私は更科美香よ」
「そうか、改めて名乗ろう。我の名はサラサ・クロムウェル、お前に終焉を齎す魔王也。誓おう、同胞とは言え、貴様はボロ切れの様にズタボロに……そして、慈悲も無く無惨に殺してやるよ」
静かに怒る魔王は愉快そうに嗤う。
何時も見て頂き有難う御座います。




