四十二デバフ
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次回の更新は21日になります。
アガスト王国の首都ブージンでは、戦争の敗北が色濃く影響し、街の空気は悲壮感漂うものとなっていた。
戦争に送り出した者達を大々的に送り出したのに、帰ってきた時の姿は街の人達に影を落とした。
戦争に駆り出された数に対して、ブージンに戻って来た者達は、ほんの一握りであり、帰ってきた者の家族や恋人、友人達は生き残った事に涙する。
そして、対照的に亡くなった者達の関係者は、先に挙げた者達とはまた違った涙を流して怨嗟の声を静かに吐き出し泣いていた。
そんな中、アガスト王国の国王が民達に向け演説が発信される。
◆アガストside◇
アガストはこれから、民達に対して心が張り裂ける様な事を言うのに内心、辟易していた。
「我が国に住まう民達よ! 余はアガスト王国の国王、アガスト・レイ・ジルファードである!」
この国に住まう者なら、そんな事を態々言わなくても分かっている。しかし、大事な人達を失った……いや、失わせたアガストは民衆達による怨嗟の視線に晒された。
一つ、二つならば大した事はないのだが、今回は大量の念を感じた。
(ふっ、流石に鈍感な余でもこの視線の数々は中々クルものがあるな……。だが、王として余は役目を全うせねばならぬ)
怨みが篭った視線に気付かない振りをし、アガストは言葉を投げた。
「此度の戦い、我等は魔王軍に甚大なる被害を与えた。しかし、それは我が国も同様であり、多くの者を失う事となった……」
騒つく民衆を気にしないで喋る。
「そこまでの被害を出して尚、我等は勝利する事が出来ない! 何故? どうして我等は魔族に勝てない? 何故、魔族は我等を虐げる? 何故だ──」
そう問いかけるアガスト王に、騒つく民衆達は静かになる。そして、その中の一人が声を挙げた。
「それは僕達、イヤ、国が弱いからでは?」
声を挙げた青年……、国が弱い等と本来なら王に言うのは不敬になるのかもしれない事を言う。
「そうだ、この国は弱い。そして、魔王軍は強い、そして我が国では強者こそが評価される。余も強者故にそうやってこの国の王となった。──ならば、強者である魔王軍は正しいのか? これを認めて良いのか? 今迄失った者達の誇りを無碍にし、魔王軍に生を乞うか?」
民衆達は困惑した表情で黙り込む。
「これからブージンに魔王軍は攻めて来る」
その爆弾発言に民衆は再び騒つく。
「余はこの演説後、王を辞し、最前線で命を賭ける。そしてこの演説は余の王として最後のお願いをしにきた」
"最後のお願い"と聞き、色んな事を察した者達が多いだろう。そんな心情は無視し、アガストは城下に集まる全ての者達を見廻すと続きの言葉を吐いた。
「皆にも家族や友人の為、次の戦いに命を賭けてもらいたい……」
王ならば民達に逃げろ! そう言うのが正解なのかもしれない。しかし、アガストはそれとは真逆の事を言った。
「勿論、逃げたい者は直ぐに逃げて貰って構わぬ。他の国に我が国の民達の受け入れをお願いしてある。逃げる者は、その辺の心配はしないで大丈夫だ」
そう言うと、"お願い"は任意だと、聞いていた者達は理解し、一部の者達はこの場を去りはじめた。去って行った者達の行動は恐らく、逃げる準備を始める為であろう。
去った人達を見てアガストは諦念を感じざるを得なかったが、それもしょうがない事だと自身を納得させた。
「……もし、最期の時まで余と戦っても良いと思う者は、この後、王城で兵士の登録を頼む。余からの最後の演説だ。皆の者、今迄こんな王の民で居てくれて有り難く思う」
そうして、アガストは王として最後の責務を果たした。
◆リリーナside◇
「ンッ……こ、こは?」
ずっと意識の無かったリリーナが目を覚ました。
「良かった目が覚めたみたいね」
真っ先にリリーナの視界に映ったのは仲間である更科美香だった。
「……ミ……カ? ……えっ? ミカがどうして!」
急速に意識が覚醒したリリーナは困惑した。それも当然である。戦闘中に意識を失い、目を覚ましたのだ、リリーナ的にはさっき迄戦場に居た様な物だったが故に混乱していた。
「落ち着いて! 順番に説明するわ」
そうして、リリーナは何があってこうなっているのか説明を受けた。
「そう、ですか……」
「えぇ。私達は籠城戦に突入する事になるわ。ただ、先の戦いで、敵にもかなりのダメージを与えたから絶望的な籠城では無いみたいよ?」
「……カケルさん達は?」
「…………」
悲しそうに首を横に振る更科に、リリーナは「そうですか」と返す事しか出来なかった。
「我が国に住まう民達よ! 余はアガスト王国の国王、アガスト・レイ・ジルファードである!」
更科に色々話しを聞いてると外からアガスト王の演説が聞こえてきた。
「アガスト王の声……演説ですか?」
「えぇ、民衆に戦ってくれってお願いするみたいよ?」
以前、我が国に民をお願いしたい。とお願いして来た事をリリーナは思い出した。
そして、そのお願いとは違う事を民達にお願いしているアガスト王……。それだけこの国にの防衛戦事情は切迫詰まっていると言う事なのだろう。
「オオガミさん達は戦ってくれそうですか?」
「大神達は戦うそうよ。まぁ、アイツの場合は仇打ちみたいな所もあるから、進んで戦う事を選んだわ」
「ミカはどうします?」
「逆に聞くわ、リリーナはどうするの?」
「私は勿論戦います」
質問を質問で返されたがリリーナは迷い無く答えた。
「そう……。だったら逢いの絆である仲間の私も一緒に戦うに決まってるわ? 今度は最後迄一緒に戦ってよね」
「フフフッ、そうですね……。今度は一緒に戦いましょう」
更科が右手を上げた。意図を察したリリーナは同じ様に右手を上げるとお互いがハイタッチをした。
パチンッ!
その病室から乾いた音が響いた後、二人の笑い声が木霊した。
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