四十デバフ
更新です。
次回更新は18日になります。
◆リリーナside◇
死を覚悟したリリーナが次に見た光景は巨大な蛇が自身を守る様に毒の沼を吹き飛ばす所だった。
「キシャァァァァァ!!!」
私にとって魔族とは討ち果たすべき存在だった……。そして、それに組みする魔物も私が倒すべき敵だった。だから、魔物を使役する能力を持った更科美香と言う女性とは、正直仲良く出来るとは思っていなかった。
結局の所は彼女達と旅を続けて行く内に私の考えは変わった……魔物を使役したとしても、それを扱う者によって変わってくる。
今、私が見た光景がそれを物語っていた。
「カァーー!!」
エスクにとって迫ってくる毒沼は単なる水の様な物でしかなかった。それも当然だろう、エビルスネークは毒に対して、ほぼ絶対的な耐性があった。
だがそれはあくまで、ほぼと言う事であり、魔子であるラルフが扱う毒は確実にエスクを蝕む。それでもエスクはリリーナを守った。主人に命令されたからか? 勿論それもあるが、それだけではない。理由は至ってシンプルだ、……エスクは単純に仲間を守りたかっただけなのだから。
「キシャ!」
どうだ! と言わんばかりに、リリーナの方を振り向いたエスク。その姿を見ると、極度の疲労と安心感から意識を手放した。
◆エスクside◇
姫から託された命令に我は心を躍らせた。
その命令とは姫の友人にして姉の様な存在、リリーナ殿の救出だ。彼女は我にとっても大事な仲間だ、だからこそ我は命を掛ける。
「キシャァァァァァ!!」
我は毒使いと思われる男に向かって突撃をした。その男は我が貴様に向かっている事を察すると、直ぐに手を翳す。
その手から毒沼が作られ、我に向かって波が襲ってきた。
その攻撃は後ろで気絶しているリリーナ殿がいる以上、我は躱す訳にはいかなかった。
ならば、
「スゥゥゥゥゥゥ!」
毒を全て飲み干す。流石にこの量の毒は、我にもシンドイものであったが、そんな物は今は後回しだ……。そして、この敵は此処で倒さねば後々、姫に害を及ぼすであろう事も理解した。
「エビルスネークだろうが、何時迄も俺の毒を耐えられる物ではない」
そう言った男からは更なる毒沼が生成され、次々にエスクを襲う。だがエスクは止まらない。どんなに毒を浴び、飲み干そうが止まる事は無かった。
「……何故死なない! エビルスネークでも致死量はとっくに超えて居るはずなんだぞ!」
その止まらない進撃に八将貴ラルフは怯んだ。
「ジャァァァ!!!!!」
止まらないエスクは数多の兵士達と共にラルフを轢き殺した。
気が付けば戦いは、あっという間に終わりを迎えた……。しかし、エスクは姫より下された命令を守る為、気絶したリリーナを乗せ更科美香の元へと戻っていった。
◆更科美香side◇
私は後方にて天野が大神を治療している光景を眺めている。
「ふぅ〜……」
峠を越えたのか大神拓哉の顔には生気が戻っていた。
「もう大丈夫なのかしら?」
「はい! 毒に飲まれる瞬間に神剣を握れたのでしょう……。そのお陰で生命力が底上げされ、此処まで持ったのだと思います」
「そう、なら良かったわ」
「更科さん、拓哉さんを救って下さり有り難う御座います!」
大神が助かった事が嬉しいのか、天野の眼には薄らと涙が滲んでいた。
「別に、助けたのはアンタでしょ? 礼を言われる覚えはないわよ」
「でも、お礼を言いたいんです」
「だったら、私の仲間が貴方の力を必要とした状況の時、助けてくれれば良いわ」
「分かりました! お任せ下さい」
そんなやり取りをした暫く後。
・
・
・
ズゥーーン!
何かが倒れる音が辺りに響いた。
「な、何事?!」
慌てて外に飛び出した更科は状況を直ぐに何が起こったか理解した。
「……エス……ク」
其処に居たのはリリーナを背に乗せ、傷だらけの姿をしたエスクが倒れていた。
「ちょっ! 大丈夫なの?!」
慌てて駆け寄った更科は気付く……もうエスクは生命活動を停止していた事に。
そして、エスクが傷だらけなのとは反対に、リリーナには大きな外傷が無い事にも気付いた。
「……そう、リリーナを最後迄守ってくれたのね。有り難うエスク。貴方、最高にカッコいいわよ」
音に釣られて人が集まって来る中、天野美幸もこの場に現れた。
「更科さん! 何があったのですか? それに、この魔物は更科さんの獣魔ですか?」
そう問いかけられると、
「違うは、彼は私の騎士よ。……さっきの約束、早速守って頂戴。エスクが命を掛けて守ったリリーナを何としても助けなさい! その後で良いから私の騎士、エスクの傷も治してあげて」
自分の騎士を傷だらけのまま放置する訳にはいかなかった更科は、天野にそうお願いするのであった。
「分かりました……必ず約束は守ります!」
「お願い……ね」
そのやり取りの後、リリーナは直ぐに天幕に運ばれ、天野の治療を受ける事となった。
いつも見て頂き有り難うございます!




