六デバフ
更新です。
夕凪達一向がロリコンズをぶちのめしている時、本命の勇者チームもまた激戦を繰り広げていた。
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僕の名前は大神 拓哉22歳、特技は剣道。
一応、全国大会にも出場し結果を出す位には頑張ってきたと自負していた。
そして、僕の現在は異世界アトラスで仲間達と供に戦いに身を投じている。
今も仲間と共にジェネラルオーガと言う魔王軍の一人と戦闘中だ。
「グカカカ! コノオレト、イイショウブデキルナンテヤルジャナイカ」
この敵はとてつも無く強い、僕だけだったらとっくにやられている。
──しかし、僕は1人じゃない。
絆を紡いだ心強い仲間がいる。
だから僕は、僕達は負けない!
「結衣さん、援護をお願いします!」
「任せて!」
──彼女は萩原 結衣。
僕達のパーティーの頭脳であり火力。
彼女が持つ四属性掌握と言うスキルは様々な魔法を使いこなし、僕達を守ってくれる。
そんな彼女は僕達全員にとって心強い仲間だ。
「雪さん、僕に攻撃を合わせて!」
「わ、分かりました!」
──彼女は七海 雪。
少し自信が無さそうで頼りなさそうに見えるが、そんな事はない。
彼女は皆に気配りが出来て優しい心の持ち主だ。
しかし、優しいだけじゃない。
彼女が使うスキル、韋駄天は優しさとは裏腹に、発動させれば眼にも止まらない速さで動く事を可能にし、その速度をもって敵を圧倒出来る程に凶悪だ。
彼女が僕の背中を守る為、僕も背後を気にしなくて良い。
「ハァァァァ! 出でよ神剣エクスカリバー!」
僕も神剣を解放する。
消耗は大きいが、神剣の加護によって僕の全ての能力は増大する。
まぁ、流石に韋駄天を使った雪さんに速さでは勝てないが、それでも大分速くなれる。
「美幸さん! 僕は今からかなり無茶をするから回復を宜しくね!」
「はい!」
──彼女は天野 美幸。
彼女が居なければとっくに僕達は全滅している。
それ位に彼女の存在は大きい。
……彼女が使う神聖術は生きてさえいれば、どんな傷も癒やしてくれる。
だからこそ美幸さんが居れば、僕達も敵に突っ込む事も怖くなかった。
「それじゃ行くよ!」
「「「はい!」」」
準備が完全に整った僕等は、ジェネラルオーガへと斬り掛かる。
そんな僕等の猛攻にジェネラルオーガも必死に致命傷を貰わない様に受けている。
雪さんの攻撃にも対応出来ていない! 結衣さんは四属性を上手く使い、魔法でジェネラルオーガを削って行く。
このままイケる!
僕は勝利を確信した。
「ユウシャヨ……ツヨイナ!」
瀕死な状態迄追い詰められたジェネラルオーガから僕等に称賛が贈られる。
──しかし、これは僕だけの力じゃない……だから、
「僕が強い? 違うよ、これこそが僕達の絆の強さだ!」
ジェネラルオーガにそう告げると、トドメを入れる為、最後の一閃を放つ。
「グギャァァァ!!!」
一閃によってジェネラルオーガが断末魔の悲鳴をあげる。
「「「やった!」」」
仲間達のその言葉と共に、敵は倒れるとそのまま動く事も無かった。
「勝てたわね!」
「そう、ですね!」
「やりましたね、拓哉くん」
三人が喜んでる。
勝ててよかった……。
「ありがとう、今回も皆んなのお陰で勝てたよ」
やった、この場に居ない皆んなも待ってて下さい。
必ず僕達は魔王を倒します。
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昨日はあのまま野営を行い、夜が明けた。
「眼が! 眼が開かないんです! 敵襲ですよ翔さん! 更科さん!」
「大丈夫だ安心しろ。何も問題は無い!」
そう、何も問題は無いのだ。
何故なら昨日の野営中に寝てるお前のまつ毛の毛先同士を固結びしただけだからだ。
俺って器用だろ?
これをもって先日の事はチャラにしてやる。
その後、ネタばらしをしたら「ファリスに何してんのよ!」とロリが俺にジャンピングハイキックしてきたのだった。
……コイツ、近接戦闘行けそうだな。
あっ、因みにファリスは、まつ毛の先端だけ切って何とかなった。コレでお菓子の件は許してやるよ。
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さて、本日もやって参りました獣魔使役の旅二日目!
昨日の頑張りでロリは獣魔を二十匹使役出来たらしい。
試しに全部出して貰った時、影から這い出てくる光景はまるでホラー映画の様で怖かったのが印象的だった。
「ロリは今日、何匹捕まえる予定なんだ?」
「ん〜、昨日と同じ二十匹位?」
「オッケー、片っ端から弱体化させてやる」
「ありがとう」
ロリが礼を言うが、パーティーの戦力を増やすのは当たり前だからな。
「それじゃ、いっちょやるか! あっ、ファリスは昼飯作っててくれ」
「お料理担当頑張ります!」
本当にファリスはエエ娘だな……料理も普通に美味いし。
「おう、宜しく!」
その後、暫く捕縛作業に没頭していると、何時の間にか目標も達成した。
やる事もやったのでファリスが作った昼飯を食ってから街に戻る事にした。
ついでに本来の目的である金稼ぎも帰りがてら当然行った。
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街に戻った俺達はいきなりのイベントのビビった。
「兄ちゃん、金とその女二人寄越せや」
オイオイ……マジかよ、街に戻ったら速攻でカツアゲに合うとか治安ヤバすぎんだろ。
それに女を要求するにしてもどうなんだ?
ファリスはまだわかる。
──だが、お前等はロリで良いのか……?
まぁ、色んな趣味の奴も居るのも分かるがな。
「痛い目に合いたくなかったら、金と女を置いてさっさと逃げな!」
「グヘヘ」
チンピラはやはり三人なのか。
テンプレート三人組のチンピラ、略してテンプラ! 美味しそうじゃねーかよ。
実際お前らを倒せば、ドロップが意外と美味ぇんだよな。
だが残念ながら今回、俺がどうこうする必要は無いだろう。
何故ならウチの獣魔が既にマウント取って一人をボコボコに殴ってるからだ。
その足元からは、大量の獣魔を出しながらだ……。
怖っ……このロリ怖っ!
コイツが魔王なんじゃないか?
「何にせよ、お前達も絡む相手が悪かったな? 死にたくなかったら金目の物をお供えして、ロリに謝ってから帰るんだな」
俺の前にはフゥーフゥー!! とかヤバい呼吸をしている獣魔がいる。
「終わりましたー?」
そして、ファリスに至っては完全に他人事だった。
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討伐した魔物の部位証明を納品する為、ギルドの扉をくぐる。
──中に入るとギルド内は慌しく職員が動いていた。
「何か慌しそうなんだが、何かあったんですか?」
近くの居た職員さんにこの状況を聞いてみた。
「それが……現在は緊急の依頼が発令されております」
緊急性の高い依頼が発生しており、全ギルドメンバーに強制依頼が出されていた。
「強制依頼か……どんなのだ?」
俺が内容を確認してみると、近くにエビルスネークとか言うヤベェ蛇が現れたとの事らしい。
そして、それを討伐して来いってのが今回の強制依頼だ。
「ヤベェ蛇が居るらしいから倒して来いだってよ」
「それも魔王軍なのかしらね?」
「その蛇も魔王軍らしいですよ!」
ファリスはどこからその知識を蓄えてるの?
凄い自信満々に言うのね……。
まぁ、何にせよ強制依頼だしやるしかなさそうだ。
「それじゃ、頑張るぞっ!」
「「おぉーー!」」
何か良いな! パーティー組んでる感じっぽい。
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違うんだよ……俺が求めていたパーティーはこんなんじゃない!
「グガァァァ!!」
「ピギャァァァ!!!」
今、俺の視界にはジェノサイドが行われており、魔物の叫びと共に地獄の様な光景が写し出されている。
具体的に言うと……。
ロリが大量の獣魔を呼び出し、数の暴力で敵を食い散らかす。
そして、ファリスは固定砲台ヨロシク状態で敵を消し飛ばしていく。
……ってか君達さぁ……パーティー組む必要って有ったの?
ソロとか絶対余裕だろ。
そして、暫くすると辺りには何も残らなかった……。
「──ってオイ! 雑魚の討伐証明位は残せよ! 一応金になるんだから!」
「討伐証明はさっきの狩場でやったでしょ! 今回は目的が違うんだから剥ぎ取りなんて別にいいわよ!」
「〜〜♪」
ファリスは俺の話しを聞かずに、鼻歌しながら敵を消し飛ばしていく。
お願いだから俺の話し聞いて……。
その後も二人のジェノサイドは続いた。
違うんだよ……。
俺が求めてるのは「此れが俺達の絆の力だ!」って感じでやりたいんだよ、分かる?
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それから更に時が経過すると、俺が最近良く感じる危機感地センサーがビンビンと反応した。
この何時もの感じはボスが近づいている。
俺は知ってるんだぜ?
何故ならば神は俺に優しくないからだ。
「キシャァアァァァ!!!」
ホラね?
「エビルスネークです!」
ファリスちゃんも見ただけで分かるとか凄いね。
勉強熱心なのは良い事です。
──というか、この馬鹿デカさはマンモス位はあるんじゃないかな? マンモスとか俺は見た事無いけどな。
まぁ、でもボス戦だし俺も全力でやるぜ!
「俺がデバフを掛ける!」
「「宜しく!」」
俺は頭の中でいつもの様にセンスコラプスを連打しまくった!
「終わった?」
うん、エフェクトとか無いから解らないのは分かるけど、もう少し待ってね……?
……うし、終わった。
「オッケーだ! やれ!」
俺の合図で二人は動き出した。
「キシャァアァァァ!!」
俺の感覚崩壊の前では幾ら巨大ヘビでも無力の様だな!
ファリスとロリ、二人の攻撃で奴は弱っていってる。
勝ったな!
……ん? 何故ロリは攻撃止めた?
「ファリス、攻撃やめて!」
「はい!!」
良い返事!
「どうしてやめる? ここまで弱らせたんだ、速くトドメを刺すぞ」
「コイツも使役する」
怖い事言ってきた……。
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──我はエビルスネーク!
偉大なる魔王様から人間抹殺の任を受け、現在は魔の森で人間共を喰らっている。
どうやら人族の間では我の討伐命令が出ているらしく、この森に続々と討伐隊が入ってきている様だ!
クックック、全て返り討ちにしてくれる。
……どうやら向こうにも人間の気配がするな! 待ってるがいい! 直ぐに食ってやる!!
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見つけた! 人間よ我の咆哮で恐怖するがいい!!
エビルスネークは夕凪達を見つけると威嚇をする様に叫ぶ。
「キシャァアァァァ!!!」
フッ、我の存在と、威嚇によって人間の男は恐怖の余り一言喋った後は動けなくなったようだな!
我は慈悲深い。その恐怖! 死をもって解放してくれようぞ! さぁ、死ぬがいい
そして、一方的に始まろうとした暴力は、時間だけが無為に経過していく。
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何故だ、何故私の攻撃は当たらない!
ま、まさか、此奴らが勇者なのか?
そうなのだとしたら……抜かったわ、勇者達がこれ程に強いとは。
……どうやら、我の命もここまでの様だ。
申し訳ありません偉大なる魔王様。
んっ? 何だ人の子よ……何故、我に近づいてくる。
それにこの女の匂いは……何だか癖になりそうだな?
近寄ってくる更科からは魔物を狂わせるフェロモンが出されていた。
それはまるで良質なお酒に、麻薬を溶かしたかの様な中毒性がある程の物。
何だか分からないが、此奴らは敵では無さそうだな。
それ所か、この人の子からは魔王様以上の力があると我の本能が告げる……。
──ならば魔王様には申し訳ないが、この子供、イヤ、姫の為にこれからは戦おう。
勝手に誓いを立てているエビルスネークに、更科が話しかけてくる。
「貴方の名前はエスクよ! エビルスネークのエスク! 覚えておきない」
我はエビルスネークのエスク。
姫を守る騎士である。
何時も見て頂きありがとうございます。