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五デバフ

更新です。


 三人の勇者は一人の女の為に戦いを勃発させた。


 しかし、実情は夕凪翔が面倒臭いって理由で敵対した二人をぶちのめす事にしたのが真実だった。



 目の前で繰り広げられる戦いに、更科美香は眼を離せないでいた….…。


 一体何を見せられているのか、これが本当に勇者同士の戦いなのか、あまりにも次元の低い戦い?

 ……次元が違い過ぎて、更科の理解する速度を凌駕し、彼女の感情は置いてけぼりにされている。


 これは一体……コイツ等は何で必死な顔でスローバトルを繰り広げてるのかしら?


 そんな事を真剣に考えさせられている。


 正直、見ている側も恥ずかしくなる様な戦いだ。


 更科にとって、この戦いは全てが意味不明だった。


 ロリコン1(鈴谷康介)は凄い顔で翔に殴り掛かりに行っている。


 その顔は凄い形相だった……。


 ──だが形相とは裏腹に、その攻撃は遅い。


 とにかく遅い……。


 拳を振りかぶって翔に向かってはいる……。


 向かってはいるのだが……この速度ならば後2分は翔の元に到着しなさそうだった。


 次にロリコン2(根暗)


 ……この男は、更科にアピールする為なのか、何かカッコイイ感じの台詞を言っているものの、喋りかける方向には既に翔はおらず、虚空に向かって語りかけていた。


 その姿は痛い……見てるだけで痛いものだった。


 更科の視界の端にはチラチラと映るファリスがおり、この状況なのに通りがかりの行商人からお菓子を買って食い始めている。


「何で今なの? さっき迄食べる時間はあったでしょうに……」


 ──でも、美味しそうだからお菓子分けて貰おうかな?


 そんな事を考えが出始めは位には、彼女の緊張感は欠如しはじめていった。


 色々と言いたい事はあった……。


 例えば、無能と言われていた翔の行動だ。


 何でこの男は、こんなクソ遅い奴等の攻撃を躱してドヤるのか? こんなに遅かったら誰でも躱せる。


 色んな感情が更科美香を襲う。


 この状況……情報量の多さに更科の頭も理解する事を拒絶しそうだった。


「俺が速い? 違うな、俺が速いんじゃなくて、テメェ等が遅えんだよ!!」


ロリコン2(根暗)が倒されたわね……って言うかこんな遅い奴等、倒せない奴って居るの? そして、何か終わった感出してるけどロリコン1(鈴谷康介)がまだいるわよ? 思い出してあげて!」


 私は呟く様に翔に語りかけるが──私の願いも虚しく、翔はマラソンランナーがゴールテープを切ったかの様なテンションだった。


「これは完全に忘れてる顔だわ……しょうがない、私がやろうかな?」


 ──でも、コイツを素手で触りたくないからな〜……あそこに落ちてるレンガを投げれば良いかな?


「とりゃっ!」


 取り敢えず、遠目からでもキモかった為、後頭部に向かって思わず本気で投げつけてしまった。


 ドグシャッ!


 ……変な倒れ方したけど多分大丈夫……よ、ね?


「よっしゃぁぁぁぁぁ! 今度こそ言えたどぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 翔も翔で吠えてるし、何か怖いわねコイツ……。



 流石な俺、向かう所敵無し! 決め台詞も言えたしな。


 感覚崩壊ちゃんはマジで俺のヒロインだわ!


 さて、勝者の特権で装備を剥ごうかとも思ったが。

 何か頭から血を流して、気持ち悪い倒れ方してるロリコン1(鈴谷康介)が目に入ったからやめてやった。


 ってかこいつを倒した記憶が無いんだが?


 もしかして俺の能力が覚醒したのだろうか? 


 ……まぁいっか。


「おう、更科は無事か?」

「無事よ」


 何でこのロリっ娘は顔ヒクヒクさせてるのだろうか?


 それとも俺の能力を見て惚れたのか?


 まぁ、自分で言うのも何だが、今の俺は姫さまのピンチに現れた王子様に見えなくもないだろう。


「それは良かった。それで、ファリスは何でそんなにお菓子の包みを一杯持ってるの?」

「お腹空いたので食べてました! 更科さんにもちゃんと分けましたよ!」

「そうか、俺の分はあるか?」

「全部食べちゃいました!」


 オイッ、全部食うなよ! ってかお前に金渡してないんだけど、それはどうしたんだよ。


 んっ? 行商のオッさん、何故に俺に近づいて手を差し出してくる……握手でも御所望か?



 ファリスが食べてた物の代金を取られたわ。俺は食べてないのに……。

 ムカついたから寝てる間に、ファリスのまつ毛を一本一本丁寧に固結びにしてやると心に誓った。


 そんなどうでも良い事を考えていると、


「ねぇ」


 更科美香が俺の身体をツンツンと突っついてくる。


「んっ? どうした更科」

「さっきの戦闘の地獄っぷりは翔の能力なの?」

「そういえば説明してなかったな……。実は俺の能力って重複して何度も掛けられる事が分かったんだよ」


 更科も俺の能力の特性とこの世界でのルールを知って筈だ。


「つまり、あのスローな戦いは何度もデバフを掛けた結果?」


 全部説明しなくても把握してくれる辺り、理解力はやはり高そうだ。


「せやで、凄いやろ?」

「でもロリコンズは、はっ、速い! とか言ってた感じだったけど、……もしかして、アイツ等はデバフを掛けられた自覚が無いの?」

「感覚崩壊でその辺の感覚も多分ぶっ壊すんじゃないか? 俺も無自覚パターンしか見た事が無いけどな」

「ふーん、そうなのね……」

「そうなのだ」

「……どうやら、貴方に付いて行くのが正解のようね」


 更科も俺の実力が分かった様だ。


「そう言えば気になったんだが、アイツ等二人しか居なかったけど、マッチョはどうしたんだ? (しぼ)んだか?」


 筋肉って何もしないと直ぐに萎むしな……きっと、マッチョも苦労してるんだろ。


「多分だけど、筋トレしてると思う。アイツは筋トレすると自分だけの世界に入って、恍惚とした表情で筋肉に喋りかけるわよ」


 ヤバいよ〜、筋肉キメてるよ〜。


「だから放置されたのか……」


 そう言えば、ロリコンズはロリコンズで何で俺達を先回り出来たんだろうか?


「あの二人はどうやって追い付いたか分かるか?」

「多分、人心掌握で街の人から私達の情報を聞き出し、闇魔法を使って空間を削って来たんでしょ」


 何それ、闇魔法ズルく無いか?


 マジでそんな事出来るの?


 俺の感覚崩壊ちゃんにも空間崩壊とかは付かない?


 ──神よ! 是非に御一考下さいっ! っよし、神が居る世界ならこれでアピれただろ。


「さて、これから何処行くか……ぶっちゃけ魔王と戦いたくないっス」

「私も戦いたくないわよ」

「お腹空きました……」


 ファリスよ、さっき迄色々食ってたのに腹減るの早過ぎだろ……。


 まぁ、食べ盛りなのかねぇ……。


「まぁどちらにせよ、ここに来る途中でかなり金使っちまったから討伐依頼やっぞ!」


 主に金を使ったのはファリスだけどな。


「私も獣魔捕まえたいわね」


 そう言えば更科はそんな能力だったな。


「おぉ、捕まえようぜ! 面白そうだ!」


 戦力は強化しておきたいしな。



 狩場に向かう途中、噂で二人の旅人が病院に運ばれたらしい。

 そして、治療はしているが片方は瀕死の重傷との事。

 それを聞いた俺は無殺生を貫けなくなる可能性に震えた。──横を見たら、ロリが俺以上にカタカタと震えていた。


 なんでお前が震えてるの?


 そして、俺達は狩場に到着したので早速獣魔の使役をやらせてみた。


「…………」


 ロリが黙々と獣魔使役をしているのだが……。


 何、獣魔使いってこんな面倒なのか?


 相手を弱らせて自分の匂い嗅がせて懐かせる! 


 あれ、割と普通の事しかしてなくない?


 スキルっているのかコレ?


「なぁ、その作業工程にスキルの必要性を感じないんだが……ファリスさんはどう思われますか?」

「狼さん可愛いですね!」


 うん、会話のキャッチボールが出来ない辺り、この娘は将来大物になるわ。


「ってか今迄、獣魔を捕まえてこなかったん?」

「捕まえたくても環境がさせてくれなかったのよ」

「んっ? 環境で言うならマッチョパーティーは強そうだし捕まえられそうな気もするんだがな…….」


 俺がそう言うと、


「そんな訳無いわよ」

「それまたどうして?」

「──私に良い所見せたいからなのか、ロリコンズは直ぐに敵を殺すし、マッチョはマッチョでその拳で敵をミンチにするし……。お陰で使役で捕まえれたのは、この子だけよ」


 そう言うと、更科の影から小さな犬みたいな猫が出てきた。

 何言ってるかわかんないがニャーとか言ってるからコレが事実だ。


「って……今、影から出てきた?」

「出したわね」

「そっちの方が凄いんだが?」

「そう? まぁ、何にせよ今は貴方のデバフで弱らせられるから使役は簡単そうね」

「おぅ、感謝しろよ〜? そしてジャンジャン捕まえようぜ! って訳でファリスも手伝ってくれ!」

「「了解!!」」


 よし、この状況なら言える!


「それはそうと、これから更科の事はロリって呼ぶからな」

「殺す」


 ダメらしかった。



 ロリと呼ぶ事をオッケーして貰えた。


 その代償として俺の爪が事故で一本砕かれた、マジで痛い。


 ──だが、これで俺の作戦は一歩進んだ。


 アイツは自分がロリだと言う事を拒む。


 しかし、拒もうが事実ロリだ!


 そして、それがロリにとってはコンプレックスになっている。


 きっと、それがロリのお姉さん力の成長を妨げている。


 だからこそ、俺が常にロリだと言う事を意識させる事によって「私ロリだけど何か問題ある?」って仕向けてコンプレックスを取り除く。


 そうする事によって、数年後には俺好みのお姉さん力になっていると推測している筈だ。



 私の名前はロビンソン。


 敬愛するリリーナ様の従者にして騎士である。


 召喚の儀が終わってからと言う物、リリーナ様の様子が少しおかしかった。


 最近は何かある度に「アカン、アカンよ」とか意味が分からない事を言う様になった。

 そして、夜には星空を見上げ「勇者様……」と憂いを込めた表情で呟くのを見かける。


 きっと、リリーナ様はあの大神拓哉と言う好青年に恋をしてしまったのだろう。


 私はどんな時でもリリーナ様の味方。


 主人である彼女があの男の元に行くと言うのなら、全力で手助けをするつもりである。


 私自身の幸せは彼女の幸せにこそある。


 故に、私は何時迄もお守り致します。


 ──そして、リリーナ様は今日も空を見上げて何か呟いてらっしゃる。


 もしかしたら私を呼ぶ声かもしれない!


 絶対に聞き漏らさないようにせねば……。


「アカン、あの能力はアカンやろ勇者様……」


 アカンって何だろうか?


 リリーナ様に聞いたら怒られるだろうか?


 願わくば早く魔王を討伐してもらい、大神拓哉様にはリリーナ様の重荷を分かち合い、共に幸せを歩んで頂きたいと願う。

何時も見て頂きありがとうございます。

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