四デバフ
更新です。
爆発音と共に、俺の標的であるオークロードはその生を儚く散らした。
「…………」
ねぇ、何で俺の決め台詞奪ったの?
漫画やアニメとかでもあるじゃん……敵に止めを刺す時にカッコいい事言う奴。
今のはアレだったよね? 完全にアレのタイミングだったよな。
これは文句を言って良い筈だ。
ビシッと言ってやる。
この爆風は、さっき迄、一緒に居た奴がやってたから誰か分かってんねん!
「ファリスゥゥゥゥゥ!!! 出て来いゃぁぁ!」
俺の言葉と共に、ファリスが急ぎ足で現れた。
「ハァハァ……翔さん間に合って良かったです! 何時迄も追いついて来ないので戻って来ました」
そんな純粋無垢な目で言われたら、拙者も怒れないでゴザルよ……。
あっ、でもオークロードの討伐証明消し飛ばしたのは許さないからな?
「ファリスも有難うな! お前の援護のお陰で助かったよ」
まぁ、実際には援護も要らんかったけど……。
「ホントですか! これで私も正式な仲間──」
「それはまた別のお話」
「──最後迄言わせて下さい……」
ハァ〜、オークロードさんの討伐金は幾らだったのだろ……。
凄い金額だったらニート宣言しようと思ったのに。
──ってか今更だけど、リリーナちゃんのお礼って何? 死ぬかもしれないのに後払いシステムなの? こんな事なら、ぺぇ位揉んでおくんだったわ。
「世知辛いな」
……まあ帰るか。
「さて、帰るぞファリス」
「えっ! 一緒に行ってもいいんですか?」
「良いも何もパーティを組んでるんだから当然だろ?」
「わぁ〜、有難うございます!」
「そいじゃ帰るべ」
「はいっ!」
まぁ、ファリスは良い娘だけど、コレでお別れだな。
正直、一人の方が気が楽だわ。
・
俺とファリスは街へと無事に戻れた。
「それじゃ、今日の宿代はちゃんと有るだろ?」
「はい!」
「そんじゃ後は大丈夫だろ。これからは頑張れよ?」
「はい、一生懸命に頑張ります!」
「それじゃ、おやすみ」
「おやすみなさい!」
うし、今日も頑張ったし寝る!
・
翌朝、俺はギルドに向かう準備を終えると気合いを入れる為、顔をペシペシと叩くと「さて、今日も一日頑張りますかっ!」そう言ってギルドへと向かった。
「さて、何かあるかな?」
俺はギルドで依頼の吟味をしていると、ファリスが後ろから声をかけてきた。
「翔さん、お待たせしました!」
「んっ、何の話しだ?」
「はい、パーティメンバーの書類とか全部やっておきました!」
この娘は会話のキャッチボールが出来ないのかな? 何を言ってるのか分からないんですけど。
「これで私達は正式な仲間ですね!」
「それは昨日、別の話って言っただろ……」
「え? でも一緒に行って良いって言ってたじゃ無いですか……アレは嘘だっ……たんですか?」
エッ、何で泣くの?
俺が悪いの?
オイそこのギルドのオッさん、何故に俺を睨む。
受付のお姉さんも人を呼びに行こうとするな……完全にアウェイじゃないですか!
……悲しいけど冤罪なのよねコレ。
取り敢えず、このまま放っておくと俺の株が下がってしまうので、宥める事にした。
「ファリス、とりあえず泣き止んだくれ……なっ? その後、ちゃんと話し合おう! 前向きに!」
「うぅ……わがりまじだ」
その後、話し合って、やんわりとお前イラネって言う度に泣かれ、最終的には俺が折れる事となった……。
「宜しくお願いします!」
笑顔が眩しいなオィ!
まぁ、でもパーティー組むとなると決めなきゃ行けない事があるな。
「取り敢えず普段の役割を決めようと思う。事務的な話しだが、ファリスは何がやりたい」
「前のパーティーでは買い出しやってたので買い出し出来ます!」
「うん、ダメ! お金に関係する事は俺がやります」
紅の絆よ……何故ファリスにお金を持たせる。
俺はお前等の采配ミスも借金の原因だと思うんだが?
「ど、どうしてですか……私、何かしましたか?」
「何かしかしてねぇーよ! ここ数日の金銭的な事を全部思い出せよ!」
その後、俺はファリスを洗濯係と料理係に任命した。
・
お互いの連携を深める為に狩場にやってくると、俺は言っておかないといけない事を思い出した。
「あぁ、そうだファリス」
「はい、なんですか?」
「俺、実は勇者なんだわ」
「ふぅ〜、冗談は程々にして下さい」
フッ、これだけで信じないのは想定済みだ。
だが俺の能力みたらきっとビビる。
「そう言うと思ってな! あそこにいるオークを見ててくれ」
「はい、見てれば良いんですね?」
「そうだ、行くぞ!」
必死に感覚崩壊を使って下限値まで下げた。
「もう大丈夫だ!」
「何がですか?」
「あいつはもう、只の豚に成り下がった」
「ちょっと何言ってるか分かりません」
「あぁ……確かに分かりづらいが事実なんだ。試しにアイツの前に行ってみろ、動きがクソ遅いからお前でも撲殺できるぞ?」
「えぇ……」
恐る恐る豚に近づいて行くファリス。
あ、疑いつつもちゃんと敵の前まで行くのね? やっぱり良い娘ではあるんだな。
・
俺達の足元にはオークが転がっていた。
「翔さん、す、凄いです、地味だけど!」
「凄いだろ! 地味だけど! ってやかましい」
思わずノリツッコミをしてしまった。
「まぁ実は、この前のオークロードもこれで弱体化させたから、ぶっちゃけ余裕だったんだわ」
「ふぇぇぇ〜、勇者って本当にいたんですね?」
「まぁな、俺の他に後11人いるぜ? 内3人はリタイアしたがな」
そう言えば他のパーティーはどうなってるんだろうか? 戦力面でハーレムパーティーは心配してないけど、ダークロリマッチョマンは直接戦闘できるの二人だけだったよな……?
まぁ、今度見かけたら話しかけるか。
・
俺の本当の能力はフラグを引き寄せる能力説、有ると思います。
だって、さっきあんな事考えたらこれですわ……。
「何で君達はこんな所にいるの?」
そう、俺の目の前にいるのはダークロリマッチョマン達だ…….ってかマッチョが汗臭くて近寄りたくないわ!
彼等のパーティーであるロリも俺と同じ考えなのか、マッチョとの距離が少し空いてる。
「何でも何も、僕たちは拠点を此処に移したんだよ」
根暗が教えてくれるが、勇者パーティーがいる理由が分からんわ。
「何故拠点をここにしたんだ?」
俺は理由を聞く事にした。
「周辺にオークロード出現の情報が有って、それで此処に拠点を構えてじっくりやろうってね」
あぁ〜、コイツ等はオークロードご倒された事知らないのか。
そりゃそうだ、討伐証明が出来てないからな! 証明毎消し飛んだしな!?
「それなんだが、オークロードは俺とファリスが倒しました」
「はぁ? お前の能力で倒せるが筈ないだろ!」
まぁ、信じないですよね! でもなマッチョよ……いきなり喧嘩腰は大人としてどうかと思うぞ?
「私は信じても良いわ。そのファリスって子が強い可能性も十分有るしね」
ん、ロリは見た目通りの小学生じゃねーのか? 結構理性的だな。
「なぁ、更科ちゃんは何歳だ? 結構、理性的っぽいが……」
これで俺より年上だったらビビる。
「誰が更科ちゃんよ! 年齢はこれでも20歳よ!」
20歳か……正直、小学生かと思ったわ。
悪いなロリ。
「まぁ、倒した事を信じる信じないはそっちで判断してください」
そう言って俺はファリスと一緒にこの場から離れた。
・
アレだ、勇者が同じ場所に居るとか面倒な予感しかしない……。
「トラブルに巻き込まれる前に移動するか……」
よし、別の街に行こう、そうしよう!
「ファリス、次の街に移動しよう」
「はい、行きましょ!」
俺とファリスが街を出ようとすると「ちょっと待って!」っと声を掛けられた。
「お前は……更科ちゃ、さん?」
何でロリがここに? ダークロリマッチョマン達は何やってんだ? いや、今はロリが此処に居るからダークマッチョマンか……何か字面だけで臭そう。
「何の用ですか更科さん?」
「私も貴方のパーティーに入れ──」
「お断る!」
「──断るの早く無い?」
普通の子が良いんです! 俺にロリ属性は無いんです。
イケメンパーティーの所に行ったお姉さんみたいな人が良いんです!
「それで何で態々あっちより、こっちのパーティーに来たいんですか?」
「あ、話は聞いてくれるのね」
そりゃ話位は聞くだろ。
「理由は女が私だけって言うのと、マッチョは汗臭いし、他の二人はロリコンの気が有って私の貞操が危うい」
結構理由が深刻だな!
「俺がロリコンかもしれない可能性とかって考えないの?」
まぁ、その可能性は皆無だがな。
「それは、召喚された時から無いなと感じてたわよ」
でしょうね! ずっとお姉さんと聖女ちゃん位しか見てなかったしな。
「ハァ……まぁ、同じ日本人の誼で次のパーティーが見つかるまでは臨時で入っていいよ」
このまま見捨てるのも後味悪いしな。
「ありがとう! 私はこれでも役に立つから」
「やりました! 新しい仲間です!」
ファリスも滅茶苦茶嬉しそうだな。
良かった、ファリスの面倒を更科と分担できる。
「それで、ちゃんと別れは済ませたのか?」
「大丈夫よ。ちゃんと書置きして置いたから」
それは大丈夫なのか?
何でちゃんと別れて来ないのこの子?
「何でちゃんと別れて来ないのこの子? って顔してるわね」
「エスパーかよ! 分かってるなら、ちゃんと挨拶しないで良いのか?」
「アイツ等に会いたく無いのもそうだけど、鈴谷康介が能力使って説得してきたら、抗うのがシンドイからよ」
そう言えば、鈴谷康介は人心掌握だったけ……そんなにヤバいのか?
「鈴谷の能力ってそんなに凄いのか?」
「スキルを使われたら、アイツが言ってる事が正しく感じる様になる……って話よ」
それって掌握なのか? 洗脳じゃなくて?
「そうか、それじゃ直接会うのもヤバそうだな。しゃーない! それじゃ次の街行くぞ!」
「「おぉ!」」
・
俺は神を信じない!
何故ならば俺に試練を与えて来るからだ。
何で先に街を出た俺達よりも早く、ロリコン二人がこの街道に来てるんだ?
「更科さんを返せ!」
しかも意味も分からんし。
根暗よ、お前が根暗なだけじゃ無くてロリコンだとは思わなかった……。
召喚の場で作った俺とお前の友情も此処までだ。
「返せも何も更科は自分からこっちに来たんだが……」
「そんな筈が無い! 美香さんが僕たちと離れたがる訳無いだろ!」
ワァーオ! 凄い自信でビックリした! これを聞いた更科はどんな顔してるんだ?
俺はそっとロリの顔を伺うと、
「…………」
般若の様な顔してた! ロリ顔がして良い顔じゃなかったわ。
因みにファリスも見てみたら、笑顔で手を振ってくれたから、俺も振り返しておいた。
「もし、更科さんを返さないなら力技に訴えるぞ!」
「そうだぞ、美香さんを返せ!」
まぁ、ロリコン1をこれ以上喋らせるとヤバいかもな……取り敢えず下限値まで下げておこう。
ついでにロリコン2も下限値まで下げる。
「もうあれだ、ごちゃごちゃ言ってないで掛かって来いよ! それと、俺がやるから更科とファリスは下がってろ」
そして勇者同士の戦闘が始まった。
・
「僕の闇の前では全てが無力だ!」
闇魔法は敵の全てを喰らい尽くす術。
普通の人間に打ったら、直ぐに死んでしまうだろうがしょうがない。
しかし、彼等からすれば夕凪翔と言う男は、自分達から更科美香を奪う簒奪者だった。
だからこそ、殺してでもこの簒奪を止めなければいけなかったのだ。
そして、無能と呼ばれた彼には根暗の攻撃を防ぐ術等は無いと踏んでいた。
「そ、そんな速い!?」
そんな風に根暗は思っていたが、実際に戦闘が始まると無能は視認する事すら困難な速さで、僕達を翻弄してきた。
「これじゃ的を絞れない!」
僕の闇魔法は相手を認識していないと発動できない技が多い、そんな根暗には人間の認識速度を遥かに凌駕してくる翔に何も出来ないでいた。
無能は何でこんなに速いのに外れと言われてるんだ? 理解が出来ない。
本来なら勇者であり、選ばれた能力の持ち主である自分が更科美香からも必要とされる存在なのだ。
それなのに、
「お前は、どうしてそんなに速い!」
無能は認識出来ない速度て動き、その中で声だけが自分に聞こえた。
「俺が速い? 違うな、俺が速いんじゃなくてテメェ等が遅ぇんだよ!!」
その言葉の直後、ドンっと音と共に根暗の意識は薄れていく。
そして消え行く意識の中、一緒に来ていた仲間も倒れる姿が見えてしまった。
最後に無能の声が聞こえる。
「よっしゃぁぁぁぁぁ! 今度こそ言えたどぉぉぉぉぉぉぉ!!」
何時も見て頂きありがとうございます。