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三デバフ

更新です。

 いやぁ〜、楽しかったわ。


 アイツ等に今迄の鬱憤も全部晴らせた!


 途中で「何でそんなに速く動ける!」とか言い出した時は爆笑するかと思ったぜ。


 俺はタダの糞遅いパンチを普通に避けただけなのに、動体視力が下限値まで落ちると周りも速く感じる訳だ。


 リザードマン相手だと会話が成立しない為、感想を聞けなかったから色々勉強になった。


 因みに、アイツ等の為に殺人の罪悪感なんて背負いたく無かったから、装備や俺が今まで貰えなかった分の金だけを巻き上げて許してやった。


 勿論「次は無いぞ」と念入りに脅すと、奴等はカクカクと頷いた。


 復讐も済んだし、これで俺は自由の身!


 誰も俺を阻む者は無し!


「とは言え、これからどうするかな……」


 ギルドに着いたは良いがどうするか。


 この際、一人でリザードマンでもやるか?


 ん〜、どうしよう……。


「…………さいっ!」

「んっ?」


 そんな風に考えていると、俺の後ろから切羽詰まった声が聞こえてきたので思わず振り向く。


「ごめんなさい! 本当にごめんなさい! 私が役に立たないばかりに、こんな事になってしまって……」


 女の子がパーティーメンバーらしき人達に謝っていた。


「全くだ! 毎回毎回、足を引っ張りやがって! 今回だってこんな大ミスする要素なんて無かっただろ!」

「そうよ、どうしてくれるの……」

「あぁ〜、お前のせいで今回の賠償金どうなるんだ……」

「ごめんなさい! ごめんなさい! 次の依頼は頑張りますから許して下さい!」


 うん、俺と同じでイチャモン付けられてるのかとも一瞬思ったが、どうやらマジもんのやらかしっぽいな……しかも毎回。


 これは関わらない様にして依頼でも受けるか。



 そんな気は少しだけしてました。


「宜しくお願いします! 私は、パーティー【紅の絆】のファリスと言います。特技は攻撃魔法です!」


 どうしてこうなった……俺はこの街から離れるつもりで護送任務を受けただけだぞ?

 何で俺の隣にさっきのパーティーとドジっ娘がいるんだ……そして、何故にドジっ娘は俺に絡んできた?


「あ……あぁ、俺は翔だ宜しく頼む」


 ──だけど、俺は紳士。


 話しかけられたらちゃんと返事を返せる男だ。


「はい! 宜しくお願いしまっす!」


 若い子は元気があって宜しい!


「ハァ〜騒がしくなりそうだな……」


 依頼が一緒なのはまだ良い。


 疑問なのはこのドジっ娘が何故にマシンガントークを俺に仕掛けてくるんだ? 何時の間にかフラグ構築してたとかか?


「翔さんは、どんな特技があるんですか? 機会が有れば見たいです!」

「あぁ〜〜機会があればな」


 声の大きいファリスに依頼主のオッちゃんはハゲた頭に青筋が浮かんでる気がした。


 これは多分怒ってる。


 このまま放置すれば、話しかけられてる俺にまで害が及ぶ可能性があるな……。


「本当ですか!! それじゃどんなのか教えて下さい!」

「取り敢えず依頼に集中しろよ!」


 大声で突っ込みを入れた俺だがきっと許される。


 何故なら依頼人が俺にサムズアップしてきたからだ。


「ファリス! お前は少し五月蝿すぎるぞ!」

「そうよ、周りの迷惑を少しは考えなさい」

「そうだぞ!」


 本来はもっと早くお前等が言う事だろうがよぉ〜〜!!


「ご、ごめんなさい……」


 そう言ってファリスは静かになった。


 その後、30分程静かに護送任務は続く。



 護送任務はあの後、静かに続いた。


「…………」

「…………」

「…………」


 ──ちゃうねん。

 全く静かなのも、これはこれで辛いねん。


 極端なのよ君達は! 0か100しかないの? ……分かった、俺のトーク術を見てろよファリスちゃん。


「今日は良い天気ですね、こんな日は釣りでもしたいですね〜」

「「「「…………」」」」


 ホォ〜、俺のトークに誰も付いてこれないのか、コミュ症パーティかな?

 折角「今は任務中やろがいっ!!」って突っ込みもしやすいボケとしたのに……。

 なぁ、ファリスちゃん、君なら分かってくれるよね?


「翔さん、仕事に集中しましょう」

「すいません、集中します……」


 翔は静かになったが、その分イライラが募っていった。


「…………!!」


 どうだ! 仕事のイライラを遠くの方に見えた魔物に片っ端からぶつけて感覚を壊してやったぜ!


「今回は魔物が遠くから見てるだけですね……」

「そうね、平和に終わりそうね」

「そうだな」


 俺に感謝しろよ? アイツ等は襲いたくてもマトモに動けなくなってるだけだからな。



 俺達は何事も無く街へと着いた。


 やったぜ、こんな荷物の護送するだけで銀貨10枚とかボロぃ! ボロ過ぎる!


 紅の絆は人数が多いから報酬がもっと多いっぽいな?


「翔さん! ありがとうございました!」

「おう、気にすんな。また何処かでな!」

「はい!」


 ファリス良い子やな、他の奴等は挨拶すら出来ないのか? 挨拶は社会人の基本だぞ。まぁ、俺もまだ社会に出た事ないけどな。


 さてと、折角新しい街に来たし、ブラブラと散策でもするかな。



 何だ……俺はファリスと何かしろと神からのミッションを課されているのか?


 目の前には何故か、一人でチンピラ三人に絡まれて謝るファリスの姿があった。


「ごめんなさい! 謝る理由はよく分からないですけど、ごめんなさい!」

「舐めてんのか? ぶつかって俺達を怪我させておいて、金がないだぁ?」


 チンピラ三人が文句を言っている。


「金が無えなら、その身体で払っても良いんだぜ!」

「グヘヘ」


 何だこのテンプレチンピラは……ってかグヘヘとか言う奴初めて見たわ。


 そして、何で紅の絆は居ないんだ?


 まぁ、どちらにせよ放って置けないし……助けるか。


「ハイハイ! 女の子に絡むとか大人として格好悪いですよ〜」

「何だテメェは! 俺達はこの嬢ちゃんと話してるんだよ! 邪魔すんな!」

「「そうだぞ!」」


 本当にチンピラは面倒だな! ってか何でいつも3人なんだよ! そう言うルールでもあんのか?


「それともテメェが金だすのかコラッ!」


 出す訳無いだろ。


 ってか、女の子に絡む暇があるなら働けよ……。


 何か相手するのも怠いな。


「よし、面倒になった! お前ら三人共ぶっ飛ばす!」


 真面目に対応するのが面倒になった俺は、チンピラ共に啖呵を切った。


「「「上等だぁぁぁ!!」」」


 そして、俺の啖呵に乗ったチンピラ共は俺に飛び掛かってくる。



 俺の足元にはファリスに絡んでいたチンピラ達が倒れている。


 コイツ等弱すぎ。


 能力使わんでも勝てたわ。


「ファリス大丈夫か?」

「助けて頂いてありがとうございます!」

「それは良いんだが……紅の絆の仲間は?」

「はい! 追い出されました!」


 重っ! いや、軽っ!


 重い話題の筈なのにこの元気……何なのこの子。


 天然とか言われてる子はこんなのなの?


「そ、そうか、それじゃ今後はどうするんだ?」

「そうですね。あっ、翔さん一緒──」

「お断るぜ!」

「──ょ……せめて言わせて下さい」


 ふぅ、彼女居た歴0年の俺に一緒に冒険して下さい! とか言ったら秒でオッケーしてしまう。だから言わせない。


 ……ん? あれ、もしかしてフラグ構築チャンスだったか?


 まぁ、終わった事を気にしてもしょうがない。


「今日の宿代位は出してやるから、取り敢えず場所を移動しよう」

「はい!」


 ホント元気だなこの娘。



 カランコロン。


「あっ……」


 何か、街のオススメ酒場とやらが有ったので二人で入ってみると、紅の絆が先客に居た。


「あんたは護送任務で一緒だった……えっと……」

「翔だ」

「そうか、もの覚えが悪くて悪いな」


 そもそも、俺に興味を抱いて話しかけて来たのもファリス位だしな。


「取り敢えず、俺達も隣いいか?」

「……あ、あぁ」


 俺とファリスは紅の絆が座るテーブルへと相席をした。


「なぁ、何でファリスを追い出したんだ?」


 聞きづらい事ではあるが、ファリスの事に多少なりとも首を突っ込んだ以上、理由位は聞いても良いだろ。


「……賠償金だ……今迄ファリスがしてきた失敗の賠償金を払って来たんだが、俺達も限界が来た。だから追い出した」


 今度はちゃんと重い話しだな……。


「ファリスは強い、そして良い娘だ。魔法も一級品だ……だけど馬鹿で天然なんだ! やる気を出せば出す程に賠償金が増えて、もう俺達も限界なんだよ!?」


 話しを聞いてて、俺も自分の目頭が熱くなってきた。


「だから、少しの間の生活費を渡して抜けてもらった」


 えっ? さっき、チンピラ達にお金が無い的な事言ってなかったか?


「なぁファリス。さっき絡まれてる時、お金無いとか言ってたけど……お金はどうしたんだ?」

「はい! 落としました!」


 この娘は大丈夫なんだろうか?


 そんな話しをして暫くすると、紅の絆の三人は気まずそうに出て行ってしまった。


「食事時間中に重い話題で空気悪くしちまったな……」


 多少の申し訳無さはあったが、今後の彼等の成功を祈る事しか俺には出来なかった。


「さて、ファリス」

「はい?」

「飯も食い終わったし、宿に行くぞ」

「はいっ!」


 特にやる事も無いので俺達も宿屋に向かう事にした。



「取り敢えず、今日の宿代払っておいたから部屋でゆっくり休めよ」

「有難う御座います!」


 そういってファリスは自分の部屋へと入っていった。


「ハァ〜……疲れた、俺も部屋戻るか」


 それにしてもファリスは、実力は評価されていたが色々と癖が有りそうだな。

 そして、微妙に関わってるしこのまま見捨てるのもなぁ……。


 ──取り敢えず今日の所は寝よう。



 色々と考えた結果、俺はファリスと一時的にパーティを組む事にした。


 理由も色々あるが、一番の要因はこのまま見捨てたく無いなんて偽善的な考えだ。


「問題はパーティーを組む事によって、俺も紅の絆みたいに賠償金塗れにならないかって問題はあるが……」


 それでも俺には秘策有り!


 紅の絆は賠償金が辛いと言っていた。


 ──つまり、賠償金が発生しない討伐系のクエストだけを狙ってけば良いだろ? 紅の絆の言う通りだとすれば、ファリスも他人が関わらなければOKって事よ。


「そう言う訳でパーティ組むぞ」

「良いんですか? やりました!」

「それじゃ、出来る事をしっかりと教えてくれ」

「はい、魔法は四属性を中級まで全部使えます!」


 何コイツ、勇者みたいなユニークスキルでも持ってるの? 俺がボコったヤンキーズより強いやん。


「因みに何発位?」

「数えた事は無いですけど、撃てなくなった事も無いので分かりません!」


 イケメンパーティに行ったお姉さん程じゃないんだろうけど凄そう。


「そうか、今度は俺の能力だが相手を弱くするデバフだ。それ以外は並に毛が生えた程度と思ってくれて良い」


 一時的に組むパーティに、デバフの詳細までは言わんでいいだろ。


「それじゃ、他にもメンバー募集するんですか?」

「募集しないぞ? そもそも、これも一時的なパーティだから、今後も動くかはファリス次第だよ」

「はい、頑張ります!」

「そいじゃ、今日は近くにあると言う遺跡に住み着くオークを狩るぞ!」

「おぉーー!!」


 元気よく返事するファリスに、俺は微笑ましさと共に一抹の不安も抱いた。



「ファイヤーボール!!」


 ドォォォォォン!!!


 魔法によって魔物が消し飛んでいった。


「どうですか!?」


 この子何してんの? 何で討伐証明の素材毎、敵を消しとばしてるの? そして、何でやってやりました! みたいな顔で俺を見てくる訳?


「一応聞くけど……何してんの?」

「はい、倒してみろ! って言うので頑張ってみました!」

「そうだね、倒してみろって言ったね……その上で聞くけど、俺等は金稼ぎをしに来てる意識は有る?」

「勿論です! ジャンジャン敵を倒して行きます!」

「討伐証明を残せやぁぁぁぁあ! ただの消し炭だよこれは! コレじゃあ炭って事しか証明できねぇよ!」

「はっ! 忘れてました! 気をつけます!」

「マジで気をつけてね!」


 はぁ、これは前途多難だな……。



 暫く狩りしていると辺りからオークの気配が消えていた。


「これは……あの時と同じか?」


 この感じ、リザードマンキングと戦った時と似てる。


 つまり、


「ヴァァァァァァ!!」


 狩場に強者の咆哮が響く。


「翔さん! オークロードです! 逃げましょう!」


 雄叫びと共に、俺達の前に現れたのはオークロード様だ。


「ファリス……お前は先に行け! 俺が足止めする」

「分かりました! 直ぐに追いついて来て下さい!」


 そしてファリスは凄い速さで戦線を離脱した。


 ……オイッ、もう少し逃げるのを躊躇えよ。お前の為の足止めだぞ?


 ──まぁいいや、狩るか。


「さぁ、始めるか」


 俺はオークロードに人差し指と中指を立て、掛かって来いと言わんばかりにクイクイと曲げた。



 オークロードは焦っていた、圧倒的強さで人間を駆逐するつもりが、逆に駆逐されかけている事に……。


 男に攻撃が当たらない、掠りもしない。


 一度だけ男の体を掴めたから、そのまま力で握り潰してやろうともするが、凄まじい力で手から脱していった。


 オークロードはこんな話しを聞いていない。


 彼の主である魔王からは、人族が勇者を召喚していると言う話しを聞いていた。

 ──だがもし、コイツがその勇者だとして、勇者はこんなにも強いだろうか? 過去の記録でもここ迄の化け物は居なかった。


 何者だコイツは。


 そんな想いがオークロードを埋め尽くす。


「ヴァァァァァァ!! キザマハナンナノダ!」

「ただのデハッファーだよ」


 そう言うと男は、凄まじい速度でオークロードの身体を刻んでいく。


 高々人間如きにオークの最上位者である自分が一方的に追い詰められる。


 こんな事はそうそうあり得ない。


「ヅヨイ、ヅヨスギル」


 この感想はオークロードの素直な感想。


 その感想を聞いた男は、


「俺が強い? 違うな俺──」


 何かを言いかけた時、


 オークロードに向けて何かが飛んできた。


 ドオオォーン!!!


 爆音と共にオークロードはこの世からその生を消した。

何時も見て頂きありがとうございます!

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