二十四デバフ
アガスト王国、修練場にて翔と神子二人、【大暴風】と【不壊】が対峙している。
勇者と神子が模擬戦をする事は直ぐに広まり、大量の野次馬達が修練場に押し掛けていた。
◆夕凪翔side◇
本当に何で俺はこんな目に合ってる訳なんよ? 神様、貴方の神子達は理不尽すぎませんか?
俺の目の前には脳筋二人が満面の笑みで準備運動をしている。
「……本当にやらないと駄目ですか?」
スイッチが入ってる脳筋共に何を言っても無駄だとは思うが一応抵抗してみる。
「駄目だ、余達相手にあれだけの事を言ったのだ! 戦わないと言う選択肢は有り得ん」
いや、言ったの俺じゃないからな? そこの聖女とか言われてる奴が言ったんだからな。
「おい、リリーナ? お前が蒔いた種なのに何で俺が収穫してるの? 止めてくれよ!」
「アカン」
何がアカンねん! 決めた、この戦いが終わったら絶対に乳を揉んでやる。多分、ひと揉み……イヤ、ふた揉み位なら事故で許される。
それ位のご褒美が無きゃそろそろ俺のハートがストレス過多で闇堕ちするかもしれん。
「いやぁー! リリーナが言う最強の勇者って奴がどれ位強いのか、私もワクワクするよ」
ルーチェさんも何か、鉄の塊としか表現出来ない物を纏って準備万端の様だ。
もうヤダ、僕ちん日本に帰りたい……。
「ハァ……もう、分かりました。でも戦うのはこの一回限りでお願いしますね?」
「「勿論!」」
脳筋は負けず嫌いが多いからな、負けたら再戦だ! とか言い出しかねないから、言質はしっかりと取っておかないと面倒だ。
「それでは、私が審判を務めたいと思います」
せめて、怪我しない事を祈ろう!
「模擬戦始め!」
◆ルーチェside◇
「模擬戦始め!」
絶対に奪還が不可能と言われたハルケ平原の戦いに、勝利を齎した勇者と戦えるなんて本当に楽しみだ。しかもこの男は、リリーナが言うには最強と称する程の人だ、だから最初から全力で行くよ!
「でりゃぁーーーーーー!」
「ダァァァァーーーーー!」
私と同じ様にアガストも突っ込んで行った。さて、勇者は私とアガストの攻撃をどうやって凌ぐのかな?
私とアガストの攻撃が当たる直前、勇者の姿が消えた。
「なっ! 速い」
「速いな! これが剣の聖女が言う最強の勇者の速さか!」
私とアガストの眼をもってしても、勇者の動きは辛うじて捉えられるかどうかと言う物だった。
その後も勇者は速さで私達を撹乱していく。
「確かに速いけど、速さだけかな? 私の防御を破れる火力はあるのかしら!」
「カカカッ! そうだな、速いだけでは余の攻防一体の斧技、大旋風を破る事は出来ぬぞ!」
「──ぶっ! 確かに、ロ……ルーチェさんの装甲は俺には破れないですね……だけど」
勇者がそう言うと勇者の姿が再び消える。その直後、私の装甲が弾けた。
「一体……何……が?」
えっ? 何が起こったの……。
一瞬の出来事で意味が分からない。
「これで、ルーチェさんの防御力は無くなりましたね! それじゃ、ルーチェさんはリタイアして下さい」
その言葉と共に私のお腹に衝撃が走り、ダウンさせられた。
◆夕凪翔side◇
「でりゃぁーーーーーー!」
「ダァァァァーーーーー!」
相変わらず感覚崩壊を掛けた奴は遅すぎるな……。
それにしても、ルーチェさんの鎧をどうやって破ろうかな〜、俺の攻撃じゃ絶対に戦車の様な装甲をブチ抜くとか無理だわ。
だったら、あの鎧を脱がすか。
俺はそう決めると脳筋達の攻撃を交わしつつ、ルーチェさんの鎧の構造を調べる事に専念した。
「なっ! 速い」
「速いな! これが剣の聖女が言う最強の勇者の速さか!」
何か言ってるけど、何時もの事だから無視で良い。
この鎧どうやって着けてるんだ? ……あぁ、こんな感じで着いてるのか! ふむふむ、何となく解ったわ。
「確かに速いけど、速さだけかな? 私の防御を破れる火力はあるのかしら!」
「カカカッ! そうだな、速いだけでは余の攻防一体の斧技、大旋風を破る事は出来ぬぞ!」
「ぶっ!」
アガストのオッさん……その動き面白すぎるだろ! 子供が良く手をクルクル回しながら攻撃してくるアレじゃん! しかもその動きも遅いし、セリフと相まって思わず吹いてしまったよ。
「確かに、ロ……ルーチェさんの装甲は俺には破れないですね……だけど」
アカンな、直ぐにロリって言いそうになるのは悪い癖だ、反省反省。
さてと、本格的に脱がすか!
俺は脱がす為にルーチェさんの鎧を外していく。どうしよう、ちょっとだけイケない事してる気分になったわ。……うし、脱衣完了!
「一体……何……が?」
ちょっと〜、少し涙目になるのやめてもらえません? 本当にイケない事をしている気分になるんですけどぉ〜!
まぁ、いいわ。早くダウンさせよう。
「これで、ルーチェさんの防御力は無くなりましたね! それじゃ、ルーチェさんはリタイアして下さい」
俺はいつも通りに急所を突いて気絶させる。
うし、先ずは一人!
次は、良い年して面白い動きをしてるイケオジの番だな。
「フフッ、次はアガスト王の番です」
ゴメン。我慢出来なくてまた笑いそうになったわ。
◆アガストside◇
「フフッ、次はアガスト王の番です」
不壊がやられた。
まさか、自分で壊せないと言いながらも、あの装甲を弾き飛ばす程の攻撃をするとは……奴の能力か? だが、攻撃力と速さだけでは余が【大暴風】と言われる由縁である斧技、大旋風を破る事は難しいぞ。
勇者は不敵に笑っている……まだ何か隠しているかもしれないな。ならば全力全開の大旋風だ! もしかしたら殺してしまうかもしれんが……まぁ、最強なら多分大丈夫だろう。
「ハァァァァァァァ」
余は更に力を集め回転を早める。
「フヒッ……フフフッ。もうやめませんか? 俺の実力も分かってくれましたよね?」
クククッ! やめる訳無いだろ! こんなに血沸き立つ戦い久しぶりなのだ! 模擬戦なのがとても残念でならない。
それに、
「やめる訳がないだろう勇者よ。お前も余と同じく戦いに喜びを見出す者だろ? その証拠に余の闘気を受けて嗤っているではないか」
勇者の嗤いは戦闘狂がやる笑みそのものだ。貴様は口で否定しつつも、この戦いを望んでいる筈だ!
「フゥ〜……。分かりました、なら俺はもう何も言いません。ただ倒すだけです」
勇者がそう言うと、奴の周りには大量の火球が突如現れた。
「では、行きます」
そう言うと、火球が視認出来ない速度で飛んできた。
「ぐわっ! この魔法の速度はファイヤーバレットか! 中級魔法を無詠唱でこの数……最強の名に偽りなし、か……」
余も無様に敗北するか……だが、この勇者が居れば人類は勝てる。
余は幸福感を抱えて意識を手放した。
◆夕凪翔side◇
「ハァァァァァァァ」
「フヒッ……フフフッ」
ちょっ! やめて、何で更に回転方向にバリエーション増やしてるの? 俺の事、笑い殺す気かよ。
「もうやめませんか? 俺の実力も分かってくれましたよね?」
って言うかヤメテ! 我慢出来る内にヤメテ下さい、お願いします。
「やめる訳がないだろう勇者よ。お前も余と同じく戦いに喜びを見出す者だろ? その証拠に余の闘気を受けて嗤っているではないか」
何言ってるのか理解出来ないだが? 何で脳筋カテゴリーに俺を入れて来るんだよ! この笑いは我慢に我慢を重ねた結果こうなってんだよ! 言わせんな恥ずかしい。そもそも闘気とかフワッとした感覚とか分かんねーよ。
まぁ、でもやめる気が無いのが分かったから、もういいっす……。
取り敢えず落ち着く為にも呼吸整えなきゃ駄目だわ。
「フゥ〜……。分かりました、なら俺はもう何も言いません。ただ倒すだけです」
もう知らんからな? そのオモシロダンスを火ダルマにするけど文句言うなよ脳筋。
俺は無詠唱でファイヤーボールを何個も宙に作り出す。
やめるなら今だよ? って思ったけどあの顔はバッチこぉーい! 見たいな顔だわ。
これだから脳筋は……。
「では、行きます」
全てのファイヤーボールを脳筋に飛ばしていく。
脳筋で思い出したけど、汗臭いマッチョはまだ筋トレやってるのか? 流石に自分のパーティーが壊滅してる事に良い加減気がついてるよね?
俺がそんなどうでも良い事を考えながら魔法をぶっ放してると、
「ぐわっ! この速度はファイヤーバレットか! 中級魔法を無詠唱で、この数……最強の名に偽りなしか……」
そんな魔法知らんのだが? 俺はファイヤーボール限定男です。強みは無詠唱なだけです。
アガストさん。俺の魔法くらいながら幸せそうに気絶しないで下さい。キモくて怖いです……。
──そして、俺の勝利!
待ってろよ〜! おっぱい!?
何時も見て頂き有り難うございます。




