二十二デバフ
破滅のグラが繰り出す猛攻な攻撃に、大神拓哉達は追い詰められていく。
◆大神拓哉side◇
「ハッハッハッ! 勇者の実力とはこの程度なのか? この程度ならば能力を使う迄もない」
「──くっ! 攻撃の一つ一つが重い……」
グラの拳撃を剣で防いでいるが、一撃を防ぐ度に僕の手は痺れ、剣を握る力が抜けていく……。
八将貴を、……グラを相手にして防戦に回ってたら駄目だ! 押し切られる前に行動しないと殺られてしまう。
「皆、出し惜しみをしてたら殺られてしまう! 全力で行くよ!」
「「「了解!」」」
僕の言葉に皆が全力でスキルを解放していく。
グラと接近戦を繰り広げてる僕と、交代する為、雪さんが僕とスイッチし、近接戦闘に持ち込んでくれる。
そして、前衛を交代した僕は、後方に下がって美幸さんの回復を受けた。
「有難う美幸さん。僕はこのまま神剣の一つを解放するから下がってて!」
「はい!」
美幸さんが僕から距離を取るのを確認すると、僕は神剣の一つを解放する。
「万物を断つ刃! ──来いバルムンク!」
神剣が保管される空間、神域領域に干渉し、剣を取り出すと、バルムンクが僕の手に収まった。
そして神剣バルムンクの加護により、僕の身体能力は大幅に底上げされた。
今の僕なら勝てる筈だ!
「はぁぁぁ!!」
肉体が強化された僕は、現在前衛をしている雪さんと一緒に戦う為、結衣さんからの魔法援護を受けながらグラに突っ込む。
「グラァァァァァ!!」
突っ込んできた僕に、グラは直ぐに反応し反撃をしてきた。
「先程よりかは幾分マシだが……まだまだヌルい!」
グラの拳は最初に戦闘していた時よりも更に、速さと重さが増し、その暴力は僕達二人を襲う。
「ぬるぁぁぉぁぁ!!!」
その攻撃により僕と雪さんは、
「がはっ!」
「きゃっっっ!」
グラの豪腕によって、近くの岩に叩き付けられたのだった。
◆八将貴グラside◇
……ツマらんな。勇者と言うのはこの程度なのか? この様な小物しか人類側は召喚出来ないのか。
「本当にハズレだな」
勇者の一人が剣を顕現させてからは空気が変わった……が、それだけだ。まだまだ弱い。
コイツ等は圧倒的に経験も実力も足りていない。
与えられた力を、ただ振り回しているだけだ。
久方ぶりに勇者が現れたと聞いて、少しは血が燃え立つ戦いが出来ると思ったのだがな……。本当にツマらん。
俺は満身創痍の勇者パーティーに視線を向ける。
「つ、強い……バルムンクが当たらない」
「韋駄天で速度が強化されてるのに、まるで先読みされているみたいに躱されてしまう……」
先読み……か。こんな能力に任せて振るう攻撃が見え見えなだけなのだがな。速いだけの奴なら勇者以外にも幾らでもいる。
本当に残念だ……。せめて実戦経験が豊富な勇者ならば、もう少し楽しめたのだろうがな。
「グラ様!」
俺がこの結果に萎えていると味方の伝令兵が走ってきた。
「ご報告があります!」
「どうした?」
「ハルケ平原が人類に抜かれました……」
何だと……? あそこの指揮にはジェリスが居た筈だが、まさか敗れたのか?
だが、ジェリスが居たのに敗れたと言う事は、あの地には他の強い勇者が現れたか、もしくは【大暴風】が動いたかだな。
「それで魔王様は何と言っている?」
「はい、グラ様は至急ハルケ平原に向かう様にとの指示です」
そうか……異動か。クククッ、小物しか居ないこの国よりかは楽しめそうだ! こんな雑魚しか相手出来ないと鈍ってしまってしょうがない。
「分かった。此れから直ぐに向かう」
「ま、待て。逃げるのか!」
逃げる? 巫山戯た事をヌカすか……まぁいい、今は気分が良い。
コイツ等も経験を積めば、次はもう少し楽しめそうだから、今回は生かしてやろう。
「フッ、貴様は我が逃げると本気で思っているのか? それは間違いだと貴様自身が一番分かっている事だろう。……だが、今は気分が良いから見逃してやる。次会う時迄に少しは強くなるのだな」
「「「「…………」」」」
俺はハルケ平原に向かう為、勇者達の視線を背中に受けながら戦場を後にした。
◆大神拓哉side◇
負けた……。
僕達はグラにダメージと言える様なダメージすら与えられなかった。
それどころか真面に相手すらされてなかった。
「これが八将貴の実力なのか…….」
「悔しいけど、今の私達ではどうしようもないわね」
僕の呟きに結衣さんが返してくれた。
他の二人、美幸さんも雪さんも今回の敗北の所為か、とても暗い表情で俯いていた。
きっと、彼女達から見た僕も同じ表情をしているんだろう。
グラには終始余裕があった。
僕達は言葉では強がっていても、心の底では、グラを一目見てから恐怖で身体が竦んでいた。ベルザ王からの威圧ですら怯む僕達に最初から八将貴と対峙する事なんて無理だったんだ……。
そして、ベルザ王も最初からこういう結果になると分かっていたんだろう。
「僕はなんて無力なんだ……」
僕の呟きは誰にも聞かれず、戦場の音にそっと掻き消された。
何時も見て頂きありがとうございます。




